6週間余り前の前回報告時より、世界の感染者は2,246万人余りも増えて1億1,207万2,132人に、死者も55万人余り増の248万3,413人(致死率は若干増の2.2%)となっている。ただ、年明けから主に先進国で一斉に始まったCOVID-19用ワクチン接種によって、罹患率及び致死率は減少傾向にある(米ジョンズ・ホプキンズ大の2月24日午後5時現在の集計データ引用)。
2月23日付
『AP通信』他:「COVID-19感染流行問題に関わる直近の状況」
<ハイライト>
●世界保健機関(WHO):ワクチン接種が先進国ばかりに偏り、依然世界210ヵ国余りではワクチン配布がゼロと警鐘。
●米国:(1)ジョー・バイデン大統領(78歳)、数百万人分のマスクを可及的速やかに配布すると宣言。
(2)複数の製薬会社から合計7億回分のワクチン配布が夏前までに完了見込みで、全米国成人2回分の接種が可能となる数量。
●英国:ボリス・ジョンソン首相(56歳)が、間もなく全国ベースの都市封鎖措置緩和に踏み切る意向を示したことより、夏季休暇に備えての旅行予約が急増。
●スペイン:感染率若干の減少で、“極端なリスク”から“高リスク”程度に下がったとは言え、依然病床や集中治療室が満杯の状態ゆえ、制限措置解除見込みは未定。
●イタリア:北部地方は、英国変異株による感染者急増により、新たな都市封鎖措置を導入。
●カナダ:ワクチン確保が遅延しているものの、3月末までに600万回分、そして7月までには2,900万回分獲得見込み。
●ポルトガル:1月の新規感染者数が、人口当たり世界最多となったことから、2月初めよりドイツ陸軍医療部隊が応援派遣。
●イスラエル:余ったワクチンを、パレスチナ(ヨルダン川西岸及びガザ地区)他に供給すると発表。ただ、提供ワクチンが余りに微量で国際社会から非難の声。なお、同国民の半分が接種済みで、人口当たりの接種率は世界最多。
<WHO>
・事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏(55歳、エチオピアの元保健大臣・外務大臣)は2月23日、COVID-19用ワクチン接種が先進国ばかりに偏っていて、“世界の210ヵ国余りには全く配布されていない”と非難。
・慈善団体「グローバル・シティズン(国際市民権、注後記)」主催の会合の席で述べたもので、同事務局長は、“ワクチンが押し並べて行き渡らない限り、COVID-19感染抑え込みは困難”だとも強調。
<米国>(感染者2,852万6,532人、死者50万7,469人、致死率1.8%)
・バイデン大統領は2月23日、数百万人分のマスクを可及的速やかに配布すると宣言。これは、トランプ前政権が見送った政策。
・更に同大統領は、就任後100日間(4月末まで)は全市民がマスク着用することを望むとし、特に、連邦政府建物内や公共交通機関ではマスク着用励行を求めると付言。
・複数の製薬会社は米議会において、3月までには大量のワクチン配布が可能となると説明。
・ファイザー(1849年設立)及びモデルナ(2010年設立)は、3月末までに合計2億2千万回分のワクチン提供が可能と表明。
・また、両社は、夏前までにそれぞれ3億回分ずつのワクチン提供が可能とし、更に、間もなく認可される運びとなるジョンソン&ジョンソン(1887年設立)からも1億回分のワクチンが提供可能となる見込み。これによって、バイデン政権が掲げた目標どおり、全成人分を超える程のワクチンを確保可能。
<英国>(感染者413万4,639人、死者12万1,305人、致死率2.9%)
・ジョンソン首相が、間もなく全国ベースの都市封鎖措置緩和に踏み切る意向を示したことから、夏季休暇に備えての旅行予約が急増。
・英国旅行会社最大手のTUI(1965年設立)は2月22日、月曜日としては今年初めて通常の6倍の旅行予約を受け付け。
・英国LCCのイージー・ジェット(1995年設立)は、航空便予約が3倍以上となり、また、パック旅行のトーマス・クック(2007年設立)でも、データアクセスが75%も急増。
・一方、事業経営者の多くは、営業再開許可が出るペースが遅いことに不満で、業種によっては6月21日まで不可能との見込み。
<スペイン>(感染者316万1,432人、死者6万8,079人、致死率2.2%)
・2週間単位での新規感染者数が、直近1ヵ月弱で、10万人当り900人から235人ペースへと減少したことから、“極端なリスク”から“高リスク”程度へと若干低下。
・しかし、病床や集中治療室は依然ひっ迫している状態ゆえ、保健当局は、制限措置緩和は時期尚早と表明。
・ワクチン配布は遅れ気味だが、ペドロ・サンチェス首相(48歳)は2月23日、6月末までに2,000万回分、夏季末までに3,300万回分確保できる見込みと強調。
<イタリア>(感染者283万2,162人、死者9万6,348人、致死率3.4%)
・当局は、北部の都市ブレシア(ロンバルディア州)向けのワクチン配布を急がせているが、英国変異株ウィルス感染者が同市内で急増したことから、新たに厳しい都市封鎖措置(同市及び周辺都市の学校閉鎖及び外出自粛等)を導入。
・同地域ワクチン配布を司るグアイド・ベルトラーソ医師(70歳)は2月23日、同市のクラスター(集団感染)を抑えるべく、接種の2回目を少々遅らせても、まず同市内の約12万人に最初の接種を施すと表明。
<カナダ>(感染者85万2,269人、死者2万1,762人、致死率2.6%)
・直近では依然ワクチン確保が遅延気味だが、ファイザー及びモデルナから64万3,000回分のワクチンを今週受領見込み。
