メイ英国首相、中国首脳及び中国メディアから歓迎されるも、中国人権問題より中英貿易優先で本国では酷評【米・英・中国メディア】(2018/02/04)
1月7日付
Globali「マクロン仏大統領の初訪中;仏はBrexit後の欧州連合(EU)との連携強化を中国に、一方中国は一帯一路経済圏構想へのEU後押しをそれぞれ期待」の中で、マクロン仏大統領の訪中について報じた。一方、かつて、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設にEUの中でいの一番に参加を表明した英国は、Brexitの事態を迎えるに至り、今や中国側にとっては、フランスより劣後するとの見方が強いとみられる。そこで、訪中の順番でフランスに先を越されたメイ英国首相としては、Brexit後の英国経済をにらみ、何が何でも中国との経済連携強化を最優先せざるを得ず、国際社会から批判されている中国の人権弁護士・活動家の不公正取り締り問題等についてはきちんと提言できなかった模様である。従って、中国首脳・メディアよりは歓迎されるも、帰国した同首相は英国メディアからの厳しい批評に曝されている。
2月3日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「テリーザ・メイ首相、人権問題への消極的な対応について中国メディアから称賛されるも、英国メディアは酷評」
英国のテリーザ・メイ首相は、EU離脱(Brexit)後の英国経済をにらんでEU側との厳しい交渉に臨む必要があること、また、同盟国の米国との関係がギクシャクしていること等、問題が山積している。
そこで同首相は、特に前者の問題を好転させるため、初訪中にあたって、中国側との経済連携強化が最優先課題とせざるを得ない状況であった。...
全部読む
2月3日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「テリーザ・メイ首相、人権問題への消極的な対応について中国メディアから称賛されるも、英国メディアは酷評」
英国のテリーザ・メイ首相は、EU離脱(Brexit)後の英国経済をにらんでEU側との厳しい交渉に臨む必要があること、また、同盟国の米国との関係がギクシャクしていること等、問題が山積している。
そこで同首相は、特に前者の問題を好転させるため、初訪中にあたって、中国側との経済連携強化が最優先課題とせざるを得ない状況であった。従って、訪中の成果として、中国側との130億ドル(約1兆4,300億円)余りのビジネス構築ができたこと、更には、中国側から中英間の“黄金の時代”は続いているとの賛辞を得たことについて、メイ首相としては達成感を持って帰国したはずである。
しかし、同首相が3日間の訪中を終えて帰国した2月2日、大方の英国メディアからブーイングを浴びせられた。何故なら、同首相は、国際社会が問題視している、中国による香港などでの反民主化、人権蹂躙問題について、習近平(シー・チンピン)国家主席や李克強(リー・コーチアン)首相との会談において、何ら厳しい指摘をしなかったからである。
同首相は記者会見において、人権問題を提起したとコメントしているが、英国高官が英
『ガーディアン』紙に語ったところによれば、同首相は私的な打合せの際に提言したとのことで、結果として、公式会談においては一切議題に上げられなかったということになる。
その証左として、中国国営
『環球時報』は、メイ首相が西側メディアの一方的主張や“香港の民主化を叫ぶ輩”の圧力を無視して、“実利的な”対応をしたことを評価するとしている。
同日付英
『UKニュース』:「テリーザ・メイ首相、訪中に当り貿易問題を優先」
習国家主席が2015年秋に訪英時、デビッド・キャメロン首相(当時)との間で、中国による英原子力発電所建設・運営参画について基本合意をみた。
しかし、2016年7月に就任したメイ首相が、ヒンクリー・ポイント新規原発建設・運営計画(注後記)に待ったをかけたことから、一時中英関係が危うくなった。ただ、同首相としても、Brexit後の英国経済をにらみ、中国との経済連携強化が必要と考え、同年9月に条件付きで同計画を認可している。
そこで習主席は、今回のメイ首相訪中に当り、2015年訪英時に語った中英関係の“黄金時代”との表現を用いて歓迎の意を表した。そして、メイ首相との会談で、中国の思惑どおりの中英貿易協議ができたことから、同主席は、今後とも英国への中国投資は増大していこうと持ち上げた。
同日付中国
『新華社通信』:「保護主義が跋扈する中、メイ首相の訪中に黄金の輝き」
先週スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会で、ドナルド・トランプ大統領が“米国第一主義”を叫んだように、今や世界では保護主義の嵐が吹き荒れつつある。
そういった最中、訪中したメイ首相との会談で、習国家主席は、中英両国が更に強く連携して、自由主義貿易を推進していくことを確認した。
そしてその証左として、中国主導の一帯一路経済圏構想の一環として、中英間で90億ポンド(約128億ドル、約1兆4,080億円)に上る金融・研究開発・農業・技術開発分野での協定が成立した。
習国家主席はこの結果を評価した上で、今後とも中英関係の“黄金時代”が更に継続・発展すると強調している。
(注)ヒンクリー・ポイント新規原発建設・運営計画:フランスの電力公社EDFが主導しているC原発の建設・運営計画(総工費240億ドル、2兆6,400億円相当)。これに中国企業が3分の1出資する基本契約が成立済み。なお、A原発は運転停止、B原発はEDFが保有・運用中。
閉じる
中国の“一帯一路”政策、資金力で世界を呼び込む(?)(2)(米・英・ロシア・中国メディア)(2017/05/18)
5月14日付Globali「中国の“一帯一路”政策、資金力で世界を呼び込む(?)」の中で、“習指導部が、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)とともに注力している「一帯一路」政策(新シルクロード経済圏構想)について、潮目が変わったのか、米国のみならず北朝鮮までも中国サミットに代表を送ることを決定しており、中国マネーに引き付けられる国が増えてきている”と報じた。しかし、同サミットもふたを開ければ、ドイツなど欧州参加国が、貿易に関する中国提示の文書について、物資調達の透明性や環境基準への懸念を理由に署名を拒んだかと思えば、インドは、中国が進めているカシミール地方(パキスタンと領有権を争う地域)への開発計画に鑑み、国家主権と領土保全への懸念を無視しているとして同サミットそのものへの参加を拒否している。中国は、中国主導でアジア~アフリカ~欧州を繋ぐ一大経済圏を世界と協力して創設していくとぶち上げているが、これまで世界経済を牽引してきた米国から覇権を奪うという大策略が透けて見えることから、金に困っている国を除いて、多くの国から賛同を得るのは容易ではないとみられる。そもそも中国は、外貨準備高が世界最大の3兆ドル(約340兆円)を有する資金力豊かな国としているが、内実は対外債務を4兆6,000億ドル(約520兆円)も抱えている(末尾追記参照)。
5月17日付米
『NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)ニュース』(米非営利・公共放送):「中国の“新シルクロード構想”、目標は壮大で克服すべき課題も数多」
5月15日に閉幕した、中国主導の「一帯一路」国際フォーラムには、29ヵ国の首脳を含め130ヵ国以上の代表が参加した。中国自身が、「一帯一路」政策を“世紀のプロジェクト”と位置付け、4つの大陸を交易・鉄道網・港湾・高速道路で結びつけるとする壮大なインフラ開発計画である。...
