米・英・ロシア・中国メディア;南シナ海における米中のつばぜり合い(3)(2016/05/16)
5月6日付
Globali「南シナ海における米中のつばぜり合い(2)」の中で、“フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の審理結果が判明する時期が迫ってきたことから、米側は(同裁定に従わないと豪語する)中国を牽制するため潜水艦攻撃型無人戦艦の導入を急げば、中国側は、米空母の香港入港拒否は米側に責任があるとし、更に、フィリピンの違法な領有権請求を非難する声明を発表する等、更に喧しくなってきている”と報じた。そして、更に米海軍が5月10日、南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島のファイアリークロス礁上の人工島から12海里(約22キロメーター)内をイージス駆逐艦に監視航行(航行の自由作戦)させたばかりか、5月13日には国防総省が、中国の軍事力を分析した年次報告書を公表して中国を牽制した。当然のことながら中国は、これらは全て言い掛かりと非難している。
5月15日付米
『AP通信』の報道記事「中国、米国の年次報告は軍事的脅威を誇大表現とクレーム」:
「・中国国防部の陽(ヤン)報道官は5月14日、米国防総省が発表した年次報告書が、中国の防衛政策について歪んだ解釈をし、軍事的脅威などと誇大表現していると非難。
・更に、米国こそ、南シナ海に戦闘機や軍艦を何度も派遣し、悪戯に同海域の緊張を高めているとも主張。
・国防総省は5月13日、中国は南シナ海の領有権争いのある諸島で軍事拠点化を活発化させ、これまで以上に同海域をコントロール下に置こうとしているとする年次報告を公表。...
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5月15日付米
『AP通信』の報道記事「中国、米国の年次報告は軍事的脅威を誇大表現とクレーム」:
「・中国国防部の陽(ヤン)報道官は5月14日、米国防総省が発表した年次報告書が、中国の防衛政策について歪んだ解釈をし、軍事的脅威などと誇大表現していると非難。
・更に、米国こそ、南シナ海に戦闘機や軍艦を何度も派遣し、悪戯に同海域の緊張を高めているとも主張。
・国防総省は5月13日、中国は南シナ海の領有権争いのある諸島で軍事拠点化を活発化させ、これまで以上に同海域をコントロール下に置こうとしているとする年次報告を公表。」
同日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』の報道記事「中国、米国の中国軍事力に関わる年次報告を非難」:
「・陽報道官は、中国の主権を守り、安全保障を高めるために必要な防衛力整備を行っているもので、地域の平和と安定に寄与するものと主張。
・一方、米国防総省のデンマーク次官補代理(東アジア担当)は5月13日、中国は南シナ海含めて、ものすごいスピードで軍事力を高め、国際社会での影響力を強化していると表明。
・更に同氏は、中国の2015年軍事費は、公式発表の1,440億ドル(約15兆7,000億円)ではなく、実際は1,800億ドル(約19兆6,200億円)に達しており、全く不透明と批評。
・また、中国による南シナ海の埋め立て工事はこの2年間で1,300ヘクタール(13平方キロメーター、編注;東京ドーム278個分の広さ)に及び、年内には通信・監視システムを導入し、同海域を力で制圧しようとしているとも非難。」
同日付英
『メール・オンライン(デイリィ・メール電子版)』(
『ロイター通信』記事引用)の報道記事「中国、米国防総省の中国軍に関する年次報告は信頼を失墜させるものと猛反発」:
「・陽報道官は、米国防総省の年次報告で、中国軍事力の脅威だとか、軍事費の不透明さ等と誇大表示し、更には、中国の東・南シナ海の主権内での海洋活動を悪戯に非難しており、全く容認できないし断固反対すると強調。
・同報道官は、米国こそ、航行の自由作戦と称してしばしば戦闘機や軍艦を送り、南シナ海における覇権を狙っていると非難。」
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』オンラインニュース(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「中国、米側の中国軍事力に関わる報告に強い不満を表明」:
「・陽報道官は、中国は世界の平和と安定のために、様々な活動や災難救助などに努めてきているのに、米国は全く評価しようとしないと批評。
・更に、今回発表の年次報告でも悪戯に中国を貶めようとしており、両国間の信頼関係を損なわせるばかりとも非難。」
一方、5月13日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「アラブ諸国、中国の南シナ海における海洋活動を支持」:
「・アラブ連盟(注後記)のナビール・エルー=アラビー事務局長は5月13日、アラブ諸国は中国の主権擁護のための南シナ海における海洋活動を支持すると表明。
・これは、第7回中国・アラブ諸国協力会議に出席していた中国の王(ワン)外交部長との会談後に同事務局長が出した声明。
・また、アラブ諸国の外相も、南シナ海における領有権問題を関係国間の直接対話で解決するとの中国の方針を支持すると表明。」
(注)アラブ連盟:アラブ世界の政治的な地域協力機構。第二次世界大戦末期の1945年3月22日創設。本部はカイロ。加盟は22(21カ国と1機構)。
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米・英・ロシア・韓国・中国メディア;米大統領の広島訪問の評価(2)(2016/05/12)
5月11日付
Globali「米大統領の広島訪問の評価」で、オバマ氏が現職の米大統領として初めて広島を訪問することになったと報じた。ホワイトハウスが予め、オバマ氏訪問が日本に対する謝罪の目的とはせず、核なき世界をアピールするという立場で臨むと寝回していたためか、米国内で大きな批評は出ていない。一方、中国や韓国では、予想どおり、日本が侵略戦争の加害者から被害者へのイメージ転換に使われかねないとの懸念の声が上がっている。
5月12日付米
『NYSEポスト』オンラインニュースの報道記事「日本側、オバマ氏の謝罪の言葉はなくとも広島訪問を歓迎」:
「・広島市の松井一實市長は、オバマ大統領の広島訪問について、偉大な決断であり、核兵器廃絶に向けて歴史的な前進となると歓迎の意を表明。
・ホワイトハウスの安全保障担当のベン・ロウズ副顧問は、大統領が原爆投下の決定ついて評価や謝罪等に言及することはなく、あくまで犠牲者の慰霊と核なき世界創出をアピールするものとコメント。...
