フィリピンのトランプ;自身に批判的な上院議員の逮捕命令を出す等本家に負けず暴君振り発揮【米・フィリピンメディア】(2018/09/07)
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、自身に批判的な人・グループに暴言を吐き、また、自分第一主義で政策を進める等、ドナルド・トランプ大統領に近似していて、フィリピンのトランプと揶揄されている。これまで同大統領は、反対派の上院議員を監獄送りにし、同じく批判的な最高裁長官を追放している。そして今度は、自身を汚職及び麻薬取引き疑惑で強硬に追及してくる上院議員を逮捕するよう大統領令を出した。当然のことながら、同上院議員は大統領に逮捕命令権はないと提訴している。
9月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「上院議員がドゥテルテ大統領による逮捕命令は違法だと提訴」
フィリピンのアントニオ・トリリヤネス上院議員(47歳)は9月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が自身を逮捕するよう出した大統領令は違法だとして最高裁に提訴した。
同上院議員はかねてより、同大統領が過去に重大な汚職事件及び麻薬取引きに関わったとして糾弾してきていた。...
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9月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「上院議員がドゥテルテ大統領による逮捕命令は違法だと提訴」
フィリピンのアントニオ・トリリヤネス上院議員(47歳)は9月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が自身を逮捕するよう出した大統領令は違法だとして最高裁に提訴した。
同上院議員はかねてより、同大統領が過去に重大な汚職事件及び麻薬取引きに関わったとして糾弾してきていた。
同上院議員は、退役海軍将校だが、海軍大尉だったときに2003年クーデター未遂事件(注1後記)に、また、上院議員選挙に出馬する直前の2007年ホテル占拠事件(注2後記)に関わり、都合7年半余り監獄に入っていた。
しかし、2007年にベニグノ・アキノ大統領(当時)の恩赦で釈放され、過去の二つの反逆罪・動乱罪について無罪判決を勝ち取っていた。そして、上院議員に当選・就任した。
一方、自身を批判する人・グループに直情的な敵愾心を表すドゥテルテ大統領はこれまで、反対派の上院議員を麻薬犯罪の罪で監獄送りにし、同じく批判的な最高裁長官を、他の判事の決定という手段で追放処分にしている。また、外国人に対しても容赦なく、例えば豪州人修道女などを再入国禁止、あるいは国外退去処分にすると脅している。
そしてこの度同大統領は、目の上のたんこぶ的存在のトリリヤネス上院議員について、過去の反逆罪等の罪で改めて同氏を逮捕するよう、司法省及び軍に対して命令を下した。
ただ、法律専門家は、前任大統領が出した恩赦及びそれを追認した議会の決定について、現大統領にそれを覆す権利があるのか疑問だとしている。
同上院議員も最高裁の聴聞で、逮捕等の執行権は司法のみに認められているので、同大統領の命令は憲法違反だと訴えている。
ただ、かかる法律的解釈の問題があるにも拘らず、国防省は議会に対して、同氏を保護観察処分とし、また、軍事裁判所も同氏の過去の罪状について再度問い質すよう求めるとしている。
一方、同日付フィリピン『マニラ・タイムズ』紙:「元“厳格な判事”が最高裁でトリリヤネス氏の恩赦についての審理を担当」
トリリヤネス上院議員による、ドゥテルテ大統領の大統領令を無効とする申立てについて、最高裁で審理するのは、かつて“厳しい判決を下す判事”と言われたディオスダド・ペラルータ陪席判事(2009年、アロヨ政権時に就任)となる見込みとなっている。
同大統領は、同上院議員の恩赦を取消し、(反乱罪で)逮捕するよう司法省に命令を下しているが、同上院議員はまず、この仮処分の停止を9月4日に最高裁に申し立てている。
同陪席判事は、最高裁判事(計15名)のうち3番目の古株で、かつてケソン市(マニラ首都圏の都市)地方裁判所判事だった際、40人以上の被告人に死刑を宣告したことから、“厳しい判決を下す判事”との評判がたっていた。
なお、最高裁の大法廷での審理は9月11日に予定されている。
(注1)クーデター未遂事件:2003年7月、トリリヤネス大尉(当時)を含めた300人余りの若い将校が、グロリア・アロヨ政権(当時)の汚職を非難し、同大統領の退陣を求めて、マカティ市(マニラ首都圏の都市)のオークウッド・タワーに立てこもり。
