昨年5月就任の保守系尹錫悦大統領(ユン・ソンニョル、62歳)は今週も、ソウルで開催された日韓の政財界関係者でつくる「日韓・韓日協力委員会」の合同総会に、“日韓関係の実質的な関係改善につながるよう、政府レベルの努力を続けていく”と強調するメッセージを送り、革新系前政権が台無しにした日韓関係改善に注力している。そしてこの程、国防トップも同大統領に倣って、大きな亀裂が生じたままとなっている両国国防関係改善のため、5年振りに合同軍事演習を再開させる意向を示している。
1月19日付
『星条旗新聞』(1861年創刊の米軍準機関紙)は、「韓国国防トップ、北朝鮮の脅威が増す中、日本との合同軍事演習拡充意向と表明」と題して、2018年より途絶えている日韓合同軍事演習を、規模を大きくして再開する意向を表明したと報じている。
韓国の李鐘燮国防部長官(イー・チョンスプ、62歳、国防相に相当、2022年就任)はこの程、2018年より途絶えている日韓合同軍事演習を、日韓両国の関係強化の一環で今年再開させたいと表明した。
1月16日付『世界日報』(1989年創刊の保守系メディア)報道によると、年内にミサイル警報訓練、対潜・対艦攻撃阻止演習、捜索救難訓練を合同で実施することによって、日本との安全保障協力関係を強化していく意向であるという。
同長官は、“北朝鮮の軍事的脅威がエスカレートしていることから、日米韓間における即時情報共有システムを更に強化・向上させる必要がある”とした上で、“可及的速やかに三ヵ国国防関係者による協議を持つべく努めている”ともコメントしている。
北朝鮮は昨年、ミサイルを36日間でこれまで最多となる合計75発も発射させただけでなく、1月1日にも短距離弾道ミサイルを打ち上げたばかりである。
かかる背景もあって、日米韓の戦艦が昨年9月、東海あるいは日本海(編注;報道のまま)において対潜訓練を実施している。
また韓国海軍は昨年11月、7年振りに日本が主催した国際観艦式に参加している。
昨年5月に就任した尹錫悦大統領は、両国間の対立が長く続いてきていることから、関係修復に努めると宣言しているが、今回の李長官の表明も、外交関係見直しの一環だとみられる。
両国間では、独島(トクトウ)もしくは竹島(編注;報道のまま)の帰属問題で長い間対立しているが、第二次大戦時の韓国出身徴用工の補償問題でも両国間主張は行違ったままとなっている。
また、国防関係でもここ数年揉めていて、防衛省が2018年、韓国海軍駆逐艦が能登沖を飛行中の日本の哨戒機に向けて火器管制レーダーを照射してきたと非難した。
これに対して韓国国防部は当時、同海域において非難されたとは違うレーダーを使って捜索救難任務を履行していたと反論していた。
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横須賀基地所属の米軍将校が昨年起こした死亡交通事故に関わる裁判結果について、米議員や擁護団体から日本の裁判制度の不公平さを非難する声が上がっている。中には、長年日本側から上がっている日米地位協定への不満のはけ口として、同将校がスケープゴートにされているとの極論も出る程で、ジョー・バイデン大統領(79歳)の介入要求まで出される始末である。
7月26日付
『星条旗新聞』(S&S、1861年創刊の米軍準機関紙)は、「米議員、禁固刑が下った在日米海軍将校の釈放を要求」と題して、死亡交通事故を起こした横須賀基地所属の将校の弁明も聞き入れず、一方的に懲役3年の有罪判決を下した日本の司法に対して米議員らが一斉に糾弾していると報じた。
在日米軍のリッジ・アルコニス中尉(34歳)は7月25日、昨年起こした死亡交通事故に関わり有罪判決を受けて収監された。
これに対して、米議会上院、下院議員らが一斉に不当裁判だと糾弾している。
同中尉は昨年5月、静岡県富士宮市で無謀運転による死亡事故を起こした容疑で、静岡地裁から禁固3年の有罪判決を受けていたが、東京高裁も今年7月13日、同中尉の控訴を棄却していた。
在日米海軍報道官のキャティ・セレーゾ中佐は7月26日、電話取材に応じて、アルコニス中尉は7月25日に東京拘置所に収監され、後日横須賀刑務所に移送されるとの報告を受けているとコメントした。
訴状によると、同中尉は家族とともに昨年5月29日、富士山に登った後に車で向かった富士宮市の蕎麦店の駐車場に突っ込んで、女性(85歳)とその義息(54歳)を死亡させ、他数人を負傷させたという。
同中尉は昨年8月24日、富士山登山の結果症状が悪化して失神したために起きてしまった事故だと証言したが、同地裁は認めず、また東京高裁もこれを退けたものである。
この結果を受けて、米議員はもとより同中尉家族及び両親も米テレビ番組に出演し、ジョー・バイデン大統領が介入するよう訴えた。
