袴田巌死刑囚の無罪判決に関わる海外メディアの報道(2024/09/27)
袴田巌死刑囚に対する無罪判決に関して、欧米メディアの多くが、日本の「死刑執行制度」及び「人質司法」と呼ばれる非人道的措置について批判的に報じている。
9月26日の静岡地裁による、袴田巌死刑囚の再審請求に基づく無罪判決について、多くの海外メディアが一斉に報じた。
●米『AP通信』:“戦後日本の刑事司法における再審で無罪となった5人目の死刑囚だ”とした上で、“日本における死刑廃止をめぐる議論を再燃させる可能性がある”と報道。なお、『ABCニュース』、フィリピン『マニラ・ブルティン』が引用報道。
●米『CNNニュース』:“元検事の市川寛弁護士(59歳、1993~2005年検事として勤務)は、歴史的に日本の検事は、裏付けとなる証拠を探す前に自白を得るように奨励されてきたと証言した”とした上で、“自白を重視することこそが、無罪判決によって担当検事の昇進等に悪影響を与える可能性があるという日本の検事評価制度の下、高い有罪率を維持できる理由だ、とも言及した”と報道。...
全部読む
9月26日の静岡地裁による、袴田巌死刑囚の再審請求に基づく無罪判決について、多くの海外メディアが一斉に報じた。
●米『AP通信』:“戦後日本の刑事司法における再審で無罪となった5人目の死刑囚だ”とした上で、“日本における死刑廃止をめぐる議論を再燃させる可能性がある”と報道。なお、『ABCニュース』、フィリピン『マニラ・ブルティン』が引用報道。
●米『CNNニュース』:“元検事の市川寛弁護士(59歳、1993~2005年検事として勤務)は、歴史的に日本の検事は、裏付けとなる証拠を探す前に自白を得るように奨励されてきたと証言した”とした上で、“自白を重視することこそが、無罪判決によって担当検事の昇進等に悪影響を与える可能性があるという日本の検事評価制度の下、高い有罪率を維持できる理由だ、とも言及した”と報道。
●フランス『AFP通信』:“国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(1978年設立)は、本無罪判決は日本における「人質司法」制度の無数の例の一つに過ぎないと批判し、何故なら、容疑者は長期にわたる恣意的な拘禁を通じて自白を強要されるばかりか、尋問中に脅迫もされている、と非難している”と報道。なお、英国『ザ・ガーディアン』が引用報道。
●欧米『ロイター通信』:“国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(1961年設立)は、今回の無罪判決によって死刑制度がもたらす取り返しのつかない損失が思い知らされるとして、日本政府に死刑廃止を強く訴えると表明した”と報道。
●英国『BBCニュース』:“日本は、米国と共に主要7ヵ国(G-7)の中で唯一死刑制度を採用している国であり、しかも、死刑囚は絞首刑の数時間前に通知され、家族や代理人弁護士等と最後の話も許されないという非人道的な措置が講じられている”と非難報道。
●カタール『アルジャジーラ』:“日本は、米国以外で死刑を維持している唯一の主要な先進民主主義国であり、この政策は広範な国民の支持を得ている”と報道。
なお、豪州『ABCニュース』・『キャンベラ・タイムズ』・『シドニー・モーニング・ヘラルド』、シンガポール『ストレイツ・タイムズ』、中国『新華社通信』・『環球時報』、韓国『聯合(ヨナプ)ニュース』・『KBSニュース』・『コリア・タイムズ』、マレーシア『マレー・メール』では、目下のところ報道されていない。
閉じる
英国メディア、刑務所内でも高齢化が進む日本の実情について報道(2024/09/16)
英国メディアが、少子高齢化に喘ぐ日本では、刑務所内でも高齢受刑者が増え、若い受刑者が介護資格を取って面倒を見ていると報じている。
9月14日付
『ザ・ガーディアン』紙は、日本最大の府中刑務所(注後記)を取材して、高齢化が進む実情について詳報している。
日本は主要国の中で、一番少子高齢化が進んでいて、今や総人口約1億2,500万人のうち65歳以上の高齢者が約3分の1を占める事態となっている。
そこで、本紙の東京特派員がこの程、日本最大の府中刑務所を取材したところ、同刑務所でも、全受刑者約1,700人のうち22%(約370人)が高齢受刑者で占められていて、刑務所内で介護資格を取った若い受刑者に面倒を見てもらっている実態が分かった。...
全部読む
9月14日付
『ザ・ガーディアン』紙は、日本最大の府中刑務所(注後記)を取材して、高齢化が進む実情について詳報している。
日本は主要国の中で、一番少子高齢化が進んでいて、今や総人口約1億2,500万人のうち65歳以上の高齢者が約3分の1を占める事態となっている。
そこで、本紙の東京特派員がこの程、日本最大の府中刑務所を取材したところ、同刑務所でも、全受刑者約1,700人のうち22%(約370人)が高齢受刑者で占められていて、刑務所内で介護資格を取った若い受刑者に面倒を見てもらっている実態が分かった。
所内視察の結果及び八代宏幸所長(2024年就任)から聴取した実情は以下のとおり;
・高齢受刑者のうちの何人かは、歩行や入浴が困難で支援が必要。
・(刑務官だけでは対応できないので)若い受刑者が介護職員実務者教育を受けて、適宜介護支援に当たってもらっているが、彼らにとっても釈放後の就職の助けになるとして所としても支援。
・また、高齢受刑者のうち70%以上(約260人)が、糖尿病・心臓病・慢性疾患・メンタルヘルス疾患を抱えており、所内での医療行為が必要。
・受刑者は月に2回、模範囚であれば最大5回、家族や法定代理人と面会できるが、高齢受刑者の多くは面会する家族等もおらず、従って、刑期満了後に社会復帰するのは現実的に困難。
・なお、外国人受刑者は約370人いて、英語や中国語のラジオ放送を聴取可能。
一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(1978年前身設立)は、“日本の刑務所の規制は、社会的孤立を悪化させ、受刑者に心理的な害を及ぼすリスクがある方法で厳格に施行されている”と非難している。
しかし、この声明に言及した本紙特派員の質問に対して、所内視察ツアーにアテンドした櫛引雄一郎部長は、“秩序を維持するためには、安全と個人の自由との間でバランスさせる必要がある”とした上で、“当刑務所がうまくいっているのは、受刑者の間にヒエラルキー(ピラミッド型階級組織構造)がなく、誰もが同じように扱われているからだ”と強調している。
(注)府中刑務所:1790年前身、1935年現行施設が開設された日本最大の刑務所。再犯者・外国人受刑者・精神障碍者・身体障碍者を収容。
閉じる
その他の最新記事