ミャンマーで2月1日に軍が政権を取って以降、100万人以上の国民がインターネットに接続しなくても通信できるメッセージングアプリを、スマートフォンにダウンロードしていることが分かった。このアプリは、香港やタイの民主化活動家の間でも利用されていたものである。
仏金融誌
『レゼコー』によると、ミャンマーでは、今週1日のクーデター後48時間以内に110万人以上のミャンマー人が「Bridgefy(ブリッジファイ)」をダウンロードした。この数字が明らかになったのは、プラットフォームのCEOであるJorge Rios氏が3日、ロイター通信社のインタビューで明らかにしたためである。軍事政権誕生後24時間で、人口5400万人のうちSNSユーザー2200万人を持つ国で、ダウンロードがすでに60万台に達していた。
Brigefyは、現在サンフランシスコに拠点を置くメキシコの新興企業が2014年に立ち上げた。インターネット接続を必要としないため、従来のプラットフォームを検閲、スパイ、禁止するような体制の国々で、最近人気が爆発的に高まっている。同社は3日、ミャンマーの人々が混乱の中で、「困難な時期に役立つことを期待している」と通知した。
インドの日刊紙『インディアン・エクスプレス』は、進行中の危機の中で、通信用アプリが突然人気を得ることは、新しいことではないと報じている。つい先月、WhatsAppのプライバシーポリシー変更の問題で、ライバルのSignalとTelegramが数日のうちに大量のユーザーを獲得している。
今回ミャンマーのクーデターでは、AndroidとiOSユーザー向けのオフラインメッセージングアプリBridegfyが人気を集めている。インターネットを利用せず、ブルートゥース(Bluetooth)で携帯端末をつないでチャットができる。遠く離れていても、間にいる人々の端末を経由することで、メッセージを交換することができる。そのため、通信する相手との間にBridgefyユーザーの数が多ければ多いほど良い。
また、他のユーザーと現在の位置情報を共有することもできる。さらに、連絡先リストに登録されていなくても、近くにいるユーザーたちにメッセージを一斉送信できるブロードキャスト機能も利用できる。この機能は、多くのユーザーが他のユーザーも近くにいることを知っているような場合、例えば大学のキャンパスやコンサート会場、またはデモのような大規模な集まりの中で有益なものとなる。
Firechatのような同様のBluetoothベースのネットワークで動作する他のアプリも、イランやイラクの抗議活動の際に使用されていた。
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既報どおり、インドにおける新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行は依然深刻度を増している。そうした中、COVID-19用ワクチン開発レースで、先行する米中に先駆けて、インドの製薬会社が開発したワクチンが8月中旬に広く一般に提供される見通しが立ちつつあるという。
7月5日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「インド、COVID-19用ワクチンを8月中旬に市場提供と発表」
インドでCOVID-19用ワクチン開発が進捗している。
インド医薬研究委員会(ICMR、1948年設立の生体医療研究所)の7月2日付発表によると、非上場のバラート・バイオテック・インターナショナル(BBI、1996年設立の製薬会社、本社はインド中部ハイダラーバード)が、開発中のCOVID-19用ワクチンについて当局から7月初め、臨床試験開始の許可を取得したという。...
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7月5日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「インド、COVID-19用ワクチンを8月中旬に市場提供と発表」
インドでCOVID-19用ワクチン開発が進捗している。
インド医薬研究委員会(ICMR、1948年設立の生体医療研究所)の7月2日付発表によると、非上場のバラート・バイオテック・インターナショナル(BBI、1996年設立の製薬会社、本社はインド中部ハイダラーバード)が、開発中のCOVID-19用ワクチンについて当局から7月初め、臨床試験開始の許可を取得したという。
更に、ICMRによれば、“8月15日までに必要な試験を終え、広く公衆衛生用に使用が可能になると期待される”という。
BBI開発のワクチンについて、人体への安全性が証明されているのかどうか、詳細の記述はないが、仮に予想どおり進められることになると、先行している米、中両国の複数の製薬会社の研究開発を差し置くことになる。
米、中両国では、数ヵ月前に人体による試験が開始され、現在は治験(注後記)で必要とされる3段階の最終フェーズにある。
インドがワクチン開発に前のめりになっているのは、COVID-19感染者が7月4日現在で64万人超と世界4位にまで増えていることと、死者も1万8,600人を超えていることが挙げられる。
そこで、ICMRもウェブサイト上で、当該ワクチン臨床試験に応ずるボランティアを7月7日まで受け付けると強調している。
しかし、インド南部カルナータカ州のマニパル大(1953年設立の私立大学)のアナント・バーン医療研究者は、“これ程治験が急がされるワクチン開発はかつてなかった”とした上で、“余りに性急過ぎると、それだけリスクが高まる恐れがある”と警鐘を鳴らした。
また、国家疫学研究所内の科学諮問委員会のジャヤプラカシュ・ムリイール委員長(疫学者)は、ワクチン開発には効果及び安全性の確認で非常に複雑な工程が必要となるため、“かかる短時間では到底無理”だとコメントしている。
これに対して、ナレンドラ・モディ政権としては、景気が余りにも落ち込んでしまったため、感染が収まっていないのに都市封鎖措置を解除してしまっていることから、当該ワクチン開発達成に大きく期待を寄せている。
なお、8月15日という目標が掲げられたのは、当日が英国からの独立記念日(1947年8月15日)であるため、モディ首相としては記念式典でこのワクチン開発に言及したいという思惑があるとみられる。
一方、ICMR広報担当によると、BBI開発ワクチンには第1フェーズで375人(早ければ7月6日にも投与開始)、第2フェーズで750人の臨床試験が実施される予定で、この治験の結果で当該ワクチンが認可されるかどうか決まるという。
7月6日付インド『インディアン・エクスプレス』紙:「インド科学アカデミー、8月15日までのワクチン開発は非現実的と表明」
インド科学アカデミーの共同評議会(IASc、約1,100人の一流科学者組成のフォーラム)は7月5日、COVID-19用ワクチン開発に励む姿は評価するとしながらも、“性急な結論を求めることは、科学的なプロセスや基準を蔑ろにする恐れがある”との声明を公表した。
IAScは更に、“8月15日という期限は非現実的であり、一般市民に無用な期待を抱かせてしまう”と強調した。
IAScによれば、“治験の第1フェーズで安全性の評価、第2フェーズで異なる投与による有効性及び副作用の確認、そして第3フェーズで数千人の健康な人に投与して安全性と有効性の確認が必要で、一般使用が認められるワクチン開発には非常に長い時間がかかる”としている。
従って、IASc議長のパーサ・マジュンデール教授(遺伝子学者)は、“当局の認可プロセスは早いことに越したことはないが、ワクチンは様々な種類があり、科学的な検証行為が必須であることから、開発に期限を設けることは不可能であるし、また不適切”だとコメントしている。
(注)治験:医薬品もしくは医療機器の製造販売に関して、国の医薬品医療機器等に関わる法律に基づく承認を得るために行われる臨床試験のこと。
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