中国政府;NATOは新たな冷戦を生み出すと非難の声上げるも、本音は欧州諸国に対中国関係改善を切望【米メディア】
6月17日付GLOBALi「
米メディア;日韓首脳のNATO首脳会議出席で世界の緊張度増大と懸念」の中で、米国主導の北大西洋条約機構(NATO、1949年設立、現加盟国30ヵ国)首脳会議に日韓首脳が出席することになると、NATOのアジアへの拡大を恐れる中国を刺激することになると報じた。そしてこの程、中国政府が正式に、NATOは新たな冷戦構造を生み出すとの非難声明を出した。ただ、専門家の分析によると、中国は本音では、欧州諸国に対して、中国が本気でウクライナ軍事侵攻のロシアを支持している訳ではないことを理解してもらい、これまでのような良好な関係を再構築したい意向であるとする。
6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。...
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6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。
また、中国国営メディア『人民日報』に掲載された同報道官の声明文によると、“NATOは米国が覇権主義を維持するためのツールであり、欧州における軍事同盟が我が国への対抗手段として用いられようとしている”としている。
更に、同声明では、“NATOは既に欧州における安全保障を棄損している”とし、“拡大NATOとしてアジア太平洋地域まで及び、混乱に陥れることは慎むべきだ”と言及している。
この声明に先立つ6月20日、在パキスタン中国大使館の張清和参事官(チャン・へーチン、大使の次位)が、“ブリュッセル(NATO本部がある都市)では、数万人の抗議者が、NATOによるウクライナ戦争への加担で物価急上昇を招いているとして、NATOを非難するデモ行進を行っている”とツイートしていた。
しかし、ブリュッセル在のロシア・欧州・アジア研究センターのテレサ・ファロン代表は先週末、『RFA』のインタビューに答えて、“ブリュッセルの抗議デモはNATOとは一切関係がない”とし、“中国政府は、来週開催されるNATO首脳会議の前に、このような偽情報を流して政治的攻撃を仕掛けている”と非難している。
ただ、このような中国政府の主張に対して、NATO首脳会議の直前、呉紅波氏(ウー・ホンボ、70歳、2017年まで国連経済社会省事務次官)を特使として欧州諸国首脳との面談に派遣したことは矛盾する。
これに関し、外交政策シンクタンクの大西洋評議会(1961年設立、本部ワシントンDC)のフレデリック・ケンプ社長(67歳、2007年就任)は『CNBC』の寄稿文の中で、“特使を欧州諸国代表との面談のために3週間も派遣したということは、今秋予定されている中国共産党第20回大会(5年に一度の最高決定機関)までに欧州関係を修復するという大きな目的のためだ”と分析している。
同社長は、“習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)指導の経済活性化は遅れ、主導する一帯一路経済圏構想(BRI)の資金繰りは悪化し、ゼロコロナ政策はうまく機能せず、更には、ウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を支持していることで、欧米諸国から非難の的となってしまっている”と記した。
その上で同社長は、“このままでは党大会での3期目の国家主席就任が危うくなるとみて、呉特使を派遣して、欧州諸国との関係改善を図ろうと考えたと思われる”と言及している。
ファロン代表も、同社長の分析に同意している。
一方、米国の非営利シンクタンクの民主主義防衛財団(2001年設立、本部ワシントンDC)のクレイグ・シングルトン上級研究員は『RFA』のインタビューに答えて、“国際社会の中国支持は過去最低となっている上、習国家主席は他国首脳と会談するために外遊することを拒んでいる”とし、“しかし、中国の経済は長期低迷期に入っており、習国家主席の経済政策は失敗とする声が高まる一方である”とコメントした。
その上で同上級研究員は、“中国にとって、欧州は現下の景気低迷を脱するのに必要不可欠な市場であるから、これまでの戦狼外交(注後記)によって棄損された欧州との関係修復を最優先に捉える必要があると考えた”と言及している。
ところが、“欧州諸国は、中国が一向に、無謀なウクライナ軍事侵攻を続けるロシアへの支持を再考しようとしないことに不満を募らせ、ここ数ヵ月間では、(中国の意に反して)台湾との貿易や投資の話を積極的に進めようとしている”。
そこで、“この欧州側の姿勢に焦りを覚えた中国政府が、これまでの欧州外交政策を見直す必要に迫られているはずだ”と分析している。
(注)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのこと。この用語は、中国のランボー風のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、戦狼外交はより好戦的である。
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習国家主席;香港統治強化もあってCOVID-19感染拡大懸念にめげずに中国返還25周年式典に出席意向【米メディア】
習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)はこの程、香港の中国返還25周年記念式典に出席する意向である。直近で香港行政府幹部の新型コロナウィルス(COVID-19)感染が判明したが、同国家主席としては、香港統治強化及び一国二制度の成功アピールのため、今回の香港訪問は避けられないと判断した模様である。
6月25日付
『AP通信』は、「習国家主席、中国返還記念式典出席のため香港訪問」と題して、COVID-19感染問題勃発以来、中国本土を離れることのなかった習近平国家主席が、香港の中国返還25周年記念式典出席のために香港を訪問すると報じている。
習近平国家主席がこの程、民主化運動取り締り強化等で欧米との確執の火種となっている香港を訪問する予定である。
中国国営『新華社通信』は6月25日、同国家主席が、7月1日に開催される中国返還25周年記念式典、及び同時に開催される次期香港行政府長官就任式に出席する意向だと報じた。...
