中国・新疆ウイグル自治区における強制労働の人権問題に対して懸念を示していたスウェーデンの衣料品大手H&Mや米スポーツ用品大手ナイキなど欧米のアパレル企業が、中国で急速に広がっているボイコット運動の対象となっている。
英紙
『ザ・テレグラフ』によると、ボイコット運動の発端は、中国共産党の青年団が24日に、昨年H&Mが新疆の人権問題に対し懸念を表明していたことをSNS上で非難したことだった。「中国で金もうけをしたい一方で、新疆ウイグル自治区の綿花をボイコットするための噂を広めるのか?」という投稿に、50万回近くの「いいね!」、4万回の「シェア」、1万6千件の「コメント」が寄せられた。
国営メディアはまた、H&Mは「数十億人の中国人の声を聞くよりも、少数の人々によって広められている嘘を信じている」という、新疆ウイグル自治区での人権侵害を否定する際に中国政府がいつも述べている同様のセリフで同ブランドを批判した。
25日の朝には、中国のネット販売プラットフォームやオンラインマップ上で、H&Mの商品や店舗所在地の検索がブロックされた。
『ザ・テレグラフ』は、こうしたボイコット運動は、ウイグル自治区での人権侵害をめぐる欧米の制裁に対抗するための中国当局の戦略の一環であると報じている。EU、英国、米国、カナダは22日に、新疆ウイグル自治区でのウイグル人やその他のイスラム少数民族に対する人権侵害に責任があるとみなされる中国の政府関係者に対する制裁を発表したばかりであった。
英ニュース専門局『スカイニュース』は、消費者による自然発生的なボイコットという演出のわりには、ボイコットをうながす中国当局者の動きがあまりに目立つと伝えている。現在、あらゆる中国メディアがボイコット運動を支持する内容の報道を繰り広げている。
人民日報は、新疆ウイグル自治区の綿花の国内需要が高すぎて、同自治区では対応しきれないという記事を掲載した。新華社通信は、同地域の綿花収穫の様子を撮影したビデオを公開し、その95%が完全に自動化されていると指摘した。ある記者は、「新疆では綿花産業はとっくに機械化されているのに、誰が強制労働を必要とするのか?」と語り、CCTVでは、「H&Mはもはや全くファッショナブルではない。」と伝えている。さらには、外交省と商務省の両省が記者会見を開き、新疆での強制労働は「ナンセンス」だと述べた。
『スカイニュース』は、中国の公式メディアは、通常このような速さで反応することはないと指摘している。同メディアは、中国の一部のインターネットユーザーの間で、実際に怒りの声が上がっているのは間違いないが、関係組織が一丸となって動く今回の対応ぶりは、かなり前から予告されていた欧米諸国による中国への制裁措置に対し、中国があらかじめ独自の対応策を練っていた可能性が高いと伝えている。
米ニュースサイト『ブライトバート』によると、中国共産党の英字機関紙「グローバルタイムズ」は25日、H&Mが新疆の綿花産業から距離を置いたことに対して批判が殺到したことを受け、ナイキが「次のターゲット」であると伝えた。「グローバルタイムズ」によると、新疆ウイグル自治区の綿花を製品に使用していないと公表したナイキに対し、「#nike」というハッシュタグが中国版ツイッターの微博(Weibo)で最大のトレンドとなり、7億2千万のビューと53万のコメントが寄せられた。
編集長である胡錫進は25日に掲載した社説で、ナイキが強制労働を公に拒絶したことで中国政府からの反発を受け、「ついに報いを受けた」ことを称賛し、「すべての多国籍企業は地政学からは距離を置くべきだ」と述べている。
『スカイニュース』は、アメリカのトランプ政権は、貿易関税を通じて中国とのデカップリングを追求したが、失敗に終わった。しかし、少なくともファッション業界では、人権を理由にデカップリングが起こっている、と報じている。
中国はH&Mにとって4番目に大きな市場であり、ナイキにとっては全売上の19%を占めている。
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米大統領選で、投票日後4日経ってから漸く、ジョー・バイデン民主党候補(77歳)が勝利宣言を行った。ドナルド・トランプ大統領(74歳)は往生際が悪く、法廷闘争に一縷の望みをかけて伝統的な“敗北宣言”を行おうとしないが、市場はもとより世界のほとんどの首脳がバイデン候補の当確を祝福した。ただ、トランプ大統領との個人的関係に拠っていたロシアと北朝鮮の首脳は恐らくがっかりしているものとみられる。
11月8日付
『AP通信』、
『ロイター通信』、
『AFP通信』他:「世界の首脳、バイデン次期大統領との新たな関係に期待」
世界の主だった首脳が11月8日、ジョー・バイデン民主党候補の大統領選当確を祝福した。
何故なら、ドナルド・トランプ大統領の4年間は、国際的な協調を全て拒否する政策が進められていたため、これで漸く米国首脳と、気候変動(パリ協定)、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症対策、その他諸々の重要問題について協議することができると期待されるからである。
すなわち、トランプ大統領が“米国第一主義”を掲げて悉く問題化させたパリ協定、北大西洋条約機構(NATO)、世界保健機関(WHO)等について、欧州やアジアの同盟国は改めて真剣に取り組むことを望んでいる。
