8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。...
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8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。また、マレーシアは地図を巡り、外交的な抗議を提出したとしている。
一方の中国は、境界線は歴史的地図に基づくものだと主張している。地図上の中国のU字線は中国海南省の南方1500キロまで伸び、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)に入り込んでいる。2009年に国連に提出され、いわゆる「九段線」が入ったものと異なるこの最新地図は、1948年の中国地図に似ており、台湾を含む10箇所に線が書かれていた。中国では2013年にも10段線の地図が出版されている。
29日の国営放送中国中央テレビによると、現在、中国では「国家地図意識宣伝ウィーク」となっているという。
中国外務省の汪文斌副報道局長は、9段線ではなく10段線の地図を公表した理由について、中国国内では領土に関して一貫した認識があるとし、「中国の南シナ海問題への認識は常に明確だ。当局が毎年、様々な基準による種類の地図を定期的に更新し公表している。関係各所が客観的かつ理性的に対応することを臨む」としている。
台湾外務省の劉永健報道官は、台湾は「決して中国の一部ではない。中国政府がいくら台湾の領有地位を捻じ曲げようとしても、客観的事実を変えることはできない」とコメントしている。
ベトナムの外務相は31日、「中国の地図は価値がなく、ベトナムや国際法に違反している。段線に基づく東海でのあらゆる主権主張を断固拒否する」としている。また、ベトナム当局が、今週はじめ南シナ海で2人が負傷した中国国籍の船舶によるベトナム漁船攻撃事件を捜査中だとしている。
同日付シンガポール『CNA』:「係争地を巡る中国の新地図に抗議するインド、マレーシア、フィリピンも抗議」
中国が新たに公表した係争地が描かれた地図に関し、インドが抗議、これにマレーシアとフィリピンが続いた。一方でインドネシアは領土境界線は国際法に準拠すべきだとしている。
中国自然資源省は8月28日、「2023年度版標準地図」を出版。そこには南シナ海におけるマレーシア、ベトナム、フィリピン、ブルネイとの係争地域、またインドやロシア内の複数地域の主権が示されていた。
地図の公開は、中国の首脳らが参加を予定し、インドネシアで9月5日から7日まで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、インドでのG20首脳会議を控えた時期となった。
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習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)は先月、異例となる3期目続投を決めた。そこで、早速対米強硬路線を展開するためか、無謀なウクライナ戦争を仕掛けて落ち目となったロシアを見限り、アジアにおける味方を増やそうと、海洋・国境問題で長く対立しているベトナムを取り込む作戦に出ている。
11月1日付米
『ザ・ディプロマット』(2001年設立)オンラインニュースは、「習近平国家主席、訪中したベトナム最高指導者を熱烈歓迎」と題して、長らく懸案だった中・ベトナム関係改善のため、同国家主席が訪中したベトナム最高指導者をレッドカーペットを敷いて歓迎したと報じている。
ベトナム最高指導者がこの程、3日間の訪中に際して、中国側から今までにない異例な歓迎を受けている。
両国国営メディア報道によると、中国側は10月31日に中国に到着したグエン・フー・チョン共産党書記長(78歳、2011年就任)を、最高となる21発の礼砲で以て歓迎したという。
習近平国家主席は、北京の人民大会堂でチョン書記長の来訪を迎えて、握手しかつ抱擁した上で歓迎レセプションに誘った。
同書記長は、先月の第20回中国共産党大会で異例となる3期目続投を決めた習国家主席にとって、初めての国家主席訪問者となる。
両トップにとって、2017年11月にベトナムで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC、注後記)で会談して以来の再会となる。
ある事情通の情報によると、同書記長の随行団は過去に例のないほど大規模だが、更に異例なことは“公安及び国防トップが随行していること”だという。
それによると、トー・ラム公安相(65歳、2016年就任)及びファン・バン・ザン国防相(62歳、2021年就任)が随行しているという。
更に、習国家主席が、中国側の最高勲章である「中国友好メダル(2016年制定)」を同書記長に贈ったことである。
中国国営メディアの『環球時報』によれば、同メダルは“中国社会主義の近代化及び中国との関係発展に貢献した外国人に授けられる”ものだとする。
ベトナム最高指導者の訪中を最大限歓迎するに当たって、習国家主席は、中国とベトナムの共産党は、米国等の諸外国からの干渉に対して一致協力して対抗していく、と発言している。
『中国中央テレビ(1958年開局)』報道によれば、同国家主席は、“中国及びベトナムの両共産党は、人民の幸福のために全力を尽くし、社会主義の近代化を推し進め、また、両国の発展を阻害しようとする如何なる部外者の干渉にも、一致協力して対抗していく”と言及したという。
また、ベトナム国営メディアも、チョン書記長の訪中は、“両国関係の新たな発展段階”に導くものだと報じている。
しかし、これら全てのコメントは、両国共産党間関係の儀礼の一部として割り引いて捉える必要があるとみられる。
何故なら、飾り立てられた儀式の数々にも拘らず、背景にあるのは、中国と米国間の熾烈な競合関係への対抗手段だと考えられるからである。
一つ言えることは、両国間では南シナ海における領土問題やベトナムとしての対中国抵抗意識等が存在しているものの、両国政府にとって分かち合うべき共通の利益がある。
すなわち、両国共産党政権にとって、西側諸国が策謀していると考えられる(一党独裁という)体制変更や近代化の押し付けに対して、一致協力して対抗していくことが肝要だと考えられるからである。
同日付ベトナム『ベトナム・ニュース・エイジェンシー』(1945年設立の国営通信)は、「党書記長、中国から友好メダル受賞」と報じている。
チョン書記長への中国友好メダル授与式は、10月31日に北京の人民大会堂で行われた。
その際、習国家主席は、友好メダルの授与は、チョン書記長及びベトナム人民に対する中国共産党・同政府及び中国人民の感謝の証であり、新時代へ向けての中国・ベトナム両国関係の総合的発展への貢献に報いるためのものである、と表明した。
同国家主席は更に、中国側は、両国における社会主義を形成・発展させていく上で、毛沢東主席(マオ・ツゥードン、1893~1976年、1945~1976年在任)とホー・チ・ミン主席(1890~1969年、1951~1969年在任)が育てて築き上げてきた伝統ある友好関係を更に継続・発展させていくべく、チョン書記長率いるベトナム共産党と連携していくことを誓う、とも言及している。
(注)APEC:アジア太平洋(環太平洋地域)初の経済協力を目的とする非公式協議体。1989年にオーストラリアのホーク首相の提唱で、日本・米国・カナダ・韓国・オーストラリア・ニュージーランド及び当時の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟6ヵ国の計12ヵ国で発足し、同国のキャンベラで閣僚会議を開催。1993年には米国のシアトルで初の首脳会議がもたれた。非公式協議体のため、「加盟」は使わず「参加」とし、台湾・香港の参加も認められている。現在、21ヵ国・地域が参加している。今年の議長国はタイ。
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