米国陪審員、黒人射殺の警官にまたも無罪評決<米・英・フランス・台湾メディア>
米中西部ミネソタ州の裁判所の陪審員(注後記)が、昨年7月の黒人男性の射殺事件で、過失致死罪などに問われた警官に無罪の評決を下した。射殺された男性が、路上で職務質問された際、免許証を取り出そうとポケットに手を入れた途端、警官に射殺されたもので、無罪評決に怒った人たち2,000人余りが、同裁判所前及び市街で抗議行動を起こしただけでなく、米国の裁判のあり方に疑問を抱く報道が、米国以外のメディアでも大きく報じられている。
6月17日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏を射殺した警官の無罪評決に抗議したニューヨーク市民200人余りがデモ」
ミネソタ州の裁判所で、黒人のフィランド・キャスティール氏を射殺した警官に対して無罪評決が下されたことに抗議して、ニューヨーク市民200人以上が6月17日、目抜き通りをデモ行進した。
デモ隊は、“不公正な評決は公正であるべき裁判制度の脅威”等のプラカードを持って、無抵抗な黒人を射殺した警官の無罪評決を非難した。...
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6月17日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏を射殺した警官の無罪評決に抗議したニューヨーク市民200人余りがデモ」
ミネソタ州の裁判所で、黒人のフィランド・キャスティール氏を射殺した警官に対して無罪評決が下されたことに抗議して、ニューヨーク市民200人以上が6月17日、目抜き通りをデモ行進した。
デモ隊は、“不公正な評決は公正であるべき裁判制度の脅威”等のプラカードを持って、無抵抗な黒人を射殺した警官の無罪評決を非難した。
犠牲となったキャスティール氏(32歳)は同州セントポール市街で昨年7月、乗っていた車のライトが破損していたことから警官の職務質問を受けたが、同氏が銃保有許可証を持っていることを告げてポケットに手を入れたところ、立ち会った警官ジェロニモ・ヤネズ被告にいきなり射殺されたもの。
同乗していたキャスティール氏のガールフレンドが、その時の模様を映した動画をフェイスブックに投稿したことから、全米で非難抗議が起こっていた。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「キャスティール氏射殺事件の無罪評決を受けて、黒人の銃許可証保有者が困惑」
無抵抗のキャスティール氏が、自発的に銃許可証保有について警官に申告したところ、過剰反応した警官に射殺されてしまった事件について、ミネソタ州の裁判所が、同警官に無罪評決を下したことから、黒人の銃許可証保有者の多くが困惑している。
すなわち、法的に有効な銃保有について、それを申告しただけで銃殺されてしまう恐れがあり、なおかつ、パトロールカーのビデオに、キャスティール氏が申告した後、“銃は取り出さない”とはっきり申し立てている声が記録されているのに、いきなり発砲し、射殺した警官が罪に問われないという現実に直面したからである。
なお、米国で発生した警官による殺人事件のほとんどが不起訴処分となっている。
・2014年7月ニューヨーク:黒人のエリック・ガーナー氏が、大麻販売容疑で逮捕された際、取り締った警官らの暴行を受けて死亡。警官らは不起訴。
・2014年8月ファーガソン(ミズーリ州):黒人青年マイケル・ブラウン君(18歳)が、職務質問した白人警官ダレン・ウィルソン容疑者に射殺されたが、同容疑者は不起訴。
・2014年11月クリーブランド(オハイオ州):黒人のタミール・ライス君(12歳)がモデルガンを持っていたところ、通報で駆け付けた白人警官ティモシー・ロウマン容疑者らに射殺されたが、同容疑者らは不起訴。なお、同市は遺族からの損害賠償請求訴訟に対して、600万ドル(約6億6,000万円)の補償で和解している。