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6月25日付
『AP通信』は、「習国家主席、中国返還記念式典出席のため香港訪問」と題して、COVID-19感染問題勃発以来、中国本土を離れることのなかった習近平国家主席が、香港の中国返還25周年記念式典出席のために香港を訪問すると報じている。
習近平国家主席がこの程、民主化運動取り締り強化等で欧米との確執の火種となっている香港を訪問する予定である。
中国国営『新華社通信』は6月25日、同国家主席が、7月1日に開催される中国返還25周年記念式典、及び同時に開催される次期香港行政府長官就任式に出席する意向だと報じた。
ただ、どれだけ香港に滞在するのか等の詳細には触れられていない。
同国家主席自身、2年半前にCOVID-19感染問題勃発以来、中国本土を離れたことはなかった。
しかし、中国本土及び香港において、COVID-19感染が再び広がる中、同国家主席が香港を訪問することを決意した背景は、西側諸国からの対中国非難が高まる中、同国家主席が掲げた“偉大な中華民族の復興”をアピールするため、同記念式典に出席することは非常に重要だと判断したためとみられる。
一方、次期香港行政府長官に就任する李家超氏(リー・ジアチャオ、64歳)が保安局局長時代(2017~2021年在任)、2020年6月末に制定された香港国家安全維持法の下、多くの民主活動家らが逮捕・投獄され、また、香港で最も民主化運動を支持していた新聞が廃刊に追い込まれている。
なお、香港が英国から中国に返還された1997年7月1日、両国間で“香港の高度な自治権”(一国二制度)を50年間維持することが合意されていた。
英国統治下の最後の総督だったクリス・パッテン氏(1992~1997年在任、現78歳、2005年に終身任期制の貴族院議員に就任)は6月20日、『AP通信』のインタビューに答えて、“中国は英国との約束を守ると信じていたが、現在の香港をみると断腸の思いだ”と嘆いている。
6月24日付『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「習国家主席、香港高官のCOVID-19感染で香港訪問不確実に」と題して、習国家主席の香港訪問の話が、香港行政府幹部のCOVID-19感染で立ち消えとなる可能性が出ていると報じた。
習国家主席が、7月1日に香港で開催される中国返還25周年記念式典に出席するとの噂が流れている。
しかし、香港行政府が6月23日、高官2人のCOVID-19感染が判明したと発表したことから、同国家主席の香港訪問が不確実となっている。
同日には、香港行政府長官就任式が催される。
中国の国家主席はこれまで毎回出席しており、習氏自身も2017年、現行政府長官の就任式及び20周年式典に出席していた。
今回の式典開催に当たって、出席する全ての高官は1週間前から“自主隔離”して公共交通機関使用を控え、また、前日にはホテル泊としてPCR検査を受けることが求められている。
感染が判明した高官2人は既に隔離されているが、次期行政府長官の李家超氏及び現長官の林鄭月娥氏(リン・シェンユッゴ、キャリー・ラム、65歳)が両高官と接触していたのか、あるいは両氏も感染しているのかどうかは不詳である。
もし、両トップも陽性となれば、長官就任式自体の開催が頓挫してしまう。
なお、中国国営メディア『人民日報』は6月20日、習国家主席が2013年に就任以来香港について語っていた言葉を集めて、「香港の発展はいつも自身の心の中にある」とのタイトルの特集記事を掲載している。
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