まず、菅義偉首相(71歳)がツイッターで、“日米同盟を更に強固なものとするために、また、インド太平洋地域及び世界の平和、自由及び繁栄を確保するために、一緒に取り組んでいきたい”と祝福した。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン、67歳)大統領も同じくツイッターで、“共通する価値観”を強固にするために共に努めたいと表明した。
一方、トランプ大統領と敵対してきた中国では、表立った反応はみられず、ただ、SNS中国人ユーザーは、(トランプに辟易していたためか)バイデン氏に代わることを歓迎している。
更に、中国国営『人民日報』は、トランプ大統領が“大差で勝利”したと述べた際、“あはは!”と大笑いするツイートを投稿している。
また、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン、64歳)総統は、今年1月の再選時にバイデン氏から祝福されていたこともあって、“バイデン氏の自由で開かれた社会を目指す姿勢に共感し、更に友好関係を深めていきたい”とのメッセージを送った。
一方、トランプ大統領と友好関係にあったウラジーミル・プーチン大統領(68歳)は目下のところ何ら反応を見せていない。
しかし、同じくフィリピンのトランプとの異名を取って親交のあったロドリゴ・ドゥテルテ大統領(75歳)は、トランプ氏の“選挙は終結していない”との主張を退け、バイデン氏の当選を祝っている。
また、NATOの防衛費供出問題でトランプ氏ともめていた欧州諸国も、バイデン氏当確を歓迎している。
ドイツのハイコ・マース外相(54歳)は、“(バイデン氏と共に)NATO体制につき新たな協力関係を構築していきたい”とツイートしている。
その他、トランプ大統領にやり込められた首脳も、次々にバイデン氏を祝福している。
カナダのジャスティン・トルドー首相(48歳)は、北米自由貿易協定の問題のみならず、トランプ氏から個人攻撃を受けていたこともあって、“バイデン次期大統領、カマラ・ハリス次期副大統領(56歳)、及び米議会と一緒になって、国際社会の難題に取り組んでいきたい”と強調した。
更にオーストラリアのスコット・モリソン首相(52歳)も、“米国との重要なパートナーシップ”を強化し、“自由で開かれたインド太平洋地域の確保”に向けて協働していきたいと表明した。
また、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(66歳)、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(42歳)、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領(65歳)も、バイデン氏の当選を祝うメッセージを送っている。
一方、ベネズエラでは、トランプ大統領と敵対してきた反米主義のニコラス・マドゥロ大統領(57歳)も、また、反対に支援を受けてきた親米主義のフアン・グアイド国民議会議長(37歳)も、それぞれ同時にバイデン氏を祝福している。
その他、主だった次の首脳がバイデン氏の当選を祝っている。
・パキスタンのイムラン・カーン首相(68歳):違法な租税回避地の根絶やアフガニスタンの和平調整への期待。
・インドのナレンドラ・モディ首相:トランプ大統領との2ショット写真を看板にする程の仲だったが、バイデン氏との写真も公開して、“目覚ましい勝利を祝福”とメッセージ。
・イラクのバルハム・サリフ大統領(60歳):2003年に米軍がイラク侵攻した際の米側中心人物ではあったが、バイデン氏とは親交があり信頼できるパートナーと評価。
・アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン皇太子(59歳):トランプ氏娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問(39歳)と親交が深いが、バイデン・ハリス両氏をツイッター上で祝福。
・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(71歳):ツイッターのプロフィールにトランプ氏との2ショット写真を使用しているが、バイデン・ハリス両氏と共に米・イスラエル同盟関係強化に邁進したいとメッセージ。ただ、別の声明で、トランプ氏のお陰で米・イスラエル関係が大きく前進できたことに感謝と表明。
・英国のボリス・ジョンソン首相(56歳):トランプ氏の盟友であったが、バイデン氏と“気候変動対策から通商、安全保障までのあらゆる分野での親密な連携に期待”とメッセージ。
一方、トランプ氏と特に親密だった、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領(65歳)、サウジアラビアのモハンマド・ビン・サルマーン皇太子(35歳)は沈黙を守り、また、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(66歳)は、“(開票やトランプ氏提訴の結果等)全ての事態が解決するまで”静観したいと表明している。
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