1月26日、キューバの人権団体は、キューバ政府が海外に派遣された医師、芸術家、スポーツ選手、教師、船舶職員などを「奴隷」として扱っているとして告発した。キューバは現在、与党共産党による独裁体制が敷かれている。
仏紙
『ル・モンド』によると、2019年5月にハーグの国際刑事裁判所(ICC)とジュネーブの国連に、110人の医師に関するキューバ当局による「奴隷制度」を訴える文書が提出された。文書は、医療従事者たちが、キューバの外交とその経済にとって不可欠な収入源となっている「海外派遣団」に、ボランティアとして自主的に参加しているわけではない現状を指摘していた。派遣された人の給料の90パーセントは共産党政府に支払われ、許可なく結婚することが禁じられ、「脱走」すると8年間入国禁止となるなど、多くの制約があった。その後、2020年までに、600以上の新しい証言が追加された。
そして今回、1月27日に、マドリードの囚人擁護団体、「ラテンアメリカの開放と発展のためのセンター」、そしてキューバ反体制組織の「キューバ愛国同盟」が、国際刑事裁判所(ICC)と国連に、1100以上の証言に基づく新たな告発文書を提出した。文書は、これまで約4万人の専門職に就くキューバ人がキューバから逃げ出し、入国禁止になっていると報告している。そして、現在5千人から1万人の「脱走者」たちが我が子に会うことができないでいるという。今回の文書は、クルーズ船で雇用され、奴隷同様の労働条件に置かれている乗組員(キッチンアシスタント、客室係、受付係、技術者等)らの証言を集めている。
匿名を条件に『ル・モンド』紙の取材に応じたキューバ人によると、イタリア系のジュネーブに本社を置くヨーロッパ最大のクルーズ会社「MSC」子会社、「MSC Crociere」の船で働いていたという。2019年に9カ月間過ごしたクルーズ船には100人ほどのキューバ人が働いていたと推定している。
MSCがキューバ人を雇用するには、船員の募集と訓練を担当する国家機関、Selecmarを通さなければならないという。Selecmarは、国際労働機関(ILO)が定めた協定を尊重していると反論しているが、文書に掲載された雇用契約書によると、キューバ人従業員の基本給の80%がSelecmarに支払われているという。訴状に添付された2つの契約書によると328ユーロから408ユーロ(約4万2千円から約5万3千円)になる。
米『ボイス・オブ・アメリカ』は、海外での仕事が、キューバ政府にとって有利な収入源となっていると伝えている。共産党政府には海外から毎年85億ドル(約9774億円)がもたらされる。これに対し、観光は年間29億ドル(約3335億円)の収入にとどまる。
文書によると、海外で働くキューバ人の約41%が、任地で性的暴行を受けたことがあると答えている。人権団体は、キューバ政府はキューバの国際任務の一部を構成する専門家の基本的権利を侵害していると主張している。
中南米やアフリカを中心に世界60カ国で働くキューバ人医師は推定3万人で、キューバ当局は、一度海外に出た彼らの離反を阻止するために厳しいルールを策定しているという。エクアドルで8年間働いたキューバ人医師、ダヤミ・ゴンザレスは、キューバ政府からの任務から降りたいと申し出た際、脅迫を受けたと証言している。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、キューバや北朝鮮などでの人身売買に対処する連邦タスクフォースを立ち上げるよう呼びかけた。仏ニュースサイト『ユーロニュース』によると、欧州議会の副議長の一人であるディタ・チャランゾヴァは、このような恥ずべき制度はヨーロッパでは許されないという。「「欧州連合はキューバと枠組み協定を結んでいるが、この協定の批准プロセスにおいて、強力な人権条項を条件としたのは、実は欧州議会だった。今こそ、この協定をきちんと履行し、実施する時だと思う。そして、こうした実態は、欧州連合が強制労働を禁止する緊急性があることを示していると思う。」と語っている。
スペインの欧州議員ジョルディ・カナス氏は、「キューバは自由な国というより、奴隷農園のようなものだ。キューバは、お金を生み出すために国民を奴隷のように扱っている。」と非難している。
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既報どおり、米議会は先週、「ウィグル族強制労働防止法案(UFLPA、注1後記)を採択した。そしてこの程、ジョー・バイデン大統領(79歳)が12月23日に署名したことで発効する運びとなった。これに対して、中国国内では早速官民挙げての米国攻撃が始まり、新疆ウィグル自治区で生産されるコンピューターチップ供給に頼っているインテル(注2後記)などがボイコットの狙い撃ちをされ始めている。
