今年3月中旬、ロシア国営テレビの生放送中に反戦を訴えたロシア人ジャーナリストが、虚偽情報を広めた容疑で自宅軟禁下に置かれていた。しかし、この程当局の追跡を逃れて、安全の場所から無実を訴える動画メッセージを公開している。
10月5日付
『ロイター通信』は、「自宅軟禁下にあったロシア人ジャーナリスト、無実を訴え」と題して、今年3月にロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難するメッセージを国営テレビの生放送中に流したロシア人ジャーナリストは、当局によって自宅軟禁下に置かれていたが、この程安全な場所に逃避した上で、無実を訴える動画を公開したと報じている。
ロシア国営テレビのジャーナリストだったマリーナ・オフシャンニコワ氏(44歳)は10月5日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難したことで当局から自宅軟禁下に置かれていたが、この程安全な場所に逃れた上で、自分は無実である旨動画メッセージで訴えた。
同氏は、“私は完全に無実であると信じる”とした上で、“ロシア当局が法に則っとり対応することを拒否している以上、私自身も当局の命令に従うつもりはなく、9月30日に自宅軟禁から逃れることとした”と強調している。
同氏は、『テレグラム』(2013年ロシア人技術者が開発したメッセージアプリ)に投稿した動画メッセージで、ロシア連邦刑執行庁(注1後記)に宛てて、ウラジーミル・プーチン大統領(今週末70歳、2000年就任)こそ戦争犯罪者だと訴えた。
同氏は、自身が嵌められていた電磁式くるぶし拘束錠をジェスチャーで示し、“プーチンにこそこれを嵌めさせるべきだ”とも言及した。
同氏の代理人ドミトリー・ザハトフ弁護士は『ロイター通信』のインタビューに答えて、当局は彼女の居場所を特定できていないとしながらも、当局はもし再度彼女を逮捕できたら即刻勾留するとしているとコメントした。
同氏が今年3月に、ロシア国営テレビの生放送中に反戦を訴える行動を取ったことで、ロシア政府は“フーリガン行為(注2後記)”だと非難した。
その上でロシア当局は、ウクライナ軍事侵攻後に新たに制定した「メディア規制法(注3後記)」に準じて、彼女に罰金刑を科した。
しかし、彼女はこれにめげず、国営テレビ局を辞した後、反戦活動家として活動を始め、7月にはクレムリン(ロシア大統領府)のモスクワ川対岸で、一人で反戦デモを行ったが当局によって逮捕され、自宅軟禁下に置かれてしまっていた。
彼女の自宅軟禁期限は10月9日であったが、国営メディア『RT(旧ロシア・トゥデイ)』の10月1日報道によると、彼女は11歳の実娘を連れて自宅を脱出し行方知れずとなっているという。
なお、彼女は裁判所から10月6日の出頭命令を受けていて、審理の結果、最長10年の禁固刑が科せられる恐れがあった。
同日付『ユーロニュース』(1993年開局のテレビ局)は、「生放送で反戦を訴えたジャーナリスト、マリーナ・オフシャンニコワ氏が自宅軟禁から脱出」として、当局の自宅軟禁下から逃れたと報じている。
マリーナ・オフシャンニコワ氏は10月5日、当局による自宅軟禁措置から実娘とともに逃れ、今後当局の審理前拘束命令に従わないと宣言した。
彼女は『フェイスブック』に投稿して、“私は全く無実だと信じているので、当局の自宅軟禁命令には従わない”と訴えた。
彼女は今年7月、クレムリン対岸で、“プーチンは人殺し、ロシア軍はファシスト(独裁者)、ウクライナ戦争で352人もの子供が犠牲”とのプラカードを持って反戦デモを行い、逮捕された上で、審理前2ヵ月間の自宅軟禁命令を受けていた。
なお、彼女が裁判で、「メディア規制法」下での“虚偽情報の流布罪”容疑が認められると、最長15年の禁固刑に処せられる恐れがある。
(注1)ロシア連邦刑執行庁:ロシア連邦司法省が所管する、ロシア連邦における刑務所・拘置所を運営する連邦執行機関で、2004年設立。
(注2)フーリガン行為:サッカーの試合会場の内外で暴力的な言動をする暴徒化した集団をフーリガンと呼び、同等の暴力行為を指す。
