経済成長著しいインドにおいても、貧富の格差は激しく、富の85%が約10%の高所得層によって占められている。そしてこの程、アジア1の富豪が率いる多国籍企業が推進している国際港建設プロジェクトに対して、地元住民が激しい抗議行動を展開している。
11月28日付欧米
『ロイター通信』は、「インドのケーララ州の国際港建設プロジェクトに抗議する住民と警察が衝突して80人余りが負傷」と題して、世界第3位でアジア1の富豪(米経済紙
『フォーブス』2022年9月データ)が率いる多国籍企業が推進する国際港建設プロジェクトに抗議する地元住民と警察が衝突して、多くのけが人が出ていると報じている。
インド南西端のケーララ州ビジンジャムにおいて11月27日晩、インド大手企業のアダニ・グループ(AG、1988年設立)が推進する国際港建設プロジェクトに反対する地元住民と警察が衝突し、双方合わせて80人以上が負傷する事件が発生した。...
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11月28日付欧米
『ロイター通信』は、「インドのケーララ州の国際港建設プロジェクトに抗議する住民と警察が衝突して80人余りが負傷」と題して、世界第3位でアジア1の富豪(米経済紙
『フォーブス』2022年9月データ)が率いる多国籍企業が推進する国際港建設プロジェクトに抗議する地元住民と警察が衝突して、多くのけが人が出ていると報じている。
インド南西端のケーララ州ビジンジャムにおいて11月27日晩、インド大手企業のアダニ・グループ(AG、1988年設立)が推進する国際港建設プロジェクトに反対する地元住民と警察が衝突し、双方合わせて80人以上が負傷する事件が発生した。
これは、230億ドル(約3兆2,200億円)に及ぶ港湾運営事業を展開するAGが進める、コンテナ船・大型クルーザー入港可能な大規模港湾建設プロジェクトで、総工費は9億ドル(約1,260億円)である。
地元住民はほとんどがキリスト教徒の漁師であるが、同港建設によって海岸の浸食が引き起こされ、漁業生活が破壊されたとして3ヵ月前から実力行使に出ていて、同建設工事が停止されていた。
AGがこれに対抗して建設工事再開を提訴し、裁判所の許可を取得したところ、建設現場入り口で地元住民が工事車両の通行を妨害した。
そこで地元警察が、抗議活動を行った数人の住民を逮捕したことから、神父らが率いる数百人のデモ隊が11月27日晩、警察署に押し入って警察車両を破壊し始め、衝突に発展した。
抗議活動のリーダーの一人であるジョセフ・ジョンソン氏によると、少なくとも46人の住民が負傷したという。
一方、地元警察のアジス・クマール巡査長は『ロイター通信』のインタビューに答えて、36人の警察官が怪我を負ったと語った。
同港はインド南西端に位置し、太平洋・インド洋を往来する国際船舶による貿易拡大に適するため、世界第3位でアジア1の富豪であるゴータム・アダニ氏(60歳)創設のAGにとって、更に業容拡大をもたらす大規模港湾建設プロジェクトである。
住民側・警察側の衝突発生に関し、警察の発表では、“抗議グループが凶器を持って警察署敷地内に殺到してきたことと、拘留中の仲間を釈放しなければ署に火をつけると脅した”とされている。
一方、司教総代理で抗議活動グループのリーダーであるユージーン・ペレイラ氏によると、警察側が我々に投石してきたとしている。
ケーララ州高裁が、何度も建設工事妨害活動停止命令を下していたものの、かかる衝突が発生したことから、裁判所は11月28日、AG側の申し立てを受理した上で、州行政府に対して、何故建設工事妨害活動が停止させられないのか12月2日までに回答するよう命令を出した。
なお、同港建設に当たって、AGが総工費の約3分の1を、残りは州及び連邦政府が負担する契約となっていて、AGは向こう40年間同港を運営する権利を有することになっている。
11月29日付インド『ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年創刊の英字紙)は、「ケーララ州ビジンジャム港での警察・デモ隊衝突事件に関し、関係者代表が会合を持つも膠着状態」と報じている。
ケーララ州南部ビジンジャムで警察・デモ隊の衝突事件が発生した翌日の11月28日、関係者代表が一堂に会したが、交渉は暗礁に乗り上げている。
