ドナルド・トランプ大統領の弾劾手続きが、いよいよ来週から上院議会で開始される。その時機を計ったかのように、この程、下院議会での弾劾手続き進行の最中、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のハッカーが、問題の拠点となったウクライナの天然ガス会社にサイバー攻撃を仕掛けたことが判明した。野党・民主党側は、2016年の大統領選時と同様、ロシアが再び選挙介入を試みようとしていると反発している。
1月14日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「ロシアのハッカー、弾劾手続き進行の最中、ウクライナの天然ガス会社ブリスマにサイバー攻撃」
米安全保障関連調査会社リサーチャーズ・アット・エリア1は1月13日、ドナルド・トランプ大統領に関わる弾劾手続きが進められていた昨年11月頃、問題となったウクライナの天然ガス会社ブリスマ(2002年創立)に対して、GRUがハッカー攻撃を仕掛けたことが判明したと公表した。
そもそも今回の弾劾手続きは、トランプ大統領が昨年7月、民主党大統領候補のジョー・バイデン元副大統領を大統領選から引きずり起こす意図で、ブリスマ取締役のハンター・バイデン氏(同元副大統領の息子)の容疑を再調査するよう、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領に働きかけたことが発端となっている。
エリア1によると、GRUハッカーはブリスマ従業員宛にフィッシングメール(詐欺メール)を送信し、同社のITシステムに侵入しようとしたという。
これは正に、2016年大統領選時に、ロシアのハッカーが大統領選候補者のヒラリー・クリントン氏及び民主党全国委員会にサイバー攻撃を仕掛けて選挙を妨害しようとしたことと、構図が似ているとも指摘している。
下院国家安全保障委員会委員長のベニー・トンプソン下院議員(ミシシッピー州選出)は1月13日晩、そもそもの原因を作ったのはトランプ大統領だと糾弾した上で、同大統領に対して、ウラジーミル・プーチン大統領にかかるサイバー攻撃を即刻止めさせるよう強く求める、との声明を発表している。
同日付フランス『ユーロ・ニュースTV』:「ロシア・スパイのハッカーがトランプ大統領弾劾手続きの最中にウクライナのエネルギー会社にハッカー攻撃」
米『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューに答えて、安全保障調査会社エリア1の共同創立者のオレン・ファルコウィッツ氏(元米国家安全保障会議傘下の米サイバー軍職員)は、GRUによる天然ガス会社ブリスマへのサイバー攻撃は“成功している”と証言した。
米下院情報委員会委員長で、トランプ氏弾劾手続きを主導しているアダム・スキッフ下院議員(カリフォルニア州選出)は、1月13日夜放送の米『MSNBCニュース』の中で、2016年米大統領選介入事件の捜査に当たったボブ・マラー特別検察官が警告したとおり、ロシアが性懲りもなく再び米大統領選に介入しようとしていることが明らかになったとコメントした。
一方、民主党候補バイデン元副大統領選挙対策本部のアンドリュー・ベイツ広報担当は、エリア1の調査報告書によって、“トランプ・プーチン両大統領が、今回の大統領選に関してどこを攻めれば良いかをよく理解していることを証明”していると強調した。
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米中西部ミネソタ州の裁判所の陪審員(注後記)が、昨年7月の黒人男性の射殺事件で、過失致死罪などに問われた警官に無罪の評決を下した。射殺された男性が、路上で職務質問された際、免許証を取り出そうとポケットに手を入れた途端、警官に射殺されたもので、無罪評決に怒った人たち2,000人余りが、同裁判所前及び市街で抗議行動を起こしただけでなく、米国の裁判のあり方に疑問を抱く報道が、米国以外のメディアでも大きく報じられている。
6月17日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏を射殺した警官の無罪評決に抗議したニューヨーク市民200人余りがデモ」
ミネソタ州の裁判所で、黒人のフィランド・キャスティール氏を射殺した警官に対して無罪評決が下されたことに抗議して、ニューヨーク市民200人以上が6月17日、目抜き通りをデモ行進した。
デモ隊は、“不公正な評決は公正であるべき裁判制度の脅威”等のプラカードを持って、無抵抗な黒人を射殺した警官の無罪評決を非難した。