(注3)メディア規制法:ロシア軍の行動に関して「明らかな虚偽の情報の流布」や、公の場での「軍事行動の停止の呼びかけや、軍の名誉や信頼を傷つける活動」を禁止する法律で今年3月4日に制定。虚偽の情報を流した場合、最長で禁錮15年。また、外国や国際機関などに呼びかけた場合、最長で禁錮3年。
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今秋に中間選挙を迎える民主党・バイデン政権にとって、ガソリン・食品等の主要消費物価格のインフレ高進抑制が困難であることから、厳しい戦いが予想されている。そうした中、バイデン大統領の介入もあって、10万人の鉄道労組と鉄道会社間の労使契約交渉の暫定合意に漕ぎ着けられたことから、風向きが変わる可能性がある。
9月15日付
『AP通信』は、「バイデン大統領及び民主党、鉄道労組契約成立で政策的にも経済的にも追い風」と題して、決裂すると全米で鉄道網がストップしてしまう鉄道労使間協定が、労働省に加えてジョー・バイデン大統領(79歳)の後押しもあって、期限前日に暫定合意に漕ぎ着けられたことから、与党・民主党にとって今秋の中間選挙に向けて追い風になる可能性があると報じている。
鉄道会社と労働組合側が9月15日、暫定的ながら労使協定の合意に漕ぎ着けた。
実はジョー・バイデン大統領が9月14日、労使双方に電話で呼び掛け、目下米経済が直面している難局を乗り切るため、早期決着をするよう説得していた。
労使双方がこれに応えたものであるが、バイデン政権及び民主党陣営にとっては、逆風が吹いている今秋の中間選挙に対して、少なからぬ追い風となる可能性がある。
何故なら、期限の9月16日までに交渉が纏まらなかった場合、労組側は全米でのストライキを、また、経営者側もロックアウトを実施する恐れがあり、全米の長距離貨物運送に深刻な影響を及ぼす可能性があったからである。
労働省の9月15日発表によれば、20時間に及ぶ労使間交渉の結果、一部の組合を除いて概ね合意に達したことから、全米での鉄道輸送停止という最悪の事態を避けることができたという。
なお、今回の暫定合意については、依然全米十数の労組の同意が必要となるが、2024年までの5年間での労賃+24%アップ(複利)、勤務体系及び福利厚生の改善が網羅されている。
一方、万が一全米ストライキもしくはロックダウンとなった場合、総損失額は20億ドル(約2,880億円)に上ると推定され、工場生産継続のための資材搬入、燃料やその他多くの物流が阻害されることになるため、中間選挙が8週間先に迫った段階での労使間協定暫定合意は、少なからず民主党政権への追い風となるものとみられる。
同日付『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「労働省、鉄道会社と労組が暫定合意と発表」として、20時間に及ぶ鉄道労使間交渉の結果、暫定合意に漕ぎ着けられたことから、全米に波及する鉄道ストライキもロックアウトも回避できたと報じている。
労働省は9月15日朝、同省で行われた“20時間に及ぶ鉄道労使間交渉の結果、国全体の経済活動継続の必要性を最優先し、労使間協定に関して暫定合意することになった”と発表した。
米鉄道会社と10万人余りの労働者を代表する労働組合が、9月16日を期限として交渉を続けていたが、万が一妥結しない場合、全米での鉄道ストライキ、あるいは経営者側のロックアウトと、いずれにしても、長距離貨物輸送の約40%を担う重要なインフラが麻痺状態に陥り、サプライチェーン(総合的供給網)の逼迫を悪化させる恐れがあった。
ただ、当該暫定合意には、トラック運転手組合(IBT、1903年設立の米・カナダ組合)及び国際板金・航空・鉄道・運輸労働者協会(SMART、1888年設立)の2つの労組が重視していた問題の条件が盛り込まれていないことから、両組合の米国支部が合意に抵抗する対応をみせている。
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