毎年8月15日になると、日本の政治家が靖国神社を参拝する度に、中韓政府及びメディアは目くじらを立てて非難する。彼らの言い分は、第二次大戦の戦争犯罪人(A級戦犯)が合祀されている神社を参拝することは、侵略戦争を犯した歴史を否定することにつながるというものである。中韓に対して、内政干渉というのは簡単であるが、小泉元首相が在任時(2001~2006年)毎夏参拝を繰り返したことで日中、日韓関係が膠着したこと、また、安倍首相も2013年12月の参拝で波風が立ったことは事実である。従って、安倍首相はそれ以降、中韓側に付入りする隙を与えないよう、今夏も同神社参拝は見送る予定である。
8月11日付米
『ロイター通信米国版』:「安倍首相、終戦記念日の靖国神社参拝見送り」
「●
『時事ニュース』は8月11日、安倍晋三首相が今年の終戦記念日も靖国神社に参拝する予定がないと報道。
●同神社には、14人の戦争犯罪人(A級戦犯)が合祀されており、また、中韓からは、旧日本の軍国主義の象徴的な場所と見做されている。
●今回の内閣改造で防衛相に就任した稲田朋美氏は、日本の平和憲法の変更を主張し、また、同神社にも毎年参拝しており、中韓はその行動に注目。
●なお、
『共同ニュース』は、今村雅弘復興相が8月11日に同神社を参拝し、日本の平和と繁栄を祈念したと報道。」
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』記事引用):「日本の閣僚、悪名高い靖国神社に参拝」
「●
『共同ニュース』によると、今村復興相(69歳)は、閣僚になる以前から、毎年春・秋に靖国神社に参拝。
●同神社は中韓から、旧日本の軍国主義の拠り所と見做され、日本の政治家や高官の参拝に対しては、以前から厳しい非難の声。」
一方、8月12日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「安倍首相、二度目の夏休みをゴルフに充て、政務から完全休養をアピール」
「●安倍首相は今週(8月8日の週)、東京から100キロメーター(62マイル)離れた河口湖側の別荘に滞在し、政府が推すワーク・ライフ・バランスを自ら体現。
●趣味のゴルフ等で休暇を満喫し、8月21日のリオデジャネイロ・オリンピック閉会式まで帰京しない予定。
●従って、中韓が注目する8月15日(終戦記念日)の靖国神社参拝の予定もなし。
●なお、
『日経新聞』によると、安倍首相の2週間以上となる夏季休暇は、十年以上前に小泉純一郎首相(当時)が取得して以来のことと報道。」
政治家はよく、靖国に参拝するのは戦死者に敬意を表すためだと言うが、戦没者に敬意を表すためであれば、政府主催の全国戦没者追悼式に出席することで十分であるはずである。
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7月15日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用):「中国、日本に南シナ海問題への干渉を止めるよう要求」
「・中国の李克強(リー・コーチアン)首相は、7月15日に安倍首相と会談した際、南シナ海問題がASEMサミットの中心的話題になると懸念して、局外者の日本は南シナ海問題に干渉するのを止めるよう要求。
・外務省の川村泰久報道官は、安倍首相から李首相に対して、南シナ海問題は国際社会が注目している事態で、法の支配の下で紛争を平和的に解決することの重要性を指摘し、仲裁裁定を尊重するよう伝えたとコメント。...
