インド人プロボクサー、中印間緊張緩和を願って敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルト返上を申し出【米・英・ロシア・インド・中国メディア】(2017/08/08)
8月1日付Globali「習主席、中国固有の領土・領有権は“1ミリたりとも”譲らないと決意表明」で触れたとおり、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、今秋開かれる「中国共産党第19回党大会」を控え、国内における統率力の基礎固めを意図して、強い決意表明を行った。同指導部の意思の固さを反映してか、長い間国境問題を抱えているインドのヒマラヤ地方で6月に発生したインド軍との睨み合いは、これまでになく一歩も引かない状況である。そしてこの程、中印間の緊張を苦々しく思っていたインド人プロボクサーが、ダブル・タイトル戦において僅差の判定で破った中国人ボクサーに対して、両国間の平和を願って、二つのうちひとつのベルトを返上したいとの申し出を行った。海外メディアが挙って称賛している。
8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。...
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8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。
結果、僅差の判定でシン選手の勝利となり、二つのタイトル保持者となった。しかし、6月末からインドのヒマラヤ地方で両国間の睨み合いが続いていることから、“平和を望むメッセージ”として、これまでマイマイティアリ選手が保持していた東洋スーパー・ミドル級のチャンピオンベルトを返上したいと申し出た。
中印間では、1962年に起こった国境紛争以来、中印国境2,174マイル(約3,480キロメーター)の主だったところで緊張状態が続いている。そして中国は、インドの好敵手のパキスタンと同盟強化した上で、武器も供給していることから、中印間国境問題は益々混沌としてきている。
同日付英『ザ・テレグラフ』紙:「インド人プロボクサー、平和の象徴として、中国人ボクサーから奪取したWBOチャンピオンベルト返上を提案」
ムンバイ(インド)で行われたダブル・タイトル戦で勝利した後、元北京オリンピック銅メダリストのシン選手は、“中印友好の印”として、WBO東洋スーパー・ミドル級チャンピオンベルトをマイマイティアル選手に返したいと申し出た。
インドのヒマラヤ山麓のドクラム(インド北東部のシッキム州の東、北は中国、西はネパール、東はブータンに挟まれた地域)におけるインド・中国両軍の睨み合いは、ほぼ2ヵ月が経過する。そもそも、中国軍が国境付近の道路の拡幅工事を一方的に進めたもので、インド側は、安全保障が脅かされるとして一歩も引かない構えである。
シン選手の申し出に多くのメディアが称賛したが、インド国粋主義者はこれを支持せず、ヨガのババ・ランデヴ尊師は、ボクシングのタイトル戦だけでなく、ドクラムの攻防でもインドが勝利することになるとツイートしている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「インド人プロボクサー、敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルトを返すと申し出」
8月5日にムンバイのナショナル・スポーツ・クラブで行われたタイトル戦は、3人の審判の判定が、96:93、95:94、95:94と非常に僅差の勝負であった。
なお、『インディアン・エクスプレス』紙によると、シン選手の申し出は、WBO本部に判断が委ねられることになり、どうなるか明らかではないという。
8月7日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「ヴィジェンダー選手にとっては国境での緊張緩和が重要」
ヴィジェンダー・シン選手にとって、WBOアジア太平洋スーパー・ミドル級及び同東洋スーパー・ミドル級二つのタイトルを獲得したことより、ヒマラヤ山麓国境付近で揉めている中印間の緊張が緩和することの方が重要だとする。
なお、両選手はお互いのファイトを称え合い、両者の間にはわだかまりも何もない。
8月6日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「ヴィジェンダー・シン選手、中印緊張緩和のため“アジア激戦区”の勝利を捧げると表明」
ヴィジェンダー・シン選手は、2016年7月からWBOアジア太平洋スーパー・ミドル級王者となっている。キャリアは30ラウンド(デビューは2015年6月)で、これまでのタイトル戦は9戦全勝。一方、マイマイティアル選手は24ラウンド(同2015年4月)で、キャリアではシン選手が一歩先んじていた。
(注)WBO:プロボクシングの世界王座認定団体の一つ。世界ボクシング協会(WBA、1962年設立、本部はパナマ)から分裂して1988年に設立された。本部はプエルトリコのサンフアン。その他、世界ボクシング評議会(WBC、1963年設立、本部はメキシコシティ)、国際ボクシング連盟(IBF、1983年設立、本部はニュージャージー州スプリングフィールド)がある。
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南シナ海問題、フィリピンに代わってベトナムが米国連携強化、また、インドも米国寄りの対応<米・英・ロシア・インドメディア>(2017/06/01)
先月末既報どおり、フィリピン大統領が常設仲裁裁判所(PCA)裁定に則って南シナ海領海内での石油探査活動を匂わせたところ、中国首脳より戦争になると脅されて、おとなしくなっている。そうした中、ベトナム首脳が訪米の上、貿易のみならず国防面でも米国支援を仰ぎ、米国との連携強化方針を示せば、インドは、中国によるパキスタン・スリランカ連携による包囲網を懸念し、南シナ海問題について、中国よりも米国寄りの対応に出てきている。
5月31日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「トランプ大統領、ベトナムのフック首相訪米を歓迎して両国間貿易協定締結」
トランプ大統領は5月31日、ベトナムのグエン・スアン・フック首相をホワイトハウスに迎えて会談し、両国間の貿易協定の締結と、中国の海洋活動牽制のための沿岸警備艇供与について協議した。
会談後の共同声明によると、ゼネラル・エレクトリック社などの先端技術製品を含めた80億ドル(約8,900億円)余りの貿易協定に合意したという。...
