オーストラリアのサイバーセキュリティ企業である「インターネット2.0」は、武漢にある中国の研究所が、2019年12月に最初のコロナ感染者が報告される数カ月前に、コロナウイルス検査機器を大量に購入していたという調査結果を発表した。
英
『インデペンデント』によると、オーストラリアのデジタルフォレンジックと情報分析を専門とするサイバーセキュリティ企業「インターネット2.0」の調査チームが、中国政府が2019年にPCR検査を前年の約2倍購入していたとする報告をまとめた。中国は、2018年に3670万元(約6億円)ぶんのPCR検査機器を調達したのに対し、2019年には6770万元(約12億円)ぶん調達した。また、PCR調達の総契約数は、2018年の89件から2019年には135件に増加していたことも明らかになった。
注文の増加は、主に人民解放軍空軍病院、武漢ウイルス研究所、武漢科技大学、湖北省疾病管理予防センターの4つの機関によるものだった。
「インターネット 2.0」の創設者であるロバート・ポッター氏は、一部の購入に関してはコロナと関係のないものである可能性があると指摘する一方で、「これらのデータを総合すると、パンデミックは12月に始まったという公式見解を全面的に覆すものである」と述べている。「また、人民解放軍、疾病管理センター、湖北省にある機密性の高い研究所など、政府レベルの調達がかなり多かったことも判明した」と付け加えた。
中国は2019年12月31日に最初のクラスターの症例を報告し、WHOは2020年1月5日に症例に関する最初の勧告を発表した。しかし、調査チームによると、支出の増加は2019年5月頃から見られたという。今回の調査に基づき、調査チームは「中国がWHOに新型コロナウイルスについて通知するよりもはるかに早い時期にパンデミックが始まっていたという高い確信を持っている」と結論づけ、さらなる調査を求めている。
しかし、米『ブルームバーグ・ニュース』によると、複数の医療専門家は、そのような結論を出すには十分な情報ではないと述べている。ひとつには、PCR検査は病原体を検査する標準的な方法になっており、もともと人気が高まっていたことが指摘されている。さらに、PCR装置は、動物を含め、コロナ以外の多くの病原体の検査にも広く使われており、現代の病院や研究室には普通に見られるものだという。
中国外務省もこの調査結果に異議を唱えている。外務省報道官は、この調査結果は、コロナウイルスの起源に関する他の疑わしい主張と同じカテゴリーに入ると反論している。その中には、武漢の複数の病院付近の交通量を分析し、「咳」と「下痢」というキーワードで検索した後、早くも2019年8月に武漢で流行が始まったと結論付けた「いわゆる論文」も含まれている。報道官はさらに「中国の伝染病対策キャンペーンは世界に開かれており、状況は明確で、事実は一目瞭然であり、時と歴史の試練に耐えているものだ」と述べている。
こうした反論に対し、「インターネット2.0」の調査チームの主席研究員であるデビッド・ロビンソン氏は、購入契約の時期や購入した機関は、湖北省当局が2019年後半を通して人に関する新しい病気を調査していたという考えを裏付けるものだと述べている。同時に、今回の調査結果は決定的な証拠ではないとも述べている。
同社は声明で、「このデータは新型コロナウイルスに関する起源の結論を裏付けるものではないが、将来的にはこのデータの一部が起源の発見を裏付けるかもしれない」と述べている。「また、この報告書は、パンデミックが発生した特定の時点を特定するものでもない。中国が決定的な証拠を得ることができないように多大な努力をしていることから、残念ながら第三者のデータに頼らざるを得ない可能性があることを意味している」と述べている。
英『デイリーメイル』は、多摩大学大学院MBAの客員教授である井形彬氏が、日経新聞に対し、なぜより多くのキットが購入されたのかについて、「確かなことは言えない」と述べた上で、この報告書は、「12月の数カ月から半年前に、武漢周辺でウイルスの発生が認識されていたことを主張するための強力な情報」だと語り、「この報告書は、各国が中国に再び情報提供を求めるきっかけになるかもしれない」と述べたことを報じている。
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6月3日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国、年末までに14億人の80%にワクチン接種を完了させると宣言」
中国政府はこの程、年末までに14億人の実に80%の国民へのワクチン接種を達成すると発表した。
『AP通信』報道によると、6月2日現在、中国におけるワクチン接種者は7億400万人であるが、一日当たり1,900万回分のワクチン供給を続けているという。
米国におけるピークは4月であったが、それでも一日当たり340万回分であった。...
