米・英・中国メディア;中国の今の人権問題と南京事件式典を隠れ蓑とした欺瞞(2015/12/15)
中国は、共産党一党独裁を死守するため、女性の権利を主張する活動家から、新疆ウィグル自治区のウィグル族イスラム教徒迫害を擁護する人権派弁護士まで、不穏な動きをする輩は片っ端から拘束している。それらの活動家が裁判にかけられた場合、裁判所そのものが共産党傘下の手先であるから、通常の法治国家なら当然の公平・公正な裁判が行われることは考えられない。そして直近でも、ある人権派弁護士の裁判に当って集まった支援者や外国メディアが、警官らに追い払われ、押し倒される事態が起きている。米・英国メディアなどが報道しているが、中国メディアは一切流していない。一方、南京事件の78周年記念式典を迎えるに当り、中国メディアは、南京市初め他の都市で行われた儀式までも大々的に報道しており、南京事件式典のニュースによって、裁判所前の強制排除事件を覆い隠そうとしているとしか思われない。
12月14日付米
『NBCニュース』(
『AP通信』記事引用)は、「人権派弁護士の裁判で、警官と支援者がもみ合い」との見出しで、「中国を代表する著名人権派弁護士の浦志強(プー・チーチアン)氏(50歳)は、騒動挑発罪等に問われて12月14日、北京市第2中級人民法院(地裁に相当)で裁判にかけられた。裁判開始前に同法院前に集まった約50人の支援者や、それを報道しようとした外国メディアに対して、警察官らが強制排除の行動に出て、そのもみ合いの中で女性も含めて多くの人が、叩かれたり引き倒されたりした。...
全部読む
12月14日付米
『NBCニュース』(
『AP通信』記事引用)は、「人権派弁護士の裁判で、警官と支援者がもみ合い」との見出しで、「中国を代表する著名人権派弁護士の浦志強(プー・チーチアン)氏(50歳)は、騒動挑発罪等に問われて12月14日、北京市第2中級人民法院(地裁に相当)で裁判にかけられた。裁判開始前に同法院前に集まった約50人の支援者や、それを報道しようとした外国メディアに対して、警察官らが強制排除の行動に出て、そのもみ合いの中で女性も含めて多くの人が、叩かれたり引き倒されたりした。」とし、「中国検察によると、浦氏が2014年、雲南省で起きたウィグル族による無差別殺傷事件の際、ネット上に政府の対ウィグル族政策を批判した書き込みを行ったことが罪に当るとしている。」と報じた。
同日付英
『ザ・テレグラフ』紙は、「中国の人権活動家浦志強氏裁判所前の小競り合い」との見出しで、「北京市人民法院前に集まった支持者の中には、英国、米国、ドイツ、豪州大使館員も駆けつけ、不当裁判であることを訴えようとした。しかし、浦氏の即時解放等を訴える抗議文を読み上げようとした、米大使館員のダン・バイヤーズ氏は、警官によって阻止され、また、私服警官らによって、“立ち去れ!”との強い叱責とともに、外国メディアも含めて排除された。」と伝えた。
一方、12月13日付米
『Yahooニュース』(
『AFP通信』記事引用)は、「中国、南京大虐殺の記念式典を挙行」との見出しで、「中国は12月13日、江蘇省南京市において、1937年の同日に侵攻してきた旧日本軍によって虐殺された人達を追悼する式典を開催した。北京政府発表では、30万人が犠牲になったという。なお、習政権は2014年、この日を“南京大虐殺犠牲者国家追悼日”と定め、地方レベルの開催だった追悼式典を国家レベルに格上げし、習主席自らが出席の上、南京大虐殺を否定するいかなる者も歴史が許さないと演説していた。」とし、「しかし、今年の式典には、習主席を含めた最高指導部の党政治局常務委員は出席しなかった。」と報じた。
12月14日付中国
『中央テレビ』は、「南京市で1937年の大虐殺犠牲者の追悼式」との見出しで、「南京市で開催された追悼式には、数千人の政府高官、兵士、退役軍人、小学生らが参加した。そして、全国人民代表大会(全人代)の李建国(リー・チアンクオ)常務委員会副委員長が、犠牲者を哀悼するとともに大虐殺を非難し、平和の尊さを訴えた。更に李氏は、侵略戦争を美化するいかなる行動に対しても強く反対しているが、一方で今の日本は中国との関係改善に努めており、両国はともに世界平和のために尽くすべきだと演説した。」と伝えた。
また、同日付中国
『国際オンラインニュース』は、「香港、マカオでも1937年の大虐殺の追悼式」との見出しで、「12月13日(日曜)の南京大虐殺犠牲者の追悼式典は、南京市の他香港やマカオでも大々的に催された。」と報じた。
閉じる
米・中・韓国メディア;北朝鮮、相変わらず不可解な行動(2015/12/14)
12月11日付「北朝鮮は本当に水爆保有?」の中で、“南北朝鮮の高官が、今年8月に両国高官レベルによる対話を再開することに合意して以来、初めて関係改善に向けた対話を行った”と報じた。その成果であるが、合意文を作らず、次の日程も決めずに終了してしまった。一方、中国との関係改善の特使として送られた、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の肝いりとされる楽団が、予定されていた北京公演を突然すべてキャンセルして帰国してしまった。相変わらずの北朝鮮の不可解な行動について、米・中・韓国メディアが伝えている。
12月12日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「南北朝鮮対話、合意なく終了」との見出しで、「今年8月の合意以来、12月11日に初めて開催された南北朝鮮高官レベルの対話は、結局何の合意もみず、また、次の日程も決めることなく終了した。韓国の交渉団代表によれば、北朝鮮側は、2008年以降中断している金剛山(クムガンサン)リゾートへの韓国ツアーの再開を強く求めてきたが、韓国側が、中断の引き金となった韓国人観光客の射殺事件を理由に、観光客の安全を保障することを条件にしたところ、一方的に会談が打ち切られたという。...
