武漢市で新型感染症発生を告発した医師の一周忌、中国政府は黙殺するも市民は依然称賛【米・英国メディア】(2021/02/07)
武漢市(ウーハン)で2019年末、世界を震撼させた新型コロナウィルス(COVID-19)が発生した際、当局が否定する中、勇気を持って告発した医師が自身も感染して亡くなってから1年が経つ。当局は翌月、同医師含めて医療従事者を表彰することで初期段階での隠蔽工作を糊塗しようとした。そして、同医師の一周忌を迎えるに当たって、当局は依然情報統制の姿勢を崩さず、特に海外メディアからのインタビューには口を閉ざすよう無言の圧力をかけている模様である。しかし、多くの市民は依然、同医師を称賛して止まない。
2月6日付米
『ニューヨーク・ポスト』紙:「武漢でのCOVID-19発生を告発した医師の一周忌に市民は依然故人を偲んで称賛」
武漢市の市民は、2019年末にCOVID-19発生についていち早く警鐘を鳴らしたものの、自身も感染して死亡してしまった李文亮医師(リー・ウェンリアン、享年34歳)のことを決して忘れていない。
同医師は同市の眼科医だったが、未知の新型肺炎患者の急増について初めて声を上げたものの、2020年1月初めには当局から、“根拠のない噂”を流したとして罰せられてしまった。...
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2月6日付米
『ニューヨーク・ポスト』紙:「武漢でのCOVID-19発生を告発した医師の一周忌に市民は依然故人を偲んで称賛」
武漢市の市民は、2019年末にCOVID-19発生についていち早く警鐘を鳴らしたものの、自身も感染して死亡してしまった李文亮医師(リー・ウェンリアン、享年34歳)のことを決して忘れていない。
同医師は同市の眼科医だったが、未知の新型肺炎患者の急増について初めて声を上げたものの、2020年1月初めには当局から、“根拠のない噂”を流したとして罰せられてしまった。
その後、同医師は懸命に患者治療に当たったものの、自身も感染してしまい、2020年2月7日に逝去した。
そして、インターネットを通じて、最初に告発した医師が当局から罰せられただけでなく、自身もCOVID-19の犠牲者となったとのニュースが拡散され、当局に対する非難の声が一斉に上がった。
そこで、当局としても沈静化を図る一環で、同医師含めた医療従事者を“中国の英雄”と呼んで表彰することとした。
ただ、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)が昨年9月に、医療従事者をCOVID-19との戦争に対処した“英雄”として讃えた際、同医師のことには一切触れなかった。
しかし、同医師の一周忌を迎え、地元市民の中には、同医師の警鐘のお陰で早めに対応できたという人たちも多くいて、同医師への賞賛は止まない。
同日付英国『BBCニュース』:「故李文亮氏:“武漢の告発者”として1年経っても忘れられず」
故李文亮医師は、COVID-19発生を最初に告発した一人であったが、自身もその犠牲となり、昨年の2月7日に逝去した。
故人の一周忌を前にして、市民の間では称賛の声が再び高まっている。
同医師は、かつて中国で猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS、2002~2003年)で同僚医師らが犠牲になったことから、2019年末、未知の肺炎が流行し始めていることをいち早く告発したが、2020年初めには当局から“噂を広めた”として罰せられてしまった。
しかし、同医師もCOVID-19に感染して2月7日に逝去したことから、当局の初期対応を問題視する声がSNSを通じて拡散した。
そこで、当局としても、非難の声を沈静化させるため、同医師含めた医療従事者を表彰することとした。
ただ、当局としては、依然一般市民の間で情報が拡散しないよう取り締まりを強化している。
同医師の一周忌を迎えても、この対応は続いていて、むしろ締め付けが厳しくなっている。
しかし、唯一、同医師の微博(ウェイボー、中国版ミニブログサイト)上の個人アカウントでは、ユーザーがCOVID-19についてつぶやく数億ものメッセージが残されていて、同医師の一周忌を迎えて、“最初の内部告発を感謝している”とか、“決してその勇気を忘れない”等のメッセージが再び増えている。
(注)李文亮:中国の眼科医。COVID-19による肺炎の流行の時、医療関係者として内部告発した最初の数人のうちの1人であり、この肺炎の犠牲者の1人でもある。2020年3月5日、新型肺炎の抑制に模範的な役割を果たしたとして中国政府に表彰された。
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トランプ大統領の新型コロナウィルス感染報道に、中国では歓喜の声【米・中国メディア】(2020/10/03)
トランプ大統領夫妻が、新型コロナウィルス(COVID-19)に感染していることが判明した。同大統領から散々敵視された中国では、多くの人がソーシャルメディア上で“COVID-19を軽視した罰が当たった”と言及すれば、国営メディアは、劣勢が予想される大統領選を延期させるための巧妙な作戦だ、とまで酷評している。
10月2日付米
『バイス』オンラインニュース:「トランプ大統領のCOVID-19感染報道に対する中国ソーシャルメディアの反応」
ドナルド・トランプ大統領及びファーストレディーのメラニア・トランプ氏がCOVID-19感染していることが判明し、自主隔離することになった。
数週間後に大統領選を控えた時期の現職大統領の感染報道に、米政治への影響が懸念される。
しかし、中国においては、数百万のインターネットユーザーが、10月2日に飛び込んできた驚くべきニュースに対して、驚いただけでなく、気晴らしだと感じたり、またシャーデンフロイデ(他人の不幸を喜ぶ感情、注後記)を表した。...
