ロシアとEU、カリーニングラードをめぐり激突
リトアニアが欧州連合(EU)のロシアへの制裁措置を適用し、自国領土を横断するロシアの列車が飛び地カリーニングラード州まで鉄や鋼鉄を輸送していないことを確認する措置を取り始めた。ロシア政府は報復を約束している。
仏
『レゼコー』紙は、「ロシアとEUの対立がますます悪化している」と報じている。ロシア政府は、リトアニアがロシアからカリーニングラード州への特定の物資の自国領土通過を阻止する決定を下した。ロシア艦隊を抱えるこのロシアの飛び地は、2月24日のウクライナに対する攻撃開始以来、キーウを断固として支持してきたNATOとEUのメンバーでもあるリトアニアとポーランドに囲まれている。
リトアニア政府は、EUが決定した制裁措置に従い、ウクライナ侵攻の報復として、鉄鋼や鉱物を中心とする特定のロシア製品の輸入を全面的に禁止するこの措置を適用した。...
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『レゼコー』紙は、「ロシアとEUの対立がますます悪化している」と報じている。ロシア政府は、リトアニアがロシアからカリーニングラード州への特定の物資の自国領土通過を阻止する決定を下した。ロシア艦隊を抱えるこのロシアの飛び地は、2月24日のウクライナに対する攻撃開始以来、キーウを断固として支持してきたNATOとEUのメンバーでもあるリトアニアとポーランドに囲まれている。
リトアニア政府は、EUが決定した制裁措置に従い、ウクライナ侵攻の報復として、鉄鋼や鉱物を中心とする特定のロシア製品の輸入を全面的に禁止するこの措置を適用した。しかし、同政府が対象とする製品は、ロシアの領土から別の領土への通過に過ぎないため、ロシアの輸出ではない。ロシア連邦安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は、カリーニングラードを訪問した際、「そのような敵対行為に対して、適切な措置が検討されている」と述べた。「リトアニアの人々にとって深刻な悪影響を及ぼすだろう」と続け、欧州の制裁の拡大を非難した。ロシア政府は、旧ソ連のバルト三国がEUに加盟した2002年に締結された通過協定により、ロシア本土と飛び地間の物資の移動が制限されることは違法であると考えている。
これに対し、EUの外交責任者であるジョセップ・ボレルは、リトアニアはEUの決定を実行しただけであり、「ロシアとカリーニングラード間の陸路輸送は停止も禁止もされていない。乗客や物資の輸送は継続しており、封鎖はしていない」と回答した。さらに、たとえ航路が長く、コストが上がるとしても、当該物品を海上で飛び地まで輸送し続けることができると指摘した。
ウクライナ侵攻以来、モスクワと他の旧ソビエト連邦14カ国の大半との緊張関係が高まっている。ロシア国会では最近、1990年のリトアニアの独立承認を覆すことが提案されていた。こうした中、米ニュースサイト『ブライトバート』によると、リトアニアはロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアに対する制裁を最も強く推進している国の一つだという。
4月、リトアニアはロシア産ガスの輸入をすべて遮断した。同国のエネルギー省は、「ヨーロッパに対するロシアのエネルギー脅迫とウクライナでの戦争を受けて、ロシア産ガスからの完全な自立を求めて、ロシア産ガスを完全に放棄した」と発表した。同月末、リトアニア議会は、ロシアの侵略との関連性から、「Z」と「V」の文字の象徴的な使用を禁止し、それらを表示する者に罰金を科し、そのシンボルは「軍事侵略、人道に対する罪、戦争犯罪」を促進すると見なした。
リトアニアの外相は、ロシアの政権交代を求め、「我々の立場から言えば、現政権が力を失わない限り、その周辺諸国はある程度、危険にさらされることになる。プーチンだけでなく、政権全体が対象だ。プーチンを変え、側近を変えても、別のプーチンがその座に就くかもしれないのだから。」と述べている。
なお、米報道機関『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』は、ロシアの南に位置するカザフスタンもロシアと距離を置き始めていることを伝えている。同国のトカエフ大統領は、先週開催されたサンペテスルスブルグ経済フォーラムで、ロシア大統領と一緒に参加したパネルで、ロシアが承認したウクライナ東部のルガンスクとドネツクの2つの州を国家とは考えていない、と述べた。
