今週、インド議会で制定された新市民権法では、国内に2億人いるとされるイスラム教徒が除外されている。そこでイスラム系団体や野党、権利団体らは、ヒンズー至上主義を掲げるナレンドラ・モディ首相によるイスラム教徒弾圧だとして、各地で抗議デモを起こしている。来週訪印を予定していた安倍晋三首相も、モディ首相と会談する都市でもデモ隊と治安当局との衝突が激化したことから、訪問日程を延期せざるを得なくなっている。
12月13日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「インドで制定された新市民権法への抗議デモが首都ニューデリーでも勃発」
インドの首都ニューデリーで12月13日、インド下院で今週初めに可決された新市民権法に抗議する数百人の学生らが過激な抗議デモを繰り広げた。
学生らは、同法がイスラム教徒を排除するものだとして、モディ政権の政策に真っ向から反対している。
治安当局が催涙ガスを発射したり、警棒でデモ隊を取り締ろうとするのに対して、学生らは投石で対抗した。...
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12月13日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「インドで制定された新市民権法への抗議デモが首都ニューデリーでも勃発」
インドの首都ニューデリーで12月13日、インド下院で今週初めに可決された新市民権法に抗議する数百人の学生らが過激な抗議デモを繰り広げた。
学生らは、同法がイスラム教徒を排除するものだとして、モディ政権の政策に真っ向から反対している。
治安当局が催涙ガスを発射したり、警棒でデモ隊を取り締ろうとするのに対して、学生らは投石で対抗した。
今週初めにインド下院で可決された同法案は12月11日、与党連合が過半数を占める上院でも可決され成立した。
そこで、12月11日からインド各地で同法に抗議するデモが発生している。
北東部のグワーハーティ(アッサム州)では12月13日、1万人近い人が抗議のハンストに入った。
同市では前日、公安当局の発砲によって2人が犠牲になっていた。
そこで、12月15日からインドを訪問する予定であった安倍晋三首相は、アッサム州及び北東端のマニプル州においてナレンドラ・モディ首相と首脳会談を持つことになっていたが、抗議デモの拡大を受けて12月13日、急きょ訪印を延期している。
今回成立の新市民権法では、イスラム教徒が多数を占めるアフガニスタン、バングラデシュ、パキスタンでの迫害から逃れてきたヒンズー教徒、シーク教徒、仏教徒、シャイナ教徒、ゾロアスター教徒などに対して、インド市民権を与えるとするものだが、イスラム教徒は除外されている。
ただ、アッサム州の住民の多くは、同法によって隣国のバングラデシュ等から違法入国したヒンズー系移民数千人が、不当に市民権を得ることになりかねないと懸念を表明している。
一方、同法の適用から除外されたイスラム系団体や学識者らが、同法が、全ての宗教の信者を平等に扱うことを定めたインド憲法に違反するとして最高裁に提訴した。
12月14日付インド『インディアン・エクスプレス』紙:「アッサム州、安倍首相訪問受け入れ準備をしていたが訪問延期に」
12月15日から3日間の訪印を予定していた安倍首相は12月13日、訪問48時間前に急きょ訪問を延期した。
これは、新たに制定されたインド市民権法に対する抗議デモが、訪問予定のアッサム州等で拡大していることから、モディ首相との首脳会談を開催することが“適切ではない”と判断したものとみられる。
インド外務省のラビーシュ・クマール報道官は、両首脳の都合の付く次の機会まで延期することで双方合意したと発表した。
安倍首相の訪問詳細日程は明かされていなかったが、モディ首相との首脳会談が持たれるとされたアッサム州グワーハーティでは、着々と準備が進められていたが、同市での抗議デモの過激化が懸念されたとみられる。
なお、同市が首脳会談の場所として選ばれたのは、インドの“アクト・イースト政策(編注;2014年にモディ首相が提唱した、東南アジア諸国や日本との連携強化方針)”に基づいて進められている具体例を示す適地であるためとされた。
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インド政府は3日、偽ニュースを報じた記者の記者証を一時失効させるという方針を撤回することを明らかにした。同方針は、前日の2日に発表されたばかりだったが、報道統制を図るものだという地元メディアなどの政府を批判する声を受けて、僅か1日でこれを撤回した。
インドでは、「報道情報局(PIB)」が発給した記者証のカードを持っていれば、政府省庁への出入りや取材が許されており、主要メディアに属する約2,000人の記者が記者証を与えられている。記者証がないと省庁による記者会見やイベントに出席できないなど、取材活動が制限されてしまうが、同国政府は2日遅く、偽ニュースを繰り返し伝えた新聞社やテレビ局などの記者らについては、記者証を失効させる方針を表明した。
2日に発表された「偽ニュースを規制するために改定された記者の認定ガイドライン」と題するPIBの記者発表によると、報道が虚偽と判定されれば、最初の違反については6カ月、2回目の違反で1年、3回目では永久に記者証の発給を停止するとされていた。...
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インドでは、「報道情報局(PIB)」が発給した記者証のカードを持っていれば、政府省庁への出入りや取材が許されており、主要メディアに属する約2,000人の記者が記者証を与えられている。記者証がないと省庁による記者会見やイベントに出席できないなど、取材活動が制限されてしまうが、同国政府は2日遅く、偽ニュースを繰り返し伝えた新聞社やテレビ局などの記者らについては、記者証を失効させる方針を表明した。
2日に発表された「偽ニュースを規制するために改定された記者の認定ガイドライン」と題するPIBの記者発表によると、報道が虚偽と判定されれば、最初の違反については6カ月、2回目の違反で1年、3回目では永久に記者証の発給を停止するとされていた。
政府は来年に総選挙を控え、メディアにより誤った情報が拡散するのを抑制する必要があると述べ、虚偽の情報か否かを判断するのは政府機関ではなく、新聞社と放送局の記者らで構成する2つの協会であると説明した。しかし、メディアが報道を封じられると猛反発したことを受けて、インドの情報放送省は翌日3日の声明で、同方針の撤回を発表した。
インディアン・エクスプレス紙は3日の1面で、「偽ニュースの名前を借りて、政府は記者たちをブラックリストに載せるルールを作成した。」と批判している。インド記者クラブのガウタム・ラヒリ会長は、「これは報道の自由への攻撃だ。純粋な記者らに対し悪用される可能性がある。」と懸念を示した。その他の記者や活動家らも、偽ニュースの問題点を認めた上で、言論統制に繋がるとして、政府の介入を強く非難した。
インドは「世界最大の民主国家」を自称するが、現実的にはメディアは厳しい制限の下で報道を続けているという。「国境なき記者団」による最新の「報道の自由ランキング」で、インドは180の国と地域中136位で、前年より3つ順位を落とした。先週、3人の記者がインドの2州で車にはねられて死亡する事故が発生しているが、遺族や仲間の記者らは、汚職事件を報道したために殺されたと主張している。
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