(注2)ホテル占拠事件:2007年11月、トリリヤネス氏をリーダーとする36人が武器・爆弾を持ってペニンシュラホテルを占拠。追って投降したが、36人全員が反乱罪で訴追された。
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フィリピン最高裁、ドゥテルテ大統領支援のマルコス元大統領子息が提訴の副大統領選投票結果に疑義ありと認めて再集計命令【米・フィリピンメディア】(2018/04/04)
2016年のフィリピン副大統領選に臨んだマルコス元大統領長男のマルコス・ジュニア上院議員は、約26万票差でロブレド下院議員に敗れた。しかし、この程フィリピン最高裁が、投票の集計に間違いがあったと同上院議員の訴えを認め、当時の投票結果について再集計をするよう命じた。そして、4月2日より票の数え直し作業が始まったが、マルコス・ジュニア氏が、将来の大統領就任のための布石と考えられる副大統領職に就けるのか、注目されている。
4月2日付米
『ロイター通信米国版』:「マルコス元大統領子息の副大統領選票集計問題提訴に基づき票の再集計始まる」
2016年5月の大統領選時に同時に行われた副大統領選において、かつての独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領の長男であるマルコス・ジュニア氏(ニックネーム“ボンボン”、60歳)は、約26万票差でレニー・ロブレド下院議員(53歳)に敗れた。
しかし、ボンボン・マルコス氏はその後、ロブレド氏出身地のカマリネス・スール州の投票に大掛かりな不正があったとして、票の再集計を求めて提訴した。...
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4月2日付米
『ロイター通信米国版』:「マルコス元大統領子息の副大統領選票集計問題提訴に基づき票の再集計始まる」
2016年5月の大統領選時に同時に行われた副大統領選において、かつての独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領の長男であるマルコス・ジュニア氏(ニックネーム“ボンボン”、60歳)は、約26万票差でレニー・ロブレド下院議員(53歳)に敗れた。
しかし、ボンボン・マルコス氏はその後、ロブレド氏出身地のカマリネス・スール州の投票に大掛かりな不正があったとして、票の再集計を求めて提訴した。
そしてこの程、フィリピン最高裁がその訴えを認めたため、4月2日より票の数え直しが始められた。
一方、ロブレド氏は、1986年のマルコス元大統領の追放運動に貢献した人物であるが、そのマルコス・ファミリーと長年交流があり、かつ、超法規的殺人を許容する等の政策を推進するロドリゴ・ドゥテルテ大統領とそりが合っていない。なお同氏も、マルコス陣営のおよそ8千の選挙区の投票結果に疑義があるとして反訴している。
4月3日付フィリピン『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「ロブレド氏代理人、“無効票”が有効となってもマルコス・ジュニア氏が勝利することはないと明言」
レニー・ロブレド副大統領の代理人のロムロ・マカリンタル弁護士は4月3日、“無効票”がマルコス・ジュニア元上院議員のものだとの主張が通ったとしても、同氏が副大統領選に勝利することにはならないと明言した。
マカリンタル弁護士のコメントは、マルコス・ジュニア氏のビック・ロドリゲス広報担当がリリースした、カマリネス・スール州、ネグロス・オリエンタル州及びイロイロ州において無効とされた票に疑義があるとして、再集計を求めているとの声明に対して出されたものである。
一方、ロドリゲス氏は『CNNニュース』のインタビューに答えて、当該3州には無効票とされたものが少なくとも合計29万票あるので、ロブレド現副大統領との票差26万3,473票を十分逆転できると考えていると表明した。
これに対してマカリンタル弁護士も同メディアのインタビューで、無効票とされたのは集計機械の故障等ではなく、有権者の書き間違い、例えば、副大統領適任者として二人も三人も選択、あるいは、選択した候補者を示す箇所に正しくマークされなかった等がその理由と考えられるので、投票結果に大きく影響を及ぼすことにはならないだろうとコメントしている。
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