世界経済フォーラムは、ウクライナのゼレンスキー大統領が、今月末にスイスのダボスで開催されるグローバル経済フォーラムにオンライン形式で演説することを明らかにした。経済界及び各国のリーダーが集まる年次総会は、過去2年間、新型コロナウイルスのため、オンラインで開催されたが、今月末に再びスイスのスキーリゾート地であるダボスで開催される。
米
『ブライトバート』によると、5月22日から26日まで開催されるこの会議には、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、アメリカのジョン・ケリー気候問題担当大統領特使、ドイツの副首相兼経済・気候保護大臣ロベルト・ハーベック、世界貿易機関のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁などが出席する予定である。
2月のロシア軍によるウクライナへの本格的な侵攻以来、ゼレンスキー大統領は欧米メディアの常連となり、英国、カナダ、ドイツ、米国など、世界各国の議会や委員会にオンライン形式で頻繁に出演している。日本の国会でも3月23日にオンラインで演説を行った。
スイスの仏語ラジオ局『RTN.ch』は、10日後に開催される世界経済フォーラムの年次総会では、ウクライナ情勢が焦点となると伝えている。ロシアからの参加は禁止とされた一方で、ウクライナからは、政府、民間企業、市民団体まで、数多くの代表団が参加するという。ウクライナに関する話し合いには、ゼレンスキー大統領をはじめ、副大臣と国会議員5名が参加する。クレーバ外務大臣もダボス会議に直接参加する予定となっている。
ウクライナ国営通信『ukrinform.net』によると、ゼレンスキー大統領は5月23日のダボス会議での演説について、「今年は、我が国にとって特に重要な会議となる。戦後の復興が議論される。世界の支持を十分に集めるために全力を尽くしているが、ダボス会議への参加はその絶好の機会の一つである。」と述べている。そして、各国からのウクライナ支援を引き出すために、アフリカやアジアの議会でも、演説を行っていくいことを目指しているという。
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3月8日付
『ロスアンゼルス・タイムズ』紙は、「“ウクライナ軍に支援したい”と集まったクラウドファンディングがウクライナ軍の武器調達資金に流用」と題して、ウクライナ人難民救済ではなく、ウクライナ軍の直接戦費に充当されるクラウドファンディングが増えていることに警鐘を鳴らしている。
ここ数年の中で、異常な程のクラウドファンディングによる資金がインターネット上で集まっている。
それは、2月下旬のロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まってからのもので、多くのインターネットユーザーや主要米国メディアまでもがウクライナ軍への直接寄付という形で表れている。...
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3月8日付
『ロスアンゼルス・タイムズ』紙は、「“ウクライナ軍に支援したい”と集まったクラウドファンディングがウクライナ軍の武器調達資金に流用」と題して、ウクライナ人難民救済ではなく、ウクライナ軍の直接戦費に充当されるクラウドファンディングが増えていることに警鐘を鳴らしている。
ここ数年の中で、異常な程のクラウドファンディングによる資金がインターネット上で集まっている。
それは、2月下旬のロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まってからのもので、多くのインターネットユーザーや主要米国メディアまでもがウクライナ軍への直接寄付という形で表れている。
その中でも大きな役割を担っているのが、カリフォルニア州法人でウクライナ・キエフにも本拠を構えるITサービス企業ソフトジョーン社(2001年設立)がツイッターやリンクトイン上に設営したクラウドファンディングのプラットフォームで、人道支援のみならずウクライナ国立銀行(1991年設立)経由ウクライナ軍への資金援助を呼びかけている。
キエフ在住のエミー・ジェングラー社長は、同社は“ロシアによる2014年クリミア半島併合以来、ウクライナ軍への支援を続けてきている”と明かした。
同社の支援は、救急車等の医療機器の援助も含まれるとする。
同社には多くの国の出身者が在籍していて、ウクライナ内でも約200人雇用しているが、(戦禍の中)一部は退社しているが、会社に留まって業務を続けている社員も多いという。
米国政府や北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)加盟国は、ウクライナに武器等を提供する一方、対ロシア制裁を科しているが、多くの市民や私企業は、反抗するウクライナや同国の人道支援のために直接あるいは間接的にインターネットを通じての資金援助を行っている。
オーストラリア・シドニー大(1850年設立の公立大学)のディジタル変革・ディジタル戦争専門のオルガ・ボイチャック講師(ウクライナ出身)は、2014年以来ウクライナにおいて実施されている軍向けクラウドファンディングを研究してきているが、クラウドファンディングに参加することでインターネットユーザーを“紛争と密接な関係に追い込んで”しまっていると警鐘を鳴らす。
“何故なら、投じた資金が軍事用兵站に使用されるのか、または市民レベルの物流関係に回されるのか境が見えないからだ”と指摘している。
ブロックチェーン(注2後記)の分析を手掛ける英国エリプティック(2013年設立)によると、ウクライナ侵攻以来、ウクライナ国立銀行及びNGOカムバックアライブ(CBA、2014年設立の軍事支援用クラウドファンディングを行う団体)宛に寄付された暗号資産は5,900万ドル(約67億8,500万円)に及ぶという。
一方、セキュリティ・クリアランス(注3後記)を伴う人材派遣・雇用相談を担うクリアランスジョブ・コム(2002年設立)のリンディ・カイザー情報担当役員によると、“ウクライナ軍に寄付したいがどうか”という質問を多く受けるが、“今のところ違法だと確認している訳ではないが、もしセキュリティ・クリアランスの資格を保有しているならば、思い止まった方が良い”と助言しているという。
なお、ロシア政府はこれまで長い間、“偽情報操作”によって大衆をミスリードしてきたことから、マイクロソフト、グーグル、メタ(前フェイスブック)等の米IT大手企業は、ウクライナに対して直接、あるいは間接的支援を行っている。
例えば、マイクロソフトは、ロシアによるハッカー攻撃の具体的防御策支援をウクライナ政府宛に行っているし、グーグル、メタは、ロシア政府に盲従して軍事侵攻と認めようとしないロシア国営メディア『RT(ロシア・トゥデイ)』等へのアクセスを制限したりしている。
ただ、アップルの態度がはっきりしないため、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼ディジタル担当相(31歳、2019年就任)は、“ウクライナの子供たちを平気で殺害しているロシアという国において、アップル製品の販売を即時に停止するべきだ”として、アップルのティム・クック最高経営責任者(61歳、2011年就任)を非難するツイートをしている。
(注1)クラウドファンディング:群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語。多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味し、ソーシャルファンディングとも呼ばれる。支援したお金がどのように使われるのかが分かること、少ない額から気軽に支援できることなどが、被災地の復興支援に必要な資金を集めるために大きな役割を果たし、注目されている。
(注2)ブロックチェーン:暗号技術を使ってリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増大するリストで、設計上、データの改変に強い。そこで、2つの当事者間の取引を効率的かつ検証可能で恒久的な方法で記録することができるオープンな分散型台帳の役割を成す。
(注3)セキュリティ・クリアランス:国家等の秘密にすべき情報を扱う職員に対して、その適格性を確認すること。特別管理秘密を扱う行政機関の職員を対象とする秘密取扱者適格性確認制度などがこれにあたる。また、そうした秘密情報を取り扱う資格。
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