ロシアのプーチン大統領は、G7サミットに先立ち北京で23日から開催されるBRICS首脳会議に参加する。大統領にとって、世界の主要な国々の指導者とともに登場する貴重な機会である。
米
『CNN』は、ロシアのプーチン大統領にとって、主要新興国の首脳会議に参加することは歓迎すべきことだろうと伝えている。中国、インド、ブラジル、南アフリカの首脳らと共に会議をする姿が映し出されることは、制裁下のロシアは孤立していないというメッセージを発信できるからだ。
専門家たちは、表面下では、10年以上の歴史を持ちながらもメンバー間の不信感やイデオロギーの不一致に悩まされているBRICSにとって、プーチンの侵略は新たな問題を招く可能性があるものの、第14回サミットの開催を決定したことは、BRICS諸国の世界秩序、ひいてはウクライナ情勢に対する欧米諸国とは異なる見方を反映していると指摘している。
『CNN』によると、表向きは、食糧難や途上国の債務危機の高まりなど、現在世界が直面している危機について話し合いが行われる予定となっている。一方で、BRICSは発足以来、世界の舞台で主要新興国の代表として認められることを目指し、欧米列強の不当な支配に反対することで一致してきた。これまでも、国際通貨基金や世界銀行の改革を推進し、時にはNATOの行動を暗に非難してきた。さらに、豪クイーンズランド大学教授で政治経済学者のシャハール・ハメイリ氏によると、BRICSは欧米の対ロシア制裁を受けて、自国通貨での貿易決済方法などの問題を議論しているという。
一方、BRICS内の長年の内部摩擦の原因であるインドと中国の緊張は未解決のままであり、2020年には激しい国境紛争に発展した。インドにとってBRICSは「中国との何らかの関わりを確保する手段」であり、インド政府は中国政府を刺激しないよう警戒しているという。特に米国、日本、オーストラリアと組んで四カ国戦略対話(クアッド)を立ち上げ、米国が中国に対抗する戦略の一環と見なすようになっているため、インドは慎重な姿勢を取っている。
英『BBC』は、BRICS首脳会議が3年連続でバーチャル形式での会談が行われ、今年も対面式の会合が回避された理由は明らかではないと伝えている。そして、先月東京で開催された日米豪印首脳会議が対面式で開催されたのとは対照的だと述べている。
米シンクタンク「ウィルソン・センター」のマイケル・クーゲルマン副ディレクターは、BRICSが長年にわたって期待に応えてこなかったことも一因であると分析している。2009年の発足当初は、世界経済を再構築し、途上国支援のための新たな金融秩序を構築することが期待されていた。しかしその成果は限られている。それでも、BRICS 諸国の人口は32.3億人、GDPは2300億ドル以上であり、その重要性は無視できないという。
リスクマネジメントのコンサルティング企業「コントロール・リスクス」の南アジア担当ディレクター、プラティウシュ・ラオ氏は、ウクライナ戦争が始まってから多くの国でインフレが進み、世界のサプライチェーンが寸断され、食糧不足が懸念されるなど、戦争と欧米主導の制裁による経済的影響が世界中に表れており、サミットでは欧米の制裁に対する反発が予想され、ロシアにとって安心材料になるだろうと予測している。「しかし、それはロシアの行動を支持するものと解釈すべきではない」と付け加えた。「今回のサミットでは、その人口と経済面で影響力を持つBRICSの世界的な重要性が強調されると思う。また、ウクライナ危機の経済的影響に対処するため、より貧しい国や中所得国が回復力を構築する手助けをすることを期待している」と語った。
しかし、中国とロシアが西側諸国に対してより厳しい態度をとることで合意した場合、インドはサミットが米国やより広範な西側諸国を公然と批判するために利用されることを望まないだろう、と指摘している。「インドは国際舞台で独立した戦略的政策と独立した自律的な発言力を持っており、その点で妥協したくないはずだ」とラオ氏は分析している。
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既報どおり、昨年1月6日の議事堂乱入事件を調査する米下院特別委員会(1/6 HSC、2021年6月設立)が、1年の調査を経ての経過報告及び重要参考人の公開聴聞をテレビ中継している。そして、4回目となる今回の公聴会において、州の選挙管理委員会に従事していた職員らが、トランプ前大統領による選挙結果の反覆圧力に抵抗したところ、様々な嫌がらせや脅迫に曝されたと証言している。
6月21日付
『AP通信』は、「1/6 HSCの公開聴聞:州の選挙関係者ら、トランプの要求を拒否して脅迫に遭遇と証言」と題して、1/6 HSCが実施している公開聴聞において、州の選挙管理委員会に従事していた職員らが、トランプによる選挙結果反覆要求を拒否したところ、様々な脅迫に遭遇したと証言していると報じている。