・更に、3月末までに600万回分、そして7月までには2,900万回分確保できる見込み。
<ポルトガル>(感染者79万9,106人、死者1万6,086人、致死率2.0%)
・1月に新規感染者数が、人口当たり世界最多となったことから、ドイツ陸軍医療部隊第一陣が2月初めより応援派遣。
・現在は若干増加ペースが下がったものの、依然病院が満杯に近いため、同医療部隊の交代要員(医師8人、看護士18人)が2月23日に到着。
・なお、フランス及びルクセンブルクからも5人前後の医師が応援派遣。
<イスラエル>(感染者75万9,572人、死者5,634人、致死率0.7%)
・首相府は2月23日、同国が手配したワクチンは全て同国民用に購入したものだが、余分となったワクチンをパレスチナ(ヨルダン川西岸及びガザ地区)及びワクチン配布を希望してきた数ヵ国に提供することとしたと発表。
・ただ、これまでにパレスチナに提供したのが僅か5,000回分のワクチンであったことから、国際社会からは余りに微量すぎるとの非難の声。
・これに対してイスラエル政府は、1990年代に交わされた暫定和平合意では、イスラエルはパレスチナ人への医療提供義務はないと反論。
・一方、これまでに全人口930万人の半分に最低1回のワクチン接種を施しており、人口当たり世界最多の接種率。
(編注;ヨルダン川西岸の感染者数17万6,377人、死者1,994人、致死率1.1%。ガザ地区は5万4,635人だが死者数は収集できておらず、ヨルダン川西岸と同程度としたら死者は約620人。感染者数・死者数とも人口当たりではイスラエル並み)
<スウェーデン>(感染者64万2,099人、死者1万2,713人、致死率2.0%)
・保健当局は、首都ストックホルムにおいて、公共交通機関、小売店、職場でのマスク着用を要求。
・同市では、直近数週間の感染率が27%に急増。
・国家疫学官のアンデシュ・テグネス医師(64歳)は、“残念ながら感染率が再上昇している”とした上で、“英国変異株が大変な勢いで感染拡大している”と警鐘。
(注)グローバル・シティズン:2008年にニューヨークで立ち上げられた慈善団体。2030年までに地球上の極貧者を失くすことを目標に、総勢1億人からの寄付や活動支援を得るべく活動。目下、480億ドル(約5兆400億円)が集まっていて、8億8千万人の貧困者救済に充てられるレベル。
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バイデン米政権は、トランプ前政権下での「最大限の圧力」の4年間の方針を転換し、イラン核合意への復帰に向け、イランと協議する用意があると発表している。多国間協議により、過去のトランプ前政権による痛手の修復を目指す。
2月18日付米国
『NYT』は「バイデン政権がイランとの核交渉再開を正式打診」との見出しで以下のように報道している。
バイデン大統領が、イランの核開発計画を制限する交渉復帰に向けて動いている。制裁解除を求めるイランが交渉に合意するかは不透明。
バイデン政権当局によると、米国は、トランプ元政権が廃止したイラン核合意を回復するという大きな方針転換を行い、4年ぶりにイランと交渉に乗りだそうとしている。これはバイデン大統領の公約の一つであった。米政権は、イランが2019年までの制限を再度守る場合のみ、交渉を再開するとしている。
この発表は非常にデリケートな交渉に道筋を開くものである。国務省は、イラン側の対応はまだ分からないが、核合意復帰に向けたプロセスの第一歩であるとしている。イラン政府がこの日までにトランプ元政権が課した国連の制裁が緩和されなければ、核合意に基づく核関連施設への抜き打ち査察を認めないとする最終期限日が21日となっている。
イランの大統領選を4か月後に控え、イランの最高指導者ハメネイ師や政府や軍部の指導者がこれを支持するかは不透明となっている。米政府内部では、中国、ロシア等の他国が参加すれば実現すると考えているが、サウジアラビア、イスラエル、アラブ首長国連邦が同意するかは疑問視されている。
同日付『AP通信』は「バイデン、対イランでトランプ路線から転換、核合意交渉再開か」との見出しで以下のように報道している。
バイデン政権は18日、イラン他世界大国との核合意への復帰を模索していると発表した。国連制裁の復活や外交官のイランへの渡航制限などドナルド・トランプの圧力外交から転換を図る意向。G7首脳との会談前に発表されたが、イラン政策のタカ派からは批判され、イスラエル他中東諸国からも懸念の声があがるものとみられる。
米国はイラン国内の人権問題違反や核弾頭プログラムを懸念。イランに再度制裁を行う「スナップバック」と呼ばれる制裁復活手続きから撤退したことを通知、国連大使代行Richard Mills氏は国連にトランプ元政権路線からの転換を示す書簡を送ったという。米高官によると、外交官のイラン渡航制限は緩和されたという。合同声明でブリンケンは、「イランが核プログラムの制限を再び順守するなら、米国は同様に向き合う用意がある」としている。
イランのロウハニ大統領は18日、国営テレビで、バイデン政権核合意に復帰し、トランプ時代の国連制裁を解除することに期待を示した。メルケル首相は今秋ロハウニ大統領と電話会談。 IAEAの幹部は今週末査察継続の解決策を求め、イランへ渡航する予定。
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