ロシア、反戦を叫ぶ市民ばかりかロシア正教会司祭もプーチン政権から迫害【米・英国・ロシアメディア】(2023/08/14)
プーチン政権は、ウクライナ戦争の長期化はもとより西側諸国からの圧力に辟易しているとみられる。何故なら、国内から反政権運動の派生の芽を摘み取るべく、野党勢力や反戦活動家らを益々厳しく取り締まるばかりか、即時停戦を表明するロシア正教会(注後記)司祭らに対しても強硬な政治圧力をかけているからである。
8月12日付
『ニューヨーク・ポスト』紙、
『AP通信』、英国
『ジ・インデイペンデント』紙、ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙等は、ウクライナ戦争即時停戦を表明しているロシア正教会司祭らが、正教会のみならずプーチン政権からも厳しい迫害を受けていると報じている。
ロシア正教会の司祭らが2022年3月初め、前月下旬に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の即時停止と和解を求める公開書簡を発表した。
同書簡には、約4万人いる聖職者のうち、長司祭や司祭、輔祭ら286人が署名している。
しかし、それから1年5ヵ月経過した現在でも、ウクライナ戦争は収まる気配がみえない。
そうした中、依然ロシア正教会の少なくとも30人の司祭が即時停戦を求める声を上げ続けている。
ただ、人権団体「反戦キリスト教徒の会」まとめ役のナターリア・バジレビッチ氏(ベラルーシ正教会所属)によると、この司祭らに対して、ロシア正教会のみならずプーチン政権から強硬な圧力がかけられているという。
何人かの司祭は、更なる報復を恐れて口を閉ざさざるを得なくなっているとする。
例えば、ロアン・コーバル司祭は、昨年9月にロシア正教会のキリル1世首座主教(76歳、2009年着座)から、“正教会の全ての聖職者は「勝利」を祈る”ようにとの命令が出された後も、ウクライナに平和をと祈ったことから、降格させられてしまったという。
同司祭は、“戦争の惨さを目の当たりにしているのに、聖職階級制度下の上意下達に唯々諾々と従うことはできない”と吐露している。
リトアニアのビリニュス大(16世紀設立)言語学専攻で長らくロシア正教会を研究してきたアンドリュー・デスニツキ―教授は、“ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)が戦争批判する活動家らを新たな立法化によって厳しく取り締まっていることを真似て、キリル1世も同様の締め付けを行っている”とし、“彼は、忠誠を尽くせない者には教会での居場所はないとして脅しをかけている”とコメントした。
一方、ロシア正教会のバフタン・キプシゼ副報道官は、“戦争反対と叫ぶ聖職者は政治活動に加担し、教会での聖職活動を停止したと見做されるので、教会法に基づいて罰が下されることになる”と表明している。
なお、バジレビッチ氏によると、戦争支持を表明した聖職者は、教会のみならず政権からも評価されているという。
(注)ロシア正教会:ギリシャ正教もしくは東方正教会とも呼ばれる、キリスト教の教会(教派)の一つで、1488年独立教会の宣言、1589年正式に承認されている。信徒数は約9千万人。正教会は原則的に、1ヵ国にひとつの教会組織をそなえていて、ロシア正教会以外にウクライナ正教会(2018年宣言、2019年承認)、ギリシャ正教会、ジョージア正教会、ルーマニア正教会、ブルガリア正教会、日本正教会などがある。これら各国ごとの正教会が異なる教義を信奉している訳でわけではなく、同じ信仰を有している。
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BRICSサミット主催の南ア、プーチン逮捕の義務を負いたくないので代理人を出席させるようロシア側と最終交渉【米・ロシアメディア】(2023/07/15)
南アフリカ共和国(1910年建国)は8月下旬、同国で新興5ヵ国首脳会議(BRICSサミット)を主催する。ただ、出席を希望するウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)に対して、国際刑事裁判所(ICC、注後記)から逮捕状が出されているため、ICC加盟国の南アには逮捕義務が課せられる。そこで、南ア大統領が今月末、代理人を出席させるよう、訪ロの上でプーチン大統領と直談判する意向である。
7月15日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙、
『AP通信』、ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙等は、南ア大統領が、8月下旬に同国で開催するBRICSサミットに代理人を立てるよう、ロシア側を説得すべく奔走していると報じている。
南アは今年8月22~24日、ヨハネスブルグにおいてBRICSサミットを主催する。
ただ、南アにとって大きな問題は、ICCから逮捕状が出されているウラジーミル・プーチン大統領が同サミットに出席するとなると、ICC加盟国である南ア政府には同大統領を逮捕する義務が生じることになることである。...
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7月15日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙、
『AP通信』、ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙等は、南ア大統領が、8月下旬に同国で開催するBRICSサミットに代理人を立てるよう、ロシア側を説得すべく奔走していると報じている。
南アは今年8月22~24日、ヨハネスブルグにおいてBRICSサミットを主催する。
ただ、南アにとって大きな問題は、ICCから逮捕状が出されているウラジーミル・プーチン大統領が同サミットに出席するとなると、ICC加盟国である南ア政府には同大統領を逮捕する義務が生じることになることである。
ICCは今年3月、ウクライナの子供らをロシア支配地域に強制的に移動させた罪で同大統領の逮捕状を発行していた。
かかる背景より、南ア政府としては、同サミットをオンライン形式とする案や、急遽開催地をICC未加盟の中国に移す案を出していたが、いずれも否定されてしまっている。
南アのポール・マシャティル副大統領(61歳、2023年就任)が7月15日、南アメディア『ニュース24』オンラインニュース(1998年設立)に語ったところによると、“プーチン大統領は、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)や他首脳との会談を強く希望している”としながらも、“(ICC加盟国の義務とは言え)我々が同大統領を逮捕することはしたくないので、出席を考え直して欲しいというのが切なる願いだ”という。
南ア政府はかつて、ICCから人権侵害や集団殺戮の罪で逮捕状が出されていたスーダンのオマル・アル=バシール大統領(現79歳、1993~2019年在任)が2015年に南ア訪問した際、逮捕を怠るという失態を演じていた。
かかる事態もあって、南アがもし今回も不逮捕という事態を招くと、BRICS加盟国とは別に、経済連携を深めたい米国やその他西側諸国からの非難を浴びる恐れがあり、それを避けたいという思惑もある。
特に、米国からは、昨年12月にケープタウン近郊の南ア海軍基地に入港したロシア船に、ウクライナ戦争に投入可能な武器を積載して出航させたとの疑いがかけられており、南ア政府は否定しているものの、米国は厳しく糾弾している。
そこで南ア政府としては、シリル・ラマポーザ大統領(70歳、2018年就任)が7月末、サンクトペテルブルグで開催されるロシア・アフリカ首脳会議出席の機会を捉えて、プーチン大統領と直接会って、セルゲイ・ラブロフ外相(73歳、2004年就任)に代理人出席させるよう最終交渉をする意向である。
(注)ICC:1998年7月の国連全権外交使節会議において採択されたICC規程に基づき、2003年3月にオランダのハーグに設置された国際裁判所。国際関心事である重大な犯罪について責任ある「個人」を訴追・処罰することで、将来において同様の犯罪が繰り返されることを防止することを目的としている。世界122ヵ国が締約しているが、米・中・ロは未加盟。
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