米・英・ロシア・韓国・中国メディア;北朝鮮をめぐる動き(2016/06/02)
北朝鮮が5月31日に、ムスダン(注後記)とみられる飛翔体を発射したことから、米国が更なる制裁措置を取ることを決め、また国連安全保障理事会も共同非難声明を発表した。一方、北朝鮮は中国に高官を送り、習近平(シー・チンピン)主席との会談に漕ぎ着け、中国から見放されないように立ち回っている。
6月1日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用)の報道記事「米国、北朝鮮の資金洗浄行為を阻止」:
「・米財務省は6月1日、北朝鮮が国際金融機関経由資金洗浄を画策し、その資金を核兵器開発に充当する行為を阻止するため、当該金融機関が北朝鮮のために米銀行と取引することを新たに制限する措置を講ずると発表。
・この措置によって、北朝鮮と取引した国際金融機関は米市場での金融取引から締め出される恐れ。...
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6月1日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用)の報道記事「米国、北朝鮮の資金洗浄行為を阻止」:
「・米財務省は6月1日、北朝鮮が国際金融機関経由資金洗浄を画策し、その資金を核兵器開発に充当する行為を阻止するため、当該金融機関が北朝鮮のために米銀行と取引することを新たに制限する措置を講ずると発表。
・この措置によって、北朝鮮と取引した国際金融機関は米市場での金融取引から締め出される恐れ。
・米政府は、他国にも同様の措置を呼びかけ。
・しかし中国は、北朝鮮が5月31日に再び弾道ミサイルを発射した翌日に、同国高官を北京で厚遇。」
6月2日付米
『CNBCニュース』の報道「米財務省、北朝鮮と取引のある金融機関に更な
る圧力」:
「・米銀は既に北朝鮮との取引が禁じられているが、今回の追加措置で、米銀と取引のある国際金融機関も北朝鮮との金融取引が制限。
・対象は主に中国内の金融機関との見方。
・近々、米中の高官が出席しての米中戦略・経済対話が北京で開催予定(注;6月6~7日)だが、北朝鮮問題も主要議題のひとつ。」
同日付英
『BBCニュース』の報道「中国、北朝鮮高官訪問を厚遇」:
「・習主席は6月1日、北朝鮮の李洙墉(リー・スヨン)朝鮮労働党副委員長と会談した際、中朝間の“友好”関係の重要性を強調。
・李副委員長は、核開発は止めないとする金正恩(キム・ジョンウン)委員長のメッセージを伝達。
・中国国営
『新華社通信』は、金委員長のメッセージに対しての習主席のコメントにつき報じていないが、中国は依然朝鮮半島の非核化実現のため、対話継続が必要との立場だとのみ報道。」
同日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「国連安保理、北朝鮮
の再度のミサイル発射行為に対して非難声明」:
「・国連安保理は6月1日、北朝鮮が行った4月27、28日、5月31日のミサイル発射実験について、厳しく非難する声明を全会一致で採択。」
同日付韓国
『KBSニュース』の報道「韓国政府、米政府の対北朝鮮に関わる追加制裁措置
を歓迎」:
「・韓国外交部の趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)報道官は6月2日の定例記者会見で、米政府が発表した対北朝鮮金融取引制裁によって、北朝鮮と金融取引のある諸外国の金融機関が、北朝鮮の核開発に充てられるとみられる資金提供に応じなくなる効果があるとして、同措置を歓迎すると表明。」
同日付中国
『人民日報』の報道記事「朝鮮半島の安定には中朝の友好関係が重要」:
「・北朝鮮の李副委員長と会談した習主席は、中朝の伝統的な友好関係を継続する意思を表明したが、同時に、北朝鮮が標榜する経済と核開発の並行政策について、中国の従来方針(朝鮮半島の非核化を求める姿勢)を明確に伝達。
・米韓は一貫して中国に北朝鮮への制裁強化、もしくは北朝鮮の核廃棄の説得工作を要求しているが、一方で、中国にも脅威となる終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備を検討しており、非常に不誠実。
・対北朝鮮外交をうまく進めることを求めるなら、中国が努力している対話路線を尊重すべき。」
(注)ムスダン:北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイルで、有効射程距離は3,200~4,000キロメーター。2016年4月15日の故金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日“太陽節”の日に、ムスダンの初発射実験を行ったが失敗。
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ロシア・トルコメディア;シルクロードをめぐるロシア、中国の戦略の進捗状況は如何に?(1)(2016/05/30)
先週報告どおり、主要7ヵ国・地域首脳会議(G7サミット)において、一部に意見の食い違いはあったものの、総論として世界経済対策に一致して当っていくことが合意された。この先進国サミットに呼ばれていない、新興国代表のロシア、中国も、それぞれ「ユーラシア経済連合(EAEU、注1後記)」及び「一帯一路(B&R、注2後記)」政策を掲げて、G7サミット参加国以外の国々との経済圏確立に奔走しているが、世界経済が米国を除いて景気後退の最中にある状況下、中々容易ではない模様である。
5月28日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「対ロシア圧力激化:これがロシアのASEAN諸国との連携強化の背景」:
「・西欧は対ロシア経済制裁を継続しているため、ロシアとしては東方へ舵を切り、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携強化策を追及。
・5月19~20日、ロシア主導でソチにおいて“ロシア・ASEANサミット”を開催。
・1996年7月開始のロシア・ASEANパートナーシップ20周年を記念するもので、同サミット及び個別会談でプーチン大統領は、貿易取引、エネルギー及び武器供給、宇宙開発技術、観光業について積極的に協議。...
