米・英・フィリピン・香港メディア;中国の軍門に降るフィリピン大統領(2016/10/17)
10月11日付
Globali「フィリピン、米同盟を解消?」の中で、“ドゥテルテ大統領は、世論の8割前後の強い支持を背景に、米国に対する直接的非難の言葉を連発したり、また長い歴史のある米比合同軍事演習の打ち切りを表明したりと、米国との同盟関係を解消しかねない勢いである”と報じた。そして、いよいよ10月18~21日の初訪中にあたり、南シナ海問題は棚に上げて、経済支援を獲得することを重視する意向を表明している。これを迎える中国側は、習主席他が同大統領を厚遇し、中国の主張が常設仲裁裁判所(PCA)で全面否定されて以降苦境に立たされた現状を打破すべく、勝訴したフィリピンを取り込むことによって、PCA裁定の無効化と中国の海洋活動の継続に弾みを付けようしている。
10月15日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、訪中時に領有権問題に触れない意向」
「●フィリピン大統領府のアーネスト・アベラ報道官は10月15日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月18~21日に訪中した際、中国トップとの会談に当って、南シナ海問題には触れない意向だと発表。
●ただ、同報道官は、これはフィリピンがスカボロー(中沙)礁の領有権交渉から後退するという意味ではなく、中国側との経済連携交渉の中で見極めていく意向だと付言。...
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10月15日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、訪中時に領有権問題に触れない意向」
「●フィリピン大統領府のアーネスト・アベラ報道官は10月15日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月18~21日に訪中した際、中国トップとの会談に当って、南シナ海問題には触れない意向だと発表。
●ただ、同報道官は、これはフィリピンがスカボロー(中沙)礁の領有権交渉から後退するという意味ではなく、中国側との経済連携交渉の中で見極めていく意向だと付言。
●なお、同大統領は、10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した後、全国人民代表大会常務委員会の張徳江(チャン・トーチアン)委員長及び李克強(リー・コーチアン)首相とも会談予定。」
10月14日付英
『メール・オンライン』:「中国大使、フィリピン・中国間のスカボロー礁問題は解決見通しと発言」
「●マニラ駐在の趙剣貨(チョウ・チアンホァ)中国大使は10月14日、ドゥテルテ大統領の訪中に先立ち、同大統領の中国トップとの会談で、南シナ海の領有権問題は解決の方向へ向かうだろうと発言。
●同大使はまた、中国はスカボロー礁周辺での漁業含めた共同事業に関心を持っているし、また、フィリピン国内のインフラ開発への資金提供も検討していることから、両国間の関係改善は大いに期待できるとも付言。
●なお、同大使は、(欧米が非難を強めている)同大統領の麻薬撲滅政策を支持し、また中国民間の支援団体による麻薬患者リハビリ施設の建設資金援助についても支援する意向とも発言。」
一方、10月14日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「フィリピン最高裁判事、ドゥテルテ氏がスカボロー礁のフィリピン主権について中国に譲歩すればフィリピン憲法違反と警告」
「●フィリピン最高裁のアントニオ・カルピオ上級判事は10月14日、アジア経営学大学院フォーラムで講演し、もしドゥテルテ大統領が中国との交渉で、スカボロー礁周辺のフィリピン主権を放棄するとなれば、それはフィリピン憲法に違反する行為となると警告。
●同判事によれば、フィリピン憲法でフィリピンの領有権を堅持する義務があるが、権力者がそれを一方的に放棄したりすることは認められておらず、更に、スカボロー礁の領有権について言えば、一度放棄してしまったら、永久に取り戻すことはできなくなってしまうと発言。」
また、同日付米
『シカゴ・トリビューン』紙:「ヤサイ外相、フィリピンは米同盟を最優先と発言」
「●フィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相は10月13日、ドゥテルテ大統領が中国との関係を強化したいと発言しているものの、フィリピンは米同盟を最優先と考えており、中国を米国と同等には扱えないと表明。
●同外相は、同大統領と大学寮で同室だった間柄で、同大統領の強気な発言に理解を示しているものの、中国への傾斜が強まることで、米国との同盟関係弱体化を非常に懸念。
●同外相は大統領の訪中に、400人近い経営トップとともに随行するが、南シナ海領有権問題で中国に譲歩するための訪問ではなく、あくまで中国との共同事業、インフラ開発への支援要請や中国投資誘致が目的と発言。」
更に、10月16日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』オンラインニュース:「ドゥテルテ氏は何故依然の対中国強硬発言を控えて訪中するのか」
「●ドゥテルテ大統領は、大統領選キャンペーン中、中国が実効支配しているスカボロー礁に水上オートバイで乗り付けて、フィリピンの領有権を主張するとアピール。
●しかし、大統領就任後、同氏の中国傾斜方針の発言が顕著。
●フィリピン・中国商工会議所のジェームス・ダイ会頭は、米国よりも中国はフィリピンに近い経済大国であり、しかも中国系フィリピン人が非常に多い(1億200万人のうち250万人)。更に、中国からの経済支援でインフラ開発などが期待でき、フィリピンにとって最も有益なことと発言。
●従って、ドゥテルテ氏には、中国と争うのではなく、友好関係構築に最善を尽くすよう要望。
●一方、フィリピン人権委員会のジャクリーン・アン・デ=グイア報道官は、ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅運動に関わる超法規的措置(麻薬容疑者殺害許可)を批判し、また、米国から中国寄りにシフトすることで、更に人権問題が悪化することを懸念。」
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米・英・ロシア・フィリピン・中国メディア;フィリピン、米同盟を解消?(2016/10/11)
9月28日付
Globali「中ロに擦り寄るフィリピン大統領」の中で、“フィリピンのドゥテルテ大統領は、同盟国である米国や日本を訪問する前に、中国及びロシアを正式訪問することとなり、いよいよ米国から中ロ連携への方向転換につき旗色を鮮明にした”と報じた。その後も同大統領は、世論の8割前後の強い支持を背景に、米国に対する直接的非難の言葉を連発したり、また長い歴史のある米比合同軍事演習の打ち切りを表明したりと、米国との同盟関係を解消しかねない勢いである。
10月8日付米
『ジ・エポック・タイムズ』(
『AP通信』記事引用):「フィリピン、南シナ海での米国との合同パトロール中止を公表」
「●フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は10月7日、南シナ海における米軍との合同パトロールも共同軍事演習も中断する考えであると米国側に通知したと公表。
●更に同相は、同国南部のイスラム過激派の監視活動のために駐留している米兵107人も、フィリピン軍側で体制が整い次第、帰国してもらう考えであるとも通知。...
