日本は、「防衛装備移転三原則(注後記)」で武器輸出を厳しく制限し、砲弾など殺傷能力のある装備品の輸出を禁じている。しかしこの程、日本が、米国内でのTNT火薬(黒色火薬)製造に難儀していることから、ウクライナ軍事支援のための砲弾用TNT火薬供給を打診されていることが分かった。
6月2日付米
『ザ・ヒル』(政治専門紙)、ウクライナ
『ザ・ニューボイス・オブ・ウクライナ』(英字紙)等は、欧米
『ロイター通信』記事を引用して、日本が遂に、ウクライナ軍事支援を行う米国要請に基づいて、砲弾製造用TNT火薬を供給する見込みだと報じている。
米国は、対ロシア制裁と並行して、ウクライナに対して様々な軍事支援を行っている。
そしてこの程、自国のTNT火薬製造工場の爆発で供給不安に陥ったことから、同火薬を日本のTNT火薬製造会社からも手当てしようとしていることが分かった。
『ロイター通信』が匿名を条件に関係者から聴取したところによると、ウクライナ側が特に必要としている155ミリ砲弾製造のため、具体的企業名は秘匿されたが、日本のある火薬メーカーを供給元として組み入れる交渉が進んでいるという。
日本はこれまで、「防衛装備移転三原則」で武器輸出を厳しく制限し、砲弾など殺傷能力のある装備品は輸出を禁止してきた。
ただ、ウクライナに関しては、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)が、“ウクライナ問題は明日の東アジアでの事態”に結びつきかねないと懸念を強め、昨年来、上記の運用を一部変更して、ヘルメットや防弾チョッキを供与している。
更に、『AP通信』報道によると、岸田首相は5月21日、来日中のウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45歳、2019年就任)との会談を経て、100台の軍用トラックを提供することを決めたという。
なお、ロイド・オースティン国防長官(68歳、2021年就任)は6月1日、日米国防相会談後の記者会見で、“日本の武器輸出政策の変更を決めるのは日本政府だ”とした上で、“更にウクライナ支援で協調できるなら何時でも歓迎する”とコメントしている。
一方、『ロイター通信』が日本火薬工業会(1948年前身設立)の会員企業のうち、火薬類を扱う22社に照会したところ、TNT火薬を製造していると回答したのは中国化薬(1947年設立、本社広島県呉市)のみであった。
ただ、同社は、“TNT火薬の輸出について、米国政府や米軍から直接打診を受けたことはない”とコメントしている。
(注)防衛装備移転三原則:2014年4月に閣議決定された、日本国政府が採る武器輸出規制および運用面の原則。国家安全保障戦略に基づいて、武器輸出三原則に代わる新たな政府方針として制定。当三原則に基づき、国家安全保障会議(NSC)がこれまでに防衛装備の海外移転を承認したのは、地対空ミサイル部品の対米輸出、戦闘機用空対空ミサイルをめぐる英国との共同研究、及び2022年にウクライナより要請され防弾チョッキ等に止まる。
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11月にバリ島(インドネシア)で開催予定の主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)について、米国他西側諸国はウラジーミル・プーチン大統領(69歳)の出席に猛反対していた。しかし、議長国のジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任)は、世界の分断は避けたいとして、プーチン大統領もウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44歳、2019年就任)も招待したいと主張し、両大統領から(オンライン参加か否かは別にして)参加の回答を取得していた。そうした中、この程ロシア側は、セキュリティ上の問題等全てについて総合判断しない限り、プーチン大統領の出席が可能かどうか決定できない旨表明した。
9月5日付ウクライナ
『ザ・ニューボイス・オブ・ウクライナ』(2022年立ち上げの独立系英字ニュース)は、「プーチン大統領、セキュリティ上の問題でG-20サミット欠席か」と題して、一度は出席の意向を示していたプーチン大統領が、11月開催のG-20サミットへの参加を見合わせる可能性があると報じている。
