11月にバリ島(インドネシア)で開催予定の主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)について、米国他西側諸国はウラジーミル・プーチン大統領(69歳)の出席に猛反対していた。しかし、議長国のジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任)は、世界の分断は避けたいとして、プーチン大統領もウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44歳、2019年就任)も招待したいと主張し、両大統領から(オンライン参加か否かは別にして)参加の回答を取得していた。そうした中、この程ロシア側は、セキュリティ上の問題等全てについて総合判断しない限り、プーチン大統領の出席が可能かどうか決定できない旨表明した。
9月5日付ウクライナ
『ザ・ニューボイス・オブ・ウクライナ』(2022年立ち上げの独立系英字ニュース)は、「プーチン大統領、セキュリティ上の問題でG-20サミット欠席か」と題して、一度は出席の意向を示していたプーチン大統領が、11月開催のG-20サミットへの参加を見合わせる可能性があると報じている。
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官(54歳、2012年就任)は9月4日、プーチン大統領がG-20サミットに出席するかどうかは、セキュリティ上の問題等総合的に判断した上で決定する必要がある、と表明した。
同報道官は、“議長国のトップより丁重な招待を受けたことは光栄なことではあるが、プーチン大統領が実際に出席するかどうかは、セキュリティ上の問題等含めて慎重に判断する必要がある”と語った。
ただ、議長国インドネシアのウィドド大統領は8月18日、プーチン大統領が出席するものと期待している、とした上で、“習近平国家(シー・チンピン、69歳、2012年就任)も出席の意向である”と表明していた。
ウィドド大統領は、分断を望まないとして、当初からプーチン大統領を招待する意向を述べていたが、米国を始めとした西側諸国は、ロシアがウクライナに軍事侵攻した挙句にウクライナ全土を支配下に置こうとしていることを理由として、ロシア大統領の参加に反対していた。
米『ブルームバーグ』オンラインニュース報道によると、ジョー・バイデン大統領(79歳、2021年就任)は、プーチン大統領と同席することを拒否すると表明したという。
この申し出をインドネシア側が拒んだところ、ウクライナ支持国から、ウクライナ代表を招待する話が持ち上がった。
そこでウィドド大統領は4月27日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、同大統領をG-20サミットに招待したい旨伝えた。
ただ、同大統領は同時に、4月29日にプーチン大統領との電話会談で、G-20サミットに招待する旨話した。
同大統領はその際、“G-20の団結を望む”ことから“分断を阻止したい”と表明していた。
ゼレンスキー大統領は5月27日、G-20サミットへ参加する旨連絡してきたが、“ウクライナの友好国のみ”の出席を希望するとし、また、ウクライナ全土を不条理な戦争に巻き込もうとしているロシアの対応についてきちんと評価することが求められる、と要請した。
なお、大統領府首席顧問のミハイロ・ポドリャク氏(50歳、2020年就任)は、ゼレンスキー大統領がインドネシアに赴くのか、オンライン参加となるのか、11月時点の状況次第であるとしながらも、同大統領は個人的にはプーチン大統領が参加することになっても出席意向に変更はないと考えている、と付言した。
米ホワイトハウスも、ゼレンスキー大統領は、たとえプーチン大統領が参加してもG-20サミットに出席するものと期待していると表明していた。
一方、7月に開催されたG-20外相会議には、ウクライナのドミトロ・クレーバ外相(41歳、2020年就任)がオンライン参加していたが、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(72歳、2004年就任)が議場に現われたところ、多くの外相が会議をボイコットしている。
9月4日付ロシア『RT(旧称ロシア・トゥデイ)』(2005年開局のニュース専門メディア)は、「ロシア政府、G-20サミットについて言及」として、ロシア政府がプーチン大統領のG-20出席の有無について言及したと報じた。