・2015年8月チャールストン(サウスカロライナ州):車の停止を命じられた黒人のウォルター・スコット氏が、信号を無視して逃走しようとしたとして、白人警官マイケル・スレージャー容疑者によって射殺された事件で、同容疑者が虚偽の申告をしていたことが、事件を撮影していた目撃者の携帯動画から判明したことから、同容疑者は起訴され、目下量刑宣告待ち。軽ければ執行猶予付き判決、最も重い場合終身刑が下される。
同日付フランス
『ユーロ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏の母、“この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫び」
無抵抗の息子を殺された、故フィランド・キャスティール氏の母親のバレリー・キャスティールさんは6月16日、警官ジェロニモ・ヤネズ容疑者に対して不起訴処分の評決を下した裁判所の前で、“今は地獄に落ちたような気持ち。この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫びを上げた。
陪審団は男性7人、女性5人で構成され、うち白人が10人、黒人が2人であった。ヤネズ容疑者の弁護人は評決を評価したが、セントポールのクリス・コールマン市長は、6月16、17、19日に市内で市民との対話集会を開くと発表した。また、ミネソタ州のマーク・デイトン知事は、故人及び遺族に哀悼の意を捧げるとコメントした。
6月18日付台湾
『台北タイムズ』紙(
『ロイター通信』配信):「キャスティール氏射殺の警官が不起訴」
陪審団は5日間、のべ25時間以上の評議を重ねた上で、ヤネズ容疑者を不起訴とする評決を下した。同容疑者のアール・グレイ弁護人は同評決を評価するとのコメントを発表したが、同容疑者が所属する警察署を管轄するセントアンソニー市は、同容疑者には警官に戻らず、“自発的に辞職する”よう説得するとしている。
なお、不起訴処分に抗議する市民が2,000人以上、同裁判所及び市街でデモ行進を行ったが、警察署の規制もあって、暴動に発展することなく静かに行われた。
(注)陪審員:米英などで採用されている、裁判手続きにおける陪審制度の下、一定の基準と手続きにより一般市民の中から選ばれ、その審判に立ち会う人。陪審員の人数は6~12名である場合が多く、その合議体を「陪審」という。陪審は、刑事事件では原則として被告人の有罪・無罪について、民事事件では被告の責任の有無や損害賠償額等について判断する。
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世界禁煙デーの各国の動き<米・英・ブルガリア・中国メディア>
世界保健機関(WHO)は5月31日を「世界禁煙デー」と制定している。その日に合せて、欧州内では喫煙者に優しかったチェコにおいて、パブやレストランを禁煙とする法律が制定されたが、世界人口の約1割の喫煙者の4割以上(3億人余り)を1国で占める中国では、大都市では禁煙運動が支持されつつあるも、PM2.5(微小粒子状物質)のひとつでもある煙害を減らすために、中国全土での徹底した禁煙措置が必要と専門家は訴える。一方、日米他研究機関の調査研究によると、「三次喫煙(喫煙後の内装・家具、また、喫煙者の毛髪・衣服に付着したタバコの煙)」が非喫煙者に与える健康被害の深刻さが報告されているが、4月11日付コラムNo.110「受動喫煙対策」の中で述べたとおり、日本では、2002年に健康増進法が制定されて以降、一部の施設で分煙対策が講じられたものの、今や世界49ヵ国において、公共施設・飲食店・交通機関などの公衆の場での“屋内全面禁煙”が強制化されているのに対して、日本の対策は不十分である。
5月30日付ブルガリア
『ノヴィナイト』オンラインニュース:「WHO:タバコで毎年700万人死亡、また、環境破壊も起こすと発表」
「世界禁煙デー」を前にWHOは5月30日、タバコによって毎年世界で720万人が死亡し、経済損失は4,000億ドル(約44兆4,000億円)に上り、また、森林伐採という環境破壊も引き起こしているとの報告を発表した。
WHOが初めて公表した調査報告によると、タバコには7,000種類以上の毒性化学物質が含まれていて、更に、タバコの煙からは数千トンの発ガン性、かつ地球温暖化ガスが輩出されるとしている。...