全部読む
5月17日付米
『NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)ニュース』(米非営利・公共放送):「中国の“新シルクロード構想”、目標は壮大で克服すべき課題も数多」
5月15日に閉幕した、中国主導の「一帯一路」国際フォーラムには、29ヵ国の首脳を含め130ヵ国以上の代表が参加した。中国自身が、「一帯一路」政策を“世紀のプロジェクト”と位置付け、4つの大陸を交易・鉄道網・港湾・高速道路で結びつけるとする壮大なインフラ開発計画である。今回、自国のインフラ投資・開発に中国資金が投入されることを期待しているアジア諸国を含めて、およそ70ヵ国が中国との協力協定に署名している。
中国の主たる目的のひとつは、中東からの石油・天然ガス輸送用のパイプラインを、ミャンマー・パキスタンを経由するルートに敷設することで、米国勢力下にあるマラッカ海峡(マレー半島とインドネシア・スマトラ島を隔てる海峡で、太平洋とインド洋を結ぶ海上交通上の要衝)を経由しなくとも済むようにすることである。
中国は声高に、世界経済発展のための一大プロジェクトを推進するもので、決して他国の主権を脅かしたり、中国の制度や影響力を押し付けるものではないとしているが、例えばインドなどは、パキスタンと領有権争いのあるカシミール地方のインフラ建設を、中国が勝手に進めようとしているとして、同国際フォーラム自体への参加を拒否している。
5月16日付英
『ザ・UKニュース』:「中国、新シルクロード開発プロジェクトについて68ヵ国と協力協定締結」
中国が推し進める、東と西の大陸を結びつける21世紀の壮大なプロジェクトと称する“新シルクロード”開発プロジェクトについて、中国の習近平(シー・チンピン)政権は5月15日、68ヵ国と協力協定を締結したと発表した。
習主席は「一帯一路」国際フォーラムを通じて、中国一国の勢力圏拡大の意図は全く持っておらず、多くの国々や国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)などと協力して、世界にはびこりつつある保護主義に対抗して大規模自由貿易圏を創り上げていくと訴えた。
なお、次回の「一帯一路」国際フォーラムは、今回と同じく中国で2019年に開催される予定である。
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「“新シルクロード”政策で、中国が世界の牽引役を担うと標榜」
5月15日に閉幕した「一帯一路」国際フォーラムにおいて中国は、今後世界におけるインフラ開発・建設、国際貿易の牽引役を担っていくとアピールした。
習主席は同フォーラムにおいて、インフラ整備等で1,200億ドル(約13兆5,600億円)余りの投資を含めて、「一帯一路」開発プロジェクトに総額7兆ドル(約791兆円)を投じる計画を発表している。そして、同フォーラムに出席したウラジミール・プーチン大統領も、アジアと欧州を結びつける「一帯一路」政策を含めた一大経済圏構想に賛同・支持を表明した。中国側としても、ロシア抜きのアジア~欧州ルートの開発・展開は不可能と考えている。
5月17日付中国
『新浪(シナ)英字ニュース』(
『新華社通信』配信):「“一帯一路”フォーラムは貿易連携を強め保護主義に対抗」
経済専門家は、5月14、15日に北京で開催された「一帯一路」国際フォーラムによって、国際貿易の連携を強化して、台頭し始めた保護主義に対抗する大きなうねりが示されたと評価した。
また、「一帯一路」政策の実現で、例えば、世界貿易高の僅か3%にも満たないアフリカ諸国にとって、輸出競争力向上のための鉄道・港湾などのインフラ開発が進捗することとなり、ケニヤ・エチオピア・タンザニア等に大きな利益をもたらすことに繋がるとする。
なお、中国主導のAIIBの競争相手と目されるアジア開発銀行(ADB)の2016年金融報告によると、同行の主要融資残高は上位5ヵ国合計で480億ドル(約5兆4,200億円)に上り、その最大の融資先は中国:155億ドル(約1兆7,500億円)である。以下、②インド:133億ドル(約1兆5,000億円)、③インドネシア:88億ドル(約9,900億円)、④フィリピン:60億ドル(約6,800億円)、⑤パキスタン:48億ドル(約5,400億円)。
閉じる
その他の最新記事