米連邦捜査局(FBI、1908年設立)によるドナルド・トランプ前大統領(76歳)のフロリダ州別邸の家宅捜索について、同前大統領はもとより共和党も、今秋の中間選挙を控えての民主党一派による政治的な策謀だと非難している。かかる報道を受けて、中国メディアは、昨年1月6日に発生した米議事堂乱入事件と同様、狂信的なトランプ支持者らによる暴動が再び発生する恐れがあると報じている。
8月10日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、「中国メディア、FBIによるトランプ私邸の家宅捜索を契機に昨年1月6日発生の議事堂乱入事件と同様の暴動発生の恐れ、と報道」と題して、世論分断が続く米国において、再び1/6 議事堂乱入事件と同様の暴動発生の恐れがあると、中国国営メディアが報じていると伝えた。
中国国営メディア『環球時報』は8月9日、FBIによるドナルド・トランプ前大統領私邸の家宅捜索を契機にして、昨年1月6日の議事堂乱入事件と同様の暴動が発生する恐れがある、と嬉々として報じている。
すなわち、同メディアは、家宅捜索が民主党による政治的策謀によるものだとの非難の声があることに触れて、このような民主主義を米国が中国に押し付けようとしている次第だと、面白おかしく論じている。
同メディアの報道内容は以下である:
●中国専門家やネットユーザーは、米国の民主主義が機能不全に陥っていて、2021年には議事堂乱入事件が発生するという大混乱が生じていることから、今秋の中間選挙を前にして、トランプ前大統領私邸の家宅捜索という前代未聞の事態を契機に、更なる無秩序な大事件が発生するのではないかと注目している。
●バイデン政権は、自国の経済問題が解決できないばかりか、ナンシー・ペロシ下院議長(82歳、2019年就任)による挑発的な台湾訪問によって引き起こされた外交問題でも困窮している。
●国際社会は、米国の問題ある政策が絶望的で錯乱の極みとみていることから、多くの専門家は、トランプ前大統領に対する捜査が行われているにも拘らず、民主党は今秋の中間選挙で大敗すると予測している。
●中国の米国研究専門家は、米国の“与党”は“いつも司法権や法執行機関を武器にして野党勢力を取り締まろうとしている”と分析している。
中国では、絶対的権力者の習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)にとって不都合とされた共産党幹部は次々に“汚職罪”に問われ、表舞台から姿を消してしまうという現実がある。
にも拘らず、悲しいかな『環球時報』は中国専門家の分析を引用して、次に共和党が多数党となったら、民主党側を政治的に訴追するという報復手段に出ようから、“終わりなき政党間の争いに明け暮れる”ことによって、米国は“機能不全の国”に留まってしまうだろう、と批評している。
8月9日付中国『環球時報』(1993年設立、中国共産党機関紙『人民日報』傘下の英字紙)は、「FBIによるトランプのフロリダ州別邸の家宅捜索を契機に、米国の政党間闘争が更に悪化して“米国の政治制度は機能不全に”」として、米国の民主主義を揶揄する報道をしている。
米FBIは8月8日、トランプ前大統領が“ホワイトハウスから国家機密文書を勝手に持ち出した”容疑で、同氏のフロリダ州別邸を家宅捜索した。
このニュースを受けて、中国の専門家やネットユーザーは、今秋の中間選挙を前にしての前代未聞の事態を慮り、2021年に議事堂乱入事件が発生する程米国の民主主義は機能不全に陥っていることから、再び無秩序な大混乱が発生するのではないかと危惧している。
中国社会科学院(1977年設立の最高学術機構)の米国研究専門家の呂翔氏(ルー・シャン)は『環球時報』のインタビューに答えて、“民主党勢力は、トランプの議事堂乱入事件への関与の有無、及びトランプ・オーガナイゼーションの税不正問題の2つの事態について調査を進めていたはずだが、これに進展がなかったのか、国家機密文書の不正持ち出しという新たな容疑でトランプを取り調べようとしていることに少々驚いた”と語った。
しかし、同氏は、共和党勢力が2016年の大統領選時に民主党のヒラリー・クリントン候補の電子メール問題を追及したように、今回の民主党勢力のトランプ追及行為は、多分に今秋の中間選挙を睨んでの政治的策謀だと考えられる、とした。
ただ、同氏によると、これが一種の選挙戦術と考えられるのは、追及した政党が選挙で勝利を収めるや否や、当該問題の調査はいつのまにか脇に押しやられ、次回の選挙まで蒸し返されないのが常であるからだ、と分析している。
また、匿名希望の国際関係専門の中国専門家は、米国では両政党間の闘争が激しく、今回のように与党が“司法権及び法的執行機関”を武器に使って、反対政党を取り締まろうとするのが常である、として、この結果、政党間闘争が益々激化することが懸念される、とコメントした。
更に同専門家は、“政党間の闘争が更に激しくなり、ある日突然両党の議員同士が議事堂内で本当に殴り合いを始めることになっても自分は大して驚かないだろう”とも付言している。
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中国国営メディアは、中国共産党政権の意に沿わない事態に対して徹底的に攻撃する。しかし、これと逆の場合には、たとえ倫理にもとる行為でも称賛する。直近の一例が、中国市民が安倍晋三元首相の急死についてSNS上で祝おうとする行為を“道理に適う”と擁護したことである。何故なら、安倍氏が憲法を改正して第二次大戦時代の軍国化を促進し、かつ、中国による台湾統一をあからさまに妨害しようとしていたことから、その報いを受けたからだとしている。
