3月27日付「世界が見るアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐる攻防(2)」の中で、“韓国が中国主導のAIIBへの参加を決めた。韓国に対し参加の働きかけを強めていた中国に対して、これに参加させないよう米国が働きかけてきたが、結果的に韓国は経済的実利をとった格好だ”と報じた。そして、米国のもうひとつの盟友である豪州も、この程AIIBに参加する決定をしたと米メディアが伝えた。
3月29日付
『ハフィントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用)は、「豪州のアボット首相は3月29日、中国が主導するAIIBの創設メンバーとして参加することを決めたと発表した。決定の背景は、豪州が懸念していたAIIBのガバナンス、すなわち、重要な融資決定は理事会に委ねられること、更に、いかなる一ヵ国もAIIBを牛耳ることがないことが確認されたためであるとした。またAIIBは、今後発展を遂げようとしているアジアにおいて、道路他のインフラ建設を後押しすることで、同地域の経済発展に寄与することになるため、豪州にとっても参加の意義があるという。なお、日本と米国は、AIIBへの参加に慎重な姿勢を示しているが、アボット首相は、中国がAIIBの透明性や同理事会が最高決定機関であることを保証するならば、日米両国も参加することになるのではないかと述べた」と報じた。
豪州の参加表明の一日前、すなわち3月28日に中国海南省で開かれた、中国提唱のアジア経済フォーラムの席上、中国と共にBRICS(注1後記)の一員である、ブラジルとロシアのAIIB参加が明らかにされている。今回の豪州の参加決定で、AIIBの創設メンバーは全部で41ヵ国となり、経済規模を示す国内総生産(GDP)を合計すると約33兆ドル(約4千兆円)で、世界全体の約45%を占めることになる。
なお、欧州、中東、アジア各国が雪崩を打ってAIIB参加に動いているのは、成長するアジアのビジネスに期待するだけでなく、これまで米国が採ってきた国際金融秩序への反発(注2後記)も背景にあると言われる。
<主要な世界金融機関の加盟国数及び資本金比較>
・国際通貨基金(IMF):188ヵ国、4,800億SDR(注3後記、約61兆円)
・世界銀行:184ヵ国、2,200億ドル(約26兆4千億円)
・アジア開発銀行:48ヵ国、1,750億ドル(約21兆円)
・新開発銀行:5ヵ国、1,000億ドル(約12兆円)
・AIIB:41ヵ国、1,000億ドル
(注1)BRICS:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなる新興国グループ。同5ヵ国は既に“新開発銀行”を立ち上げて連携している。
(注2)米国への反発:新興国側は、発言権を増やすためのIMFの改革を進めようとしてきているが、米議会の反対で進展が期待できず、米国こそがこれまでの金融秩序を道具にしている、と不信感を抱いている。
(注3)SDR(Special Drawing Rights):特別引出し権。IMFに加盟する国が持つ引出し権及びその単位。米ドル、日本円、ユーロ、英国ポンドを加重平均して評価、算出される。
閉じる
第2次世界大戦終結から70周年を迎える今年、安倍首相は終戦記念日に70周年談話を打ち出す予定だが、各国でも70周年を記念した式典やイベントなどが多数控えている。特に注目されるのは、習近平国家主席が9月に北京で行う抗日戦勝利70周年式典で、プーチン露大統領を招いて行う軍事パレード。中国や韓国、ロシアなどは安倍首相が集団的自衛権行使容認や、歴史認識の変更を通じて戦後秩序を変えようとしているのではないかとの警戒感を示しており、ここへ来て一斉に日本に圧力をかける動きを見せ始めている。ただ米国は中韓に対し、歴史認識問題で日本を敵視しないよう促している。各国は戦後70年、日本に圧力をかける中露韓の動きについて以下のように報じた。
3月1日付
『ブルームバーグ通信』(米国)は、「パク大統領が性奴隷問題に誠実に向き合うよう日本に促す」との見出しで、「パククネ大統領が、”韓国とのより成熟したパートナーシップを構築するため、日本は過去の過ちとりわけ戦時下の性奴隷問題に誠実に向き合うべき”、と1919年の抗日独立運動記念日に催された式典の演説で述べた」と報じた。パク大統領が「もはや53人の女性が生き残っているのみとなっている。この女性達の名誉回復に残された時間はわずかだ」と述べたことを取り上げ、「パク大統領は繰り返し安倍首相に従軍慰安婦の問題に対処するよう呼びかけている」と報じた。
3月1日付
『デイリーミラー』(豪州)は、「歴史を歪める日本の努力は両国関係を傷つけるだけだ」との安倍首相の70周年談話に釘を刺すパク大統領の演説を紹介した。
一方、3月1日付
『ウオントチャイナタイムズ』(台湾)は、「中露が国連を通じて日本に圧力をかけている」との見出しで、「中露が共同開催する戦後70周年記念式典に向けて日本への圧力を強めていくことで連携を見せている」と報じた。「国連は5月に、欧州で第2次世界大戦の終結記念式典だけでなく、戦争犠牲者のための追悼式典も同時に行うことを承認したが、これは中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタンをはじめとする上海協力機構の加盟国が、共同で国連のパンギムン総長に働きかけを行って実現したものだ」と伝えた。また「中露は、4月末に予定されている米国両院議会での安倍首相の演説内容次第では、日本に対してより強硬な姿勢に転じる可能性がある」と報じた。
こうした中、3月2日付
『アジア経済』(韓国)は、「米国務省のウェンディーシャーマン国務次官が、カーネギー国際平和研究所セミナーの演説で”歴史問題は日中韓3か国すべてに責任がある”と発言し、”政治家たちが過去の敵を非難して安っぽい称賛を得るのは簡単だが、民族感情に触発された挑発は進展とはいえず、麻痺状態をもたらすだけだ”として中韓を批判した」と報じ、「シャーマン国務次官の発言は、過去の歴史認識問題で混迷を深める北東アジアでの米国の立ち位置を明確に示したものだ」と分析した。
閉じる