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10月2日付米
『バイス』オンラインニュース:「トランプ大統領のCOVID-19感染報道に対する中国ソーシャルメディアの反応」
ドナルド・トランプ大統領及びファーストレディーのメラニア・トランプ氏がCOVID-19感染していることが判明し、自主隔離することになった。
数週間後に大統領選を控えた時期の現職大統領の感染報道に、米政治への影響が懸念される。
しかし、中国においては、数百万のインターネットユーザーが、10月2日に飛び込んできた驚くべきニュースに対して、驚いただけでなく、気晴らしだと感じたり、またシャーデンフロイデ(他人の不幸を喜ぶ感情、注後記)を表した。
同ニュースは、まるで山火事のように僅か数分間でインターネット上に拡散し、ミニブログサイト微博(ウェイボー)では瞬く間にトップ・トレンドとなった。
同ブログ上でも、COVID-19の恐ろしさを無視しただけでなく、中国発症の感染症だと何度も繰り返していたリーダーが感染したとして、食後のおいしいデザートのような甘美な話だと言ったり、罰が当たったと罵倒したりしている。
また、中国国営メディアも10月2日、同大統領の感染につき大々的に報道し、中には、“劣勢となっている大統領選の投票日を延期させるための巧妙な作戦だ”との評論家コメントをも紹介している。
同大統領はこれまで、COVID-19を過小評価してきていた。
3月に全米で都市封鎖措置が講じられた際でも、同大統領は、感染症専門家が恐れる程深刻な感染症ではないと何度も述べている。
その上で、保健当局から大勢の集会は控えるようにとの警告が出ているにも拘らず、大統領選支持者集会を強行開催し、また、しばしばマスク不着用で登壇していた。
更に、陽性が判明する数時間前には、選挙関連の会食の席上、“COVID-19の終焉が見えてきた”とし、“来年は史上最高に素晴らしい年になる”とまでアピールしていた。
南カリフォルニア大(1880年設立の私立大学)政治学・国際関係部の中国専門家のスタンリー・ローゼン教授は『バイス』のインタビューに答えて、“中国は国を挙げてCOVID-19対策に取り組んできたので、習近平(シー・チンピン)国家主席が感染することなど考えられない”とし、“中国が抑え込んだに比べて、現職大統領が感染してしまうとは、米国は何と愚かにもCOVID-19を軽んじたことか、と多くの中国人は思っているはずだ”とコメントした。
なお、アジアのその他の国々でも注目され、フィリピンではハッシュタグ“#トランプ陽性”がトップ・トレンドに、シンガポールでは“トランプ”、“メラニア”、“COVID”が検索トップとなる等、数百万人がツイートしている。
同日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「トランプ大統領感染のニュースに中国では様々な反応」
『新華社通信』は、トランプ大統領自身の感染ツイートに基づいて詳報しているが、『人民日報』は、一面掲載だが数行触れただけである。
中国外交部(省に相当)は、トランプ夫妻の早期快復を祈念するとコメントした。
しかし、『環球時報』の胡錫進(フー・チーチン)主筆は、“トランプ夫妻は、COVID-19を軽視した罰が当たった”とし、“これで、米国におけるCOVID-19感染が依然深刻であることが明らかになった”と辛らつにツイートしている。
一方、独立系学者の張同祖(チャン・トンチュー)氏は、中国以外の多くの国の指導者が感染しているのに、何故中国では、国家主席はもとより、首相や中央政治局委員等幹部の誰一人として感染していないのか、と素朴な疑問を呈している。
(注)シャーデンフロイデ:自分が手を下すことなく他者が不幸、悲しみ、苦しみ、失敗に見舞われたと見聞きした時に生じる、喜び、嬉しさといった快い感情。「損害」「害」「不幸」などを意味する "Schaden" と「喜び」を意味する "Freude" を合成したドイツ語。
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