ASEAN、南シナ海問題で米・中よりむしろインドや豪州に期待?【米・英国メディア】(2018/03/16)
既報どおり、豪州政府は今週、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳をシドニーに迎えて首脳会議を開催する。また、インドは今年1月、ASEAN首脳をニューデリーに招待して、同じく首脳会議を開催している。かかる動きよりASEANは、相変わらず力で押してくる中国を牽制するためには、“米国第一”を掲げていきなり関税障壁を設けたり、外交トップのティラーソン国務長官を突然解任するトランプ大統領を余り頼りにせず、むしろインドや豪州に後ろ盾になってもらいたいと考え始めているとみられる。なお、残念ながら安倍首相は、トランプ大統領べったりと見做されているため、やはり頼りにはされていない模様である。
3月16日付米
『CNBCニュース』:「ASEAN諸国、米国を取るか中国を取るかというより急速にインドに傾斜」
世界で最も早い速度で経済成長を続けているとされるASEAN諸国は、超大国の米国を取るか中国を取るかというよりも、むしろ、インドとの連携強化に目が向いているとみられる。
何故なら、中国は相変わらず経済及び軍事力でコントロールしようとしているのに対して、“米国第一主義”を標榜する米国は、予測できない事態が多く、頼りにできないと考え始めているからである。...
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3月16日付米
『CNBCニュース』:「ASEAN諸国、米国を取るか中国を取るかというより急速にインドに傾斜」
世界で最も早い速度で経済成長を続けているとされるASEAN諸国は、超大国の米国を取るか中国を取るかというよりも、むしろ、インドとの連携強化に目が向いているとみられる。
何故なら、中国は相変わらず経済及び軍事力でコントロールしようとしているのに対して、“米国第一主義”を標榜する米国は、予測できない事態が多く、頼りにできないと考え始めているからである。
ASEANの中でも、カンボジアやタイは、中国の推す一帯一路経済圏構想の恩恵が期待できるとして、表立って中国批判をすることはない。
しかし、ベトナム、シンガポールやインドネシアは、南シナ海における中国の傍若無人振りには辟易しており、これに対抗するため、後ろ盾を欲している。
ところが、かつてアジア重点主義を掲げた米国は、トランプ政権になって、米国の利益にならないことには興味を示さないとみられるばかりか、現実問題、トランプ大統領は突然、鉄・アルミニウム製品に高関税を掛けると宣言したり、外交トップのティラーソン国務長官を解任したりと、とても信頼に足るリーダーとはみられない。
また、安倍首相についても、これまでのトランプ大統領べったりの発言・行動より、やはり同様に全幅の信頼は置けないとみられている。
そこでASEANとして期待しているのが、成長著しいインドである。特に、“東方戦略”を掲げるナレンドラ・モディ首相(67歳)に、中国対抗のための後ろ盾になってもらいたいと考えているとみられる。
現に、ベトナムは今月初め、チャン・ダイ・クアン国家主席(61歳)が訪印して、両国間の対中戦略協議を展開し、防衛及び経済協力で合意している。
更にASEANは、3月16~18日のシドニーでの首脳会議を開催する豪州にも期待しているとみられる。
一方、同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『ロイター通信』配信):「インドネシア、南シナ海での海洋監視強化を提言」
インドネシアのリャミザード・リャクドゥ国防相(67歳)は3月16日、ASEAN諸国に対して、中国の横暴を牽制するため、南シナ海の海洋監視を強化するよう訴えていると表明した。
インドネシアは、南シナ海の領有権争いに直接関わっていないが、同海域南端のナトゥーナ諸島で中国漁師団の違法操業、更には、中国軍艦派遣に手を焼いていると主張している。
同国防相は、特にスールー海(フィリピン南部とインドネシア北部カリマンタン島との間の海)、マラッカ海峡(マレーシアとインドネシア西部スマトラ島間の海峡)、タイ南部の海岸線(シャム湾及びマレーシア・カンボジア・ベトナム海岸線)における監視航行について、関係各国と協力して強化していきたいとしている。
一方、豪州政府の呼び掛けで、3月16~18日の間、シドニーにおいてASEAN・豪州首脳会議が開催される。それに先駆けて、豪州のジュリー・ビショップ外相(61歳)、マリーズ・ペイン国防相(53歳)は3月16日、インドネシアのルトノ・マルスディ外相(55歳)、リャクドゥ国防相と防衛・経済協力について事前協議している。
