11月19日付
『ロイター通信』:「APEC首脳、米国にトランプ後の自由貿易体制再構築を要求」
この程開催されているAPEC会議において、多くの参加首脳が11月19日、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題によって引き起こされた世界的経済危機に立ち向かうため、一層の自由かつ開かれた多国間取引を求めていくと述べ、一部は更に、バイデン政権下での米国の世界貿易への積極的参加を希望する旨言及した。
今回の会議は、クアラルンプール(マレーシア)において、21ヵ国代表がオンライン上で参加する形で開催されている。
その中で中心国である中国の習近平(シー・チンピン、67歳)国家主席は、まず保護主義を否定するとした上で、グローバリゼーション(注2後記)はもはや“後戻りできない”ものとなっていると強調した。
同国家主席は、11月20日開催予定のAPEC首脳会議に先駆けて、前日開催の経済界代表対話の冒頭に基調演説したもので、“国際社会を「分離」したり、小グループで結託して他を排除するようなことはあってはならない”とし、“中国は今後とも、多国間主義や相互協力、利益共有といった原則に従って活動していくことを約束する”と付言した。
“米国第一主義”という保護政策を掲げ、中国他から非難の標的とされたドナルド・トランプ大統領(74歳)は、米高官によると、2017年参加以来二度目となる参加(オンライン上で)を果たすことになるという。
一方、習国家主席に続いて、シンガポールのリー・シェンロン首相(68歳)も、バイデン政権下で“米国がより多国間主義となること”を期待していると述べた。
同首相は、“世界保健機関(WHO)やAPECに対してもっと強力的となることを望んでいる”とし、“できれば、米国撤退を受けて環太平洋パートナーシップ協定(TPP)後の組織として成立した、包括的及び先進的TPP(CPTPP)への参加も検討してもらえればと願っている”とも付言した。
また、今回のAPEC会議議長国マレーシアのムヒディン・ヤシン首相(73歳)は、APEC会議参加国は“2020後のビジョン”策定に注力しているとし、自由かつ多国間の貿易が経済回復に不可欠なことであると強調した。
(注1)APEC:1989年発足の、アジア太平洋(環太平洋地域)初の経済協力を目的とする政府間公式協議体。初め、日・米・加・韓・豪等12ヵ国が集い、以降、中国・台湾・香港・ロシア・チリ・ベトナム等が年々加わり、現行21ヵ国となっている。なお、台湾・香港が参加していることもあって、非公式なフォーラムと位置付けられ、国旗や国歌の使用は禁止されている。
(注2)グローバリゼーション:ヒト、モノ、カネ、情報の国境を越えた移動が地球規模で盛んになり、政治的・経済的・文化的な境界線、障壁がボーダレス化することによって、社会の同質化と多様化が同時に進行すること。すなわち、地球規模での情報ネットワークや市場が形成され、情報や資本などが自由に移動し、その影響を世界各地が同時に受けるようになること。
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米大統領選で、投票日後4日経ってから漸く、ジョー・バイデン民主党候補(77歳)が勝利宣言を行った。ドナルド・トランプ大統領(74歳)は往生際が悪く、法廷闘争に一縷の望みをかけて伝統的な“敗北宣言”を行おうとしないが、市場はもとより世界のほとんどの首脳がバイデン候補の当確を祝福した。ただ、トランプ大統領との個人的関係に拠っていたロシアと北朝鮮の首脳は恐らくがっかりしているものとみられる。
11月8日付
『AP通信』、
『ロイター通信』、
『AFP通信』他:「世界の首脳、バイデン次期大統領との新たな関係に期待」
世界の主だった首脳が11月8日、ジョー・バイデン民主党候補の大統領選当確を祝福した。
何故なら、ドナルド・トランプ大統領の4年間は、国際的な協調を全て拒否する政策が進められていたため、これで漸く米国首脳と、気候変動(パリ協定)、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症対策、その他諸々の重要問題について協議することができると期待されるからである。
すなわち、トランプ大統領が“米国第一主義”を掲げて悉く問題化させたパリ協定、北大西洋条約機構(NATO)、世界保健機関(WHO)等について、欧州やアジアの同盟国は改めて真剣に取り組むことを望んでいる。
まず、菅義偉首相(71歳)がツイッターで、“日米同盟を更に強固なものとするために、また、インド太平洋地域及び世界の平和、自由及び繁栄を確保するために、一緒に取り組んでいきたい”と祝福した。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン、67歳)大統領も同じくツイッターで、“共通する価値観”を強固にするために共に努めたいと表明した。