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10月8日付米
『ジ・エポック・タイムズ』(
『AP通信』記事引用):「フィリピン、南シナ海での米国との合同パトロール中止を公表」
「●フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は10月7日、南シナ海における米軍との合同パトロールも共同軍事演習も中断する考えであると米国側に通知したと公表。
●更に同相は、同国南部のイスラム過激派の監視活動のために駐留している米兵107人も、フィリピン軍側で体制が整い次第、帰国してもらう考えであるとも通知。
●また、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は同日、米依存度を見直す一環で、毎年米軍と28回も実施している共同軍事演習も、今行われている訓練を以て最後として、自身が大統領任期中の今後6年間は実施しないと表明。
●米国務省のジョン・カービー報道官は、フィリピン政府から何ら正式な連絡を受けていないが、仮にかかる話が本当になると、米政府の意に反して、米比関係の終焉を迎えかねないと懸念表明。」
同日付米
『AP通信』:「ドゥテルテ氏就任100日間でのお騒がせ発言、行動」
「●ドゥテルテ大統領就任後100日が経過したが、同大統領による麻薬犯罪撲滅のための超法規的措置(容疑者殺害許可)を非難したバラク・オバマ大統領、欧州連合(EU)、その他代表に対して真っ向から反発。
●更に、これまで65年間も継続してきた米比同盟関係を解消し、中ロとの連携に重点を移すとの考えを表明。」
同日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』記事引用):「フィリピン財務相、米国よりも中国からの投資誘致に注力と発言」
「●カルロス・ドミンゲス財務相は10月8日、ドゥテルテ大統領は、これまでの対中国政策を見直し、今後数ヵ月内に数十億ドル(数千億円)のインフラ投資を中国から誘致すべく対応していく考えであると明言。
●すなわち、同大統領が10月19~21日の初の訪中の際、マニラ~南農村部間を結ぶ鉄道建設、発電事業等の開発計画について、中国側と協議する予定。
●また同相は、国際通貨基金(IMF)の発表では、フィリピンの経済成長率は、2016年6.4%、2017年6.7%と高い水準にあり、海外からの投資先として“黄金の時期”を迎えている国として魅力があるはずともコメント。
●一方、米格付け会社スタンダード&プアーズは先月、ドゥテルテ新大統領の内政や外交手腕が不明瞭かつ未知数であるため、今後2年間での格付け上方修正は難しいと表明。」
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュース:「フィリピンのドゥテルテ大統領、米国に対して“フィリピンを玄関マットのように粗末に扱うな”とクレーム」
「●ドゥテルテ大統領は今週初め、オバマ大統領のような愚か者は地獄に落ちろ、と暴言を吐いていたが、10月8日には、自身が大統領任期中は、フィリピンを玄関マットのように粗末に扱わせないし、また、今後米国とは話すつもりはなく、中国訪問を繰り返すとも発言。
●一方、米軍との合同パトロール中止や、フィリピン駐留米兵の撤退の考えを米側に通知したとするロレンザーナ国防相は、米側から得られなくなる5,000万~1億ドル(約52~103億円)の防衛費補助については、フィリピン国会に捻出するよう求めることになると表明。」
同日付中国
『中央テレビ』:「フィリピン、南シナ海における米軍との合同演習・パトロー
ルを中止と発表」
「●ドゥテルテ大統領がこれまでほのめかしていたとおり、フィリピンはこの程、南シナ海における米軍との合同演習やパトロールを中止する旨米側に正式通知。
●米比両軍は現在、中国海南(ハイナン)島250キロメーター沖のザンベール州北西部で合同上陸作戦訓練を展開中であるが、同大統領はこれが最後になると表明。」
一方、10月9日付フィリピン
『マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、米CIAを名指し
で挑発」
「●ドゥテルテ大統領はダバオ市で10月7日に行った演説で、米国がフィリピンを玄関マットのように粗末に扱わせることはもとより、米中央情報局(CIA)を使って自分を追放させることも許さないと挑発。
●同大統領は9月にも、CIAに命を狙われているとも発言。
●更に同大統領は、自身の麻薬犯罪撲滅政策を批判している米大統領、国連事務総長、EU代表らに、余計な口出しはしないよう警告の書簡を送ったとも表明。」
10月下旬に来日予定のドゥテルテ大統領に対して、対中政策の一環で巡視船などを提供し
ている日本としては、難解な同大統領取扱説明書をどう読み解いて対応していくことにな
るのか、非常に注目されるところである。
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