1月22日付
『ニューヨーク・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「IOC:報道内容を否定して、東京オリンピックは予定どおり今夏開催と宣言」
IOCのトーマス・バッハ会長(67歳、ドイツ人弁護士、元フェンシング選手)も東京大会組織委員会も、今夏に延期された東京オリンピック・パラリンピックは予定どおり開催されると改めて強調した。
これは、英国『ザ・タイムズ』紙が、日本の与党関係者の話を引用して、“今夏に延期された東京大会は、現下の新型コロナウィルス(COVID-19)問題深刻化のために、中止止む無し”と報道したことに反発したものである。
同紙によると、政府関係者は、“誰も言い出さないので敢えて言うが、東京大会開催は困難という考えで一致している”と証言したという。
しかし、これに対して、東京大会組織委員会は1月22日にリリースした声明で、“日本政府、東京都、IOC等大会関係者は全て、今夏の大会開催に向けて最善を尽くしている”と強調した。
更に、“日常の生活が一日も早く正常に戻ることを期待するとともに、引き続き安全第一を主眼とした大会開催に向けて準備を進めていく”とも言及した。
同紙記事は、IOCが既に2024年大会はパリ、2028年大会はロスアンゼルス開催と決定しているので、日本側としては、今夏の大会を中止とする代わりに2032年大会の開催地とすることで決着させたいと希望しているとも報じている。
ただ、2032年開催との案については、今大会開催に当たって既に250億ドル(約2兆6千億円)投下済みであること、今大会用に設けた競技場を11年後まで維持することや関連施設のリース・利用契約を再び結び直すこと等の困難さより、現実的な話とはなるまい。
一方、今月初めに日本政府が東京首都圏はじめ主要都市を対象として、緊急事態宣言を再発出したことに伴い、同紙の他いくつかのメディアが、今夏の大会開催中止の見通しについて報じ始めていた。
しかし、IOCバッハ会長は1月21日、『共同通信』のインタビューに答えて、“現段階で、今夏の大会開催を取り止めるという考えは一切ない”と当該記事内容を全否定している。
IOC最古参委員であるリチャード・パウンド氏(78歳、カナダ人弁護士、元競泳選手)は今週初め、今夏の大会が開催される場合、極端な話として無観客とし、主にテレビ放映用に挙行されることになるのではないか、とコメントしていた。
IOCは、大会開催に当たって、テレビ等の放映権料収入が全収入の73%を占めていることから、大会中止とするよりも開催してテレビ放映だけでも行う方が考えやすい。
何故なら、他のスポーツ競技関連事業に比較して、IOCの収入源は夏季及び冬季大会のみであるからである。
そこでバッハ会長は、大会を予定どおり開催するためには、大胆な変更も考慮する必要があるかも知れないと言及した。
すなわち、オリンピックには約1万1千人、パラリンピックには約4,400人の選手に加えて、それぞれ各国コーチ、大会関係者、招待客、メディア等大勢が関わることから、“ある程度の犠牲は止む無し”とした上で、“あくまで安全第一を主眼として開催する必要がある”と表明している。
更に同会長は、“昨年3月に大会の1年延期を決定した際と、今年の3月では大きな違いがある”として、“感染症の解明、ワクチン開発等、科学的・医学的に大きく進歩しているからだ”と強調した。
なお、日本においては、他欧米諸国に比べて、COVID-19感染者も死者もかなり低いが、IOCとしては、大会開催に当たって、選手団や大会関係者の感染チェック、ワクチン接種、ソーシャルディスタンシングの徹底、また、必要に応じて選手団の隔離等に注力する必要があるとしている。
同日付『ロイター通信』:「日本の首相、メディア報道を否定して東京大会は開催されると断言」
菅義偉首相(72歳)は1月22日、前日の英国『ザ・タイムズ』紙報道に関連して、“今夏の東京大会は、COVID-19に打ち勝ったことの証明として、安全に開催されるよう取り進められている”と強調した。
また、東京大会組織委員会も、“菅首相が大会開催を改めて確認したとおり、政府関係者は一丸となってCOVID-19封じ込めに努めており、また、安全に大会を開催するための対応策も準備中である”と表明した。
