米・英・フィリピン・中国メディア;トランプ大統領、中国に弱腰のASEAN議長国フィリピンのドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待(2017/05/02)
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、30周年を迎える首脳会議をマニラ(フィリピン)で開催した。議長国フィリピンのドゥテルテ大統領の意向を強く反映してか、最終的に採用された議長声明には、中国を名指しで非難する表現は削除され、代わって、南シナ海海上での行動を法的に規制する行動規範(COC)の枠組み作りに焦点を当て、ASEANと中国の関係は改善しているとの表現が加えられた。一方、トランプ大統領は、オバマ前大統領と犬猿の仲だったドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待し、新たな米比関係構築に向けた積極姿勢を示している。
4月30日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、何かと物議を醸すフィリピンのドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が就任して以降、米比関係がギクシャクする中、ドナルド・トランプ大統領が4月29日、ドゥテルテ大統領と電話会談を行い、同大統領をホワイトハウスに招待することを決めた。
ドゥテルテ大統領が、麻薬撲滅政策の一環で非合法の容疑者殺人を許容したことに対して、特にバラク・オバマ前大統領が厳しく非難したことから、昨年9月の米比首脳会談が直前でキャンセルされる程、両首脳の関係が悪化していた。...
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4月30日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、何かと物議を醸すフィリピンのドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が就任して以降、米比関係がギクシャクする中、ドナルド・トランプ大統領が4月29日、ドゥテルテ大統領と電話会談を行い、同大統領をホワイトハウスに招待することを決めた。
ドゥテルテ大統領が、麻薬撲滅政策の一環で非合法の容疑者殺人を許容したことに対して、特にバラク・オバマ前大統領が厳しく非難したことから、昨年9月の米比首脳会談が直前でキャンセルされる程、両首脳の関係が悪化していた。
しかし、ホワイトハウスは、トランプ大統領が今年11月にフィリピンで開催される東アジアサミット及び米・ASEAN首脳会議に出席することを決めている等、米比関係改善に前向きであると表明した。
なお、人権問題監視団体が、人権蹂躙問題を抱えるドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待することを非難したことに対して、ラインス・プリーバス首席補佐官は4月30日、トランプ大統領が人権問題を軽視しているということではなく、現在最も重大な北朝鮮問題に対応していくため、アジア諸国に理解者を増やすことを優先していく方針である旨反論している。
同日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「ASEAN、南シナ海問題で“協力体制は改善している”として中国を評価する対応」
4月29日に閉幕したASEANサミットの議長声明で、中国の人工島建設や軍事拠点化について直接非難する表現は避け、代わって、中国とASEANの関係は改善していると言及された。対中国友好政策を推し進めようとしている、議長国フィリピンのドゥテルテ大統領の意向が大きく反映されたものとみられる。
5月1日付フィリピン
『マニラ・タイムズ』紙:「ASEAN、議長声明を変更して(中国の)人工島建設問題言及を取り止め」
ASEANサミット閉幕後の4月30日に公開された議長声明では、昨年のカンボジア会議で言及された“人工島建設及び軍事拠点化についての懸念”(ベトナム主張により挿入)との表現、また、“国際法上の取り決め及び外交上のプロセスを尊重”との言及もなされなかった。
更に、ドゥテルテ大統領の意向を反映し、米朝間で緊張が高まる朝鮮半島問題について、両国が自制するよう強く求めるとの表現が含まれている。
一方、4月30日付中国
『新華社通信』:「第30回ASEANサミット、地域統合のモデル及び世界に誇れる連携組織を目指して一致団結」
今年で創設30周年を迎えるASEANサミットは4月29日、人とのつながりを中心として、地域の平和と安定を維持し、そして改革優先の発展を目指す組織として、地域統合のモデル及び世界に誇れる連携組織となるべく、一致団結していくことで合意した。
特に、世界経済の停滞や、一部で現出している保護主義に対抗するべく、地域経済にとって非常に理想的かつ有効な“域内包括的経済連携(RCEP、注後記)”構築に向けて努力する旨言及された。
また、ASEAN議長声明では、中国との関係改善に触れた上で、ASEAN・中国間で協議を進めるCOCの枠組みを、2017年半ばまでにまとめるべく努めることが記された。
(注)RCEP:ASEAN加盟10ヵ国に、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの6ヵ国を加えた計16ヵ国で、自由貿易協定構築を進める構想。
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米・英・フィリピン・中国メディア;中国の軍門に降るフィリピン大統領(2)(2016/10/19)
10月17日付
Globali「中国の軍門に降るフィリピン大統領」の中で、“ドゥテルテ大統領は、10月18~21日の初訪中に当り、南シナ海問題は棚に上げて、経済支援を獲得することを重視する意向を表明している。これを迎える中国側は、習主席他が同大統領を厚遇し、中国の主張が常設仲裁裁判所(PCA)で全面否定されて以降苦境に立たされた現状を打破すべく、勝訴したフィリピンを取り込むことによって、PCA裁定の無効化と中国の海洋活動の継続に弾みを付けようとしている“と報じた。そして、同大統領を迎えるに当り、国営メディアまでも”歴史的訪中“と持ち上げ、フィリピン懐柔策を徹底している。しかし、フィリピンの世論は、同大統領を挙って支持するものの、米同盟から中国へのシフト方針については多くが反対の声を上げている。
10月18日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、自国の主権内と主張するスカボロー礁周辺でフィリピン漁船操業を許容か」
「●フィリピン高官は10月18日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した際、2012年から中国が実効支配しているスカボロー(中沙)礁周辺でのフィリピン漁船の操業について討議予定と発言。
●中国外交筋によると、中国側はフィリピンとの連携強化の一環で、同礁海域へのフィリピン漁船の立ち入りを認める方向で検討中。...