なお、豪州は南シナ海の領有権問題に直接関わっていないが、ASEAN・豪州首脳会議においては、本件以外に相互経済連携や、中東から同地域に戻ったとされるイスラム過激派によるテロの脅威に協力して対抗していくことが協議される。
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米・中両大国、外交政策で大きな違い-片や国内優先、こなた積極外交戦略【米・英国メディア】(2018/02/09)
米・中両大国は、経済・軍事面でお互いを相当意識している。ただ、トランプ政権は、“米国第一主義”を掲げるとおり、海外支援含めた外交関連予算を大きく絞ろうとしている。一方、習政権は、かつての米国のお株を奪うように、金融システムや自由貿易における覇者となるべく、特に対外政策に積極的に出てきている。また、個人の好みの差、また、就任期間の差もあるかも知れないが、トランプ大統領はまだ一度も南米やアフリカを訪問していないのに対して、習国家主席は既に複数回訪問して影響力を高めている。
2月9日付米
『ザ・クォーツ』誌:「米・中両国、外交政策見直しするも方向は全く正反対」
米・中両大国は、それぞれ外交や海外支援政策を見直しつつあるが、向かう方向は正反対とみられる。
今週の
『ブルームバーグ』オンラインニュース報道によると、中国政府は、これまで何年も最弱と言われてきた外交部(省に相当)をテコ入れして、海外における中国のプレゼンス最大化のためにもっと重要な役割を演じさせるようにするという。...
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2月9日付米
『ザ・クォーツ』誌:「米・中両国、外交政策見直しするも方向は全く正反対」
米・中両大国は、それぞれ外交や海外支援政策を見直しつつあるが、向かう方向は正反対とみられる。
今週の
『ブルームバーグ』オンラインニュース報道によると、中国政府は、これまで何年も最弱と言われてきた外交部(省に相当)をテコ入れして、海外における中国のプレゼンス最大化のためにもっと重要な役割を演じさせるようにするという。
特に、昨年10月に2期目を迎えた習近平(シー・チンピン)国家主席は、“新しい時代”に入った中国として、今後もっと総合的な外交政策を構築・展開させていくと決断したとする。
具体的には、これまで中国外交のトップであった楊潔篪(ヤン・チエチー、67歳)国務委員が、昨年10月の党大会において、初めて中国中央政治局員(25人からなる中央政府最高決定機関)に昇格している。
そして、昨年中国は、外交部門の予算を540億人民元(78億ドル、約8,500億円)としたが、これは5年前より60%増となっている。
一方、これに対してドナルド・トランプ大統領は、“米国第一主義”の号令の下、昨年3月に発表した2018年予算案では、外交・海外支援政策で約30%の歳費削減をするとしている。
そして、中国政府の動きと対照的に、トランプ政権では、何人もの幹部外交官が辞任したり、また、その他重要部門の幹部が空席のままとなっている。
更に、トランプ大統領とレックス・ティラーソン国務長官との意見の相違、例えば、北朝鮮政策、イラン核合意、パリ協定(気候変動対策)などで対立が取り沙汰されている。
但し、米議会は外交政策の重要性を十分認識している模様で、リンゼー・グラハム上院議員(上院外交委員会委員長)が中心になって昨年9月、トランプ大統領が上げた予算額を大幅に上回る、510億ドル(約5兆6,000億円)の国務省予算を承認している。
一方、同日付英
『ザ・ガーディアン』紙:「トランプ大統領が南米を悪意を持って無視しているのに対して、中国は虎視眈々と進出機会を狙う」
トランプ大統領は、南米の国に対して“野外便所”と蔑視する発言をする前から、南米を好んでいないことが明らかである。何故なら、かつて実業家時代に一度リオデジャネイロを訪問する機会があった際、“本当は行きたくはなかった”として、1泊もしないでとんぼ返りしたことがあるからである。
そして大統領就任以来、南米はおろかカリブ海地域にも一歩も足を運んでいない。
一方、習国家主席は2012年の就任以来、既に3度も南米を訪問して、同地域における影響力を高めてきている。
具体的には、直近に開かれた南米・カリブ海諸国首脳会議に、中国の王毅(ワン・イー)外交部長が出席している。
また、昨年パナマは、親米の台湾と国交を断絶して、中国との関係構築に舵を切った。更に、ドミニカ共和国や他の国々も、中国との関係強化を望んでいるとみられる。
なお、中国の南米進出に危機感を覚えたティラーソン国務長官は、今週南米諸国を歴訪して、米国の影響力を再確認すべく努めようとしている。
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