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7月15日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用):「中国、日本に南シナ海問題への干渉を止めるよう要求」
「・中国の李克強(リー・コーチアン)首相は、7月15日に安倍首相と会談した際、南シナ海問題がASEMサミットの中心的話題になると懸念して、局外者の日本は南シナ海問題に干渉するのを止めるよう要求。
・外務省の川村泰久報道官は、安倍首相から李首相に対して、南シナ海問題は国際社会が注目している事態で、法の支配の下で紛争を平和的に解決することの重要性を指摘し、仲裁裁定を尊重するよう伝えたとコメント。
・一方、中国外交部は同日午後、現在東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のラオスのソングローン・シスーリッツ新首相から、ラオスは中国を支持すると発言したと公表。
・また、カンボジアのフン・セン首相も、中国・ASEAN間連携で、南シナ海領有権問題を平和裏に解決していくとする中国の姿勢を評価するとしているともコメント。
・更に、中国国営メディアは同日、南シナ海における石油等天然資源探査活動支援のための海上原子力発電プラント導入を急ぐべきだと論評。」
同日付米
『ロイター通信米国版』:「日本とベトナム、南シナ海問題に関わるPCA裁定を遵守する立場で合意」
「・ASEMサミット参加のためウランバートル(モンゴル)訪問中の安倍首相は7月15日、ベトナムのグエン・スアン・フック首相と会談し、両国はPCA裁定を遵守すべきとする意見で合意をみたと、日本の
『共同ニュース』が報道。」
7月16日付ドイツ
『DW通信』:「ASEMサミットで、ニースのテロ事件、英国のEU離脱、南シナ海問題と議題が目白押し」
「・ニース(フランス)のテロ事件;ASEMサミットの共同声明で、テロ行為に断固反対し、これに共同して対抗していくと強調。安倍首相は、無謀なテロ行為は絶対許されないと発言し、ドイツのメルケル首相も全員が痛みを共有しているとコメント。
・南シナ海問題:中国は、同サミットでの議題としないよう訴えたが、各国首脳からは、PCA裁定を無視しようとする中国の対応を厳しく非難する意見。フィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相は、PCA裁定を尊重すべきだとしながらも、関係国の自制を要請。
・英国のEU離脱;EU首脳からは、これによってEUの自由貿易主義が影響を受けることはないと強調。
・ミンスク合意;メルケル首相はサミットとは別にロシアのメドベージェフ首相と会談し、2015年2月のミンスク合意が守られず、依然ウクライナ東部の親ロシア派と同国政府間戦闘が収まっていないことを憂慮し、可及的速やかな休戦が必須と主張。」
同日付フィリピン
『テンポ』オンラインニュース:「フィリピン、中国への妥協に応じず」
「・ロドリゴ・ドゥテルテ新大統領は7月14日夜、フィデル・ラモス元大統領を中国に送り、PCA裁定後の両国間対話を進める方針を発表。
・しかし、ホセ・カリダ法務長官は7月15日、PCA裁定はフィリピンの主張と立場を強くサポートしており、中国に対して決して妥協する必要はないと強調。
・ただ、中国側と平和裏に交渉を進める外交政策が重要ともコメント。」
一方、同日付カンボジア
『ザ・カンボジア・デイリィ』紙:「PCA裁定後、中国からの支援金増」
「・フン・セン首相は7月15日、PCA裁定を受けて、カンボジアがASEANとして中国を非難する声明を出すことを控えると発表して後、中国からの支援金が5億ドル(約 525億年)以上に増額されることになったと発表。
・同首相がウランバートルで李首相と会談した際、李首相から、2016~2018年の間に36億人民元(約5億3,800万ドル)を供与すると表明されたというもの。
・カンボジア外務省は先日、(PCA裁定に拘らず)中国とフィリピンは領有権問題を両国間対話で解決すべきとの公式見解を発表。」
安倍政権には、中国が“面子”を非常に重んじる国であることを改めて認識して欲しいと考える。大手メディアは、国内対策のために、PCA裁定を端から全否定する強硬な対応を示していると分析しているが、中国人の国民性である“面子”が背景にあることも忘れてはならないだろう。従って、現段階で李首相にPCA裁定遵守を強く迫ったら、目下面子丸潰れの中国が猛烈に反発してくるのは火を見るより明らかなことである。別に、中国に同調してPCA裁定を否定する側に回る必要など全くないが、PCA裁定の解釈によっては、沖ノ鳥島の人工島問題にも大きく影響する可能性がある訳であるから、少なくともこの分析が済むまで、悪戯に中国を激高させるのは控えても良かったのではないだろうか。
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