ドナルド・トランプ氏は、大統領選の最中はもとより当選後においても、一部米メディアと激しく対立してきた。そして、米大統領就任後においても、1月20日の就任式の聴衆が実際より少なくテレビ放映されたとして、メディアは嘘つきだと非難した。一方、同就任式でのトランプ新大統領の演説に対して、各国が様々な反応をみせている。
1月21日付米
『AP通信』:「トランプ氏の“米国第一主義”の演説に各国が反応」
「●ドナルド・トランプ新大統領は1月20日、大統領就任演説で“米国第一主義”を約束したが、一方で世界における米国の立ち位置については何ら言及せず。
●同新大統領の演説に対する各国反応は以下のとおり。
●日本
・日本商工会議所の三村明夫会頭は、(トランプ氏のいう)環太平洋経済連携協定(TPP)
からの脱退や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉は、日本含めた世界経済に悪影
響を与えるとコメント。
・トランプ氏に祝電を送った安倍晋三首相は、21世紀の世界経済成長にアジア太平洋地域が重要であること、また、同地域における安全保障問題がより厳しくなっていることにつき米新政権とよく協議したいと発言。
●中国
・国営メディア
『環球時報』は1月21日社説で、今後米中間の貿易摩擦が起きるのは避けられないこと、また、“米国第一主義”実践のため、中国にある米企業の生産拠点を米国に戻す交渉を有利に進めようとして、トランプ政権は台湾問題を交渉材料として中国に圧力をかける意向と分析。
●台湾
・蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、トランプ氏の就任を祝い、米国と台湾を結びつけるのは民主主義だとし、両者の友好関係が強化されることを期待するとツイート。
●韓国
・
『中央日報(ヨンクヮン・デイリィ)』は社説で、トランプ政権は韓国に対して、米軍駐留費用をもっと負担するよう要求してこようし、米韓自由貿易協定(編注;2007年6月署名、2012年3月発効)の再交渉を求めてこようと指摘する一方、トランプ氏が対北朝鮮強硬派であることは“幸い”だと報道。
●インド
・米国への留学や現地で就業しているインド人にとって、今後米国移住が難しくなるのではと懸念。
・
『インディアン・エクスプレス』紙などは、トランプ大統領の演説内で言及した“米国第一主義”や保護主義などを大々的に報道。」
同日付米
『Foxニュース』(
『CNNニュース』配信):「ドナルド・トランプ氏就任演説に各国が反応」
「●ベルギー
・トランプ氏の女性蔑視発言等に抗議する“女性の行進”が、ノルウェーやスペインからの参加者も集めて首都ブリュッセルで展開。
●キューバ
・国営メディア
『グランマ』は、いつもの記事を掲載しただけで、トランプ氏就任については何ら報道なし。
・キューバ高官は、トランプ氏が選挙戦中から、オバマ前大統領のキューバ政策を批判してきたため、具体的対応がどうなるのか見守らざるを得ず、従って目下はトランプ氏を批判することは避けているとコメント。
●中国
・外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は1月20日、米中両国の建設的な関係構築が必要不可欠で、新政権には、不対立・不衝突・相互尊重の原則を踏襲することを望むとコメント。
●インド
・ナレンドラ・モディ首相他閣僚が、トランプ氏の就任を祝福し、米・インド両国の友好関係発展に期待するとツイート。
●イラン
・トランプ氏が選挙戦中、イラン核合意は最悪だと批判し、再交渉すると発言していたため、イランではトランプ氏の評判は悪い。
・イラン政府は、同合意破棄など全く受け入れられないとし、ハッサン・ロウハニ大統領は、たった一人によって当該合意が破棄されたり修正されたりすることはないと強調。
●イスラエル
・トランプ氏就任以前から、ベンジャミン・ネタニヤフ首相は、トランプ氏の就任を祝福し、米・イスラエル同盟関係をこれまで以上に盤石にしていきたいとツイート。
●日本
・在日米国人を中心に東京他で反トランプ抗議行動。
・一方、安倍首相は、就任を祝福するとともに、昨年11月時の協議を踏まえて、アジア太平洋地域の平和と安定に向けて協力していきたい旨記した書簡を送付。
●メキシコ
・エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領は、トランプ氏就任演説の2時間後にすぐさま、就任を祝福し、両国間の関係強化を望むとツイート。