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5月12日付米
『NYSEポスト』オンラインニュースの報道記事「日本側、オバマ氏の謝罪の言葉はなくとも広島訪問を歓迎」:
「・広島市の松井一實市長は、オバマ大統領の広島訪問について、偉大な決断であり、核兵器廃絶に向けて歴史的な前進となると歓迎の意を表明。
・ホワイトハウスの安全保障担当のベン・ロウズ副顧問は、大統領が原爆投下の決定ついて評価や謝罪等に言及することはなく、あくまで犠牲者の慰霊と核なき世界創出をアピールするものとコメント。
・しかし、安倍首相や広島市民は、オバマ氏の謝罪の言葉はなくとも広島訪問を歓迎。
・なお、米国内には、安倍首相も真珠湾を慰霊訪問すべきとの声。」
5月10日付英
『ザ・ガーディアン』紙の報道記事「ホワイトハウス、オバマ氏の広島訪問は謝罪目的ではないと言明」:
「・ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は記者会見で、大統領の広島訪問を謝罪目的と解釈するのは誤りと言明。
・ただ同報道官は、大統領は原爆投下について、世界で唯一原爆を使用した国として責任を負っていると感じているし、だからこそ核なき世界創出のため率先して行動する必要があると考えているともコメント。
・一方で、原爆投下を契機に、第二次世界大戦を終結させ、結果として米国のみならず世界の国々の多くの命を救ったということも強調。」
5月11日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「広島の被災者、
オバマ氏に原爆の悲惨さの理解を望む」:
「・原爆の被災者は、オバマ大統領に原爆による悲惨な事態を知ってもらうことが大切で、謝罪の言葉より、平和記念公園の慰霊碑の前で哀悼の意を示すことが、核兵器廃絶の一歩となるとコメント。」
同日付韓国
『ザ・コリア・ヘラルド』紙の報道記事「韓国政府、オバマ氏の広島訪問を理
解」:
「・韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長(外相に相当)は5月11日、オバマ大統領の広島訪問について、原爆投下の謝罪と解釈されるおそれがあるものの、訪問の意義を了解すると表明。
・韓国は以前から、1910~1945年の間日本による植民地とされていた歴史があることから、日本が(原爆による被害等を訴えることで)第二次大戦当時の侵略の歴史を洗い流そうとしていると非難。」
5月12日付中国
『人民日報』の報道記事「日本政府、オバマ氏の広島訪問を拡大解釈」:
「・これまでどの国も、オバマ大統領がアピールした核なき世界という理念に真摯に応えておらず、また、同大統領が主導する“核安保サミット(NSS)”会議においても何ら進展なし。
・更に、同大統領の任期切れが近づいたこともあって、NSS開催も消滅。
・しかしながら、日本側は同大統領の広島訪問を拡大解釈し、特に右翼政治家は、原爆の犠牲を前面に出すことで、侵略戦争の歴史自体を洗い流そうと画策。
・同大統領の広島訪問は、ホワイトハウスの公式発表どおり、原爆犠牲者の慰霊と核なき世界創出のアピールのみが目的であるのに、安倍首相はそれだけでは留めない考え。」
なお、ホワイトハウスのその後の発表によると、広島訪問時、オバマ大統領は多くの聴衆
を集めての大々的な演説は予定せず、ただ慰霊碑に献花する等静かな慰霊訪問になるとい
う。哀悼の意を公に表すだけでも、米国内では謝罪と受け止められる恐れがあることから
の措置で、但し、メモリアルデイ(注後記)に合せて、初の広島訪問を踏まえ、核軍縮や
強固な日米関係を構築した成果などを織り込んだ大統領所見を発表するとしている。
(注)メモリアルデイ:米国の連邦政府の定めた祝日で、5月の最終月曜日(今年は5月
30日)。戦没将兵記念日、戦没者追悼記念日などとも呼ばれる
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