AGの申し立てに基づき行われた州高裁における審理で、抗議活動グループを除くAG、州政府、連邦政府等全関係者は、当該暴動を非難するとともに、同港建設工事の再開を強く求めた。
州政府を代表して審理に臨んだJ.R.・アニル食糧大臣は、抗議活動グループに“厳しく対応”していくとも宣言している。
これに対して、ペレイラ司教総代理は、“(環境及び漁業生活破壊行為に反対する)当初からの抗議活動を止めることはない”とした上で、“11月27日の衝突に至った詳細調査を求める”と主張した。
なお、地元警察の発表によると、デモ隊参加者は3千人余りで、彼らの破壊行為で被った警察署や警察車両の損傷被害は1千万ルピー(約1,700万円)に及ぶとしている。
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ロシアのウクライナ侵攻が4カ月目に入った。ウクライナ軍の激しい抵抗にもかかわらず、ロシア軍は数週間前から主な戦闘が集中しているドンバス地方東部のルハーンシク州全体を征服しようとしている。
仏
『BFMTV』によると、3月末から4月初めにかけて首都キーウ、5月には北東部のハリコフからロシア軍を排除したウクライナ側は、ルハーンシク州とドネツィク州で形成される石炭の宝庫であるドネツ盆地で「苦戦」していることを明らかにした。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日の夜、「今後数週間の戦いは厳しいものになるだろう」と警告した。ロシアは、ルハーンシク州のウクライナ人部隊に火力を集中し、セヴェロドネツィク市とリシチャンシク市を包囲しようとしている。
ウクライナ国防省は、ルハーンシク州東部ポパスナとドネツィク州北東部のバーフムトの町付近での激しい戦闘が繰り広げられていることに言及した。この町が陥落すれば、ロシア軍は現在ウクライナ侵攻のための即席の司令部として機能している交差点を完全に支配することになるという。
ロシア側では、ロシア国防相が24日、4カ月目に入ったウクライナへの侵攻の目的を達成するためには、長い戦いをしなければならないことを示唆した。「ウクライナ政権に対する西側の膨大な援助や制裁の前例のない圧力にかかわらず、すべての目的が達成されるまで特別軍事作戦を継続する」と述べた。また、民間人の犠牲を避けるためのロシア側の努力は「攻撃の速度を遅くしているが、これは意図的なものだ」とも述べた。
なお、ロシア下院議会では、軍に入隊する年齢制限を廃止する法案が25日に審議される予定だという。法案の目的は、「現役世代の国民が最初の兵役契約を結ぶことができる年齢制限を撤廃することである」と説明書きに書かれている。現在、ロシア軍に入隊できるのは18歳から40歳までの国民に限られており、外国籍の場合は、18歳から30歳までが対象となっている。
一方、米『フォーブス』は、戦争が長期化する中、ロシア軍が深刻な人材不足に陥っていると伝えている。22日にポパスナ周辺で撃墜されたロシア機を操縦していたのは63歳の退役パイロットであった。彼は2012年にロシア空軍を離れた後、ロシアの民間軍事会社ワーグナー・グループのために働くようになった。ウクライナでのロシアの犠牲者が増えるにつれ、ロシア軍にとってこのような傭兵が欠かせない存在になりつつあるという。英国国防省によると、3カ月間の激戦で約1万5000人のロシア人が死亡した。これは侵攻軍の10分の1以上にあたる。負傷者や捕虜を加えると、ロシア軍はウクライナでの戦闘力の3分の1程度を失ったことが明らかである。訓練された人材は貴重な資源となりつつあり、ロシア政府は先週からウクライナ東部ドンバス地域に残存兵力を集中させて新たな攻勢をかけているが、前線の大隊の一部を強化するためにワーグナーの傭兵を雇わざるを得なかったと考えられる。英BBCは、約30人のロシア人パイロットが死亡したと報じている。ロシア空軍も明らかに、経験豊富な飛行士を補充するのに苦労している。
『フォーブス』は、ドンバス地方におけるロシア軍の前進はウクライナにとって深刻な脅威であるが、ロシアが訓練の出来ている最後の人材(つまり傭兵)を使って、ロシアの支配地域からわずか数キロ離れたところにある数十のウクライナの守備隊のうち1つを包囲しているとしたら、今後のロシアの攻勢拡大の見通しは芳しくないと言えるだろう、と指摘している。
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