国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ、注1後記)がこの程公表した「パンドラ文書」(注2後記)の中で、世界の多くの著名人が租税回避を行っていたことが判明した。富豪や有名モデル、スポーツ選手、ギャング、中小企業の経営者、医師などに加えて、90以上の国・地域で活躍する330人以上の政治家も名前を連ねている。そして、その中には、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)の愛人や旧友名義の隠し財産があったことが判明した。
10月3日付
『ニューヨーク・ポスト』紙:「プーチン大統領の愛人が1億ドルの隠し財産を保有していることが“パンドラ文書”で判明」
ICIJが直近で公表した「パンドラ文書」によって、ウラジーミル・プーチン大統領の長年の愛人とされた女性が、これまで明らかになっていた質素な生い立ちと異なり、しゃれたマンションやヨット等、推定1億ドル(約110億円)の“隠し財産”を保有していることが判明した。
スベトラーナ・クリボノギク氏(46歳)で、彼女の出身地であるサンクトペテルブルク市においてプーチン氏が同市副市長に就任して以来の付き合いとされ、二人の間には女の子がいると言われている。...
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10月3日付
『ニューヨーク・ポスト』紙:「プーチン大統領の愛人が1億ドルの隠し財産を保有していることが“パンドラ文書”で判明」
ICIJが直近で公表した「パンドラ文書」によって、ウラジーミル・プーチン大統領の長年の愛人とされた女性が、これまで明らかになっていた質素な生い立ちと異なり、しゃれたマンションやヨット等、推定1億ドル(約110億円)の“隠し財産”を保有していることが判明した。
スベトラーナ・クリボノギク氏(46歳)で、彼女の出身地であるサンクトペテルブルク市においてプーチン氏が同市副市長に就任して以来の付き合いとされ、二人の間には女の子がいると言われている。
英国メディア『ザ・ガーディアン』紙報道によると、共同アパート育ちのクリボノギク氏のみならず、プーチン氏の旧友までも、バージン諸島他のタックスヘイブンに設立したペーパーカンパニー名義で巨額の資産を保有しているという。
「パンドラ文書」によると、クリボノギク氏は2003年9月、ブロックビル・ディベロップメントというオフショア企業(租税回避地に設立された会社)を通じて、モンテカルロ(南仏モナコ公国の都市)の4階建ての豪華マンションを購入している。
更に彼女は、サンクトペテルブルクのアパートやその他価値ある資産を取得している。
彼女の他、プーチン氏と長い付き合いのある側近や旧友も、税法が緩いモナコに多くの資産を保有している。
現地のドミニク・アナスタシス弁護士は『ザ・ガーディアン』紙のインタビューに答えて、“今やモナコはモスクワの一部と化していて、皆(保有資産を)見せびらかすことしか頭にない”とコメントした。
更に、同弁護士は、“誰も資金の出処に関心がないし、税務申告を求められることもない”と付言している。
モナコに資産を保有している中で突出しているのは、1990年代からプーチン氏と親交のある旧ソ連の官僚だったゲンナジー・チムチェンコ氏(68歳)である。
元原油トレーダーだった同氏は、1991年にプーチン氏から原油輸出許可証を取得して以来原油取引で蓄財し、後にプーチン氏と共同名義で原油輸出会社グンボル(2000年設立のスイス法人)を立ち上げて大儲けしている。
米経済誌『フォーブス』(1917年創刊)報道によると、チムチェンコ氏の保有資産は220億ドル(約2兆4,200億円)であるという。
もう一人、プーチン氏の旧友で成り上がった人物はピーター・コルビン氏(60歳後半)である。
彼らは父親同士が親しかったことから仲が良かったが、コルビン氏にほとんど資格・資質がないにも拘らず、2003年にサンクトペテルブルク本拠のインターナショナル・ペトロリアム・プロダクツの重役に登用されている。
ただ、プーチン大統領は、「パンドラ文書」に記載されている企業との関係を一切否認している。
しかし、目下投獄されている野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏(44歳)は、彼の率いる「反汚職基金」(2011年設立)が調査した限り、プーチン氏は“世界有数の富豪”となっていると非難している。
