8月18日付
『ロイター通信』は、「世論調査:以前の調査時より多くの日本企業が労働力不足に対応するため賃金アップに舵切り」と題して、5年前の調査時より倍近い企業が、労働力不足問題を乗り切るために賃金アップを行う意向であることが分かったと報じている。
『ロイター通信』が、日経リサーチ(1970年設立の日経新聞グループの総合調査会社)に委託して直近で行った世論調査の結果、数十年間横ばいだった日本の平均賃金を緩やかながら漸く引き上げる意向とする企業が、前回調査時より倍近くに増えていることが分かった。
8月18日に公表した、8月2~12日間に非金融業の大手495社を対象に実施したアンケートの結果、約半数の企業から回答があり、そのうち44%が賃金アップを行う意向である旨回答している。
前回2017年の調査結果では、25%しか賃金アップの意向を示していなかったことから、ほぼ倍近くの企業が重い腰を上げようとしていることが分かる。
日本企業はこれまで長い間、デフレーションに見舞われていたことから、コスト上昇分を販売価格に転嫁することが難しく、結果として労務費が抑えられてきた。
しかし、世界での物価上昇及び現下の円安に見舞われて日本における生活費が大幅上昇し、状況は一変している。
かかる状況下、岸田文雄首相(65歳)も経済界に対して賃金アップを要請するに至っている。
ただ、ある卸売事業会社マネージャーによると、“全般的に労働力不足問題に直面していて、特にスーパーマーケットのパート従業員確保に苦闘している”とし、“賃金アップで雇用確保に努めようとしているが、(一挙に大幅アップなどはできず)できることは限られている”という。
また、別の卸売企業のマネージャーも、労働力確保に対して“有効な手が打てない状態だ”とコメントしている。
しかし、SMBC日興証券(1918年前身創業、2011年現社名に変更)の宮前耕也シニアエコノミスト(42歳)は、“潮目は変わりつつあり、労働力不足に喘ぐ企業のうち、賃金アップを実施する企業がもっと多くなる”と分析している。
同氏は、“日本の労働市場における高齢化及び萎縮が進む以上、(賃金アップの傾向は)正に始まったばかりで今後は更にその傾向に拍車がかかるだろう”とも言及した。
回答企業のうち実に54%が労働力不足問題に直面していて、特に非製造業で顕著となっており、59%がスタッフの遣り繰りに苦労しているという。
そこで企業側としては、通年での採用方針や、退職年齢を引き上げて少しでも長く働いてもらうような体制を取りつつある。
日本における労働力確保に関わる問題は、同じく高齢化が進む欧米の先進国にとっても参考事例として注目されている。
しかし、かかる状況にも拘らず、日本の為政者は、労働力確保のための移民政策緩和方針を途中で止めてしまっている。
ただ、今回の回答企業のうち19%は、外国人労働者採用で賄っているとしており、前回2017年時の13%より増えている。
なお、今回の調査においても、実に4分の3の企業が岸田政権に対して、生活費大幅上昇に対抗していくための経済成長を促すべく、大型景気刺激政策の実行を望むとしている。
奇しくも、調査直前の政府公表データによると、直近4~6月期の国内総生産(GDP)が3四半期連続でプラス成長している。
ただ、経済アナリストの分析では、日本における新型コロナウィルス感染者大幅再上昇に加えて、米国及び中国経済の成長率鈍化に伴って、今後の見通しが不透明になるとしている。
(参考)OECD加盟38ヵ国中、2000年及び2020年それぞれの平均年収比較データによると、上位1・2位の米国・アイスランドは平均年収が+25%、3・4位のルクセンブルク・スイスで+15%、また、19位の韓国も+44%上昇しているが、22位の日本は僅か+0.4%上昇に留まっている。
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米中対立に代表されるように、経済安全保障を巡る世界情勢は緊迫の度合いを増している。そこで、岸田文雄首相(64歳)は10月8日の所信表明演説で、経済安全保障の重要性をあらためて強調し、安全保障上重要な技術流出の防止に向けた取り組みを進める一環で、経済安全保障を推進するための法律を策定する方針を表明した。そうした中、12月26日付本邦メディアが報じた、軍事転用の恐れのある特許の公開を制限する代わりに、関係者に金銭補償するとする法案を策定中との引用記事を掲載した。
12月26日付
『ロイター通信』:「
『日経新聞』、日本政府が機密に関わる特許を非公開とする代わりに補償金拠出意向と報道」
12月26日付『日経新聞』報道によると、日本政府は、軍事転用の恐れのある特許事案について、公開を制限する代わりに関係企業に補償金を支払うことを検討しているという。
目下、日本政府が策定しようとしている経済安全保障に関わる法案によると、核兵器開発に不可欠なウラン濃縮や最先端量子技術に関わる特許を対象にしているという。
岸田文雄首相は先月、経済安全保障を政策の優先事項とすると表明していた。
同紙によると、新法案に基づき、当該特許の出願者や企業に対して、約20年分に相当する特許料を補償することを検討しているという。
当該新法案の骨子は来月にも明らかにされ、2月の閣議決定を経て、2023年度(2023年4月から)からの運用が予定されている。
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