中国ではかねてより、国内の情報管制に神経を尖らせており、特に共産党政府批判ととられる記事などに対しては断固たる態度で臨んできている。外国メディアに対する表立った規制はないものの、直近ではフランス人ジャーナリストに対して、政府批判を繰り返したとして、滞在許可証の更新を受け付けないことで国外追放処分にするなど、その厳しさが増している。そうした中、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会がこの程、テロ対策の名目で、通信事業者やインターネットサービス提供者の監視や規制を強化することなどを定めた「反テロ法」を採択した。欧米からは、中国国内で活動する外国企業の活動に影響が出かねないと懸念が強まっている。米・中国メディアの報道内容をみてみたい。
12月29日付米
『Yahooニュース』(
『AFP通信』記事引用)は、「中国、新法制定し海外企業も取締り」との見出しで、「中国は12月27日、“反テロ法”と題した、新疆ウィグル自治区のイスラム過激派などを更に厳しく取り締まるための法律を採択した。これによって、テロ行為の恐れがあると認められた場合、国境付近、もしくは隣国の了解を得て、人民軍や公安などを派遣するというもの。これまで中国は、自身が否定していることもあり、他国内のことに干渉することを控えてきたが、11月にイスラム過激派組織イスラミックステートによって初めて中国人が殺害されたことを受けて、国内外のテロ組織の連携を阻止すべく、積極的に介在しようとしている。また、この法律によって、外国企業も含めた通信業者やインターネットサービス提供者に対して、テロ対策を理由として、通信内容の傍受を可能とする装置の設置や、テロ活動に関わる情報の提供を義務付けている。」と報じた。
同日付米
『リ/コード』ウェブサイトニュース(2014年創刊のシリコンバレー・ニュース)は、「中国の新“反テロ法”に米国のIT企業困惑」との見出しで、「中国がこの程採択した“反テロ法”に、アップルやIBMなどの米企業が困惑している。同法によって、彼らも通信内容の傍受や、暗号情報の提供などが義務付けられるからである。同法施行に当って記者会見した、法制工作委員会刑法室の李(リー)副主任は、テロリストにとってインターネットが重要な活動のツールになっているので、他先進国が取っているのと同様の方法で、テロ行為を防御しようとするものであり、企業の正常な活動や知的財産権を侵害するものではない、と強調した。」とし、「しかし、当局に顧客の個人情報まで検閲できることになるため、多くのIT企業幹部は対応に苦慮している。」と伝えた。
一方、同日付中国
『上海日報』(
『新華社通信』記事引用)は、「中国の“反テロ法”に対する米国の批評はお門違い」との見出しで、「今回中国が採択した“反テロ法”について、米国は、テロ対策どころか更に状況を悪化させるものと批評している。しかし、国際社会がテロの脅威に曝されている現在、罪のないテロ被害者がこれ以上増えないよう、中国としてしっかり対応しようとしているものなので、批判は全く当たらない。例によって、米国人の中には、中国が何か行動を起こす度に、それを揶揄するのが好きな人がいる。米国や他先進国においても、テロ対策の一環で、IT企業等に対して情報提供を求める法律を制定しており、中国は、それらを参考にして立法化したものであって、何ら責められる筋合いではない。」とし、「そもそも米国が、アフガニスタン、イラク、リビアやシリアに余計な干渉をしたがために、それらの地がテロの温床になってしまっていることを反省すべきであろう。」と厳しく反論している。
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12月22日付米
『Yahooニュース』は、「女性を指導的立場に、とする日本の目標に陰り」との見出しで、「安倍首相は今年の9月27日、国連でジェンダー・ギャップに関する演説をした際、日本政府として、2020年までに指導的地位にある女性の割合を30%まで増やす目標を掲げた。しかし、あれからいくらも経たないうちに、今月半ば、目標値を僅か7%まで大幅に後退させた。経済協力開発機構(OECD、34ヵ国の先進国が参加する国際機関)の報告によると、少子高齢化に喘ぐ日本の労働人口は、2030年までに今より17%も下がるという。もし、女性が男性と同程度まで労働市場に参加するようになれば、労働人口減少は僅か5%減に抑えられる。しかし、女性がもっと子供を産むことや、母親となった女性がフルタイムで働けるような環境にするためには、企業文化、法律はもとより、社会的慣習・女性の意識まで、他の先進諸国並みに大きく変革する必要がある。」と報じた。
同日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「安倍首相、目標値は下げるも、女性登用が目覚ましい企業を表彰」との見出しで、「安倍首相は12月21日、自身が掲げた目標値は大幅に後退させたが、“女性が職場で輝けるようにリードする会社”に値する7社を、男女共同参画担当(内閣府特命担当)の加藤大臣とともに表彰した。表彰された1社は地銀の千葉銀行で、2015年までの4年間で、女性の管理職を10%から15%まで引き上げたことが称賛された。なお、他の6社は以下のとおり。
・SCSK:ソフト・ハードウェア開発を行う住友商事グループ事業会社
・井村屋グループ:菓子メーカー
・第一生命保険:生命保険会社
・ファンケル:化粧品・健康食品メーカー
・三晶:エレクトロ二クス関連機械メーカー
・西部技研:省エネ・環境保全機器メーカー」と伝えた。
一方、同日付英
『ロイター通信英国版』は、「日本の女性国会議員、自身が首相になれば早朝会議は廃止と発言」との見出しで、「元閣僚で与党・自民党総務会長も歴任した野田聖子衆院議員(55歳)は12月22日の記者会見で、自身の子供(障害児)の面倒をみる必要があるので、早朝8時の会議には出席できないと告げたと語った。野田氏は今年の9月、自民党総裁選を安倍氏と争う構えをみせたものの、十分な推薦者が募れず、断念した人物である。」とし、野田氏のコメントを引用して、「もし私が首相になったら、早朝の会議はおろか、働き過ぎはせず、“働く女性のロールモデル”に相応しい働き方を実践したい。私の主たる行動指針は、まず男女賃金格差の是正に向けた体系作り、そして、現在40%にも達する非正規雇用者の待遇改善である。」と報じた。
内閣府は12月15日、今年度の国家公務員の管理職に占める女性の割合が3.5%(前年度比+0.2%)、都道府県職員の平均では7.7%(同+0.5%)と、ともに過去最高を更新したと発表したが、安倍首相が提言した「ウーマノミクス」を象徴する「女性管理職30%」の目標達成は絶望的な状況である。そこで安倍政権は、2020年度末までの個別職種の目標値を、国家公務員で7%、都道府県職員で15%とし、また、民間企業も10%を目標とするよう提言することとしている。
なお、冒頭に触れた先月の記事でも述べたとおり、「ジェンダー・ギャップ指数ランキング2015年」におけるその他の特記事項は以下どおりである。
・トップ10:アイスランド・ノルウェー・フィンランド等7ヵ国が欧州、アフリカトップが6位のルワンダ、アジアトップが7位のフィリピン。
・先進7ヵ国:ドイツ11位、フランス15位、英国18位、米国28位、カナダ30位、イタリア41位。
・新興国:南アフリカ17位、ロシア75位、ブラジル85位、中国91位、インド108位。
・その他:日本より下位の国は、インド、韓国115位の他は、最下位145位のイエメンに代表される、イスラム教国ばかり。
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