いよいよ2021年末を迎えるが、世界各国では新型コロナウィルス(COVID-19)がオミクロン変異株の出現もあって再び猛威を振るっていることもあって、年越しを祝うどころではなさそうである。しかし、そうした状況下でも、COVID-19を吹き飛ばせとばかりに、昨年末はできなかった年越し行事を決行しようとする国もある。
12月31日付
『ロイター通信』:「COVID-19感染再拡大で多くの国で今年末も寂しい年越し」
世界各国では、直近7日間のCOVID-19感染者数が最多記録を更新している。
12月24日から30日の間の新規感染者は合計100万人を超えており、これまでより10万人も増えている。
従って、多くの国では、感染力が最強となっているオミクロン変異株の蔓延を恐れて、新年を迎える祝祭行事を見合わせている。...
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12月31日付
『ロイター通信』:「COVID-19感染再拡大で多くの国で今年末も寂しい年越し」
世界各国では、直近7日間のCOVID-19感染者数が最多記録を更新している。
12月24日から30日の間の新規感染者は合計100万人を超えており、これまでより10万人も増えている。
従って、多くの国では、感染力が最強となっているオミクロン変異株の蔓延を恐れて、新年を迎える祝祭行事を見合わせている。
しかし、そうした状況下でも、例えばオーストラリアでは年越し行事を決行するとしている。
スコット・モリソン首相(53歳、2018年就任)は、市民に“大晦日を楽しんで”欲しいと発言し、また、従来の感染者数の2倍近い2万1,151人を出しているニューサウスウェールズ州のドミニク・ペロテット首相(38歳、2021年10月就任)も、“外に出て新年を祝う”よう鼓舞している。
同州首相は、ワクチン接種率の高さに活気付けられ、かつ、オミクロン株に対応できる医療体制が敷かれていることに自信を持ち、“感染症に対する備えは十分だ”と強調した。
シドニー市内では、ソーシャルディスタンシング確保及び屋内でのマスク着用が求められているが、シドニー湾で行われる年越しの花火大会には大勢の人が見晴らしの良い場所確保のために早朝から集まり始めている。
また、COVID-19感染を抑えられたことで有名となっているニュージーランド(NZ)では、いくつかの年越し行事が予定どおり催行予定である。
最大都市オークランド(北島北部)では、今週規制を緩和して歌舞音曲を伴うパーティを容認するとしている。
更に、北朝鮮でも年越し祝賀行事の準備が進められている模様である。
韓国メディア『NKニュース』(2011年設立の北朝鮮専門ニュースサイト)によると、平壌(ピョンヤン)中心部の金日成広場(キム・イルソンスクエア、1954年竣工)では年越し花火やパレードの準備が行われていることが衛星写真から覗えるという。
北朝鮮国営メディア『労働新聞』(ロドン・シンムン、1945年創刊)も、マスク着用の多くの市民が新年を祝うための花を買い求める写真を掲載している。
しかし、その他多くの国では、昨年末に続いて今年末も派手な行事が制限されている。
・韓国:感染急拡大に遭い、厳しいソーシャルディスタンシング確保規制適用が更に2週間延長決定。恒例の大晦日鐘撞行事も2年連続で中止。
・中国:陝西省(シャンシー)西安(シーアン)で12月21日に新記録となる52人の新規感染者が出て、1,300万人を抱える同市の都市封鎖措置。他都市においても年越し行事は全て中止とし、当局は市民に外出自粛を要求。
・インドネシア:首都ジャカルタでは新年に大勢の市民が集まることから、警察が対応策として11幹線道路を封鎖。
・マレーシア:全国的に大勢が集まることを禁止し、首都クアラルンプールのペトロナスツインタワー(1998年完成)における壮観な恒例花火大会も中止。
・日本:岸田文雄首相(64歳)はユーチューブを使って、年末のパーティでのマスク着用及び大人数とならないよう呼びかけ。渋谷スクランブル交差点での年越し行事の禁止。