・しかし、ヴィセンテ・フォックス元大統領は、トランプ氏がメキシコ国境にメキシコ負担で壁を造るとの発言に強く反発しており、“米国第一主義”とのトランプ氏演説にも、すでに米国は偉大でかつ成功した国だと皮肉のツイート。
●パレスチナ
・1月19日、数千人のパレスチナ人がヨルダン川西岸地区において、米大使館のエルサレム(イスラエル側)移転の話に反対するとしてデモ行進。
●フィリピン
・トランプ氏就任前の1月20日、200人程がマニラ市街で反トランプと叫んでデモ行
進。
●韓国
・黄教安(ファン・ギョアン)首相兼大統領代行は、トランプ氏就任式前に祝福のメッセージを送付の上、米韓同盟関係の重要さを強調し、北朝鮮の核の脅威に協力して当ることを要請。
・一方、
『聯合(ヨナプ)ニュース』は、トランプ氏の演説が米国の海外関係国への安全保障に対して、“全く否定的”だと非難。
●英国
・トランプ氏の就任式に合せて、ボリス・ジョンソン外相が就任を祝福し、強固な米英同盟関係継続に期待するとツイート。
・一方、ロンドン他各地で反トランプ派による抗議のデモ行進。
●バチカン市国
・フランシスコ教皇は1月20日、就任を祝うとともに、神のご加護によって、米大統領として、米国はもとより世界中の人権擁護等に努めるよう祈念するとのメッセージを送付。」
一方、1月22日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『新華社通信』配信):「トランプ氏の大統領就任後の初日は、米情報局訪問、メディア批判、抗議デモ」
「●トランプ新大統領は公務初日の1月21日、米中央情報局(CIA)との確執を否定し、大規模抗議行動を無視し、そして、就任式の聴衆を実際より少なく報道したとメディアを攻撃。
●米メディアの一部が、1月20日の就任式の聴衆は、オバマ大統領の2009年就任時(編注;約200万人)のおおよそ3分の1と報道。
●これに対してトランプ氏は、自身が演説中にみたところでは、100万人、いや150万人はいたと思われるのに、一部テレビがわざと人のまばらな場所の映像を流して陥れたと非難。
●ショーン・スパイサー大統領府報道官は1月21日、初の記者会見で、就任式に関わり、メディアの偏った報道姿勢について非難するコメントをしたが、記者からの質問は受け付けず。
●なお、トランプ新大統領及びスパイサー報道官とも、米国内外で起こった大規模抗議デモにはコメントせず。」
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インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁は6月18日に、3年の任期が到来する9月で退任し研究者の世界に戻ると発表した。インド準備銀行の総裁はこれまで例外なく2期目まで勤めて来ており、ラジャン総裁も再任されるとみられていたので、退任の発表は驚きをもって迎えられた。ラジャン総裁はシカゴ大学教授から国際通貨基金(IMF)の調査局長に転じ、その間2008年の世界金融危機を予言したことで知られる。2013年にインドの当時の政権に任命されて準備銀行総裁に就任してからは、高金利政策により二ケタのインフレを終息させ、また通貨ルピーの安定化を実現したが、その後現モディ政権の経済成長政策に合せて金利を引き下げ7%台の成長路線に乗せており、特に海外の市場関係者からは絶大な信頼を得ていた。
退任の発表は海外では失望を生んでいるが、インド国内に目を転じてみると退任を当然視する声も多いことがわかる。ヒンズー教至上主義寄りの現モディ政権からみるとラジャン総裁の金融政策はタカ派過ぎて、本来ならもっと金利を下げて景気をよくすべきであると批判が強い。ここまではどこの国にもある中央銀行と政府の間の対立であるが、ヒンズー至上主義を掲げる与党インド人民党首脳は何事も欧米的合理主義を貫く同総裁は西洋かぶれでインドには向いていないと批判する。更に同総裁は金融以外のことにも歯に衣を着せずに発言したようで、「(インドについて)盲人の国では、片目でも王さまになれる」という発言などは盲人への差別発言に止まらず現政権批判と取られても仕方のないものであった。現代においてどこの国でも中央銀行の総裁は最も難しい仕事であることは間違いないが、次のインド準備銀行総裁の下インド経済が高インフレ、ルピー安に後戻りしないことを望むのみである。