犠牲となったキャスティール氏(32歳)は同州セントポール市街で昨年7月、乗っていた車のライトが破損していたことから警官の職務質問を受けたが、同氏が銃保有許可証を持っていることを告げてポケットに手を入れたところ、立ち会った警官ジェロニモ・ヤネズ被告にいきなり射殺されたもの。
同乗していたキャスティール氏のガールフレンドが、その時の模様を映した動画をフェイスブックに投稿したことから、全米で非難抗議が起こっていた。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「キャスティール氏射殺事件の無罪評決を受けて、黒人の銃許可証保有者が困惑」
無抵抗のキャスティール氏が、自発的に銃許可証保有について警官に申告したところ、過剰反応した警官に射殺されてしまった事件について、ミネソタ州の裁判所が、同警官に無罪評決を下したことから、黒人の銃許可証保有者の多くが困惑している。
すなわち、法的に有効な銃保有について、それを申告しただけで銃殺されてしまう恐れがあり、なおかつ、パトロールカーのビデオに、キャスティール氏が申告した後、“銃は取り出さない”とはっきり申し立てている声が記録されているのに、いきなり発砲し、射殺した警官が罪に問われないという現実に直面したからである。
なお、米国で発生した警官による殺人事件のほとんどが不起訴処分となっている。
・2014年7月ニューヨーク:黒人のエリック・ガーナー氏が、大麻販売容疑で逮捕された際、取り締った警官らの暴行を受けて死亡。警官らは不起訴。
・2014年8月ファーガソン(ミズーリ州):黒人青年マイケル・ブラウン君(18歳)が、職務質問した白人警官ダレン・ウィルソン容疑者に射殺されたが、同容疑者は不起訴。
・2014年11月クリーブランド(オハイオ州):黒人のタミール・ライス君(12歳)がモデルガンを持っていたところ、通報で駆け付けた白人警官ティモシー・ロウマン容疑者らに射殺されたが、同容疑者らは不起訴。なお、同市は遺族からの損害賠償請求訴訟に対して、600万ドル(約6億6,000万円)の補償で和解している。
・2015年8月チャールストン(サウスカロライナ州):車の停止を命じられた黒人のウォルター・スコット氏が、信号を無視して逃走しようとしたとして、白人警官マイケル・スレージャー容疑者によって射殺された事件で、同容疑者が虚偽の申告をしていたことが、事件を撮影していた目撃者の携帯動画から判明したことから、同容疑者は起訴され、目下量刑宣告待ち。軽ければ執行猶予付き判決、最も重い場合終身刑が下される。
同日付フランス
『ユーロ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏の母、“この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫び」
無抵抗の息子を殺された、故フィランド・キャスティール氏の母親のバレリー・キャスティールさんは6月16日、警官ジェロニモ・ヤネズ容疑者に対して不起訴処分の評決を下した裁判所の前で、“今は地獄に落ちたような気持ち。この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫びを上げた。
陪審団は男性7人、女性5人で構成され、うち白人が10人、黒人が2人であった。ヤネズ容疑者の弁護人は評決を評価したが、セントポールのクリス・コールマン市長は、6月16、17、19日に市内で市民との対話集会を開くと発表した。また、ミネソタ州のマーク・デイトン知事は、故人及び遺族に哀悼の意を捧げるとコメントした。
6月18日付台湾
『台北タイムズ』紙(
『ロイター通信』配信):「キャスティール氏射殺の警官が不起訴」
陪審団は5日間、のべ25時間以上の評議を重ねた上で、ヤネズ容疑者を不起訴とする評決を下した。同容疑者のアール・グレイ弁護人は同評決を評価するとのコメントを発表したが、同容疑者が所属する警察署を管轄するセントアンソニー市は、同容疑者には警官に戻らず、“自発的に辞職する”よう説得するとしている。
なお、不起訴処分に抗議する市民が2,000人以上、同裁判所及び市街でデモ行進を行ったが、警察署の規制もあって、暴動に発展することなく静かに行われた。
(注)陪審員:米英などで採用されている、裁判手続きにおける陪審制度の下、一定の基準と手続きにより一般市民の中から選ばれ、その審判に立ち会う人。陪審員の人数は6~12名である場合が多く、その合議体を「陪審」という。陪審は、刑事事件では原則として被告人の有罪・無罪について、民事事件では被告の責任の有無や損害賠償額等について判断する。
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