ロシアの武器工場と米フィリップ・モリスの繋がり(2022/04/22)
米たばこ大手フィリップ・モリスは、ロシア国内の新規投資中止や事業撤退で業績不振となっているが、EUの制裁対象となったオリガルヒを介して、ロシアの武器製造との関係があったという。
4月21日付
『ロイター通信』:「武器供給制裁リスト対象人物にフィリップ・モリス社との繋がり」:
米国のたばこ大手フィリップ・モリスと長年の関係があるロシア軍向け武器工場の主要株主が、ロシアの侵攻を支援しているとして、欧州で制裁対象となっている。
55歳のイゴール・ケサエフ氏は、昨年フォーブス誌の長者番付で35番目に入る富豪。今月8日にはEUが、13日には英国が、制裁リストに追加している。...
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4月21日付
『ロイター通信』:「武器供給制裁リスト対象人物にフィリップ・モリス社との繋がり」:
米国のたばこ大手フィリップ・モリスと長年の関係があるロシア軍向け武器工場の主要株主が、ロシアの侵攻を支援しているとして、欧州で制裁対象となっている。
55歳のイゴール・ケサエフ氏は、昨年フォーブス誌の長者番付で35番目に入る富豪。今月8日にはEUが、13日には英国が、制裁リストに追加している。EUは声明で、「ケサエフ氏のたばこや武器生産への関与は、ロシアのウクライナ侵攻において資金面で重要な位置を占めている」としている。
ケサエフ氏はモスクワの北東165マイルにあり、ロシア軍、中東、北アフリカ、中南米向けの機関銃や対戦車・航空爆撃機を製造するVAデグチャレフ工場の株49%を保有。この工場は、カラシニコフ式機関銃PKMなどの製造で知られている。
同氏の武器ビジネス関与は2012年からとなる。今月公表された昨年の企業報告によると、ケサエフ氏が工場の49%の株主とされているが、同氏のスポークスマンは「現在はデグチャレフの株主ではなく、経営にも関っていない」としている。
最近まで彼は、ロシアのたばこ販売大手TCメガポリスの会長職でもあった。また、TCメガポリスのオランダ持株会者の役員も兼任しており、ここは米「フィリップ・モリス」が23%の株を所有する企業だったという。どちらの役職も今月11日付で退任しているというが、EUによると、「メガポリス」を傘下に持つ「マーキュリーグループ」の会長としての影響力は変わっていないという。
フィリップ・モリスと彼との関係は1990年代からで、ウクライナ侵攻で使われるロシアの武器のイメージは評判のリスクだ。西側諸国が、ロシアやロシア経済を支配するオリガルヒとの関係断絶に奔走する中、軍への武器供給との歴史的な関りがあればなおのことである。
戦闘地でのロシア軍機に、デグチャレフ工場で製造された武器が使用されているかは、ウクライナ側からの証拠により浮かび上がってきた。今週、戦闘地で回収されたロシアの武器をウクライナの戦闘機へ再利用するため、キーウの自動車工場でKord重機関銃を確認したところ、ロシアのデグチャレフ工場製造ものとみられる刻印が見つかった。
同日付印『Indian Lekhak』:「ロシアへの武器供給で制裁対象者のイゴール・ケサエフに米国とのコネクション」:
ロシアは世界一の喫煙国で、たばこ企業にとり夢の市場。世界保健機構によると、男性の4割超が喫煙者。ロシアの人口は米国の半分以下だが、年間の売上本数は米国と同定度となっている。現在、フィリップ・モリスは、インドネシアに続き、ロシア市場がメイン。昨年には、収益において、ロシア国内の最大規模の外国企業となった。
ケサエフ氏は、地方の企業買収を繰り返し、ロシア最大のたばこ販売会社を生んだ。メガポリスは、16万か所に販路を持っている。同氏は、2大コンビニ大手を運営するマーキュリー・リテール・グループの大株主3名の1人。2013年フィリップ・モリスとJTが、メガポリスの持株会社の株各20%を手に入れた。
フィリップ・モリスはカサエフ氏やロシア市場との長期的結びつきが強く、ロシア離れは難しいとみられる。英バース大学のたばこ産業研究フェローは、「4半世紀かけ築き上げたブランとプレゼンスを放棄するのは困難」だと指摘。世界的にたばこ産業は、アルジェリアと並び、ロシアとの結びつきは強い。同氏の武器事業からの撤退で、たばこ業界での展望にも影落としかねない。ロシアとの関係を断絶するには、フィリップ・モリスはメガポリスの全株を売却する必要がある。