1/6 HSCが6月21日に実施した公開聴聞において、州の選挙管理委員会従事者や地方自治体の役人らが証人喚問を受け、ドナルド・トランプによる選挙結果反覆という不合理な要求を撥ねつけたところ、様々な嫌がらせや脅迫に曝されたと、苦しい気持ちを涙ながらに証言した。
同特別委は、開票に当たった人たちの証言を得て、前大統領による選挙に不正があったとの虚偽の主張によって、事態が更に混乱し、議事堂乱入事件発生に繋がっていると判断している。
同特別委のベニー・トンプソン委員長(74歳、ミシシッピー州選出民主党議員、1993年初当選)は、“選挙結果が拮抗しているいくつかの州において、ほんの一握りの選挙管理委員会職員らが、違法な要求をするトランプの圧力にめげずに米国の民主主義擁護のために尽力した”とし、彼らこそ真のヒーローであり、“民主主義の根幹を担う人たちだ”と称賛した。
まず証言台に立ったアリゾナ州のラスティ・バワーズ下院議長(69歳、2019年就任の共和党議員)は、(トランプの要求に抵抗したことから)トランプ支持者らによって自宅に何度も押し掛けられたり、時には銃を携帯した輩によって家族や近隣住民まで脅されたりしたと証言した。
また、ミシガン州、ペンシルベニア州やその他いくつかの州の選挙管理委員会職員らも、トランプの要求を拒否したところ、自身の携帯電話番号や自宅住所を公にされて、同様の脅しを受けたと証言している。
更に、最も興味を引かれたのは、ジョージア州の選挙管理委員会職員だった母娘の証言で、同州の開票に不正があったとトランプが根拠のない非難声明を出して以来、様々な場面で実名を大声で呼ばれて嫌がらせを受けたと述べたことである。
彼らは、“私たちの死を望むような罵声を何度も浴びせられた”と証言した。
今回の公聴会は6月に入って4度目で、1年にわたる同特別委の調査の結果、トランプが権力に止まろうと過去に例のない暴挙に出たことが明らかになりつつある。
トンプソン委員長は、“クーデター計画”だとなぞらえている。
また、同特別委は、州の選挙管理委員会職員らが脅迫を受けて職を奪われようとしたことからも、トランプの選挙に関わる虚偽発言が民主主義を貶めていると主張している。
更に、リズ・チェイニー副委員長(55歳、ワイオミング州選出共和党議員、2017年初当選)は、“ドナルド・トランプは、暴徒を諫めもしなければ止めようともしなかったことから、暴動発生などお構いなしだったことは明らかだ”と強調した上で、米国民に対して、今回提示した証拠の数々に注目して欲しいと訴えた。
一方、今回の公聴会でもう一人際立ったのは、ジョージア州のブラッド・ラフェンスベルガー司法長官(67歳、2019年就任、共和党員)の証言である。
同長官は、トランプからの電話で、同州におけるバイデン勝利を覆すのに必要な“1万1,780票を探し出せ”と要求されたと証言した。
また、彼の部下であるゲイブ・スターリング司法長官室責任者(選挙管理担当、51歳、2018年就任、共和党員)も、トランプからの無理な要求に対して、冷静に行動するよう訴えたと証言している。
両氏は、事実を明らかにするため、機械によらないで改めて人の手によって同州の500万票を数え直したが、バイデン勝利に変わりはなかったとも言及している。
なお、1/6 HSCは、今回少なくとも20人の州選挙管理委員会関係者を召還しているが、これまでのべ1千人の証言及び1万ページに及ぶ証拠文書によって、トランプが不当に選挙結果を覆そうとしたことが証明できるとしている。
同日付『CNNニュース』も、「1/6 HSC、4度目の公開聴聞を実施」として、詳報している。
1/6 HSCは6月21日、今月4度目となる公開聴聞を実施した。
今回の聴聞では、トランプ前大統領及びその支持者らが、選挙結果を覆すべく、州の選挙管理委員会関係者らにどのように圧力をかけたかが明らかにされようとしている。
アリゾナ州及びジョージア州の共和党員で両州の選挙管理委員会に関わる重鎮が、トランプの選挙結果の反覆要求に抗ったために、トランプ支持者らから脅迫を受けたと証言している。
なお、同特別委はトランプを起訴する権限を有していないが、彼らの目的とするところは、トランプが大統領職移譲を食い止めるために行った数々の不正行為全容を明らかにし、かつ、選挙不正と主張する虚偽発言が繰り返されたことによって、議事堂乱入事件に繋がったとの因果関係を白日の下に曝すことである。
これを踏まえて、唯一の起訴執行機関である司法省が、前大統領を起訴するという、前代未聞の決断をするかどうかが注目される。
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