全部読む
12月12日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「南北朝鮮対話、合意なく終了」との見出しで、「今年8月の合意以来、12月11日に初めて開催された南北朝鮮高官レベルの対話は、結局何の合意もみず、また、次の日程も決めることなく終了した。韓国の交渉団代表によれば、北朝鮮側は、2008年以降中断している金剛山(クムガンサン)リゾートへの韓国ツアーの再開を強く求めてきたが、韓国側が、中断の引き金となった韓国人観光客の射殺事件を理由に、観光客の安全を保障することを条件にしたところ、一方的に会談が打ち切られたという。従って、韓国側が求めていた、朝鮮戦争を契機とした南北離散家族の生死確認や手紙の遣り取りの提案についても、何ら進展はなかった。」と報じた。
同日付中国
『上海日報』(
『AP通信』記事引用)は、「二国間高官交渉、関係改善の兆なく終了」との見出しで、「今年8月の両国間長時間交渉の結果、高官レベルによる対話と離散家族の面会行事について合意していた。それに基づき12月11日に高官対話が持たれ、また、後者についても今年10月に一度、離散家族の面会が実施されてはいた。」と伝えた。
また、同日付韓国
『KBSニュース』は、「両国次官級対話、合意なく打ち切り」との見出しで、「韓国の交渉団代表によれば、韓国側が要求する、離散家族の面会事業と、金剛山リゾートへの韓国ツアーの再開を(交換条件のように)結び付けるのは妥当ではない、と明言したが、会談は一方的に打ち切られたという。また、韓国側から次の日程を持ちかけたが、この話にも乗ってこなかったという。」と報じた。
一方、同日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』記事引用)は、「金第一書記肝いりの楽団、突然北京公演をキャンセル」との見出しで、「金第一書記がお気に入りの、全員女性から成る北朝鮮の楽団が12月12日、突然北京公演をキャンセルして帰国の途に就いた。
派遣されていたのは、牡丹峰(モランボン)楽団(注後記)と功勲国家合唱団の二グループで、中国との関係改善のワンステップとみられていただけに、突然のキャンセルで、中朝間がまた冷え込む恐れがある。なお、北朝鮮研究専門家によると、(妻帯者の)金第一書記とメンバーの女性との関係を韓国メディアがゴシップとして流し、それを中国メディアも追随したことから、金氏が怒りに任せて呼び戻したものと推察されるという。」と伝えた。
同日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュース(
『ロイター通信』記事引用)は、「北朝鮮のポップスバンド、北京公演をキャンセルして帰国」との見出しで、「モランボン楽団は、金第一書記がペットのように可愛がっているグループで、彼女らのショートヘアは平壌(ピョンヤン)で流行となっている、」と報じた。
なお、北京の消息筋の話では、金第一書記の「水爆発言」を受けて、中国外交部(外務省に相当)が緊張緩和に資する行為を求め、暗に金氏を批判する表明をしたこと、また、中国当局が楽団公演を観覧する当局者を、共産党政治局員(指導部幹部)から副部長級(次官級)に大幅に格下げしたことから、北朝鮮側が「最高尊厳(金第一書記)への冒涜」とみなし、抗議の意味で公演を取り消したものと推測されるという。
(注)モランボン楽団:歌手10人、奏者12人全員が女性の楽団。2012年7月、韓国人歌手サイの「江南スタイル」発売と同時期に(謀ったように)デビュー。メンバーは皆、金第一書記が選抜。
閉じる
その他の最新記事