7月13日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、「中国国営メディア、中国市民が安倍晋三氏の暗殺を祝う行為を“道理に適う”と擁護」と題して、大日本帝国時代の軍事化を促進しようとし、また、台湾独立を支援するような反中国政策を標榜する政治家の暗殺を祝うのは筋の通ったことだと報じたとして、報道姿勢を非難している。
中国国営メディアの『環球時報』(1993年設立、『人民日報』傘下の英字紙)は7月13日、
安倍晋三元首相の暗殺報道に関し、中国市民が大喜びで祝う投稿をSNSに上げたことに対して、筋の通ったことだと擁護する記事を掲載した。
7月8日に安倍氏が銃で襲われた事件の一報が出た途端、蘇生しないよう望むとの投稿がミニブログサイト『新浪微博』(ウェイボー、2009年設立)に上げられ、続いて死亡したとの報道に対しては、シャンパンで乾杯だと祝う人や、飲料割引サービスを打ち出す店が現れた。
中には、犯人の山上容疑者に支援の募金を訴える投稿もあった程である。
中国政府は、『ウェイボー』等のSNS上での反政府的表現を厳しく監視しており、怪しい投稿は瞬く間に削除してきている。
しかし、安倍氏急死に関わる不道徳な投稿に関しては、未だ削除されていないことから、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)指導部も暗黙の了解をしているものとみられる。
何故なら、安倍氏は生前、第二次大戦敗戦後に制定された平和憲法を変更し、軍事化を促進しようとしてきたばかりか、直近でも中国の一部である台湾の統一を表だって妨害する発言を繰り返しており、言わば中国共産党政府方針に真っ向から挑戦してきた人物だとみられているからである。
ただ、暗殺という非業の死を祝う等、中国の野蛮さや恐ろしさを非難する声が世界で上がり始めた。
そこで『環球時報』は7月13日の報道で、かかる非難の声に反発する形で、“安倍氏を批判してきた人たちは、彼の暗殺という事態を理由に言論制限されるべきではない”とした上で、“世界の人々は、安倍氏を非難するに至っている中国人民の事情をもっと良く理解すべきである”と強硬に主張した。
中国政府はこれまで、第二次大戦で犯した日本の罪を厳しく指摘し、日本が再び軍隊を擁することは世界にとって脅威となると主張してきている。
しかし、安倍氏の急死が追い風となったためか、7月10日に行われた参議院議員選挙で、与党・自民党を中心とする改憲派が安定多数を獲得したばかりか、岸田文雄首相(64歳)が改憲に向けて準備を進めていくと公言したことから、中国政府として大いに警戒すべき事態となったことは明らかである。
かかる背景もあって、『環球時報』報道では、“安倍氏が中国に対して行ってきた様々な所業-米国と組んで中国を押さえつけようとしたり、首相退任後に早速忌むべき靖国神社参拝を行ったり、更には、台湾分離独立派を焚き付ける発言を繰り返したりする等より考えて、安倍氏について否定的なことや非難するコメントをするべきではないと大勢の中国市民に要望することは不可能である”と言及した。
その上で、“安倍氏の急死を祝う投稿があふれたのは、正に中国の世論の為せる業である”とも付言している。
同日付中国『環球時報』は、「安倍氏、日中関係に“やっかいな遺産”」とのタイトルで、安倍氏急死に関わる中国市民の声や専門家の見解を掲載している。
安倍元首相の暗殺事件に関し、中国のネット市民がSNSに上げた投稿について、西側諸国からは非難の声が上がっている。
しかし、中国の専門家らは、これらの非難はネット市民の上げた一方の投稿だけを捉えてなされたものだと批判した。
遼寧大(リャオニン、1948年設立の国立大学)日本問題研究所の陳陽氏(チェン・ヤン)は7月12日、『環球時報』のインタビューに答えて、“安倍氏の死去に関し、ネット上では哀悼を示すものと、同氏の右翼的で軍国的な思想を理由とした感情的なコメントと、主に二つが表明されている”とした上で、“いくつかの西側メディアは、この感情的なコメントのみを捉えて報じている”と言及した。
同氏は、“中国市民は親切心も同情心も持っているが、全てのネット市民に対して、外交的かつプロのジャーナリストの視点で以てコメントするように求めることは不可能だ”と強調した。
中国の世論は、安倍氏が中国に対してどういう対応をしてきたかに基づいている。
すなわち、安倍氏が中国に対して行ってきた様々な所業-米国と組んで中国を押さえつけようとしたり、首相退任後に早速忌むべき靖国神社参拝を行ったり、更には、台湾分離独立派を焚き付ける発言を繰り返したりする等より、非難めいた意見が出てくるのは当然のことである。
その上で、ネット市民に対して、安倍氏について否定的なことや非難するコメントをするべきではないと要望することは不可能なことである、と専門家は指摘している。
一方、習国家主席が追悼文の中で、安倍氏が日中関係改善に努めてきた姿勢を称賛していることに加えて、後継者である岸田首相とともに、今後の日中関係発展に寄与していく旨言及している。
このことより中国専門家らは、岸田首相は中国政府が発信している真意をもっと良く理解すべきであると強調した。
すなわち、中国政府は、安倍氏の逝去もさることながら、より重要なことは、今後の日中関係をどう発展させていくのか、ということを問いかけているからである、と解説している。
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