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6月3日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国、年末までに14億人の80%にワクチン接種を完了させると宣言」
中国政府はこの程、年末までに14億人の実に80%の国民へのワクチン接種を達成すると発表した。
『AP通信』報道によると、6月2日現在、中国におけるワクチン接種者は7億400万人であるが、一日当たり1,900万回分のワクチン供給を続けているという。
米国におけるピークは4月であったが、それでも一日当たり340万回分であった。
中国は、公式データを公表していないため定かではないが、北京市民の87%が既に1度目のワクチン接種を済ませているといい、ただ、これは中国平均値を大きく上回る数値である。
一方、西側諸国では、6月2日に日本主導で開催されたワクチン・サミットにおいて、COVAX宛に約24億ドル(約2,640億円)の資金拠出が決定され、そのうち日本が最大となる8億ドル(約880億円)の追加拠出を新たに表明している。
また、カマラ・ハリス副大統領(56歳)もかねて表明したとおり、2021~2022年合計で40億ドル(約4,400億円)の拠出につき再確認している。
その他、カナダ、フランス、スペイン、スウェーデン等も拠出を表明しており、この結果、COVAX資金は96億ドル(約1兆560億円)に上ることになっている。
COVAXは、途上国向けのワクチン確保を目的として立ち上げられたグローバル組織で、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI、注2後記)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(2000年創設の世界最大の慈善基金団体)が立ち上げたGAVIアライアンス(GAVI、注3後記)等が主導して運営している。
ただ、これまでにCOVAXが配布できたワクチンは、当初の目標である年内に20億回分に対して、127ヵ国宛、僅か7,700万回分に留まっていた。
一方、2022年北京冬季オリンピック開催を控える中国の対応に比し、1ヵ月半後に東京オリンピック開会式を迎える日本では、COVID-19変異株の蔓延に対してワクチン接種の遅れ等もあって、依然逆風にさらされている。
5月31日にリリースされた『日経新聞』の世論調査の結果、回答者の60%以上が大会の再延期、もしくは中止を要求していて、予定どおりの開催を望むのは僅か34%に留まっている。
また、COVID-19感染症対策分科会の尾見茂会長(71歳、医学者・厚生官僚)が6月2日、衆議院厚生労働委員会の席上、現下の感染症蔓延状況下で東京大会を開催することは無理があるとし、もし開催する場合には、東京大会組織委員会の責任で規模縮小等を考える必要があると発言した。
これに加えて今週、東京大会に関わるボランティア(注4後記)のうち約1万人が辞退したとの報道がなされている。
しかし、同組織委員会の武藤敏郎事務総長(77歳、元大蔵・財務事務次官、元日銀副総裁)は同日、既に海外からの観戦者受け入れを中止しているので、1万人のボランティア辞退で大会運営に悪影響を及ぼすことはないと断言した。
更に、同組織委員会の橋本聖子会長(56歳、衆議院議員、元スピードスケート・自転車競技選手)も6月3日、大会の再延期はあり得ない、としてあくまで予定どおりの開催を支持している。
(注1)COVAX:COVID-19ワクチンへの公平なアクセスを目的としたグローバルな取り組みで、CEPI、GAVI、世界保健機関(WHO、1948年設立)などが主導。
(注2)CEPI:世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月世界経済フォーラム・ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。 日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラスト(1936年設立、英国本拠の医学研究支援等を目的とする公益信託団体)が拠出。平時には需要の少ない、エボラ出血熱のような世界規模の流行を生じる恐れのある感染症に対するワクチンの開発を促進し、流行が生じる可能性が高い低中所得国においてもアクセスが可能となる価格でのワクチン供給を目的としている。
(注3)GAVI:子供の予防接種プログラムの拡大を通じて、世界の子供の命を救い、人々の健康を守ることをミッションとした同盟で、民間セクター、公共セクターが共に参加する革新的なメカニズム。世界経済フォーラムの2000年総会で設立。ワクチンと予防接種のための世界同盟(Global Alliance for Vaccines and Immunization)より改称。
(注4)東京大会ボランティア:大会組織委員会が募集した大会ボランティアが約8万人、これに加えて、各自治体が募集した都市ボランティアが約3万人に上る。
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