日本の防衛省は、北朝鮮の弾道ミサイルへの迎撃態勢強化や、東シナ海で海洋進出を強める中国軍を念頭にした離島防衛力の向上のため、2017年度防衛予算案の概算要求を、過去最高の5兆1,685億円とすることを公表した。同盟国の米国のみならず、ロシア・韓国・中国も関心を持って報道している。
8月31日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用):「日本の防衛省、史上最高の510億ドル防衛予算を請求」
「●日本の防衛省は、北朝鮮ミサイルの脅威に備え、また、東シナ海における中国の領海侵犯行為に対抗するため、2017年度に過去最高の5兆1,700億円(510億ドル、前年度比+2.3%)の防衛予算を請求する意向。
●安倍首相が2012年末に政権を取って以来、それまで10年余りの防衛費削減傾向が一転して毎年上昇。...
全部読む
8月31日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用):「日本の防衛省、史上最高の510億ドル防衛予算を請求」
「●日本の防衛省は、北朝鮮ミサイルの脅威に備え、また、東シナ海における中国の領海侵犯行為に対抗するため、2017年度に過去最高の5兆1,700億円(510億ドル、前年度比+2.3%)の防衛予算を請求する意向。
●安倍首相が2012年末に政権を取って以来、それまで10年余りの防衛費削減傾向が一転して毎年上昇。
●内訳は以下どおり。
・1,056億円(10億ドル):地対空迎撃ミサイルPAC-3の迎撃範囲拡大・精度向上を2020年に実施。
・147億円(1億4,000万ドル):イージス艦搭載の迎撃ミサイル改良型の導入。
・760億円(7億3,500万ドル):東シナ海の中国動静監視のための最新鋭潜水艦導入。
・746億円(7億2,000万ドル):宮古島と奄美大島への防衛部隊駐留。
●更に防衛省は、艦対空長距離ミサイルの開発や、最新鋭F-35ステルス戦闘機の購入も検討中。」
同日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本の防衛省、中国の脅威増大で史上
最高の防衛費予算を請求」
「●中国による東シナ海における日本領海侵犯は、直近数ヵ月で激増しており、防衛省にとって対抗措置が必要と判断。
●今回の概算請求で最大のものは、ロッキード・マーチン社製地対空迎撃ミサイルPAC-3の増強(1,060億円)と同社製F-35戦闘機6機の購入(950億円)。
●なお防衛省は、南シナ海で中国と領土問題を抱えるフィリピンに対して供与する、TC-90哨戒機のメインテナンス費用も計上。」
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュース:「日本の防衛省、中国と北朝鮮
の脅威に備えるため史上最高の500億ドルの予算請求」
「●中国は8月初め、日本側に対して、米軍の“航行の自由”作戦に日本が加担した場合、“越えてはならない一線を越えた(宣戦布告)”と見做すと警告。
●一方、岸田文雄外相は先週、日中韓外相会議で訪日した王毅(ワン・イー)外交部長に対して、中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵犯を止めるよう要求。」
同日付韓国
『KBSニュース』:「日本、来年防衛費予算増額を計画」
「●
『共同ニュース』他日本メディアによると、史上最高額となる2017年防衛費予算には、新型潜水艦建造や駐留米軍の再編などのコストを含む。
●2012年12月の安倍政権発足以来、4年連続で防衛費は増えてきており、これで5年連続増額。」
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』記事引用):「日本の防衛省が2017年度に史上最高額の防衛予算を請求、これにより安倍政権下で5年連続の上昇」
「●少子高齢化社会の日本は、上昇を続ける社会保障費の確保に困難を来し、また、経済規模の240%にも上る国の借金を抱えているにも拘らず、防衛費だけは不釣り合いに継続して上昇。
●日本は第二次大戦後、新憲法の下で不戦の誓いをして平和国家として歩んできたが、安倍政権下では最大与党の力を背景に、内閣レベルで同憲法条文を拡大解釈し、集団的自衛権を含めた安全保障法を成立させて、防衛体制の拡大を謀略。」
2015年の軍事費(一部推定)及び国内総生産(GDP)に対する割合は以下のとおりである。中国国営メディアが、いかに自国の都合の良いように対日批判を展開しているかが一目瞭然である。