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官(54歳、2012年就任)は9月4日、プーチン大統領がG-20サミットに出席するかどうかは、セキュリティ上の問題等総合的に判断した上で決定する必要がある、と表明した。
同報道官は、“議長国のトップより丁重な招待を受けたことは光栄なことではあるが、プーチン大統領が実際に出席するかどうかは、セキュリティ上の問題等含めて慎重に判断する必要がある”と語った。
ただ、議長国インドネシアのウィドド大統領は8月18日、プーチン大統領が出席するものと期待している、とした上で、“習近平国家(シー・チンピン、69歳、2012年就任)も出席の意向である”と表明していた。
ウィドド大統領は、分断を望まないとして、当初からプーチン大統領を招待する意向を述べていたが、米国を始めとした西側諸国は、ロシアがウクライナに軍事侵攻した挙句にウクライナ全土を支配下に置こうとしていることを理由として、ロシア大統領の参加に反対していた。
米『ブルームバーグ』オンラインニュース報道によると、ジョー・バイデン大統領(79歳、2021年就任)は、プーチン大統領と同席することを拒否すると表明したという。
この申し出をインドネシア側が拒んだところ、ウクライナ支持国から、ウクライナ代表を招待する話が持ち上がった。
そこでウィドド大統領は4月27日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、同大統領をG-20サミットに招待したい旨伝えた。
ただ、同大統領は同時に、4月29日にプーチン大統領との電話会談で、G-20サミットに招待する旨話した。
同大統領はその際、“G-20の団結を望む”ことから“分断を阻止したい”と表明していた。
ゼレンスキー大統領は5月27日、G-20サミットへ参加する旨連絡してきたが、“ウクライナの友好国のみ”の出席を希望するとし、また、ウクライナ全土を不条理な戦争に巻き込もうとしているロシアの対応についてきちんと評価することが求められる、と要請した。
なお、大統領府首席顧問のミハイロ・ポドリャク氏(50歳、2020年就任)は、ゼレンスキー大統領がインドネシアに赴くのか、オンライン参加となるのか、11月時点の状況次第であるとしながらも、同大統領は個人的にはプーチン大統領が参加することになっても出席意向に変更はないと考えている、と付言した。
米ホワイトハウスも、ゼレンスキー大統領は、たとえプーチン大統領が参加してもG-20サミットに出席するものと期待していると表明していた。
一方、7月に開催されたG-20外相会議には、ウクライナのドミトロ・クレーバ外相(41歳、2020年就任)がオンライン参加していたが、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(72歳、2004年就任)が議場に現われたところ、多くの外相が会議をボイコットしている。
9月4日付ロシア『RT(旧称ロシア・トゥデイ)』(2005年開局のニュース専門メディア)は、「ロシア政府、G-20サミットについて言及」として、ロシア政府がプーチン大統領のG-20出席の有無について言及したと報じた。
ペスコフ報道官は9月4日、プーチン大統領が11月のG-20サミットに出席する場合、セキュリティ上の問題等いろいろな事態について検討する必要があると表明した。
議長国インドネシアのウィドド大統領は先月、プーチン大統領も習国家主席も出席すると約束してくれていると主張していた。
しかし、同報道官はロシア国営『ロシア1TV』(1956年開局)のインタビューに答えて、プーチン大統領がG-20サミットに出席するかどうかは未定だとした上で、西側諸国が挙ってウクライナを支持している状況下、プーチン大統領がインドネシアに赴くことは危険と考えられる場合があるので、“セキュリティ問題等を含めてあらゆる事態を想定し、検討した上で最終決定することになる”とコメントした。
ただ、もしプーチン大統領がインドネシアに赴くとなれば、ロシアによるウクライナ軍事作戦開始後初めて、同大統領・習国家主席及びバイデン大統領が一堂に会することになる。
一方、ウクライナはG-20メンバーではないが、議長国からゼレンスキー大統領が招待されている。
なお、バイデン大統領及び西側諸国リーダーは当初、プーチン大統領のG-20出席を拒否すると言っていたが、ウィドド大統領は、プーチン大統領の出席は必須だと強く反論していた。
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