既報どおり、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(38歳、労働党々首)は今年6月、在任中の首相として世界で初めて6週間の産休を取得した。元々、同国では二十年程前に2代続いて女性首相が誕生していたが、アーダーン首相は同国政治史150年間において最年少の37歳3ヵ月で首相に就任しており、初めから“女性の活躍”を体現してきていた。そしてこの程同首相は、国連73年の歴史上初めて、生後3ヵ月の赤ちゃんを連れて国連総会に出席している。
9月25日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「ニュージーランドの“ファースト・ベイビー”国連史上初めて総会デビュー」
9月24日にニューヨークの国連本部で開催された第73回国連総会において、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(2017年10月就任の第40代首相)の女児である生後3ヵ月の“ファースト・ベイビー(ファースト・レイディに引っ掛けたもの)”が、国連史上最年少の出席者としてデビューした。
国連総会の“ネルソン・マンデラ平和サミット(注1後記)”に同首相とともに出席したもので、同首相が登壇している間、同首相のパートナーで同女児の父親であるクラーク・ゲイフォード氏に抱かれて、母親の演説に聞き入っていた。
同女児の名前は、ニーブ・テアロハ・アーダーン・ゲイフォード(ニーブは輝く、テアロハは愛の意)で、ゲイフォード氏はツイッター上に、ニーブ・テアロハちゃん用の国連発行許可証(写真入り)を掲載した。
アーダーン首相は、同国史上最年少の首相で、また、首相在任中に世界で初めて6週間の産休を取得している。
同首相は『ニュージーランド・ヘラルド』紙のインタビューに答えて、女児への授乳が必要なため、ニューヨーク訪問はもとより、国連総会にも帯同せねばならなかったと説明している。
国連のステファン・デュジャリック報道官は『ロイター通信』の取材に対して、世界中で女性首脳は僅か5%でしかないので、女性リーダーがもっと増えるよう、同首相の行動を称賛したいと語った。
また、米国の前国連大使のサマンサ・パワー氏も、デュジャリック報道官のコメントをツイッターで支持を表明した。
なお、アーダーン首相就任の最初の1年間で、最低賃金の引き上げ、低所得層への支援、外国人によるニュージーランド国内住居購入禁止、2050年までに“カーボン・ニュートラル(注2後記)”達成による気候変動対策実施等、重要政策を実行している。
そして、この1年間のニュージーランドの経済成長率は2.7%と、依然好調を維持している。
同日付英『ジ・インディペンデント』紙:「ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相、世界で初めて赤ちゃんを国連総会に帯同」
アーダーン首相のパートナーでニーブ・テアロハちゃんの父親でもあるゲイフォード氏は、ツイッターのフォロワーから女児の国連入館パスが見たいというのでツイッターに掲載したとつぶやいた。
更に同氏は、会議場に入ってきた日本代表団の人たちを驚かせたかったとし、そして、(自身の女児の国連総会出席は)21世紀の偉大な出来事に違いない、とツイートした。
一方、9月26日付ニュージーランド『スタッフ・ウェブサイトニュース』:「アーダーン首相、トランプ大統領のスピーチに対する失笑には加わらなかったと発言」
国連総会における一般演説で、ドナルド・トランプ大統領が、“米国第一主義”を含めた自身の推し進める政策は、米国のどの大統領よりも素晴らしい成果をもたらしていると、自画自賛するスピーチを行った。
これに対して、各国代表団の中には失笑を漏らす人たちがいたが、アーダーン首相は、失笑に加わることはしなかったと語った。
同首相は、同大統領の演説内容は就任以来繰り返してきたこと、また、ニュージーランドが拠り所としてきた、多国間主義を基本とする国連の方針と明らかに異なる同大統領の政策について、相容れないものだとコメントした。
(注1)ネルソン・マンデラ平和サミット:南アフリカの故ネルソン・マンデラ大統領の平和貢献を尊重し、昨年12月開催の国連総会で命名された、国連全加盟国が出席しての世界平和協議の総会。
(注2)カーボン・ニュートラル:ライフサイクルの中で、二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロのこと。例えば、化石燃料の代わりにバイオマスエネルギーを利用することで、二酸化炭素の発生と固定を平衡し、地球上の二酸化炭素を一定量に保つことができるとする考え方。また、二酸化炭素排出量を削減するための植林や自然エネルギーの導入などは、人間活動による二酸化炭素の排出量を相殺できることもカーボン・ニュートラルと呼ぶことがある。
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ドイツの保険会社「R+V Versicherung」は6日、2018年のドイツ人の恐怖に関する世論調査の結果を発表した。これによると、回答者が挙げた年間最大の恐怖は、トランプ米大統領の政策への懸念であり、難民やテロなどに対する懸念を上回った。
同世論調査によると、トランプ大統領が、イランの核合意や気候変動に関するパリ協定からの離脱や、貿易や安全保障問題で示すドイツ人に対する敵対心など、その政策によって世界をより危険な場所にしていると懸念している人が、69%に上ることが判明した。
大量の難民や移民の流入と、その結果、既存の移民グループとの緊張などの新たなリスクが生じていることを最大の恐怖とした人は63%で、難民・移民に対する懸念は昨年の57%から増加している。政治家の能力の欠如を挙げた人は60%だった。テロを最上位に挙げた人は59%にとどまり、昨年の71%から大きく減少している。過去2年間の最上位はテロの問題で、それ以前の5年間はユーロ危機だった。
他の懸念点としては、57%が政治や宗教の過激主義への恐怖心を示し、56%が気候変動に伴う自然災害を挙げている。環境問題、ユーロ圏諸国の負債への懸念、高齢化対策なども上位に挙げられた。自然災害や食の安全など、例年多くの人が挙げる問題がそれほど上位に登場せず、非常に政治的な要素が順位に表れたのが今年の特徴であるという。
R+Vに対し調査に関する助言を行った独ハイデルベルク大学の政治学者、マンフレート・シュミット教授は、「トランプ大統領の容赦ない『米国第一主義』、国際的な合意事項への反感、同盟国に対するものも含む攻撃的な貿易・安全保障政策は、大多数の国民の恐怖心をあおるものだ。」と指摘した。
シュミット氏は、ドイツの対米貿易黒字額や防衛費の負担額について、トランプ大統領がメルケル政権に攻撃的な発言を繰り返していることに言及し、「トランプ氏のドイツに対する攻撃は、心情面に大きな影響をもたらしている。」と説明している。
本調査はR+Vによって30年近くにわたり毎年実施されており、今年は6~7月に約2,400人のドイツ人を対象に行われた。これは、8月末に東部の都市ケムニッツでのドイツ人の刺殺事件で2人の移民が容疑者として拘束され、移民反対を訴える極右活動家によるデモが行われる前の時期となる。
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