中国の「ゼロ・コロナ」政策、世界供給網に打撃(2022/01/18)
2020年1月11日に、中国の武漢で、世界で初めて新型コロナウイルスによる死者が発表された。その2ヵ月後、中国当局は中国本土を世界から孤立させるという決断を下し、「ゼロ・コロナ」政策を取り続けている。そして現在、中国当局はオミクロン株の流行を恐れて、世界中で使用されているスポーツシューズ、半導体、電池、その他医薬品の部品を製造している巨大な工業盆地を封鎖して、外国企業の生産計画に打撃を与えている。
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『フランス・アンテール』によると、中国政府は「ゼロ・コロナ」政策をかかげ、これまで新規感染者が2人確認されたことを受けて人口1700万人の都市である深センが封鎖され、現在は西安で、1300万人の住民が150人の新規感染者のために都市封鎖に見舞われている。
『フランス・アンテール』は、「当然、中国は自分の好きなようにやって良い」。しかし、「このゼロ・コロナ戦略は世界経済に悪影響を与えていることが問題だ」と主張している。...
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『フランス・アンテール』によると、中国政府は「ゼロ・コロナ」政策をかかげ、これまで新規感染者が2人確認されたことを受けて人口1700万人の都市である深センが封鎖され、現在は西安で、1300万人の住民が150人の新規感染者のために都市封鎖に見舞われている。
『フランス・アンテール』は、「当然、中国は自分の好きなようにやって良い」。しかし、「このゼロ・コロナ戦略は世界経済に悪影響を与えていることが問題だ」と主張している。内外の制約により、原料の採取は中断され、港は定期的に封鎖され、移動ができなくなってしまっている。つまり、グローバルな生産チェーンが破壊されている。
経済協力開発機構(OECD)の首席エコノミスト、ローレンス・ブーン氏は、2021年、中国のゼロ・コロナ政策は、世界に対して解決した問題よりも多くの問題を引き起こしたと述べている。例えば、現在の自動車には、エンジンの冷却、バッテリー、タイヤの空気圧、照明、ブレーキなどを制御する電子チップが1000個搭載されている。このチップはアジアや中国からやってくる。しかしゼロ・コロナ政策がチップ不足を引き起こし、世界の自動車生産台数が25%減少した。だが、中国政府は短中期的には今の対コロナ戦略を変えるつもりはない。
米『CNBC』も、中国政府のゼロ・コロナ政策は、世界中の製造および出荷業務に影響を与え、サプライチェーンの危機を悪化させたと伝えている。また、感染力の強いオミクロン株が、海運業に新たな打撃を与えるのではないかという懸念も再燃していると指摘している。
世界第2位の経済大国である中国は、昨年、世界で3番目に交通量の多い寧波舟山港の主要ターミナルを閉鎖した。これは労働者1人がコロナに感染していることが判明したためで、中国が主要港の操業を停止したのはこれが2度目となった。
ゴールドマン・サックスは11日、2022年の中国の経済成長率の見通しを、前回の4.8%から4.3%に引き下げた。米投資銀行の分析は、中国がオミクロン株を封じ込めるために企業活動の制限を強める可能性があるとの予想に基づくものだ。
米『ブルームバーグ』によると、調査会社であるガートナー社でサプライチェーンを専門とするトーマス・オコナー氏は、「中国は依然として世界の製造業の中心になっている」と述べており、今後、「もし、中国でコロナ関連の製造や物流の大幅な停止があれば、世界の経済環境に大きな影響を与えることになる」と指摘している。
昨年は、ベトナムやマレーシアなどの製造国が厳しいロックダウンを実施し、半導体や衣料品などの生産が大幅に遅れたため、東南アジア全体の生産が打撃を受けた。中国に生産を戻す企業も出てきており、中国国内での感染者の出現、海運の混雑、米国やその他の港での問題にもかかわらず、記録的な量の製品を輸出することができた。
しかし、HSBCホールディングスのアジア経済調査部門共同責任者であるフレデリック・ノイマンは、中国やその他のアジア諸国におけるオミクロン株感染者の急増は、サプライチェーンの大元である中国のつまずき誘発する可能性があると警告している。
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「六廊」はご存知ですか(2019/07/11)