ペスコフ報道官は9月4日、プーチン大統領が11月のG-20サミットに出席する場合、セキュリティ上の問題等いろいろな事態について検討する必要があると表明した。
議長国インドネシアのウィドド大統領は先月、プーチン大統領も習国家主席も出席すると約束してくれていると主張していた。
しかし、同報道官はロシア国営『ロシア1TV』(1956年開局)のインタビューに答えて、プーチン大統領がG-20サミットに出席するかどうかは未定だとした上で、西側諸国が挙ってウクライナを支持している状況下、プーチン大統領がインドネシアに赴くことは危険と考えられる場合があるので、“セキュリティ問題等を含めてあらゆる事態を想定し、検討した上で最終決定することになる”とコメントした。
ただ、もしプーチン大統領がインドネシアに赴くとなれば、ロシアによるウクライナ軍事作戦開始後初めて、同大統領・習国家主席及びバイデン大統領が一堂に会することになる。
一方、ウクライナはG-20メンバーではないが、議長国からゼレンスキー大統領が招待されている。
なお、バイデン大統領及び西側諸国リーダーは当初、プーチン大統領のG-20出席を拒否すると言っていたが、ウィドド大統領は、プーチン大統領の出席は必須だと強く反論していた。
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国際労働機関(ILO)主導で制定された国際条約では、義務教育年齢とされる児童(多くの主要国では15歳)以下の労働を禁止している。しかし、あろうことか米国で現地生産している韓国大手自動車メーカー工場向けに部品供給をしている韓国部品メーカー米子会社が、児童労働禁止法違反容疑で摘発されている。
8月23日付
『ロイター通信』は、「現代自動車向け部品供給メーカー、米当局によって児童労働禁止法違反容疑で摘発」と題して、米国で現地生産している韓国大手自動車メーカー工場向けに部品供給している韓国部品メーカー米子会社が、16歳未満の児童に労働させていた容疑で摘発されたと報じている。
米労働省(DOL、1913年設立)は8月22日、韓国現代自動車(ヒョンデ、1967年設立)の米アラバマ州在の現地生産工場向けに部品供給している韓国メーカー米子会社に対して、児童労働禁止法違反容疑で告発した。
DOLがアラバマ州在連邦地裁に提訴した訴状によると、韓国部品メーカーSL社(1954年設立)傘下のSLアラバマ社が、同州東部アレキサンダーシティ工場で16歳未満の児童に労働させていたとしている。
DOLは、SLアラバマ社が昨年11月以来、「児童を労働者として雇用の禁止」及び「16歳未満の未成年者の労働禁止」規程を“何度も破っている”と告発した。
『ロイター通信』が入手した文書によると、SLアラバマ社は、現代自動車及び傘下の起亜自動車工場向けのヘッドライト・リアライト等の部品製造工程作業に児童労働者を就かせていたことを認めている。
同社は、派遣事業者が雇用して派遣してきたものだと弁明しているが、当該事業者詳細は明らかにしていない。
今回の事態発覚は、1ヵ月前に『ロイター通信』が報じた、現代自動車子会社のSMARTアラバマ社の工場における児童労働禁止法違反問題に続くものである。
これによって、現代自動車の米工場向けの部品メーカー2社に児童労働禁止法違反があったことになり、同社の米国におけるサプライチェーンに深刻な問題が存在することが明らかになった。
現代自動車は8月22日晩にリリースした声明で、“現代自動車グループ内の違法な雇用問題について看過しない”とし、“これまで連邦法、州法及び地元市条例に則った政策及び手続きを取ってきている”と釈明している。
なお、DOLの提訴に基づいて、SLアラバマ社代理人とDOL代理人弁護士間で、問題解決に繋がる和解条項案が締結され、同連邦地裁に提出されている。
それによると、SLアラバマ社は、今後児童労働者を雇用しないこと、児童労働に関わったマネージャーを処罰すること、児童労働者を派遣するような事業会社と関係を持たないこと等を約している。
(注)ILO:国際労働基準の制定を通して世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする、国際連合の専門機関。1919年に国際連盟に創設され、国際連合における最初で最古の専門機関である。本部はスイスのジュネーヴ。加盟国は187ヵ国。結社の自由、団体交渉権の効果的承認、強制労働の撤廃、児童労働の廃止、差別の撤廃を擁護してきたことに対して、1969年にノーベル平和賞受賞。
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