2月3日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「テリーザ・メイ首相、人権問題への消極的な対応について中国メディアから称賛されるも、英国メディアは酷評」
英国のテリーザ・メイ首相は、EU離脱(Brexit)後の英国経済をにらんでEU側との厳しい交渉に臨む必要があること、また、同盟国の米国との関係がギクシャクしていること等、問題が山積している。
そこで同首相は、特に前者の問題を好転させるため、初訪中にあたって、中国側との経済連携強化が最優先課題とせざるを得ない状況であった。...
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2月3日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「テリーザ・メイ首相、人権問題への消極的な対応について中国メディアから称賛されるも、英国メディアは酷評」
英国のテリーザ・メイ首相は、EU離脱(Brexit)後の英国経済をにらんでEU側との厳しい交渉に臨む必要があること、また、同盟国の米国との関係がギクシャクしていること等、問題が山積している。
そこで同首相は、特に前者の問題を好転させるため、初訪中にあたって、中国側との経済連携強化が最優先課題とせざるを得ない状況であった。従って、訪中の成果として、中国側との130億ドル(約1兆4,300億円)余りのビジネス構築ができたこと、更には、中国側から中英間の“黄金の時代”は続いているとの賛辞を得たことについて、メイ首相としては達成感を持って帰国したはずである。
しかし、同首相が3日間の訪中を終えて帰国した2月2日、大方の英国メディアからブーイングを浴びせられた。何故なら、同首相は、国際社会が問題視している、中国による香港などでの反民主化、人権蹂躙問題について、習近平(シー・チンピン)国家主席や李克強(リー・コーチアン)首相との会談において、何ら厳しい指摘をしなかったからである。
同首相は記者会見において、人権問題を提起したとコメントしているが、英国高官が英
『ガーディアン』紙に語ったところによれば、同首相は私的な打合せの際に提言したとのことで、結果として、公式会談においては一切議題に上げられなかったということになる。
その証左として、中国国営
『環球時報』は、メイ首相が西側メディアの一方的主張や“香港の民主化を叫ぶ輩”の圧力を無視して、“実利的な”対応をしたことを評価するとしている。
同日付英
『UKニュース』:「テリーザ・メイ首相、訪中に当り貿易問題を優先」
習国家主席が2015年秋に訪英時、デビッド・キャメロン首相(当時)との間で、中国による英原子力発電所建設・運営参画について基本合意をみた。
しかし、2016年7月に就任したメイ首相が、ヒンクリー・ポイント新規原発建設・運営計画(注後記)に待ったをかけたことから、一時中英関係が危うくなった。ただ、同首相としても、Brexit後の英国経済をにらみ、中国との経済連携強化が必要と考え、同年9月に条件付きで同計画を認可している。
そこで習主席は、今回のメイ首相訪中に当り、2015年訪英時に語った中英関係の“黄金時代”との表現を用いて歓迎の意を表した。そして、メイ首相との会談で、中国の思惑どおりの中英貿易協議ができたことから、同主席は、今後とも英国への中国投資は増大していこうと持ち上げた。
同日付中国
『新華社通信』:「保護主義が跋扈する中、メイ首相の訪中に黄金の輝き」
先週スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会で、ドナルド・トランプ大統領が“米国第一主義”を叫んだように、今や世界では保護主義の嵐が吹き荒れつつある。
そういった最中、訪中したメイ首相との会談で、習国家主席は、中英両国が更に強く連携して、自由主義貿易を推進していくことを確認した。
そしてその証左として、中国主導の一帯一路経済圏構想の一環として、中英間で90億ポンド(約128億ドル、約1兆4,080億円)に上る金融・研究開発・農業・技術開発分野での協定が成立した。
習国家主席はこの結果を評価した上で、今後とも中英関係の“黄金時代”が更に継続・発展すると強調している。
(注)ヒンクリー・ポイント新規原発建設・運営計画:フランスの電力公社EDFが主導しているC原発の建設・運営計画(総工費240億ドル、2兆6,400億円相当)。これに中国企業が3分の1出資する基本契約が成立済み。なお、A原発は運転停止、B原発はEDFが保有・運用中。