12月24日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「インテル、部品供給業者に対して新疆ウィグル自治区産部材不使用要請を謝罪」
世界最大のコンピューターチップ・メーカーのインテルは12月23日、米政府が採択したUFLPAに則って、新疆ウィグル自治区において生産された部材を使用しないよう部品供給業者に求めざるを得ないことを謝罪した。
これに対して、中国国営メディア『環球時報』は早速、インテルの声明は“高慢かつ悪質だ”として非難した。
同メディアはこれまでも、新疆ウィグル自治区産品の取引を止めるとしたアパレルメーカーH&M(1947年設立のスウェーデン法人)、スポーツ関連用品メーカー・ナイキ(1964年設立、米オレゴン州本社)等を攻撃し、市民に不買運動を呼び掛けてきている。
中国外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)は、“新疆ウィグル自治区において強制労働等と騒ぎ立てられているが、中国敵対勢力による捏造だ”とした上で、インテルは“事実を直視し、誤った行動を改めるべきだ”と強調した。
中国政府は、このようにウィグル族への人権弾圧などは虚言だと主張するが、同地区産の商品を仕入れている外国企業には、同地区の生産工場の労働環境等について第三者による監査の術が与えられていない。
そうした中、著名ポップ歌手・王俊凱(ワン・チュンカイ、22歳)が12月22日、インテル主力製品コアライン・プロセッサーチップ販売の“ブランド・アンバサダー”の役を降りると表明した。
これについて『環球時報』も早速、“王氏の行動は、中国市場で巨大な利益を享受している一方で、中国にとって重要な核心的利益を損なわせようとしているインテルやその他外国企業に対する新たな警告だ”と報じている。
その他多くの歌手・俳優・著名人も、新疆ウィグル自治区問題を非難した外国企業との関係を絶つ行動に出ており、当該企業にとっては数千万ドル(数十億円)の収益を失うことになろう。
インテルにとって新疆ウィグル自治区は、コンピューターチップ製造に必要な原材料のシリカの重要な供給拠点である。
また、同社は中国北東部大連(ターリアン)にチップ生産工場を保有しているが、米国外に抱える4工場のひとつでアジア唯一のものである。
中国国営メディアによる執拗な非難報道により、中国国内消費者・取引先がインテル以外の供給元に変更を試みることになろうが、代替供給元は限られる。
中国政府はこれまで、数十億ドル(数千億円)を投じて国内コンピューターチップ・メーカー育成を図り、米国・台湾他供給元に頼らない市場構築を目論んだ。
しかし、世界先端技術を駆使して製造しているインテル他外国メーカーの技術水準まで全く到達できていない。
特に、現在は新型コロナウィルス感染流行問題に伴い、世界中で半導体部品不足に陥っており、スマートフォンから自動車に至るまで生産に支障を来していることから、中国需要家においてもすぐにはインテル以外の供給元に変更できる状況にない。
同日付中国『新華社通信』:「外交部報道官、インテルの新疆ウィグル自治区問題に関わる書簡を批判」
外交部の趙報道官は12月23日、インテルが部品供給元に対して出状した新疆ウィグル自治区産部材不使用要請の詫状について、そのようなことを実施すればインテルにとって大きな損失に繋がると批判した。
同報道官は、“インテルは事実を直視し、間違った行動を正すよう求める”と述べた。
更に同報道官は、米国内の反中国派が幾度も新疆ウィグル自治区における強制労働を問題視するとアピールしているが、それは全く事実無根で、中国のイメージを汚し、新疆ウィグル自治区の平和と安定を棄損し、かつ中国の発展を阻害しようとする策略に他ならない、と強調した。
その上で、“新疆ウィグル自治区の人々は勤勉かつ優秀で、同地で生産される商品は品質が高いものであるから、同地の産品を使用しないという決断は、自ら損失を招くだけの結果となる”とも言及した。
(注1)UFLPA:新疆ウィグル自治区において強制労働によって生産された原材料・製品の米国への輸入を禁止する法律。輸入する場合、強制労働によるものではなく正規の委託料・労賃で生産されたものであることの証明が求められる。12月13日の週に、下院で採択された後に上院でも全会一致で可決。
(注2)インテル:1968年設立の半導体素子メーカー。主にマイクロプロセッサー・チップセット・フラッシュメモリー等を設計開発・製造・販売。海外50ヵ国以上に研究・生産・販売拠点を保有。カリフォルニア州中西部サンタクララ(シリコンバレー)が本拠。
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