①米国:軍事費5,960億ドル(日本の約13倍)、対GDP比3.3%
②中国: 同 3,859億ドル(同約8倍)、 同 3.5%
⑧日本: 同 470億ドル、 同 1.1%
閉じる
8月29日付
Globali「安倍首相、アフリカ開発会議を仕切る」の中で触れたとおり、安倍首相は、日本が主導し、アフリカ諸国の首脳が参加する第6回アフリカ開発会議(TICAD)について、アフリカでも影響力を増す中国との差別化を図るため、陣頭指揮を執って同会議に臨んでいる。一方、何かと日本への対抗意識を剥き出しにする中国は、安倍首相が、中国を貶めるために南シナ海問題を念頭にした海洋安全保障問題を挙げ、更には、国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指すために国連安保理改革問題を持ち出すなど、私利私欲のために国際会議を利用した、と酷評した。しかし、かかる批判もものともせず安倍首相は、8月30日付【
時流;9/2の日ロ首脳会談の狙い】でも触れられているとおり、精力的に次なるターゲットのロシア対策に向かっている。なお、直近の世論調査では、安倍首相の任期の2018年を越えて、2020年東京オリンピックまで首相の地位に留まることを6割以上が望む結果が出ている。
8月30日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン氏の訪日は安倍氏との会談で決定か」
「●菅官房長官は8月30日、プーチン大統領の訪日は、今週末の安倍首相との会談で最終決定されようと発表。
●安倍首相は、9月2~3日にウラジオストックで開催される極東経済フォーラムに出席するが、その機会にプーチン大統領と会談予定。
●安倍首相は2012年12月に就任以来、数回にわたりロシアを訪問しているが、プーチン大統領はその間一度も訪日せず。...
全部読む
8月30日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン氏の訪日は安倍氏との会談で決定か」
「●菅官房長官は8月30日、プーチン大統領の訪日は、今週末の安倍首相との会談で最終決定されようと発表。
●安倍首相は、9月2~3日にウラジオストックで開催される極東経済フォーラムに出席するが、その機会にプーチン大統領と会談予定。
●安倍首相は2012年12月に就任以来、数回にわたりロシアを訪問しているが、プーチン大統領はその間一度も訪日せず。
●プーチン氏は、2014年に訪日計画があったが、ロシアのクリミア半島併合問題に対する欧米諸国の対ロシア経済制裁に日本が加わったことから、訪日を急きょ中止。
●菅氏は、北方領土問題が両国間に横たわっているが、日ロの経済協力強化という“新しいアプローチ”が重要だとコメント。」
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「日本、北方領土問題で進展なくとも日ロ協力に邁進」
「●
『共同ニュース』は8月30日、日本政府は、北方領土問題の解決なくば経済協力はないとのこれまでのスタンスを改め、領土問題を絡めずに両国間の経済協力強化について深掘りする意向と報道。
●日ロ両国は、北方領土帰属問題で主張が真っ向から対立しており、第二次大戦後の平和条約が唯一未締結。」
8月29日付アジア
『オアナ・ニュース(アジア太平洋通信社機構)』(
『イタル・タス通信』記事引用):「日本政府、日ロ首脳が極東経済フォーラムの場で会談予定と発表」
「●菅長官は、両首脳間では、経済協力、プーチン氏の訪日、更には平和条約締結に向けての両国間の関係等、幅広い話題につき協議予定とコメント。」
一方、8月28日付米
『ロイター通信米国版』:「世論調査の結果、安倍首相が2020年東京オリンピック開催時まで留まることを望む人が過半数」
「●8月26~28日に行われた日経ビジネスの世論調査の結果、安倍内閣の支持率が62%と、直近2年で初めて60%越え。
●更に、安倍首相が、自民党総裁の任期(2期6年が限度)である2018年9月を越えて、2020年東京オリンピック開催時まで首相に留まることに60%以上が賛成。
●今月初めの調査より大幅アップしたことについて専門家は、多分にリオデジャネイロ・オリンピックでのメダル量産(金12個含め41個のメダル獲得)結果と、安倍首相がスーパーマリオに扮して同閉会式に出席した演出が効いたものとコメント。
●ただ、安倍首相が推進している“アベノミクス”と称される大胆金融政策には賛否が分かれ、特に日銀のマイナス金利政策は47%が評価せず。」
閉じる