7月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(ロイター通信):「在日米軍司令部を強化、中国の脅威に警戒」:
28日米国は、日米両国が「最大の戦略的課題」とする中国を念頭に、在日米軍の主要軍事司令を強化すると発表。
ブリンケン国務長官、オースティン国防相と日本の閣僚らがいわゆる「2プラス2」会合を行った。共同声明では、司令部組織は2025年3月までの自衛隊の合同司令部の設置案に沿って実行されるもので、「日米の軍事統合は70年の軍事協力で最も大きな前進の一つである」とした。...
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7月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(ロイター通信):「在日米軍司令部を強化、中国の脅威に警戒」:
28日米国は、日米両国が「最大の戦略的課題」とする中国を念頭に、在日米軍の主要軍事司令を強化すると発表。
ブリンケン国務長官、オースティン国防相と日本の閣僚らがいわゆる「2プラス2」会合を行った。共同声明では、司令部組織は2025年3月までの自衛隊の合同司令部の設置案に沿って実行されるもので、「日米の軍事統合は70年の軍事協力で最も大きな前進の一つである」とした。
この再編策は大国中国による脅威という「拡大する安全保障環境」への対抗策とされる。声明では、中国による韓国や東シナ海での「挑発的」行為やロシアとの合同軍事訓練、核戦力開発を批判し、中国の「外交政策は自国の利益のため国際秩序を無理変えようとするもの」であり、「このようなふるまいは同盟国及び国際コミュニティへの深刻な懸念であり、インド太平洋地域等にとり最大の戦略的課題」だと述べている。
オースティン氏は今回の再編は「中国の脅威によるものではない」が、同盟国の寄り緊密に効果敵に協働しようという願いを反映したものだと説明している。
日本は米国へ、アジアにおける軍事プロジェクトの基地を提供、5万4千人の軍人、航空機数百機を擁している。中国の軍事的台頭や北朝鮮による定期的なミサイル発射実験により、近年日本は、戦後の平和主義を劇的に変化させている。2022年にはGDP比2%までの防衛費増加案を発表している。
今回、核兵器抑止で、米国のコミットメントを示す「拡大抑止」という言葉が閣僚らにより使用されたのは初めてのことだった。唯一の核被爆国であり核非拡散を訴えてきた日本では、これは非常にデリケートな話題である。
公式声明によると、地域の安定を目的とした拡大抑止や紛争勃発の抑止が議論された。ウクライナでの戦争支援目的で、北朝鮮からロシアへ弾道ミサイルが供給され、大量破壊兵器やミサイル関連技術が北朝鮮へ流れている可能性についても指摘された。北朝鮮は、28日の国営放送「KCNA」によると、戦争がおきた場合は敵を「完全に破壊する」と宣言している。
オースティン氏と木原防衛大臣は韓国のシン・ウォンシク国防相とも会談。北朝鮮のミサイル警告データの共有や合同軍事演習での三者協力「制度化」の覚書に署名した。この覚書は、国際情勢が変化しようとも、我々のパートナーシップを揺るぎないものとし、日本、米国、韓国の間の協力を強化するものであるという。バイデン政権は、1910年から45年の韓国併合での禍根が残る日韓との協力強化を押し進めている。
米国は、ウクライナや中東での紛争による米国産武器メーカーへの圧力を和らげるため、日本への協力を求めており、日米は、サプライチェーン開拓、船舶や航空機修理、ミサイル共同生産等、この分野で様々な協力を模索しているが、地対空迎撃パトリオットミサイルの生産に日本の工場を使用するという重要プロジェクトは、ボーイング社製の重要部品の不足により遅延していると報じられている。
ブリンケン氏とオースティン氏はこの後、バイデン政権の対中国政策の一環としてもう一つのアジア同盟国であるフィリピンと安全保障会議を行う予定。ブリンケン氏は27日、ラオスで中国の王毅外相とも会談。米国と同盟国は「自由で開かれたインド太平洋」をめざすと強調したという。
同日付露『スプートニク』:「米日、新たな合同司令部で軍事連携強化へ」:
米国防総省が28日発表した「日米安全保障協議委員会」(2プラス2会合)声明によると、日米は、軍事協力を強化するため、「統合作戦司令部(JJOC)」を設置する。