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1月15日付GLOBALi「スイスの首都で、ダボス会議開催の10日も前から反トランプの大デモ行進」の中で、“多くの保護主義政策反対論者は、トランプ大統領には同会議出席の資格も権利もないとして、会議10日も前から反トランプ運動を展開し始めている”と報じた。そして、その後降って湧いたように、米連邦予算がトランプ政権対議会の衝突で1月20日に失効し、関係省庁の閉鎖という事態が発生している。このため、トランプ大統領のダボス会議出席も危うくなったが、1月22日につなぎ予算が成立して事なきを得た。但し、“米国第一主義”を標榜する同大統領に対して、欧州首脳は徒党を組んで対抗しようと準備していたり、また、地元スイスの反トランプ勢力の反対運動、更には、地元の大雪のための雪崩危険性から、会議場への移動が制限される恐れ等々、同大統領の会議出席は前途多難の模様である。
1月22日付
『AP通信』:「トランプ大統領、エリートの集まるダボス会議では歓迎されているのか、招かれざる客なのか、事態は混沌」
今年の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)のテーマは、「分断された世界における共通の未来の創造」である。
今回、ドナルド・トランプ大統領が初めて出席するが、“米国第一主義”を標榜する同大統領にとっては、一番似つかわしくないテーマであろう。...
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1月22日付
『AP通信』:「トランプ大統領、エリートの集まるダボス会議では歓迎されているのか、招かれざる客なのか、事態は混沌」
今年の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)のテーマは、「分断された世界における共通の未来の創造」である。
今回、ドナルド・トランプ大統領が初めて出席するが、“米国第一主義”を標榜する同大統領にとっては、一番似つかわしくないテーマであろう。同会議は1月23~26日開催予定で、同大統領が出席して演説するのは最終日となる。
そこで、米国保護主義政策に批判的な欧州首脳らは、会議初日からダボスに集結し、トランプ大統領の一方的演説に対して、一緒になって対抗しようとしている。
米ホワイトハウスは、欧州側の対応をよく理解していながら、トランプ大統領の出席を止めなかったのは、同大統領の自己主張を抑えられなかったためとみられる。
すなわち、昨年の同会議では、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が、米国のお株を奪うように、今後は中国が世界の自由貿易や安全保障をリードしていくとぶち上げた。そして同じ頃にトランプ大統領が就任演説で、“米国第一主義”を高らかに宣言するニュース映像が世界に配信されてしまっている。
従って、同大統領としては、今年こそ中国のやりたい放題はさせまいとして、減税政策等自身が推進した政策で米国景気が最高潮にあり、これによって世界各国にも恩恵をもたらす等々ぶち上げたいと考えているとみられる。
なお、地元スイスでは既に反トランプ運動が展開されており、1月23日にはチューリッヒで、また、1月25日には会場のダボスで、それぞれデモ行進が予定されている。
また、欧州首脳以外でも、例えば“野外の便所”とか、その他あからさまな人種差別表現で蔑視された中米・アフリカ諸国の首脳達は、同大統領の演説を無視する等の態度に出る可能性もある。
ただ、WEF創設者で主宰者のクラウス・シュワブ氏(スイスの経済学者、79歳)は、47年前にWEFを立ち上げたのは世界のビジネスを協議する場の提供であったから、その優秀な国際ビジネスマンでもある同大統領が、同会議で演説することは意義があるとして歓迎の意を表明している。
なお、同氏は1月22日の『AP通信』のインタビューに答えて、懸念される雪崩が発生しないこと、また、米予算編成問題が間もなく解決し、同大統領が会議に出席できるよう願っているとコメントした。
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