レバノン国内でタイムゾーンが分かれる二重時間
レバノンでは政治と宗教の対立から、国内で2つのタイムゾーン(標準時間帯)が混在し、国民生活に混乱が生じているという。
3月26日付米
『ABCニュース』(AP通信):「レバノンで夏時間を巡る対立で2つのタイムゾーン発生」:
レバノンでは、政府がイスラム教のラマダンが終わるまで、夏時間開始を1ヶ月遅らせたことで、大混乱が起きている。
変更を適用する機関としない機関が混在し、レバノンでは職場や学校で二重時間で混在することとなった。国内最大の教会など、キリスト教系の政治家や組織が、政府の変更に反対しているという。...
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3月26日付米
『ABCニュース』(AP通信):「レバノンで夏時間を巡る対立で2つのタイムゾーン発生」:
レバノンでは、政府がイスラム教のラマダンが終わるまで、夏時間開始を1ヶ月遅らせたことで、大混乱が起きている。
変更を適用する機関としない機関が混在し、レバノンでは職場や学校で二重時間で混在することとなった。国内最大の教会など、キリスト教系の政治家や組織が、政府の変更に反対しているという。
地中海に面した小国レバノンでは通常、欧州各国と同じく、3月の最終日曜日に時計を1時間早め夏時間を適用している。しかし、先週23日、政府は、ナジブ・ミカティ暫定首相の決定だとして、夏時間開始を4月21日まで延期すると発表。
理由は公表されなかったが、メディアに流出したミカティ氏とナビ・ベリ議会議長の会談とされる動画には、議長がミカティ氏にイスラム教徒のラマダン(断食)が1時間早く終るようにと延期を懇願する様子が写っていたという。
延期発表後、中東航空は、今月26日から4月21日まで、ベイルート空港発の全便の出発時間を1時間早めると発表した。国内の携帯電話大手2社は声明で、26日深夜に時間が切り替わらないよう、時計の設定を自動から手動に変えるよう呼びかけた。
公共機関は政府の決定に沿うものと思われるが、TV局、学校、企業等の民間機関では、政府の決定を無視し、通常どおり夏時間を開始するとみられる。公共機関の一部も反対しているが、ハラビ教育相は声明で、「これは議会決定ではないため法的拘束力はない。決定すればすぐに適用するが、それまでは教育部門での夏時間適用を認める」としている。
これにより国民の間では、異なる職場や学校で時間が混在する等、生活に混乱が生じているという。ネット検索では、結果で「イスラム教時間」と「キリスト教時間」が混在していると話題になっているという。
国内では、政府がこのような混乱を生じさせることで、経済や政治問題を国民の目からそらす目的があるとの見方がある。現在レバノンは財政危機にあり、人口の4分の3は貧困層となっており、昨年10月ミシェル・アウン大統領退任後は、大統領が不在となっている。
同日付嘉『アルジャジーラ』によると、レバノンでは冬時間の1ヶ月延長を巡る政治と宗教当局の対立により、二重時間が発生しているという。
ミカティ暫定首相は今月23日、夏時間の開始を遅らせると発表したが、25日には国内で影響力をもつマロナイト教会がこの決定を無視すると発表した。ミカティ氏の判断は、ラマダンの終了時間を午後7時から午後6時に早める狙いがあると見られているが、教会側はこれを「驚くべき」決定で、国際標準に合わないものだと批判している。他のキリスト教団体や学校も同教会の決定に従うとしている。
一方、イスラム系機関や団体は、冬時間を継続するものとみられ、キリスト教徒とイスラム教徒が対立した1975から90年の内戦のように国の分裂は深まっている。反対派が優勢なことから、企業やLBCIやMTVなど大手メディアも、夏時間を適用するとしている。
レバノンの「ミドル・イースト航空」は、社内の時間は冬時間を延長とするが、国際スケジュールに従い、フライト出発時刻は1時間早めるとしている。
議会議員からは、これは国内の経済問題から国民の目をそらすための施策だと批判する声もある。今月レバノン・ポンドは急落し、対米ドル12万ポンド以上となる歴史的安値をつけている。
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フィンランド、スウェーデンのNATO加盟意向にトルコが難色、米、NATOはトルコの合意に自信
ロシアのウクライナ侵攻受け、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を希望するフィンランドとスウェーデンに、トルコが「テロ組織」の存在を理由に難色を示しているが、NATOや米国は合意を得られるとの自信を示している。
5月15日付独
『DW』:「トルコがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に条件提示」:
トルコは、ロシアのウクライナ侵攻を機にNATO加盟を希望するスウェーデンとフィンランドについて、テロリスト支援をやめ、輸出禁止措置を解除すれば加盟を支持するとしている。NATOへの新規加盟には現加盟国による全会一致の賛成が必要となる。
トルコのチャプシオール外相は15日、ベルリンで開かれたNATOの外相会議後の取材で、2カ国が自国内テロリストへの支援をやめ、治安を維持し、トルコへの貿易制裁を撤回するよう要求したとした。...