一方、トランプ大統領と敵対してきた中国では、表立った反応はみられず、ただ、SNS中国人ユーザーは、(トランプに辟易していたためか)バイデン氏に代わることを歓迎している。
更に、中国国営『人民日報』は、トランプ大統領が“大差で勝利”したと述べた際、“あはは!”と大笑いするツイートを投稿している。
また、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン、64歳)総統は、今年1月の再選時にバイデン氏から祝福されていたこともあって、“バイデン氏の自由で開かれた社会を目指す姿勢に共感し、更に友好関係を深めていきたい”とのメッセージを送った。
一方、トランプ大統領と友好関係にあったウラジーミル・プーチン大統領(68歳)は目下のところ何ら反応を見せていない。
しかし、同じくフィリピンのトランプとの異名を取って親交のあったロドリゴ・ドゥテルテ大統領(75歳)は、トランプ氏の“選挙は終結していない”との主張を退け、バイデン氏の当選を祝っている。
また、NATOの防衛費供出問題でトランプ氏ともめていた欧州諸国も、バイデン氏当確を歓迎している。
ドイツのハイコ・マース外相(54歳)は、“(バイデン氏と共に)NATO体制につき新たな協力関係を構築していきたい”とツイートしている。
その他、トランプ大統領にやり込められた首脳も、次々にバイデン氏を祝福している。
カナダのジャスティン・トルドー首相(48歳)は、北米自由貿易協定の問題のみならず、トランプ氏から個人攻撃を受けていたこともあって、“バイデン次期大統領、カマラ・ハリス次期副大統領(56歳)、及び米議会と一緒になって、国際社会の難題に取り組んでいきたい”と強調した。
更にオーストラリアのスコット・モリソン首相(52歳)も、“米国との重要なパートナーシップ”を強化し、“自由で開かれたインド太平洋地域の確保”に向けて協働していきたいと表明した。
また、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(66歳)、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(42歳)、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領(65歳)も、バイデン氏の当選を祝うメッセージを送っている。
一方、ベネズエラでは、トランプ大統領と敵対してきた反米主義のニコラス・マドゥロ大統領(57歳)も、また、反対に支援を受けてきた親米主義のフアン・グアイド国民議会議長(37歳)も、それぞれ同時にバイデン氏を祝福している。
その他、主だった次の首脳がバイデン氏の当選を祝っている。
・パキスタンのイムラン・カーン首相(68歳):違法な租税回避地の根絶やアフガニスタンの和平調整への期待。
・インドのナレンドラ・モディ首相:トランプ大統領との2ショット写真を看板にする程の仲だったが、バイデン氏との写真も公開して、“目覚ましい勝利を祝福”とメッセージ。
・イラクのバルハム・サリフ大統領(60歳):2003年に米軍がイラク侵攻した際の米側中心人物ではあったが、バイデン氏とは親交があり信頼できるパートナーと評価。
・アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン皇太子(59歳):トランプ氏娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問(39歳)と親交が深いが、バイデン・ハリス両氏をツイッター上で祝福。
・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(71歳):ツイッターのプロフィールにトランプ氏との2ショット写真を使用しているが、バイデン・ハリス両氏と共に米・イスラエル同盟関係強化に邁進したいとメッセージ。ただ、別の声明で、トランプ氏のお陰で米・イスラエル関係が大きく前進できたことに感謝と表明。
・英国のボリス・ジョンソン首相(56歳):トランプ氏の盟友であったが、バイデン氏と“気候変動対策から通商、安全保障までのあらゆる分野での親密な連携に期待”とメッセージ。
一方、トランプ氏と特に親密だった、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領(65歳)、サウジアラビアのモハンマド・ビン・サルマーン皇太子(35歳)は沈黙を守り、また、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(66歳)は、“(開票やトランプ氏提訴の結果等)全ての事態が解決するまで”静観したいと表明している。
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