中国主導の「一帯一路」経済圏構想は、2014年11月10日に北京市で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議(APEC)で習近平主席が正式に提唱してから、もうすぐ5年になる。米国は警戒を強め、日本は半身の姿勢である。さらに、2016年3月、国連の安保理で第2274(2016)号決議及び、同年11月、国連総会でA/71/9号決議をそれぞれ採択し、初めて「ベルト&ロードイニシアティブ」として国際文書に書き入れ、各国に「一帯一路」の建設のための安全保障の環境を提供するよう呼びかけた。態度を曖昧にしたまま、賛成も反対もしてこなかった日本だが、2017年6月、安倍首相は「国際社会共通の考え方を十分に取り入れる観点から協力したい」と述べるにとどまって、慎重さを貫いている。
さて、実はこの巨大な経済圏構想を支えている「六廊」のことを知っている人は案外少ないのではないだろうか。
「六廊」とは、6大「経済回廊」とも言い、中国と「一帯一路」の沿線国家とともに共同で建設する経済ベルトのことだ。これこそ、「一帯一路」経済圏構想を具体的に描いた青写真である。日本語と英語の両方で表記すると、こうなる。
1.中国、モンゴル、ロシア経済回廊(China-Mongolia-Russia Economic Corridor)
2.新ユーラシア大陸橋経済回廊(New Eurasian Land Bridge Economic Corridor)
3.中国-中央アジア-西アジア経済回廊(China-Central Asia-West Asia economic corridor)
4.中国-インドシナ半島経済回廊(China-Indochina Peninsula Economic Corridor)
5.中国、パキスタン経済回廊(China Pakistan Economic Corridor (CPEC)
6.バングラデシュ、中国、インド、ビルマ経済回廊(Bangladesh-China-India-Myanmar Economic Corridor)
文字で見ても「六廊」のスケールが分からないかもしれないが、Google検索し、地図で見ると度肝を抜かすような規模だ。...
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「六廊」とは、6大「経済回廊」とも言い、中国と「一帯一路」の沿線国家とともに共同で建設する経済ベルトのことだ。これこそ、「一帯一路」経済圏構想を具体的に描いた青写真である。日本語と英語の両方で表記すると、こうなる。
1.中国、モンゴル、ロシア経済回廊(China-Mongolia-Russia Economic Corridor)
2.新ユーラシア大陸橋経済回廊(New Eurasian Land Bridge Economic Corridor)
3.中国-中央アジア-西アジア経済回廊(China-Central Asia-West Asia economic corridor)
4.中国-インドシナ半島経済回廊(China-Indochina Peninsula Economic Corridor)
5.中国、パキスタン経済回廊(China Pakistan Economic Corridor (CPEC)
6.バングラデシュ、中国、インド、ビルマ経済回廊(Bangladesh-China-India-Myanmar Economic Corridor)
文字で見ても「六廊」のスケールが分からないかもしれないが、Google検索し、地図で見ると度肝を抜かすような規模だ。地下鉄路線図を見るようなネットワーク状になっていて、実現すると、世界がもっと緊密に結ばれるというリアリティ感が湧いてくる。特筆すべきは、これらの経済回廊の形成過程で無数の建設プロジェクトが計画されること、いわば、各国経済界の有志連合による共同参加型が求められている。もちろん、法律のことや、リスクを心配する日本の企業も多いが、有志連合という枠組みで動くなら、揉めることも少ない筈だ。ちなみに、EU裁判所のように、「一帯一路」裁判所ができる運びにもなっているようだ。
余談だが、「一帯一路」の関連キーワードのアクセスランキングがこの間、発表され、一位は、「経済発展」、「共同体」を抑え、「互連互通」という言葉だったそうだ。文字通り、「相互連結、相互交流」という意で、正にネットワークに代表される基本概念そのもの。「六廊」はランク外となったが、地球規模の凄い構想であることには変わりないだろう。
また、先月、トルコのエルドアン大統領が中国を訪問した際、習近平主席に対し、自国で「中間回廊(Middle Corridor)」の建設を提案したと伝えられている。我々日本人が、知らないうちに中国の戦略はどんどん進んでいるが、影響を受ける周辺国にも中国のそうした戦略に気が付き始め、警戒の動きも出始めている。
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