・インド:12月30日に全大都市における夜間外出禁止令を発令しただけでなく、大勢で集まることを禁止。また、レストランに対して、客受け入れ制限を命令。
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北朝鮮は、コロナ禍、経済制裁、自然災害にあえぐ中、韓国など海外の文化が流入し、市場経済や繁栄を見た若者世代が、金正恩政権への疑問を抱き反発しかねないと危険視し、取り締まりを強化しているという。
7月18日付英国
『BBC』は「北朝鮮、若者に韓国の言葉を使わないよう警告」との見出しで以下のように報道している。
北朝鮮の国営メディアは、若者に韓国風スラングの使用を禁止し、北朝鮮の標準語を話すよう警告している。これは外国文化の流入を排除する刑罰つき新法の一環で、違反者には禁固刑や処刑まであり得るという。労働新聞の記事は、韓国のファッションやヘアスタイルをやめ、音楽も聞かないようにと警告、「ブルジョアのカラー掲示板から入ってくるイデオロギーや文化は、銃を持った敵より危険」、「北朝鮮訛りの朝鮮語の方が優れており、若者は正しい朝鮮語を話すべきだ」と強調する。韓国のスラングには例としては、夫を「オッパ」(兄という意味)と呼ぶなどの言葉がある。
北朝鮮は海外の影響を敵視する姿勢をみせており、ニューヨークタイムズによると、金正恩氏はKポップは北朝鮮青年を腐敗させる「悪性のがん」と規定している。韓国、アメリカ、または日本のメディアを大量に所持しているのが見つかった場合が死刑、視聴が見つかった場合は15年の強制労働収容所となる。だが、外国の影響は避けられず、巧妙な密輸手口で、今も変わらず流入し続けているとも報じられている。脱北者の中には、韓国ドラマをみて脱北を決めたという人もいる。
北朝鮮研究大学のYang Moo-jin教授は、「Kポップや西の文化はすぐに若者世代に浸透し、北朝鮮には負の影響があるため、金氏は今後のために取り締まりを行っているのだろう」としている。
7月17日付韓国『The Korea Herald』は「金正恩はなぜミレニアム世代のKポップやスラングを取り締まるのか?」との見出しで以下のように報道している。
北朝鮮が若者世代の取り締まりという課題に直面している。ミレニアム世代又はチャンマダン世代と呼ばれる2,30代で1990年代の飢饉に育った若者世代が、資本主義や外国文化に触れるのを規制しなければ、北朝鮮の体制に綻びが生じ、政治危機に陥る危険があるとの懸念がある。スイスで教育を受けた37歳の金正恩氏こそ、その影響力をよく理解している。
飢饉の間には、闇市場を意味する「チャンマダン」が経済の中心となっていた。国民は公務傍ら、生計のため輸入品の食料やモノを売る2重生活をしていた。こうして闇市場に依存した生活をしていた80、90年代生まれの北朝鮮人はチャマダン世代と呼ばれる。彼らは人口の15%を占め、若いころから資本主義に触れ、親世代のように配給の列に並ぶ代わりに、食べものやモノを闇市で買ってきた。
韓国の国家情報院によると、配給のない経済不安の中に成長したこの層は、個人主義的でイデオロギーよりも拝金主義の傾向があり、概ね政治に関心がなく金正恩や体制への忠誠心に欠けるという。中国のコピー版で密かに韓国ドラマシリーズを見てKポップを聞いて育ち、煌びやかなTVドラマを通して南の生活を垣間見、北が教えられてきたような社会主義のパラダイスではないと確信を持ったのである。
昨年のソウル国立大学平和統一研究所(IPUS)による脱北者への調査によると、47.4%が、よく北で韓国ドラマ・映画を見ていたと回答。「1,2度だけ見た」は44%だった。
政府内でも世代交代が進む中、30代の金氏は同世代のイデオロギーに危機感を持っている。最近の閣僚交代で高官は40,50代が大半となり、企業のエリート層も若くなっている。北朝鮮はこの傾向を、経済に寄与する反面、権力に悪影響だと懸念している。
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