多国籍たばこ企業でロシア問題をかかえるのはフィリップ・モリスはだけではない。日本たばこ産業(JT)はロシア国内市場最大となる3分の1を占める。同社は3月10日、ロシア国内での新規投資と市場活動の停止を発表したが、撤退には至ってはいない。政府が3分の1の株を保有しており、財務省は声明で、JTの事業は「適用法に従い、状況に応じた適切で迅速な行動をとる」 としている。
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ツイッター社、ロシア検閲回避サイト開設(2022/03/10)
ロシア国内では、ウクライナ侵攻の現状を伝える報道や当局批判が厳しく取り締まられ、Facebookやツイッター、各国メディアへのアクセスが制限されている。そこで、ロシア国民へのアクセス向上のため、ツイッターは、インターネット上の匿名化ネットワークを経由してアクセスできるWebサイトを開設した。
3月10日付英
『Guardian』:「ツイッター、ロシア検閲を回避しプライバシーを保護するダークウェブサイト開設」:
ロシア国内でアクセス制限されているツイッターは、検閲を回避できるプライバシー保護版のサイトを開設した。
これはOnionサービスと呼ばれ、ユーザーはTor(The Onion Router)ブラウザをダウンロードすることで、ツイッターにアクセスし、ダークウェブ(闇サイトに利用される)とよばれる当サイトにアクセスできる。...
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3月10日付英
『Guardian』:「ツイッター、ロシア検閲を回避しプライバシーを保護するダークウェブサイト開設」:
ロシア国内でアクセス制限されているツイッターは、検閲を回避できるプライバシー保護版のサイトを開設した。
これはOnionサービスと呼ばれ、ユーザーはTor(The Onion Router)ブラウザをダウンロードすることで、ツイッターにアクセスし、ダークウェブ(闇サイトに利用される)とよばれる当サイトにアクセスできる。ドットコムのドメイン末尾( .com)サイトと違い、オニオンサイトの末尾は(.onion)となっている。
ダークウェブには、違法サイトという意味合いがあるが、安全性への配慮や、圧政下で検閲されたサイトへのアクセス目的で、匿名性を保つためにしばしば使われることもある。FacebookやBBCも、Torでアクセス可能なバージョンを持っている。この新サービスについては8日、ソフト開発やセキュリティ担当者で、他社でOnionサイトを開発したことのあるAlec Muffett氏が自身のTwitterで明かしている。
ロシアは、ウクライナ侵攻の情報の拡散を恐れ、独立系ニュースサイトやソーシャルメディアへの弾圧や検閲を強化。先週、ロシア当局は国営メディア制限への報復として、Facebookへのアクセスを禁止し、ツイッターやBBC、米政府系ラジオ局(VOA)、ラジオ・フリー・ヨーロッパ(短波国際放送 )、 ドイツのDeutsche Welle放送、ラトビアのウェブサイト(Meduza)へのアクセスも禁止している。
3月9日付米『フォーブス』:「ツイッターがTorブラウザ開設、ロシア国民のアクセス改善へ」:
ロシア国内でツイッター社はアクセス制限を回避するため、Tor サービスを開始した。無料のTorブラウザをダウンロードすることでユーザーはツイッターを利用できる。既に利用可能だが、この新サービスは、プライバシー保護を強化し、ツイッター独自に開設されているという。
Enterprise Onion Toolkit(EOTK)のカスタマイズ版で、2014年にFacebookのオニオンサービス開設チームを主導したサイバーセキュリティ担当者が発表。ツイッター社としても、公式サポートブラウザーリストにTorを加えているのだが、正式な公表はしていない。過去のFacebookやBBCのサイト開設での教訓から、大々的な宣伝はアクセス集中に繋がるため、世界的危機の時代には賢明ではないと判断されたのだろう。
Torオニオンルーターが、インターネットトラフィックを追跡し、世界中の数千サーバーへ繋ぎ、殆どが無償。匿名性に加え、高度のプライバシーや検閲からの保護が期待できる。悪意を持った人々も存在するが、無防備にウェブを使用するよりは、セキュリティ上のリスクから保護できる点で、特定のオニオンサイト開設は利点がある。ロシア以外でも利用可能で、ツイッターをグロックしている中国やイラン、北朝鮮でもアクセス可能となっている。
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