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5月30日付ブルガリア
『ノヴィナイト』オンラインニュース:「WHO:タバコで毎年700万人死亡、また、環境破壊も起こすと発表」
「世界禁煙デー」を前にWHOは5月30日、タバコによって毎年世界で720万人が死亡し、経済損失は4,000億ドル(約44兆4,000億円)に上り、また、森林伐採という環境破壊も引き起こしているとの報告を発表した。
WHOが初めて公表した調査報告によると、タバコには7,000種類以上の毒性化学物質が含まれていて、更に、タバコの煙からは数千トンの発ガン性、かつ地球温暖化ガスが輩出されるとしている。
また、世界で販売されている150億本の3分の2が、環境に影響を与えるゴミとなり、それは集積される全てのゴミの30~40%にも当り、なおかつ、タバコ300本の生産のために1本の木が失われる勘定となるという。
5月31日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「世界禁煙デーに合せて発表された、タバコを減らす最適な方法」
ウィーン医科大学のマイケル・クンズ研究員が中心のチームは5月31日の「国際禁煙デー」に合せて、タバコを減らす最善の方法を発表した。すなわち、30年もの調査研究の結果、タバコの販売価格を1%上げれば、タバコの消費量は0.7%下がる(5%上げれば3.5%下げられる)というものである。
欧州では、喫煙が病気や早逝の最大の原因となっており(肺ガンによる死亡原因の約90%、慢性気管支炎の死亡原因の約75%が喫煙)、クンズ氏は、喫煙は一酸化炭素などの毒を吸引しているのと同様だと、喫煙被害の深刻さを訴えた。
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース(
『AP通信』配信):「欧州内で喫煙者の天国だったチェコで禁煙法制定」
チェコは5月31日、大衆が集まる映画館・スポーツ競技場、また、バー・レストラン・カフェの屋内での全面禁煙とする法律(罰金5,000チェコ・コルナ、190ドル、約2万1,000円)を施行した。チェコはこれまで、欧州の中で喫煙者にとって最後の楽園と言われていた。
同国では何年もの間禁煙措置について議論が続けられてきたが、ヘビー・スモーカーで有名なミロシェ・ゼマン大統領も禁煙運動の流れに抗せられず、同法に署名したため、発効の運びとなった。
チェコで禁煙措置法が採用されたことから、欧州連合(EU)加盟29ヵ国のうち、何ら喫煙規制のない国はスロバキアのみとなった。
同日付中国
『中国新聞』オンラインニュース:「中国の専門家、タバコ消費削減対策強化を要求」
「国際禁煙デー」に合せて、多くの専門家が、中国におけるタバコ消費削減対策の強化が必要と訴えている。
中国はタバコ生産量及び消費量が世界最大で、喫煙者は3億人以上に上り、これは世界全体の喫煙者の44%をも占める。
中国の北京・上海などの大都市では、公共施設・交通機関や職場などでの屋内全面禁煙措置が強制化されているが、中国全体では規制が不十分である。
専門家は、若年層への教育強化でタバコの健康被害を訴える等、新たな喫煙者を増やさない施策も必須だとしている。
一方、同日付米
『USAトゥデイ』紙:「煙害には三次喫煙被害もあって、思う以上に危険」
エネルギー省傘下のローレンス・バークレイ国家研究所の調査チームが、モルモットを使って調査研究した結果、タバコの煙を吸い込ませた布を置いた部屋に生まれたばかりのモルモットを3週間住まわせたところ、血液中に煙の中の有毒化学物質が認められたことから、三次喫煙被害を受けていたことが判明した。
すなわち、喫煙ルームの内装・家具や、喫煙者の衣服などについたタバコの有害物質によって、非喫煙者、特に子供が三次喫煙被害を被る可能性が高いと言えるという。
同研究所のボー・ハン主任研究員は、免疫耐性が不十分な子供ほど、三次喫煙被害を受けやすいことが証明できたとコメントした。
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