ウクライナ戦争:ガス配給に備えるドイツ産業界(2022/05/23)
ドイツ連邦ネットワーク庁(BNetzA)は、ロシアのプーチン大統領が、非友好国に対してドルやユーロといった西側通貨ではなくルーブルでロシア産ガスを購入するよう要求したことを受け、ガスの配給を実施するための行動計画を立案していると報道された。
『ロイター通信』によると、ドイツでエネルギーを規制するドイツ連邦ネットワーク庁は「ガス不足の深刻さによっては、一部のユーザーへのガスの供給をゼロにする必要があるかもしれない 」と述べた。ドイツは、政府がロシアの石油とガスへの依存度を減らすための措置をとった後でも、ガスの輸入の約35パーセントをロシアから受けており、産業界では、供給が停止されれば、すでに40年ぶりの高いインフレを経験しているドイツ経済に大きな影響を与える可能性があると懸念が広がっている。...
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『ロイター通信』によると、ドイツでエネルギーを規制するドイツ連邦ネットワーク庁は「ガス不足の深刻さによっては、一部のユーザーへのガスの供給をゼロにする必要があるかもしれない 」と述べた。ドイツは、政府がロシアの石油とガスへの依存度を減らすための措置をとった後でも、ガスの輸入の約35パーセントをロシアから受けており、産業界では、供給が停止されれば、すでに40年ぶりの高いインフレを経験しているドイツ経済に大きな影響を与える可能性があると懸念が広がっている。
ガス供給緊急時に配給を担当することになる連邦ネットワーク庁が作成した行動計画では、配給制度は重要で収益性の高い産業を維持することに焦点を当てるとしている。同庁は、産業界へのガス配給を決定する際には、企業の規模、その分野の重要性、潜在的な経済損失など、いくつかの基準が考慮されると述べている。
これに対し、ドイツ産業界は、ガラス、鉄鋼、食品、医薬品製造などのガスを最も使用する工場や、産業の構成要素の多くを提供する化学部門に対して特に懸念しているという。製造業のサプライチェーンは複雑に絡み合っており、その影響を予測することは難しいため、規制当局が一貫した配給リストを作成することは難しいという声も上がっている。
行動計画に対抗するために、ドイツ産業連盟(BDI)は6月上旬に、連邦ネットワーク庁に対してオークション方式のガス供給を提案することにしている。しかし、中小企業は、「ガスの権利をオークションにかけるのは公平ではない」だけでなく、「経済力のある大企業は、中堅企業よりもオークションの痛みに強い」とし、オークション方式をガス配給で使うという考えに警鐘を鳴らしている。
米『ブライトバート』は、隣国のフランスとは異なり、ドイツ政府は非核化政策を進めており、風力や太陽光といったいわゆるグリーン・エネルギーを優先してすべての原子炉を停止することを目指しているため、天然ガスをロシアに依存することになったと伝えている。
こうした危機の中、ドイツのオラフ・ショルツ首相はセネガルを訪問し、セネガルのサル大統領と共に22日、ドイツが西アフリカのセネガルのガス資源に関するプロジェクトに参加するため、「集中的」な話し合いを行っていると発表した。
ベルギーの『RTBF』によると、西アフリカの貧しい国であるセネガルは、近年大西洋で発見されたガス田や油田を、モーリタニアと共同開発することに大きな期待を寄せている。2023年12月に生産を開始し、当初は年間250万トンの液化天然ガス、2030年には1000万トンを生産することを目標としているという。同大統領は、「私たちセネガルは、欧州市場へのLNG供給を視野に入れた活動を行う用意がある」と語っている。
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モルドバ:親ロシア派によるプロパガンダ放送が問題となっている(2022/05/19)
『フランス国際ラジオ局(RFI)』によると、2月24日ロシア軍によるウクライナ侵攻開始から以降、モルドバでは親ロシア派のプロパガンダ放送が国内の多くのロシア系メデイアで流されており、モルドバ政府としてはロシア派の影響を阻止するのに苦慮しているという。
モルドバ議会では数週間後に「情報の遮断」法案が採択される運びになっている。法案の主旨はモルドバ国内での親ロシア組織のプロパガンダの影響を少なくすることにある。理由は、ロシアのウクライナ侵攻以後、益々激しくなる国内での親ヨーロッパ派と親ロシア派間の亀裂をプロパガンダ放送が助長しているためだという。
ロシア派のウクライナ侵攻を正当化する放送に対抗して、モルドバ政府は2月25日から緊急事態を発令し、プロパガンダ放送はこれに違反するとして放送禁止に追い込もうとしている。...
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モルドバ議会では数週間後に「情報の遮断」法案が採択される運びになっている。法案の主旨はモルドバ国内での親ロシア組織のプロパガンダの影響を少なくすることにある。理由は、ロシアのウクライナ侵攻以後、益々激しくなる国内での親ヨーロッパ派と親ロシア派間の亀裂をプロパガンダ放送が助長しているためだという。
ロシア派のウクライナ侵攻を正当化する放送に対抗して、モルドバ政府は2月25日から緊急事態を発令し、プロパガンダ放送はこれに違反するとして放送禁止に追い込もうとしている。多くの新ロシア派の放送局の番組が違反行為として放送禁止対象になった。
一方では、オーデイオビジュアル委員会(CA)を設け、プロパガンダ放送に抵触しないか、監視を強めている。違反があった場合は厳しく警告し、罰金を請求することにしている。 そのため、社会党により一部資金援助されているRTRモルドバやNTVモルドバやプリムル・モルドバは放送禁止され、CAの監視局に5000~10000ユーロ(=約68万~135万円)の罰金請求されている。
しかし、親ヨーロッパ派の与党の国会議員の1人は、モルドバでの親ロシア派の放送局はなお勢いが衰えず、ケーブルテレビや衛星放送(BS)や一般的なテレビ放送を通じて国民に対するプロパガンダ活動を続けていると非難している。 特に、親ロシア派が実効支配して独立宣言しているドニエステル川沿いのトランスニストリア地域(沿ドニエステル共和国)はモルドバの支配権が及ばず、ロシア派のプロパガンダの発信基地となっている。
ロシア軍によるウクライナと同様な軍事侵攻がモルドバに対しても繰り返されないか非常に危惧されている。
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