ウラジーミル・プーチン大統領は1月15日の年次教書演説で、大統領の権限を国家院(下院に相当)に委ねる等の憲法改正案を提出した。習近平(シー・チンピン)国家主席の終身制を模倣しようとしたのか、任期満了で大統領職は退くとしても、後継者の権力を削ぎ、院政を敷くことで生涯権力を保持していくための策略だとして、米メディアが一斉に批評している。
1月25日付
『ニューヨーク・ポスト』紙社説:「ウラジーミル・プーチン大統領、生涯権力保持のための策略」
ウラジーミル・プーチン大統領(67歳)は過日、憲法を大幅に修正する提案を行った。
主たる内容は、大統領職の権限を弱め、国家院に移譲することなどである。
現憲法では、大統領職は連続2期(計12年)までとされているため、同大統領の任期は2024年までとなる。
従って、そこから窺い知れることは、同氏が大統領を退いた後も、後任大統領の権限を弱めておくことで、自身が例えば院政を敷いて一生涯権力を保持しようと企んでいるとみられることである。...
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1月25日付
『ニューヨーク・ポスト』紙社説:「ウラジーミル・プーチン大統領、生涯権力保持のための策略」
ウラジーミル・プーチン大統領(67歳)は過日、憲法を大幅に修正する提案を行った。
主たる内容は、大統領職の権限を弱め、国家院に移譲することなどである。
現憲法では、大統領職は連続2期(計12年)までとされているため、同大統領の任期は2024年までとなる。
従って、そこから窺い知れることは、同氏が大統領を退いた後も、後任大統領の権限を弱めておくことで、自身が例えば院政を敷いて一生涯権力を保持しようと企んでいるとみられることである。
同氏は既に、旧ソ連時代のヨシフ・スターリン(1878~1953年)の長期政権(1922~1953年)に迫るほど長期間権力の座にある。
すなわち、第一次大統領職が2000~2008年、傀儡政権のドミートリィ・メドベージェフ大統領時代の首相職2008~2012年、そして第二次大統領職が2012~2024年である。
そして、プーチン氏は、2024年以降も権力保持を目論んでいるとみられる証拠が、メドベージェフ首相及びその閣僚を総辞職させ、代わって後任首相に任命したのが、自身の立場を脅かすような器ではない、ミハイル・ミシュスチン現連邦税務長官という“行政官”であったことである。
プーチン氏はこれまで、スターリンに倣って、数々の政敵を葬り去って巨大権力を掌握してきた。
例えば、同氏を批判した新興財閥のミハイル・ホドロフスキー(資産150億ドル、約1兆6,500憶円)を詐欺容疑で10年も投獄し、恩赦で出所させた後にロシアを捨てさせる(編注;スイスに亡命)結果をもたらしている。
従って、プーチン氏が恐れているのは政敵よりも、“長期政権を嫌う批判的有権者”やクリミア半島併合による欧米経済制裁によってもたらされた“景気後退を良しとしない国民”であり、“支持率の大幅低下”である。
以上の背景から、大統領職を離れた途端、自身の安全が脅かされないよう、揺るがない権力を一生涯維持していける仕組みを作っておこうとする意志が強くはたらいているとみられる。
同日付『Foxニュース』(『AP通信』配信):「ジョナサン・ウォッチテル氏、プーチン氏は”終身大統領“となるため策謀?」
米国の国連代表部の報道官だったジョナサン・ウォッチテル氏(現ジャーナリスト、ニュースコメンテイター)は1月25日、『Foxニュース』の番組に出演して、プーチン大統領が行ったロシア憲法改正案は、同氏が2024年以降も“権力に留まりうる”ための布石であるとコメントした。
すなわち、同氏は、同大統領が強いリーダーであり、かつ、ロシアをかつての大国に復帰させた功績より“多くの支持者”を有するが、一方で、“もう飽き飽きした”と長期政権を嫌う有権者が増えていることも事実であるとする。
そこで、大統領任期満了後に、反対勢力等によって自身の安全が脅かされることを恐れて、実権を握っておくための体制作りを策謀したものだ、と同氏は分析している。
同氏によると、一例を挙げると、辞任したメドベージェフ首相の後任に指名したのが、ミシュスチン連邦税務長官という行政官で、プーチン氏の権勢を脅かすような人物ではないとする。
そして、別の見方をすると、税務長官という職にあった人物であることから、競合する政党や政敵はもとより、新興財閥などの税に関わる様々な情報を得ていると考えられ、プーチン氏の子飼いとすることで、自身を脅かす対象の弱みを提供させる等、十二分に利用できると考えたともみられる、とする。
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米国で先週までに公表された各種の世論調査によると、トランプ米大統領がバイデン前副大統領とその息子についての調査を行うようウクライナの大統領に圧力をかけたとの疑惑報道を受けて、野党・民主党が大統領の弾劾に向けた調査の開始を発表した後、トランプ氏の弾劾手続きを支持する人が米有権者の半数近くに増加したことが判明した。
米政治紙
『ザ・ヒル』や一般紙
『ニューヨーク・ポスト』などのメディアが報じた。ザ・ヒルが27日に発表した自社などによる世論調査結果によると、トランプ氏の弾劾を支持すると回答した人は47%、支持しないと答えた人は42%、分からないとした人は11%だった。同調査は、民主党のペロシ下院議長が24日、弾劾訴追に向けた審議の実施を正式に表明した直後の9月26~27日、1,001人の有権者を対象に実施されている。
今回弾劾手続きを支持した人の割合47%は、6月に公表された前回の同様の調査から12ポイントも上昇した。前回調査は、民主党が弾劾手続きを開始すべきか否かを主に訪ねたものである。一方、不支持の割合42%は前回から3ポイント低下した。
弾劾を支持する人は、民主・共和両党の支持層と無党派層の全てで増加している。民主党支持者では前回の59%から今回の78%に、共和党支持者では同5%から18%にそれぞれ増加し、無党派層では今回41%へと倍増した。
他の調査でも弾劾支持者が増加し、25日に実施された米公共ラジオ局NPRや公共放送サービスPBSなどの調査では、49%が支持、46%が不支持だった。4月の調査から10ポイント支持が増え、同様の傾向を示している。政治メディアのポリティコなどが26日に公表した調査結果でも、弾劾支持が不支持と同率の43%となり、支持は前週末から7ポイント急上昇した。ザ・ヒル以外の調査では、支持の増加は民主党支持者で著しかった。
ある世論調査の責任者は、「トランプ氏の行動をめぐり、国民は深刻な懸念を抱いている。弾劾を支持する人はモラー特別検査官のロシア疑惑調査中よりも多く、殆どの人が大統領の行為は弾劾に値しないとしても不適切であると見なしている。」と指摘した。
ポリティコなどの調査とNPRなどの調査では、有権者の大半がニュースを注視していることを強調したが、他の調査では、トランプ氏への疑惑についての主張が十分に信用できるかを確信するほど、ウクライナ大統領との電話会談について詳しくないと回答する人も多く、有権者は今後、疑惑に対する調査の成り行き次第で態度を変える可能性がある。
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