クロアチア、ユーロ参加基準を満たして2023年1月から20ヵ国目のユーロ採用国に【米・ブルガリアメディア】
欧州連合(EU、1951年前身設立)は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻に伴って新たにスウェーデン・フィンランドという中立国2ヵ国の参加が期待されている。そしてこの程、EUの最も新しい加盟国のクロアチア(1991年ユーゴスラビアより独立、2013年EU加盟)が、ユーロ参加基準を満たしたことから、2023年1月から20ヵ国目のユーロ採用国になる目処が立っている。
6月2日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』は、「EU、クロアチアが2023年よりユーロ採用予定と発表」と題して、EUに最も直近に加盟したクロアチアが、EU共通通貨ユーロの参加基準を満たしたことから、2023年1月から正式に採用・流通させることになると報じている。
欧州委員会(EC、1967年設立のEUの政策執行機関)は6月1日、クロアチアがユーロ参加基準を満たしたことから、来年1月1日以降正式にユーロを採用・流通させる20ヵ国目となる見通しとなったと発表した。...
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6月2日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』は、「EU、クロアチアが2023年よりユーロ採用予定と発表」と題して、EUに最も直近に加盟したクロアチアが、EU共通通貨ユーロの参加基準を満たしたことから、2023年1月から正式に採用・流通させることになると報じている。
欧州委員会(EC、1967年設立のEUの政策執行機関)は6月1日、クロアチアがユーロ参加基準を満たしたことから、来年1月1日以降正式にユーロを採用・流通させる20ヵ国目となる見通しとなったと発表した。
クロアチアが自国通貨クーナ(約0.13ユーロ、18円)からユーロに変更となれば、2013年にEUに加盟以来10年弱での実現となり、EUの統合を益々強化することになる。
EU幹部によれば、クロアチアは、EU加盟国と同等のインフレーションを維持できることや公共投資が健全であること等、厳しいユーロ参加基準を満たしたという。
ECのウルズラ・フォン・デア・ライエン第13代委員長(63歳、2019年就任、元ドイツ国防相)は、クロアチアがユーロを採用することによって、“同国の経済を強化し、市民・産業界・社会等広範囲に利益をもたらすことになろう”とコメントした。
更に同委員長は、“クロアチアのユーロ採用によって、ユーロ自身もより強い通貨になるものと思う”とも付言した。
欧州中央銀行(ECB、1998年設立、ユーロ圏の金融政策決定機関)も6月1日、クロアチアのユーロ採用について支持する声明を発表している。
クロアチアのユーロ採用のためには、7月に開催されるEU加盟国財務相会議において承認される必要がある。
ただ、ECのバルディス・ドンブロウスキス副委員長(50歳、2014年就任、元ラトビア首相)は、“加盟国からは支持の声を多く聞いているので、クロアチアが来年からユーロ採用となるのは確かなことだと思う”とコメントしている。
クロアチアのアンドレイ・プレンコビッチ第12代首相(52歳、2016年就任)も、来年からユーロ圏の仲間入りとなるのは確実なことと信じていると表明した。
同首相はまた、ユーロ採用開始と同日に、シェンゲン圏(注1後記)に加入することも強く希望しているとも語った。
通貨ユーロは、2002年1月1日にEU加盟12ヵ国(イタリア・フランス・ドイツ・ギリシャ等)によって採用・流通が始まった。
以降、順次7ヵ国が参加して目下19ヵ国が採用している。
クロアチアの次にはブルガリアが採用の意向を示していて、2024年からの移行を目指している。
しかし、EU加盟国内では、同国の経済が脆弱であることや政治的支持が十分集められていないことを懸念する声がある。
何故なら、20年前のユーロ立ち上げ時、例えば金融不安を抱えるギリシャなどを急いで参加させたことから、暫くの間ユーロ圏において債務危機が取り沙汰される状態となっていたからである。
同日付ブルガリア『ノビニテ(ブルガリア語でニュースの意)』(2001年設立の英語ニュース)は、「EC、クロアチアはユーロ採用可だがブルガリアはまだ、と発表」と報じている。
ECが6月1日に発表したところによると、クロアチアはユーロ参加基準の4項目(安定かつ持続可能な公的金融、為替レートの安定、長期金利率、物価の安定)を満たしたので2023年1月1日以降ユーロ採用が認められる見通しだが、ブルガリアは物価の安定基準を満たせず見送りになったという。
ECのパオロ・ジェンティローニ経済担当委員(67歳、元イタリア首相)は、“今回は対象7ヵ国のうちクロアチアだけが参加基準を満たしたが、ブルガリアもあと1項目だけであるので、2024年ユーロ採用に向けて支援していきたい”と述べている。
ECがリリースした2022年統合レポートによると、対象となったのはブルガリア、ルーマニア、クロアチア、チェコ、ポーランド、ハンガリー、スウェーデンの7ヵ国である。
なお、欧州理事会(注2後記)が今年7月上旬に開く会合において、クロアチアのユーロ採用の可否について最終決定することになる。