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5月28日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「対ロシア圧力激化:これがロシアのASEAN諸国との連携強化の背景」:
「・西欧は対ロシア経済制裁を継続しているため、ロシアとしては東方へ舵を切り、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携強化策を追及。
・5月19~20日、ロシア主導でソチにおいて“ロシア・ASEANサミット”を開催。
・1996年7月開始のロシア・ASEANパートナーシップ20周年を記念するもので、同サミット及び個別会談でプーチン大統領は、貿易取引、エネルギー及び武器供給、宇宙開発技術、観光業について積極的に協議。
・ロシアとASEAN間の貿易高は2015年も低調(2013年5億4千万ドルが2014年に僅か3千万ドルに激減)だが、ASEAN側としては、ロシア主導で進められているEAEUとの連携を模索。
・なお、EAEUは既に2015年5月、ベトナムと自由貿易協定を締結し、また、シンガポールとも同様の協定締結に向けて交渉中。」
5月27日付ロシア
『ロシア・ビヨンド・ザ・ヘッドラインズ』多言語ニュースの報道記事「ロジスティクス問題と相互不信がユーラシア大陸へのシルクロード政策の妨げ」:
「・2015年5月、プーチン大統領と習近平(シー・チンピン)主席は、EAEUとB&R構想のうちの“シルクロード経済ベルト(SREB)”を連携させることで合意。
・当初、欧州連合(EU)からの経済制裁に喘ぐロシアは中国の資金力に期待し、また、中国はEAEU主導国のロシアとの提携がSREB構想実現に資すると判断。
・しかし合意後1年経った現在、新敷設鉄道ルートの経済性及び中ロ間の不信感のために停滞。
・例えば、中国は新敷設鉄道を欧州までノン・ストップで走らせたいが、ロシアやカザフスタンはEAEU内で貨物の荷揚げ・荷卸しを要求しているため、その鉄道ルートの絞込みで未だ不合意。
・また、ロシアは中央アジアに影響力を留めるため安全保障面での関心が高くEAEU一体として交渉する立場を取っているが、中国のSREBは究極的に中央アジアを中国資本傘下に収める構想であるためか、EAEU内各国との個別交渉を強く主張しており、これが相互不信を増長。」
一方、5月26日付トルコ
『トルコ・ウィークリィ』誌の報道記事「B&R政策はシルクロー
ド沿い諸国に新たな機会」:
「・5月25~26日にアスタナ(カザフスタン)で開催された“アスタナ経済フォーラム(AEF、注3後記)”において、カザフスタン、シンガポール、エストニア、ラトビア、タジキスタン高官は異口同音に、B&R政策はシルクロード沿いの諸国にとって、提携強化・共同開発を遂行するまたとない機会だと演説。
・カザフスタンのザシリコフ経済副大臣は、B&RとEEAUの連携によって、シルクロード沿いの経済開発が発展することに期待すると発言。」
(注1)EAEU:2014年5月にカザフスタンのアスタナで創設条約を調印、ユーラシア経済共同体(2000年10月組成)を発展的解消して2015年1月に発足した国際経済同盟。加盟国は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス。総人口1億7千万人、国内総生産(GDP)合計額は4兆ドル(約440兆円)と日本の次だが、EU比較ではその4分の1に過ぎない。
(注2)B&R:2014年11月に中国で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習主席が提唱した経済圏構想。中国西部から中央アジアを経由して欧州につながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進しようとするもの。
(注3)AEF:ユーラシア経済科学協会とカザフスタン政府によって2008年に設立された国際的な地域組織。本部はアスタナで、毎年100ヵ国余りからの参加者を集めて年次総会開催。
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