中国;燃料用炭価格高騰及び供給量不足による電力供給不安問題で習国家主席に逆風
中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題をいち早く収束に向かわせ、既に景気回復途上にあり、昨年半ばのマスク・医療用具品外交に続いて、今年にはワクチン外交で以て国際社会の支持を取り付けようとしている。しかし、国内では目下、習近平国家主席(67歳)に思わぬ逆風が吹きつけている。それは、発電用燃料のみならず各家庭での暖房用に主として使用している燃料用炭が、需給ひっ迫による価格高騰を引き起こしているため、反指導部派や一般市民からの反発・苦情が日に日に増しているからである。
2月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国国内炭の供給ひっ迫で価格高騰及び停電危機が発生」
厳寒な冬季を迎えている中国では、発電用や暖房用の燃料炭価格が高騰し、一般市民の生活に深刻な打撃を与えている。
12月になって気温が下がっただけでなく、COVID-19感染問題がほぼ収束して経済が動き出したこともあって、中国の発電用燃料の約70%を占める燃料用炭の供給がひっ迫し始めたからである。...
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2月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国国内炭の供給ひっ迫で価格高騰及び停電危機が発生」
厳寒な冬季を迎えている中国では、発電用や暖房用の燃料炭価格が高騰し、一般市民の生活に深刻な打撃を与えている。
12月になって気温が下がっただけでなく、COVID-19感染問題がほぼ収束して経済が動き出したこともあって、中国の発電用燃料の約70%を占める燃料用炭の供給がひっ迫し始めたからである。
地元メディア報道によれば、富裕層でも暖房用石炭を容易に買えないという。
そして、12月初めから電力使用量の削減や停電の事態が起こり始め、一級都市である北京や上海も光源を失って薄暗くなっている。
また、南東部の湖南省(フーナン)、江西省(チアンシー)等の工業都市を抱える省では、強制的な“省電力措置”が講じられている。
今回の燃料用炭供給不足の背景には、中国政府による国内石炭産業保護のために輸入炭を削減したこと、また、国内炭産業での汚職取り締まり問題が地方自治体内でくすぶっていること等、複数の要因が挙げられる。
エネルギー政策を司る中国国家発展改革委員会(2003年設立)の趙辰昕(チャオ・チェンシン)秘書長が12月に、“電力供給に問題は発生していない”と市民に向けて訴えても、現実的に石炭在庫が払底し、節電や停電等の問題を目の当たりにして、疑念が強まるばかりである。
2019年に中国は、世界の総石炭生産量の半分近くとなる37億4,500万トンを生産していて、そのうち内モンゴル自治区では国内最大となる10億トンを生産した。
しかし、国際エネルギー機関(IEA、1974年設立)の資料によると、中国政府が目標値としている国内炭価格は1トン当たり77~88ドル(約8,100~9,200円)とされているが、『ロイター通信』報道では、COVID-19感染問題が深刻だった4月末~5月初めの価格が72ドル(約7,600円)だったにも拘らず、12月4日時点では99.23ドル(約10,400円)と38%も急上昇しているという。
国営メディアの『新華社通信』は、2ヵ月後の今年2月3日時点の価格が98.52ドル(約10,300円)と若干下がったと報じているが、依然高止まりの状況である。
2月12~18日の春節期間や若干暖かくなったことによる石炭需要減から、石炭価格は少々下がるとみられるが、専門家は、春節後の経済活動再開による需要増や在庫量不足に伴い、今後とも石炭価格は上昇していくとみている。
中国は、毎年40億トン程石炭を消費していて、中国税関総署(1949年設立)によれば、2億7千万トン余りを輸入しているが、そのうちオーストラリア炭が7,000~8,000万トンを占めるという。
しかし、中国政府は、オーストラリア政府がCOVID-19発生地問題で中国政府に難癖をつけたこと等を理由として、同国からの石炭輸入を制限し始めていたが、昨年12月14日、ついに輸入禁止とする措置を講じている。
『ウォールストリート・ジャーナル』紙は2月10日、“中国の石炭需要家は、オーストラリアよりも距離が遠い産炭国から高値で輸入せざるを得ず、昨年半ばより84%もコスト高となっている”と報じた。
ただ、台湾のアジア太平洋平和基金の董立文(トン・リーウェン)執行長(CEO)は『VOA』のインタビューに答えて、“オーストラリア炭は中国総輸入量の僅か2%弱であるので、中国の石炭価格上昇に影響を与えるのは限定的であり、むしろ国内の特殊事情が現下の石炭価格上昇をもたらした”と分析している。
同執行長によれば、主要産炭省である山西省(シャンシー)及び内モンゴル自治区の石炭産業に対する汚職取り締まりが深刻な石炭生産問題を引き起こしているという。
例えば、内モンゴル自治区では2020年1月に汚職取り締まりが始まり、当局は2000年まで遡って捜査しているという。
『新華社通信』は、昨年2月までで、地方政府高官及び産炭会社重役ら9人が既に拘束されて取り調べを受けていると報じている。
一方、中国アジア太平洋精鋭交換協会の王智晟(ワン・チーション)秘書長は、今回の電力供給制限問題で、習指導部が地方政府への影響力を失いつつあるのではないかと市民が疑い始めていると分析している。