(注1)シェンゲン圏:1985年にルクセンブルク・シェンゲンにおいて署名された協定が適用されるヨーロッパの26の国の領域。1995年に発効。渡航者が圏内に入域、または圏外へ出域する場合には国境検査を受けるが、圏内で国境を越える際には検査を受ける必要はなく、この点で単一の国家のようになっている。シェンゲン圏はアイスランド、ノルウェー、スイスといったEU非加盟国も含まれている。
(注2)欧州理事会:EU加盟国の国家元首または政府の長と欧州理事会議長、EC委員長で構成される、EU条約に定められている機関。1961年前身の会合開催。立法権は与えられていないものの、重要な問題を扱う機関であり、またその決定はEUの一般的な政治指針を定める推進力となる。半年間に少なくとも2回の会合を、EU本部のあるベルギー・ブリュッセルで開催。
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中国、米軍撤退後のイラクでも静かに影響力拡大【米メディア】
米国は昨年12月末、イラクに展開していたイスラム過激派組織(イスラム国)の掃討作戦が終了したとして、イラクでの戦闘任務を完了させた。ただ米国は、2003年のイラク戦争突入以来イラクに深く関わってきたこともあって、平和国家となったと心から感じられないイラク市民にとって、米国のことを良く思わない人も多い。そうした中、アフガニスタン同様、米軍撤退後のイラクにおいて、中国がソフト・パワー(注後記)を用いて影響力を高めようとしている。
1月31日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「イラク北部で中国語習得コースを立ち上げ、中国のソフト・パワー強化」
イラク北部のクルド人自治区の中心都市アルビールにおいて、中国語習得コースが立ち上げられている。
同市内のサラハディン大(1968年設立の公立大学)に設けられたもので、胡志偉先生(フー・チーウェイ、52歳)が14人のクルド人学生に熱心に教えている。
同コースは同大で試験的に始められたもので、もし当該学生が無事に修了すれば、同大で正式に中国語学部が開設されることになる。...
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1月31日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「イラク北部で中国語習得コースを立ち上げ、中国のソフト・パワー強化」
イラク北部のクルド人自治区の中心都市アルビールにおいて、中国語習得コースが立ち上げられている。
同市内のサラハディン大(1968年設立の公立大学)に設けられたもので、胡志偉先生(フー・チーウェイ、52歳)が14人のクルド人学生に熱心に教えている。
同コースは同大で試験的に始められたもので、もし当該学生が無事に修了すれば、同大で正式に中国語学部が開設されることになる。
そして、同地域に展開する多くの中国企業にとって、同コース修了の学生を雇用しやすくなる。
中国は、エネルギー事業を中心に同地域での影響力を拡大している。
更に近年では、同地域が心底必要な学校から、発電所、工場、水処理施設まで広範囲にわたって建設している。
すなわち、米国含めた多くの西側諸国が撤退し始めている最中、代わって中国が大きく進出してきている。
イラクの高官も、米国の幅広い範囲での存在を望んでいるものの、現実問題では、民主主義や構造改革等のうるさい条件を抜きにして中国が開発援助を申し出ていることを歓迎している。
中東政治等の研究者サールダル・アジズ氏は、「中国・イラク関係」と題したクルド語の著書の中で、中国語習得コース開設は、現地の人々にとって中国がより親しみやすくなり、“中国人や文化・製品”にも魅力を感じやすくなるというソフト・パワーの成果を生み出すことになろう、と述べている。
中国企業はこれまで、イラクの基幹産業である原油事業に軸足を置き、同国産原油輸出量の40%をも中国に供給する程優位を占めてきた。
しかし、直近では石油化学に留まらず、金融、輸送、建設、更には通信分野まで投資を増やしてきている。
特に、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が2013年に提唱した「一帯一路経済圏構想(BRI)」に基づき、東アジアから中東を経由して欧州まで展開する大型プロジェクト開発計画を立ち上げたことから、イラクにおける中国プロジェクト推進機運が増強されている。
そうした中、イラク在中国総領事館が2017年、イラク政府に対して中国語習得コース開設を進言し、第一候補の首都バクダッドは治安の関係で見送られたものの、比較的安全なイラク北部のアルビールに設営することが決定された。
ただ、サラハディン大クルド語学部アティフ・アブドラー・ファルハディ学部長(48歳)は当初、同大学生に興味を持たれるか、有能な中国語教師が見つかるのか等不安を覚えたという。
そこで同学部長は中国総領事館に対して、中国側持ちで中国語教師派遣、教科書やオーディオ設備等の提供、並びに中国への留学機会を設ける条件を提案した。
その結果、中国側がこれら条件を全て受け入れたことから、2019年に同コースが立ち上げられ、同コース修学生が来年卒業することを受けて、以降中国語学部が正式に設置されることになっている。
一方、同学部長によると、米国や英国総領事館にも英語習得コース立ち上げを打診したが、無しの礫だったという。
(注)ソフト・パワー:国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のこと。
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