『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』は、プーチンの隣に座ってのこの大胆な発言は、カザフスタンなどの旧ソビエト連邦国が、ロシアとのウクライナ侵攻と距離を置こうとし、ロシアとの摩擦が強まる中で外交の綱渡りをしようとしていることを浮き彫りにしていると指摘している。
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ツイッター社、ロシア検閲回避サイト開設
ロシア国内では、ウクライナ侵攻の現状を伝える報道や当局批判が厳しく取り締まられ、Facebookやツイッター、各国メディアへのアクセスが制限されている。そこで、ロシア国民へのアクセス向上のため、ツイッターは、インターネット上の匿名化ネットワークを経由してアクセスできるWebサイトを開設した。
3月10日付英
『Guardian』:「ツイッター、ロシア検閲を回避しプライバシーを保護するダークウェブサイト開設」:
ロシア国内でアクセス制限されているツイッターは、検閲を回避できるプライバシー保護版のサイトを開設した。
これはOnionサービスと呼ばれ、ユーザーはTor(The Onion Router)ブラウザをダウンロードすることで、ツイッターにアクセスし、ダークウェブ(闇サイトに利用される)とよばれる当サイトにアクセスできる。...
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3月10日付英
『Guardian』:「ツイッター、ロシア検閲を回避しプライバシーを保護するダークウェブサイト開設」:
ロシア国内でアクセス制限されているツイッターは、検閲を回避できるプライバシー保護版のサイトを開設した。
これはOnionサービスと呼ばれ、ユーザーはTor(The Onion Router)ブラウザをダウンロードすることで、ツイッターにアクセスし、ダークウェブ(闇サイトに利用される)とよばれる当サイトにアクセスできる。ドットコムのドメイン末尾( .com)サイトと違い、オニオンサイトの末尾は(.onion)となっている。
ダークウェブには、違法サイトという意味合いがあるが、安全性への配慮や、圧政下で検閲されたサイトへのアクセス目的で、匿名性を保つためにしばしば使われることもある。FacebookやBBCも、Torでアクセス可能なバージョンを持っている。この新サービスについては8日、ソフト開発やセキュリティ担当者で、他社でOnionサイトを開発したことのあるAlec Muffett氏が自身のTwitterで明かしている。
ロシアは、ウクライナ侵攻の情報の拡散を恐れ、独立系ニュースサイトやソーシャルメディアへの弾圧や検閲を強化。先週、ロシア当局は国営メディア制限への報復として、Facebookへのアクセスを禁止し、ツイッターやBBC、米政府系ラジオ局(VOA)、ラジオ・フリー・ヨーロッパ(短波国際放送 )、 ドイツのDeutsche Welle放送、ラトビアのウェブサイト(Meduza)へのアクセスも禁止している。
3月9日付米『フォーブス』:「ツイッターがTorブラウザ開設、ロシア国民のアクセス改善へ」:
ロシア国内でツイッター社はアクセス制限を回避するため、Tor サービスを開始した。無料のTorブラウザをダウンロードすることでユーザーはツイッターを利用できる。既に利用可能だが、この新サービスは、プライバシー保護を強化し、ツイッター独自に開設されているという。
Enterprise Onion Toolkit(EOTK)のカスタマイズ版で、2014年にFacebookのオニオンサービス開設チームを主導したサイバーセキュリティ担当者が発表。ツイッター社としても、公式サポートブラウザーリストにTorを加えているのだが、正式な公表はしていない。過去のFacebookやBBCのサイト開設での教訓から、大々的な宣伝はアクセス集中に繋がるため、世界的危機の時代には賢明ではないと判断されたのだろう。
Torオニオンルーターが、インターネットトラフィックを追跡し、世界中の数千サーバーへ繋ぎ、殆どが無償。匿名性に加え、高度のプライバシーや検閲からの保護が期待できる。悪意を持った人々も存在するが、無防備にウェブを使用するよりは、セキュリティ上のリスクから保護できる点で、特定のオニオンサイト開設は利点がある。ロシア以外でも利用可能で、ツイッターをグロックしている中国やイラン、北朝鮮でもアクセス可能となっている。
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