まず、アマタ・レイドワーゲン下院議員(74歳、米領サモア準州選出共和党員、2015年初当選)は7月20日、“日本の司法の間違いは深刻で、本来強化しなければならない日米関係を逆に棄損してしまう”とし、バイデン大統領及びラーム・エマニュエル駐日大使(62歳、2021年就任)が然るべく動く必要がある“と訴えた。
また、マイク・レビン下院議員(43歳、カリフォルニア州選出民主党員、2019年初当選)は7月22日、同中尉の裁判は不公正であるばかりか、日米地位協定(SOFA、注1後記)にも違反すると非難した。
更に、マイク・リー上院議員(51歳、ユタ州選出共和党員、2011年初当選)は、“罪のない人間を有罪にするのが日本のやり方とするなら、今こそSOFAを再評価しなければなるまい”とまでツイートしている。
米軍将兵のために活動しているパイプ・ヒッター財団(PHF、注2後記)によると、“アルコニス中尉は不当に26日間も勾留され、かつ、SOFAに違反して裁判官が勾留手続き等必要不可欠な措置をすぐに下さなかった”という。
また、“日本の警察が、同中尉を眠らせずに長時間取り調べを行う等、同中尉の人権を蹂躙した”とも言及している。
SOFAの下では、日本側当局が“被疑者を拘束しておく重要な事由がある”ということでない限り、即刻釈放して米側に引き渡す必要がある。
なお、日本弁護士連合会(日弁連、1949年創立)情報によると、日本の法律では、保釈金が納められない限り、被疑者は23日間勾留できるとされている。
しかし、アルコニス中尉の場合では、日弁連によると、弁護士の同席も許されず、長時間にわたり密室での取り調べが行われたという。
同日付『ニューヨーク・ポスト』紙(1801年創刊の保守系メディア)は、「海軍中尉の有罪判決に対して家族はもとより米議員らも一斉非難」と、日本側の司法が不公正だとして猛烈な非難の声が上がっていると報じている。
アルコニス中尉の家族は、同中尉の禁固3年の有罪判決を聞いて“ショック”を受けたと語った。
何故なら、不幸にして2人の犠牲者及び複数の負傷者を出してしまったが、医師は事故の原因として、同中尉の疾患があったと述べていたからである。
PHFが収集した情報によると、日本の警察がSOFA規定を顧みずに、不当に1ヵ月近くも独房に監禁して取り調べを行ったという。
また、神経科医は、富士山に登ってすぐの24時間内の場合、突発的な高山病に罹患した恐れがあるとし、今回の事故も無謀運転(法廷は居眠り運転と認定)などではなく、失神したために起こった可能性があると語っているからである。
更に、同中尉の家族は遺族宛に謝罪文を書き、慰謝料として165万ドル(約2億2千万円)を支払いたい旨申し入れていた。
かかる背景があったにも拘らず、東京高裁まで上記のような有罪判決を支持したことから、アルコニス中尉の早期釈放を訴え続けてきたマイク・リー上院議員は、“SOFAに基づき、同中尉が在留米軍の一員として防衛に努めてきているにも拘らず、その同盟国から、事故発生後に病院搬送もしてくれず、即時逮捕・勾留されるという仕打ちを受けたことに対して、非常に憤りを感じる”と述べた。
その上で同議員は、“SOFAが日本において長年物議を醸してきたことから、日本の司法が、SOFAの問題を浮き彫りにするため同中尉をスケープゴートにした可能性がある”とまで言及している。
そして、“本件は同中尉及び家族の問題に止まらず、日米間の安全保障協力にまで発展しかねない問題であるから、バイデン大統領に任命されたエマニュエル駐日大使が即刻日本側と直談判すべき事案となっている”と強調した。
一方、マイク・レビン下院議員は、“米海軍はアルコニス中尉の有罪判決に反対・抗議しており、国防総省としても日本側の対応を注視し、同中尉釈放に向けて最善を尽くす意向である”と付言した。
なお、PHFが7月25日にリリースした直近情報によると、“事故犠牲者の実娘が、同中尉を起訴した検察官の事務所に勤務していることが分かった”とした上で、“通常日本の司法では、事故の加害者が被害者宛に謝罪文を手交することが慣習となっているが、左記の事情によってアルコニス中尉のしたためた謝罪文の受け取りが拒否されており、結果として同中尉の控訴棄却となってしまった”とされている。
(注1)日米地位協定:日本と米国との間の「相互協力及び安全保障条約」第六条に基づく、施設及び区域並びに日本における米国軍隊の地位に関する協定。1960年日米安全保障条約改定と同時に制定。
(注2)PHF:米軍所属の将兵の権利と自由を擁護するために活動する米民間財団。主として外国政府等が関わる問題に巻き込まれた将兵への資金的援助・法的擁護、議員等への周知による支援獲得の活動を行う。パイプ・ヒッターとは、何があろうと屈することなく正しい行いをする人、の意。
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