ただ、日本にCOVID-19感染の第3波が発生していることから、直近の世論調査では、約80%が今夏の大会開催は無理だと回答している。
同日付『タス通信』:「日本政府、東京大会開催中止との報道を否定」
坂井学内閣官房副長官(55歳)は1月22日、英国『ザ・タイムズ』紙の報道を全面否定した。
同副長官は、報道されている、政府内で大会開催断念の考えで一致といったような話は“一切なく、真実ではない”と強調した。
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日本の新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数が、欧米諸国に比して非常に低いが、以前からのマスク着用習慣が奏功している可能性は高い。しかし、直近の感染者急上昇より、それだけに頼るだけでは、実質的な感染抑え込みは難しいだろうと米メディアが報じている。
12月18日付
『ニューヨーク・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「日本の低いCOVID-19感染者数はマスク着用習慣のお陰もあろうが、本質的な問題解決を遅らせる恐れ」
日本に最初にCOVID-19感染をもたらしたのは、2月初めに寄港したクルーズ船“ダイアモンド・プリンセス号”であった。
当時はまだ、現在のような世界的大流行となるとは考えられておらず、同船の乗船客・乗組員合計3,711人のうち、感染者712人、死者12人を出したことから、厚生労働省等関係当局への非難の声は強かった。
しかし、12月中旬現在、日本の人口10万人当りの感染者数(注後記)は138人と、欧米諸国に比べて遥かに低い。
これについて考えられる要因は、日本では以前からマスク着用習慣が根付いていて、風邪、花粉症等に備えて多くの人がマスクを着用しており、今回のCOVID-19問題において、義務化されなくとも抵抗なく公共交通機関、学校、店舗等でマスク着用が励行されている。
また、握手、ハグ、キスよりお辞儀という習慣であることも、感染リスク低減に貢献していよう。
更に、当局が推進した、4月7日から5月25日の間に導入した緊急事態宣言に伴う外出や経済活動の自粛指令、また、その際に喧伝された“3密回避(密閉、密集、密接)”も奏功してか、国内感染状況は抑えられた。
安倍晋三首相(当時、66歳)は、“日本モデル”の成功だと胸を張っていた。
しかし現在では、冬の到来とともに、いずれかの都道府県で感染者最多記録を更新する事態が起こり始め、日本全体でも最多記録を更新し、毎日2,500人以上が感染する程状況が悪化している。
そこで当局としては、“マスク着用の静かな会食”、“最多4人までの会食”等を推奨するインターネット・メッセージを発出している。
西村康稔COVID-19対策担当相(兼経済再生担当相、58歳)も、“危険度が最も高いレベル”になりつつあり、緊急事態宣言再発出を避けるためにも、マスク着用の励行、忘年会等の会食の自粛等を強化するよう求めるコメントを出した。
しかし、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授(65歳、ウィルス学者)は、“確かにマスク着用が感染防止に一役買っていることに疑いはないが、それで十分と過大評価するのは危険”だと警鐘を鳴らしている。
(注)人口10万人当りの感染者数:12月17日現在、世界全体では961.6人で、最多国は、①米5,198.3人、②フランス3,804.8人、③アルゼンチン3,372.8人、④ブラジル3,345.2人、⑤イタリア3,153人、⑥英国2,878.8人、⑦トルコ2,318.8人、⑧ロシア1,875.3人、⑨ドイツ1,735.4人、⑩南アフリカ1,505.3人。一方、主要国で少ないのは、①中国6.6人、②韓国92.7人、③オーストラリア110.2人、④日本151人、⑤インドネシア235.3人、⑥インド723.2人。
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