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5月31日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「トランプ大統領、ベトナムのフック首相訪米を歓迎して両国間貿易協定締結」
トランプ大統領は5月31日、ベトナムのグエン・スアン・フック首相をホワイトハウスに迎えて会談し、両国間の貿易協定の締結と、中国の海洋活動牽制のための沿岸警備艇供与について協議した。
会談後の共同声明によると、ゼネラル・エレクトリック社などの先端技術製品を含めた80億ドル(約8,900億円)余りの貿易協定に合意したという。フック首相訪米前、トランプ政権は、米国にとってベトナムとの貿易で320億ドル(約3兆5,500億円)の入超となっていることを懸念していた。
なお、トランプ大統領は、北朝鮮問題解決を優先するために親中国政策に舵を切ったと言われているが、南シナ海において中国の海洋進出に対抗しているベトナムに対して、中古の沿岸警備艇1隻、及び小型の巡視船6隻を供与している。
一方、フック首相は首脳会談において、追加の沿岸警備艇の供与要請と、近い将来に米軍空母をベトナムに寄港させる話につき協議したことを明らかにした。
6月1日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「ベトナム首相、アジアにおける米国の海洋防衛強化方針を歓迎」
訪米中のベトナムのフック首相は5月31日、米国及びその他関係国の、アジアにおける海洋上の安全保障強化政策を歓迎していると表明した。
ベトナムを含めた東南アジア諸国は、中国が昨年7月のPCA裁定を無視して、南シナ海において軍事拠点化に動いていることに懸念を表明していた。
一方、5月30日付英
『ロイター通信英国版』:「インド、中国の反発を恐れて合同軍事訓練に豪州軍を含めず」
インドの海軍及び外交関係者は5月30日、7月に予定されている日米印3ヵ国合同軍事訓練に、豪州軍艦の参加は断り、同高官のオブザーバー参加に留めるよう豪州側に回答したことを明らかにした。
インド側は、中国によるインド洋での活動の活発化-パキスタン・スリランカ・バングラデシュにおける海上設備建設支援、また、2013年以降少なくとも6隻の中国軍潜水艦のインド洋航行等-に懸念を抱いていたが、日米印の合同軍事訓練に豪州軍艦まで含めて大規模化し、結果として中国側を刺激することを恐れたとみられる。
米印両国は1992年、マラバール合同海上演習を開始したが、2014年以降日本の海上自衛隊も毎年参加している。米軍高官は、同演習はインド洋及び太平洋における共同パトロール体制構築に有効としており、最近では、インド洋の他、東・南シナ海周辺でも実施されている。
また、5月31日付インド
『ジ・インディアン・エクスプレス』紙:「インドとスペイン両首脳、南シナ海問題の平和的解決を要望」
ナレンドラ・モディ首相と、訪印中のスペインのマリアーノ・ラホイ首相は5月30日、南シナ海における領有権問題について、国連海洋法条約(UNCLOS)等の国際法に則って、平和的に解決されることが重要だとし、また、同海域における航行の自由原則を確認する旨の声明を出した。
ただ、中国はPCA裁定を無視して南シナ海における海洋活動を活発化させてきており、インドとスペイン両首脳の声明には反発するものとみられる。
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