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5月15日付独
『DW』:「トルコがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に条件提示」:
トルコは、ロシアのウクライナ侵攻を機にNATO加盟を希望するスウェーデンとフィンランドについて、テロリスト支援をやめ、輸出禁止措置を解除すれば加盟を支持するとしている。NATOへの新規加盟には現加盟国による全会一致の賛成が必要となる。
トルコのチャプシオール外相は15日、ベルリンで開かれたNATOの外相会議後の取材で、2カ国が自国内テロリストへの支援をやめ、治安を維持し、トルコへの貿易制裁を撤回するよう要求したとした。同外相によると、トルコは加盟を反対やけん制しているのではなく、同国がテロ組織とみなし、スウェーデンが支援しているクルド労働者党(PKK)を懸念していると主張する。
トルコは2日前、フィンランドとスウェーデンの加盟について、エルドアン大統領に「前向きな考えはない」とし難色を示していた。その理由について同大統領は、両国が「テロ組織」を支援していると批判した。
これまでもトルコはそのような批判をしてきた。特にスウェーデンについて、2016年軍事クーデターを企てたとされた在米フェトフッラー・ギュレン師をはじめ、クルド組織を支援していると批判。多くの移民はクルド系で、長期にわたるクルド系組織とトルコ治安部隊との衝突後、政治亡命を認められた者もいる。
フィンランドは15日、NATO加盟申請への姿勢を表明。ニーニスト大統領は、トルコの方向転換に少々困惑しているとし、「今我々に必要なのは、明瞭な回答であり、エルドアン大統領が指摘する問題に関し議論する用意がある」としている。スウェーデンもフィンランドに続くとされ、同日、スウェーデンの与党の社会民主労働党もNATO加盟を支持している。
トルコが反対すると、NATO加盟国での全会一致を得るのが困難となるが、NATOのストルテンベルグ事務総長は、15日、トルコ側の懸念を払しょくし、加盟問題を合意に導く自信をのぞかせた。
同日付カタール『アルジャジーラ』:「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対しているのではない、トルコが条件提示」:
NATOと米国は、トルコがフィンランドとスウェーデンの西欧軍事同盟への加盟を阻止しないとの自信をのぞかせている。
トルコは15日、NATO外相会談に合わせ、フィンランドとスウェーデンにクルド軍事組織への支援をやめ、トルコへの武器輸出制限を撤回するよう要求した。同国のチャプシオール外相は、両国外相との会談は良好に終わり、トルコの懸念に応える姿勢が示されたとする。また、テロリストの存在の証拠も提示したと主張した。
クルド軍事組織であるクルド労働者党(PKK)は、米国やEUからテロ組織に指定されている。トルコは加盟を希望する全ての欧州諸国へ加盟への門戸を広げるとするNATOの方針に反対するつもりはないとしている。
NATOのストルテンベルグ事務総長はトルコの合意への自信をのぞかせており、米国のブリンケン国務長官も、「合意に至ると信じている。NATOは対話の場だ」としている。
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