2日に続き、1週間後の9日にも北朝鮮は飛翔体を発射した。韓国の聯合参謀本部は、今回は7時36分咸鏡南道宣徳付近から朝鮮半島東部の海域に向けて3発の異なる種類の短距離の飛翔体が発射されたと発表した。また今回の飛翔体の飛行距離は200㌔、飛行高度は50㌔で、超大型のロケット砲も含むものであった。青瓦台は、朝鮮半島の平和と安定に冷や水を浴びせるものだと表明した。
韓国では、この1週間の北朝鮮の態度の目まぐるしい変化をどのように解釈すべきかと話題になっている。2日には元山から朝鮮半島東部海域へ2発の飛翔体を発射し、3日には北朝鮮のメディアが、金正恩委員長が前線の火力打撃訓練場を視察し、さらにロケット砲が発射されたと報じた。同日には金正恩委員長の妹の金与正党中央委員会第一副部長が、韓国が北朝鮮の軍事訓練に憂慮を示したことに対し、激しく非難した。ただし翌日には金正恩委員長が韓国のコロナウィルスとの闘いに慰問の親書を文在寅大統領宛てに送っている。
韓国のなかでは、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、エストニアの欧州5か国が5日に北朝鮮のロケット砲発射を国連安全保障理事会の決議違反だと非難する共同声明を安保理で発表したことに対し、北朝鮮が抗議のために飛翔体を発射したのではないかとの見方もある。北朝鮮外務省の報道官は、7日に「共同声明は5か国が米国に唆されたとった軽率な行為であり、朝鮮に重大な行為を引き起こさせかねないことになる」と述べていた。
また北朝鮮が文在寅大統領宛てに親書を出し、南北の協力的な雰囲気を作った後に再度飛翔体を発射したことに対しては、北朝鮮が「朝鮮の軍事訓練のことをとやかくいうな」と韓国に対し要求したのだろうとの見方もある。親書は南北間の門を開く「鍵」のようなものであることから、韓国政府も強い言動をとれなくなっている。韓国の「朝鮮日報」によると、9日青瓦台では閣僚会議が開催されたが、2日の閣僚会議でいわれた北朝鮮に対する「強烈な憂慮」などという言葉に比べ、比較的穏やかな表現の非難にとどまっている。
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米朝関係は、10月初めにスウェーデンで行われた実務者協議で何らの進展がなかったことから、停滞したままである。北朝鮮側は、関係進展のために米国側が北朝鮮敵対視を止め、年末までに制裁解除含めた提案が必須と一方的に通告してきている。しかし、ドナルド・トランプ大統領は目下、ウクライナ・スキャンダルに端を発した弾劾手続き進行に遭い、北朝鮮問題どころではない。そこで金正恩(キム・ジョンウン)委員長としては、米国側に何とか注目して欲しいと思ったのか、米韓合同軍事演習延期決定を尻目に北朝鮮空軍の軍事演習を観閲している。
11月18日付米
『ニューズウィーク』誌:「金正恩委員長、ドナルド・トランプ大統領に警告を発すべく空軍演習を観閲」
北朝鮮外交部(省に相当)の金桂冠(キム・ケグァン)顧問(元外交部長)は11月18日、国営メディア『朝鮮中央通信』のインタビューに答えて、“成果のない二国間協議を持つ意向はない”と強調した。
同顧問は、米国側が北朝鮮敵対を示す経済制裁の停止等の具体的提案をしてこない限り、北朝鮮側は非核化に関わる何らの検討も行うことにはならない、とも付言した。...
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11月18日付米
『ニューズウィーク』誌:「金正恩委員長、ドナルド・トランプ大統領に警告を発すべく空軍演習を観閲」
北朝鮮外交部(省に相当)の金桂冠(キム・ケグァン)顧問(元外交部長)は11月18日、国営メディア『朝鮮中央通信』のインタビューに答えて、“成果のない二国間協議を持つ意向はない”と強調した。
同顧問は、米国側が北朝鮮敵対を示す経済制裁の停止等の具体的提案をしてこない限り、北朝鮮側は非核化に関わる何らの検討も行うことにはならない、とも付言した。
この警告記事と同時に『朝鮮中央通信』は、金正恩委員長が北朝鮮人民軍の空軍部隊による落下傘降下訓練を観閲したと報じている。
その際金委員長は、“我が軍は無敵”だと言及したとしている。
これに先立つ11月17日、ドナルド・トランプ大統領が珍しく宿敵ジョー・バイデン候補を擁護するツイートをしていた。
すなわち、『朝鮮中央通信』がバイデン氏を“狂犬”だと評したのに触れて、同大統領が、“眠たそうでのろま”かも知れないが“狂犬”よりはましだとコメントしていた。
『朝鮮中央通信』によると、このツイートをみた金顧問は、米国側が米朝首脳会談を持ちたがっていると解釈したという。
この裏付けとして、マーク・エスパー国防長官が11月17日午前、予定されていた米韓合同軍事演習を中止する旨発表したことが挙げられるとする。
なお、北朝鮮側は一方的に、米朝関係進展のためには、年内中に米国側が北朝鮮敵対を示す経済制裁の停止等、具体的提案が必要だと通告してきている。
一方、金委員長はこれまで、米大統領の他、中国、ロシア、韓国首脳と複数回首脳会談を持っているが、日本に対しては高官レベルでの協議等一切応じようとしていない。
11月19日付韓国『朝鮮日報』紙:「金正恩委員長、落下傘部隊演習を観閲」
北朝鮮メディア『労働新聞』によると、金委員長が11月16日、北朝鮮人民軍の落下傘部隊の降下訓練を観閲し、同軍はいつでも臨戦態勢にあると語ったという。
同委員長はまた、“頼もしい精鋭部隊”だとし、不測の事態に備えてかかる訓練は必要だとも言及したとする。
なお、降下訓練を行った兵隊は狙撃兵で、不承知の地域に素早く侵入して任務を遂行する作戦に適した部隊だとしている。
一方、韓国軍情報部隊によると、降下訓練に使用したAN-2複葉機(旧ソ連製)は、低空飛行が可能で、低速かつ形体よりレーダーに捉え難く、敵地の奥深くまで飛来して作戦が展開できるものだという。
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