(注1)ICIJ:世界のジャーナリストが共同で調査報道を行うためのネットワークで、1997年に発足。現在117ヵ国600人以上のジャーナリストが参加し、コンピュータの専門家・公的文書の分析家・事実確認の専門家・弁護士らが協力。活動資金は個人・団体からの寄付金で賄われ、政府からの資金は受けない。本部のあるワシントンD.C.には20人のスタッフが常駐。
(注2)パンドラ文書:ICIJが、各地の租税回避地(タックスヘイブン)に会社や信託を設立・管理する法律事務所や信託会社など14社から入手した1,190万件以上の内部文書。構成ファイル1190万件・合計2.94テラバイトというパンドラ文書では、世界中の大統領や首相、裁判官、軍幹部などがタックスヘイブンのダミー企業を使って税金を回避していたことが判明。
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アメリカのバイデン政権は、個人富裕層への増税を財源に、教育、育児、家族休暇を支援する1兆8千億ドル経済政策構想を提案しているが、非営利報道機関「プロパブリカ」は、独自に入手したとする米富裕層の納税情報から、Amazonのベソス氏ら富裕層が所得税を殆ど払っていないと公表している。
6月8日付米国
『フォーブス』は「ベソス、マスク、バフェット等最富裕層は所得税を3.4%しか払っていない、爆弾報道より」との見出しで以下のように報道している。
超富裕層の富の不平等や税金逃れの問題に関し、15年以上にわたる個人の納税記録を入手したとする「プロパブリカ」(非営利米報道機関)が新たに公表した情報によると、米国富裕層は殆ど、或いは全く連邦所得税を払っていないことが分かったという。
米国の中間層が14%の所得税を払っている一方で、25人の最富裕層は2014年~2018年の期間、実質3.4%しか所得税を払っていなかったという。現行の税制では富の増加分が含まれず課税されないと主張する同紙の“正しい税率“は新たに議論を呼ぶだろう。
投資家ウォーレン・バフェットは2014年~2018年の間、富が240億ドル増加したが、申告した収入は僅か1.25億ドルであったため、真の税率は0.1%だという。同氏は収入の多くを慈善活動への寄付に充てている。またアマゾン創始者でCEOのジェフ・ベソス氏は同期間、富が990億ドルも増えたが申告額は僅か42.2億ドルで真の税率は0.98%だという。テスラのCEOイーロン・マスク氏は同期間、富が139億ドルも膨れ上がったのだが、申告額は15.2億ドルのため税率は3.27%。
ベソス氏に至っては2007年に38億ドルの富の増加があったにも関わらず、連邦所得税を納めていなかった。これは所得申告4600万ドルを投資損益や負債控除等の経費で相殺したためだという。翌年2018年も所得税を払っていなかった。
だが調査は彼ら億万長者たちが、法に触れるとは指摘していない。所得ではなく富ベースで本当の税率を割り出しているためだ。
バイデン大統領は、教育、育児、家族休暇を支援する1兆8千億ドル構想「米国家族のための計画」の予算確保のため、富裕層への増税策を提案し、歳入庁による富裕層諮問強化を図っている。この計画には、所得税の最高税率を37%から39.6%に引き上げることや、高所得者のキャピタルゲインや配当への課税も含まれている。
同日付米国『WSJ』は「内国歳入庁が富裕層の納税公開情報を調査」との見出しで以下のように報道している。
非営利ニュース機関「プロパブリカ」が、ジェフ・ベソスやウォーレン・バフェットなどの納税記録や収入の詳細情報を公表。チャールズ・レティグ内国歳入長官によると、連邦政府機関は公表された富裕層の納税情報を調査しているという。
納税者情報は機密情報で、内国歳入庁(IRS)の職員他がそのような情報を公開した場合、罪に問われる可能性がある。レティグ長官は、上院財政委員会の公聴会で情報漏洩への懸念を表明している。
プロパブリカの記事によると、入手した情報は数千人の15年超を網羅したIRSデータに関するものだという。個人の納税データが公開されるのは通常ないことだが、情報がIRSのものか、ハッキング等によるものかは分かっていない。同紙はベソス氏他が殆ど、或いは全く連邦所得税を払っていないと強調している。
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