そして同秘書長は、3月に開催される二つの大きな会議-全国人民代表大会(全人代、1954年設立、立法府に相当)及び中国人民政治協商会議(政協、1949年設立、中国共産党、各団体・各界の代表による全国会議)-において、反指導部派がこれらの問題で習主席の足を引っ張ろうと画策する可能性があるとする。
なお、同秘書長は、“両会議を通じて、習主席降ろしまで話は進まないとは思うが、エネルギーや電力危機がこれから更に深刻化すると、同主席にとっては大きな信用失墜につながる恐れがある”と分析している。
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チェコ;上院議長団の訪台等で反中派の勢い増すも、新感染症用ワクチンを求めて親中派が巻き返し【米・ロシアメディア】
大統領・首相とも親中派のチェコでは、中国の進める「一帯一路経済圏構想」に基づく同国エネルギープロジェクトが中国側都合で突如頓挫したことから反中派が勢いを増し、昨年夏には同国No.2の上院議長を団長とする総勢90名の使節団が訪台する程であった。しかし、欧州連合(EU)加盟国ながら新型コロナウィルス(COVID-19)ワクチンが容易に確保できていない同国としては、EU未認可を無視してロシア、中国製ワクチン手当てを着々と進めているハンガリーを見習うべく、チェコ首相がロシア及び中国製ワクチン手当てに走り出そうとしている。
2月5日付米
『AP通信』:「チェコ首相、ハンガリーを訪問してロシア、中国製ワクチン手当て方策を相談」
チェコは、EU保健当局(欧州医薬品庁)未認可のロシア及び中国製COVID-19ワクチンについて、EU加盟国でありながらいち早く手当てしたハンガリーに倣って、当該ワクチン獲得に走り出そうとしている。
同国のアンドレイ・バビシュ首相(66歳、ポピュリズム政党のANO2011党首、親中派)が2月5日に表明したもので、同日にハンガリーを訪問してビクトル・オルバーン首相(57歳)と会談した後の記者会見で、ハンガリーが既に手当てしたロシア製ワクチンのスプートニクⅤ及び中国シノファーム社製ワクチンに関わる情報提供を受けて、同国としてもこれらワクチン獲得に動き出すと表明した。...
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2月5日付米
『AP通信』:「チェコ首相、ハンガリーを訪問してロシア、中国製ワクチン手当て方策を相談」
チェコは、EU保健当局(欧州医薬品庁)未認可のロシア及び中国製COVID-19ワクチンについて、EU加盟国でありながらいち早く手当てしたハンガリーに倣って、当該ワクチン獲得に走り出そうとしている。
同国のアンドレイ・バビシュ首相(66歳、ポピュリズム政党のANO2011党首、親中派)が2月5日に表明したもので、同日にハンガリーを訪問してビクトル・オルバーン首相(57歳)と会談した後の記者会見で、ハンガリーが既に手当てしたロシア製ワクチンのスプートニクⅤ及び中国シノファーム社製ワクチンに関わる情報提供を受けて、同国としてもこれらワクチン獲得に動き出すと表明した。
その際、同首相は、“ワクチンは政治問題が伴うものではなく、安全が第一”だとした上で、“どの国で生産されたかは関係なく、安全である限り、国民の健康確保のために可能な限り多くのワクチンを手当てする意向”だと言及した。
両首脳は、EUのワクチン政策の遅滞を非難しており、EUから割り当てられるのを待つことなく、自国の努力でワクチン手当てをする重要性を強調している。
ハンガリーは今年1月、スプートニクⅤワクチンを認可し、2月2日現在で既に4万回分を受領済みであり、また、シノファーム製も先週認可している。
バビシュ首相はハンガリー訪問前、同国のCOVID-19感染状況が悪化している上、死者が1万7千人近くに上っていることから、政府として至急対策を打つ必要があると訴えていた。
なお、同首相は2月16日、ハンガリーと同じくロシア製ワクチンを手当て済みのセルビアを訪問し、そこでも同ワクチンに関わる情報を得る意向である。
同日付ロシア『ロシア・ヘラルド』紙(『新華社通信』配信):「ハンガリーのオルバーン首相、COVID-19ワクチンの可及的速やかな手当てが重要と強調」
ハンガリーのオルバーン首相は2月jo5日、同国訪問中のチェコのバビシュ首相と会談した後、COVID-19ワクチンを可及的速やかに手当てすることが最も重要だと発言した。
同首相は、両首脳会談後の共同記者会見の場で、“国民の生命を守るため、速やかにワクチン手当てをすることが最も優先される課題”だと強調した。
同首相は更に、ロシア及び中国製ワクチンはセルビアで既に接種が進められており、同国もセルビアから情報を入手して、同ワクチン導入・接種の手当てを急いでいると付言した。
バビシュ首相も、“ワクチンは政治問題化されるべきではなく、安全である限りどこの国で生産されたワクチンでも、国民の健康維持のために至急手当てしたい”と強調している。
(参考)2月6日午後1時半現在の上記3ヵ国のCOVID-19感染状況は以下のとおり。
チェコ:感染者102万1,477人、死者1万6,976人、致死率1.7%
ハンガリー:37万3,764人、1万2,930人、3.5%
セルビア:40万4,668人、4,085人、1.2%
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