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10月18日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、自国の主権内と主張するスカボロー礁周辺でフィリピン漁船操業を許容か」
「●フィリピン高官は10月18日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した際、2012年から中国が実効支配しているスカボロー(中沙)礁周辺でのフィリピン漁船の操業について討議予定と発言。
●中国外交筋によると、中国側はフィリピンとの連携強化の一環で、同礁海域へのフィリピン漁船の立ち入りを認める方向で検討中。
●中国外交部の王毅(ワン・イー)部長は、南シナ海領有権に関わる中国の主張・スタンスは一切変更ないとし、スカボロー礁海域でのフィリピン漁船操業についてコメントしなかったが、ドゥテルテ大統領の訪中を歴史的訪問と評価し、新たな二国間関係の構築に期待すると発言。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国国営メディア:ドゥテルテ氏の訪中で“長く頓挫した”二国間関係が改善と報道」
「●中国国営
『新華社通信』は10月18日の社説で、長らく頓挫していた二国間関係は、ドゥテルテ大統領訪中を契機に改善しよう、と報道。
●同大統領のこれまでの発言は、二国間の問題を対話で平和裏に解決するという中国政府の方針に適うものともコメント。
●中国商務部の沈丹陽(シェン・タンヤン)報道官は、中国政府はフィリピンとの交易を増加させ、また、二国間の協力体制を強化していくことになると表明。」
同日付中国
『新華社通信』:「フィリピン大統領が“歴史的”訪中」
「●中国・フィリピン両国関係は、ベニグノ・アキノ前大統領が、南シナ海領有権問題を一方的にPCAに提訴して以来、険悪な関係。
●しかし、ドゥテルテ新大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN)以外の訪問国として中国を選択し、かつ、両国関係改善の姿勢を示していることから、中国側は、習主席、李克強(リー・コーチアン)首相、張徳江(チャン・トーチアン)常務委員会委員長が会談に臨むことで歓迎の意。
●王外交部長は、同大統領の訪中は“歴史的”なもので、この結果二国間の関係が改善されれば、これ以上無関係の他国がとやかく口をはさむ余地はなくなるとコメント。」
一方、同日付米
『ザ・デイリィ・コーラー』オンラインニュース:「ドゥテルテ氏は中国指
向、しかしフィリピン国民は追随せず」
「●フィリピンの調査機関の意識調査の結果、55%もの人が中国に対して悪い印象(信頼度指数が最低のマイナス33)。
●直近の世論調査では、83%もの人がドゥテルテ大統領を支持しているが、中国指向方針については反対との意見。
●中国の王外交部長が、ドゥテルテ大統領の訪中及び対中関係強化について、フィリピン国民の意思の表れと評価するコメントを出しているが、肝心のフィリピン国民の感情は異なる模様。」
更に、10月19日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「フィリピン国民は中国より
米国を信頼:意識調査結果」
「●フィリピンの調査機関が、9月24~27日の間に1,200人を対象に意識調査したところ、55%の人が中国を“全く信頼していない”とし、“信頼している”としたのは僅か22%。
●一方、76%もの人が米国を信頼しており、不信とした人は僅か11%。
●同調査の信頼度指数でみると、アキノ前大統領時代の対中国信頼度はマイナス24だったが、今回の調査ではマイナス33と更に悪化。」
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