これはアントニー・ブリンケン米国務長官、オースティン国防長官、そして上川外務大臣、木原防衛大臣の間で合意された。
米国は、日本の拡大軍事予算維持、自衛隊との統合司令部、サイバーセキュリティや迎撃能力特化等での防衛強化を歓迎するとした。
声明では、日米は意思決定を一致させ、軍事計画と演習での協力を強化するとしている。これには、諜報、監視、偵察活動(ISR)、訓練や軍事演習、作戦計画、緊急事態計画、ロジスティクスなどの分野での相互活動を統合することが含まれるとしている。
また、JJOCはインド太平洋上における脅威の台頭に迅速に対応するための抑止能力強化を目的とした連携協力であるとしている。
オースティン米国防長官は合同記者会見で、司令部設置の決定は中国の活動に関係なく、「より効果的に協働しようという両国の意思に基づくもの」だと強調した。米国は、大統領選挙の結果如何にかからわず、日本との同盟強化を継続する意向を示している。
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昨年来既報どおり、9年振りに返り咲いた豪州労働党政権は、危機的な対立関係となった対中国政策を見直し、中国に歩み寄る姿勢をみせている。しかし、こと安全保障問題では前政権を踏襲して米英豪3ヵ国軍事同盟(AUKUS、2021年発足)を継続・強化する対応を取っている。そこで豪州側対応を嫌気してか、中国軍戦闘機がまたしても豪州海軍機に対して挑発行為に出ている。
5月7日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』、欧米
『ロイター通信』、8日付米
『AP通信』、英国
『ジ・インディペンデント』紙、フランス
『AFP通信』は、豪州首相が中国軍機による豪州海軍機への挑発行為を強く非難したと報じている。
豪州労働党政権は、2022年5月に9年振りに政権に返り咲いて以来、前政権下で危機的な対立関係となった対中国政策を見直し、歩み寄る姿勢をみせてきている。
しかし、こと安全保障問題では米同盟国としての立場を踏襲しており、インド太平洋地域の平和と安定を維持する上で、中国対峙も止む無しとしている。
ところが、そうした対応が気に喰わないのか、中国人民解放軍(PLA、1927年創設)所属の成都J-10戦闘機が5月4日、黄海上空を飛行中の豪州海軍ヘリコプター「シーホーク」に向けてフレア(赤外線誘導の兵器を惑わすために使うおとりの閃光弾)を発射する事態を引き起こした。
豪州政府発表によると、同ヘリコプターの操縦士は、万が一フレアに衝突して墜落するのを避けるため“緊急回避行動”をとらねばならなかったとする。
かかる挑発行為は、昨年11月にも、日本海で停泊中の豪州軍艦「トゥーンバ」(2005年就役)乗船の豪州人潜水夫に対して、PLA駆逐艦「寧波」(2006年就役)がソナー(水中を伝播する音波を用いて、海中・海底の物体に関する情報を得る装置)を浴びせる事態が起こっている。
潜水夫は、同艦のスクリューに絡まった漁網を取り除く作業をしていたが、そのソナーパルスのために軽傷を負っている。
しかしながら、中国側は今回の事態に対しても、豪州軍側の落ち度を責めるコメントをしている。
すなわち、中国外交部(省に相当)の林剣報道官(リン・チァン、47歳、2024年就任)は5月7日の記者会見で、“豪州軍ヘリコプターが中国の領空近くで「挑発的行動」を取ったため、中国軍戦闘機が然るべく対応をした”として、豪州側を非難した。
これに対して、アンソニー・アルバニージー首相(61歳、2022年就任)は5月7日、地元ラジオ局のインタビューに答えて、“(中国報道官が中国領空近く、と言及しているとおり)豪州軍ヘリコプターは正に国際法上で認められた空域を飛行していたことは間違いない”とした上で、“国連安全保障理事会採択の、対北朝鮮制裁状況を監視する任務に就いていたものであり、中国側非難は全く的外れだ”と強硬に反論している。
同首相は更に、“PLA戦闘機が取ったプロ意識に欠ける行動は全く容認できないし、中国報道官が何と言おうと、PLA戦闘機の行為を危険だとする豪州国防軍の評価を何ら棄損するものではない”とも強調した。
なお、同首相は、李強首相(リー・チャン、64歳、2023年就任)が来月来豪した際、本件も話題に上げると付言している。
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